岡山

昭和37年、岡山が生んだ希代の名人大山氏との対局にて。

「名人から先においきやす」――時の名人、大山康晴氏と対局した際、創業者松下幸之助が発した言葉です。将棋に親しまれた方はご存知かと思われますが、将棋は弱いほうが先に指すのが決まり。敬意を払ったつもりの一言が、思わず名人をドキッとさせました。

昭和37年に行われたこの対局、日本将棋連盟から松下幸之助に名誉段位を贈るという話が持ち上がり、儀式として実現したものです。幕開けから波乱の対局、その結末は…。30年ぶりに駒を握った松下幸之助が大勝ちしたのです。どんな秘策が?それは名人が指すと、松下幸之助は全く同じ手を指し、指しても指しても、同じところに指したというのです。しかも形勢が悪くなると「先生、この場合はどうしたらいいのですか」と聞き、名人が「こうしなさい」と5、6回教えていたら勝負がついてしまったのです。独自の戦法に、名人は後日「感心させられた」と述懐しています。

松下幸之助は大山名人に、なぜ『名誉段位』という制度をつくったのかをたずねています。こたえは、将棋ファンづくり。松下幸之助も「『よしいっぺん将棋の会でも開こうか』といった気にもなる」と語っています。ナショナル・ファンづくりに尽力していた折、「その人に喜びを与えながらその目的を達成するという、いわばお互いの益になることを考えてゆけば、ひとりでにファンはうまれてくるのではないか」と感じさせられたとも続けています。

大正7年の創業以来、私たちがここまで歩んでこられたことは、岡山のみなさまをはじめとする、たくさんの方々のご愛顧とご信頼の賜物と心より感謝申し上げます。これからも変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

おかげさまで、パナソニックは創業100周年を迎えました。