SPORTS CHANGE MAKERS

2021-04-13

パネルディスカッション:壁を超える取組

健常者と障がい者、リアルとバーチャル、性別など、いまも世界にさまざまな壁が存在する。第1回SPORTS CHANGE MAKERSのテーマは、”GOING BEYOND BARRIERS”。2021年3月9日に開催したSPORTS CHANGE MAKERSプレイベント in Mirror Fieldでは、「スポーツ×テクノロジーでバリアを超えることができるのか」をテーマにパネルディスカッションが行われ、登壇者が経験した壁やどのようにしてその壁を超えてきたかを語り合った。

小谷実可子さん(東京2020組織委員会 スポーツディレクター)

アーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)の選手として活躍され、ソウル1988オリンピックで銅メダルを獲得された小谷さんが、1番最初にぶつかった壁は武者修行のため、アメリカに留学した際の「言葉の壁」。異文化に飛び込み、周りとの意思疎通もままならなかったが、身振り手振りを使って自分の伝えたいことを表現するうちに、周りも同調して身振り手振りを使ったコミュニケーションが取れるようになったと語った。

また、アーティスティックスイミングは採点競技であるということもあり、当時の「日本は3番手」という先入観によって、1番手や2番手を超える点数を出して貰えない壁が存在していた。その壁を日本チームが超えていく為に、1番手や2番手が出場しない大会にも積極的に参戦し、日本が世界のトップを獲れるという印象に変えていく努力をしていたことを紹介した。

写真:小谷実可子さん(東京2020組織委員会 スポーツディレクター)

横瀬健斗さん(SPORTS CHANGE MAKERS日本代表・京都工芸繊維大学 大学院生)

2019年の秋から2020年の夏まで、フィンランドの大学院に留学していた横瀬さん。英語が母国語でないフィンランドで、世界中から集った留学生達と一緒にデザインプロジェクトを進め、感じていた壁は小谷さん同様に「言葉の壁」。コロナ禍でオンラインでのコミュニケーションを強いられる中、壁を超える為に「英語で上手く伝えよう」という言葉でのコミュニケーションに縛られ過ぎず、絵を描いたり、写真を見せたり、ビジュアルで伝えようと努力したと語った。

写真:横瀬健斗さん(SPORTS CHANGE MAKERS日本代表・京都工芸繊維大学 大学院生)

川合悠加さん(パナソニック株式会社 アプライアンス社 Game Changer Catapult)

入社3年目の川合さんが社会人になって感じた壁は2つ。1つ目は40代・50代のベテラン社員ばかりの部署で若手社員として感じた「年齢の壁」。仕事で携わる関係部署の人達も役職の高い男性が多く、年齢だけでなく、「キャリアの壁」や「性別の壁」もあった。最初は委縮していたが、臆さず自ら積極的にコミュニケーションを取ったり、レスポンスを早くすることで信頼関係を築き、壁を超えてきた。2つ目の壁は社会人になってより意識した「社会課題の壁」。日本が諸外国に比べて女性の家事労働負担が高い点を課題視し、家電を扱っている業務を担当している立場から、家事から解放する使命感を持って社会課題に正対していく、壁を超えていこうという意識が強まったと語った。

写真:川合悠加さん(パナソニック株式会社 アプライアンス社 Game Changer Catapult)

澤邊芳明さん(東京2020組織委員会 アドバイザー)

澤邊さんは、横瀬さんと同じ京都工芸繊維大学の学生だった18歳の時、バイク事故により、車いす生活となった。自ら「手足が不自由という壁」があるが、インターネットと出会い、世界中の人達とバリアなく繋がり合えるのが衝撃だったと語った。

大きな出来事がある度にテクノロジーの進化を実感することもあり、コロナ禍ではオンラインチャットシステムが急激に進化し、出社しなくてもコミュニケーションが取れるという、働き方そのものが変わった。「障がいを持っている人が出社するという壁」がなくなったのは大きく、脳の中で意識や思考する力があれば、身体的な障がいは関係なくなっているとも言える。反面で重度障がい者はかなりコロナ感染対策を意識していて、スポーツ大会で集まることもままならない。テクノロジーで身体性の再現までは出来ず、「置き換えられていない壁」を感じている。この壁を超える取組を検討していきたいと語った。

写真:澤邊芳明さん(東京2020組織委員会 アドバイザー)

モデレーターのITジャーナリストの林さんは、澤邉さんの話を聞き、オンラインチャットシステムは昨日・今日出てきたものではなく、昔からあるもの。「使う人達が勝手に壁」を作って活用してこなかった。コロナにより使う人達の意識が変わり、使っていこうという合意形成が出来たのは凄いこととコメントした。

写真:林信行さん(モデレーター ITジャーナリスト)

世界中にはさまざまな壁が存在する。登壇者が超えてきた壁、超えようとしている壁は、同じ様な壁もあれば、夫々の立場や境遇の違いにより、全く違った見え方もする。中には自分達がいつの間にか生み出してしまっている壁もある。SPORTS CHANGE MAKERSでは、これからも社会に存在するあらゆる壁を超え、より良い未来つくる挑戦を学生達と一緒に進めていきたい。

パネルディスカッション全編

パナソニックは、映像音響機器のオリンピックおよびパラリンピックのワールドワイドパートナーです。