北京オリンピックで、計41会場に約280システムを納入するパナソニックの音響システム「RAMSA」。過去の夏冬オリンピック6大会にわたり多くの会場で導入されてきたこの「RAMSA」だが、開閉会式で正式導入されたのは、実は2006年のトリノ冬季大会が初めてだった。その前年の2005年、イタリアでおこなわれたテストにおいて、パナソニック技術陣の力量が当時のオリンピック組織委員会に認められたことが大きなターニングポイントとなり、その後のオリンピックでは最も重要なイベントである開閉会式の演出サポートへとつながった。
オリンピック大会専用モデルとしてカスタム
トリノ冬季大会に引き続き、北京オリンピックの開閉会式でも、パナソニックの音響システムが活躍することとなった。この8月、世界中の注目が集まる開会式会場で初お目見えとなるのが、大型アレイスピーカー「WS-LA3」。従来の大空間用音響システム開発で培われてきた技術を生かしながら、オリンピック大会専用モデルとしてレベルアップした、パナソニックの自信作だ。パナソニックで音響システムを担当しているゲーリー・ハーデスティは「WS-LA3」の特長を次のように語る。「このスピーカーシステムの最大の特長は、音が明瞭に、会場の奥までクリアに届く、ということ。
パッと見は、横長のスピーカーを何台も重ねたように見えますよね。こうして全体の高さを確保することで、点ではなく“面”音源として高音質を実現しつつ、幅広い拡声エリア(音の届く範囲)を得ることができるんです」
1システムごとの守備エリアを広くした結果、会場全体の設置台数をおさえ、設置時の手間を減らすことも可能になった。こうして、設置コストとスケジュールを見事にアジャストした「WS-LA3」は、オリンピックという世界最高峰のイベントにふさわしい一台となったのである。
オリンピックだからこそ生まれた出会い
ゲーリーは、北京オリンピックのプロジェクトを通じて得たものの中で最も価値があったもののひとつに、日本や中国の技術者たちとの出会いを挙げた。「言葉も文化も違う者同士、一緒に仕事をしていくには、お互いの信頼関係を築くことが何より大切。音響システムのチームとして、上司部下の隔たりなく皆が同じ目標に向かうことで、とてもいいモノづくりができたのではないかと思います」
LA3開発の経験を活かして、今後も世界各地でより多くの人々に音響システムを体験していただくために。パナソニックの努力は続いていく。