香川

昭和31年、瀬戸内の美しさに、魅せられて。

「船は別府航路のものより二まわりほども小さいものだったが、静かな内海をまるですべるように進んだ。あちこちに点在する島々は、夢のようにかすみ、吹く潮風はハタハタとシャツを鳴らして、今朝からの汗が一ぺんにひく思いである」――昭和31年夏、創業者松下幸之助が神戸から関西汽船の別府航路で高松に着いた翌日、小豆島を訪れた時の旅情を綴った一文です。この島は信頼をおいていた部下、高橋荒太郎(後に松下電器副社長、会長を務める)の生まれ故郷でもありました。

自然豊かな日本屈指の景勝地として、四季を通して観光客が訪れる瀬戸内海。松下幸之助は、その美しさに魅了された一人でした。九州への出張途中、飛行機の上から瀬戸内海を望んだ際には、「全くもって一つの箱庭のようで、あちらに築山をつくり、こちらに池を掘り、その合間々々に島と松とを点々と配して、それは見事な庭園である」とたたえ、こう続けます。「これは、日本人共通の大きな資源であり資産である。だからお互いみんながこの富を共有し、俗事に追われがちなその日々から、たまにはぬけ出して、できるだけひろくその美を楽しみ、一人でも多くの人がその喜びを味わわねばならないと思うのである」と。そして、「日本人だけではなく、ひろく世界中の人々にもこれを鑑賞せしめてよいはずである」。「世界中の人々がその美を楽しみに日本に集まってきても、それは何の不思議もないところである」と賛辞を惜しみませんでした。

それから60年余り。日本は観光立国を掲げ、2020年に、年間4000万人の外国人旅行者獲得をめざしています。松下幸之助の心をつかんだ瀬戸内の美しさは、世界中の人々を魅了することでしょう。

大正7年の創業以来、私たちがここまで歩んでこられたことは、香川のみなさまをはじめとする、たくさんの方々のご愛顧とご信頼の賜物と心より感謝申し上げます。これからも変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

おかげさまで、パナソニックは創業100周年を迎えました。