材料分析 Materials Analiysis

10μmの微小部での仕事関数測定(電子放出性評価)が可能です!

2020年5月25日

材料ソリューション部 表面・構造分析課の相馬です。
今回は、材料表面の微小部での仕事関数測定についてご紹介します。

「仕事関数」とは、「材料表面から電子1個を取り出すのに必要な最小のエネルギー値」のことです。
表面改質を行って付加機能を持たせた様々な新規デバイスが開発されるようになってきましたが、デバイス表面における電子放出性を示す指標として仕事関数が注目されています。
仕事関数を変えるとデバイス特性が制御できるため、仕事関数の値がわかると、低エネルギー発光デバイスや高光電変換電極の材料設計、材料特性制御のための表面処理条件導出、電気伝導性などの品質改善において、今後の指針の導出につながります。
また、同じ構成元素の材料でも結晶方位や表面粗さなどによって仕事関数が異なるため、元素分析だけではわからない表面状態を調べることもできます。

紫外線を照射して測定(従来の測定方法)
従来の測定方法
細く絞った電子線を照射して測定(微小部の測定方法)
微小部の測定方法

これまでの仕事関数測定には紫外線を用いた装置が一般的に用いられていましたが、紫外線は十分に絞ることができないため、残念ながら数mmの広範囲での測定に限定されていました。
今回、プロダクト解析センターでは、10μmオーダーまで絞ることができる電子線を用いて微小部での仕事関数測定を可能にしました!パターニングを行った後の微小な電極を狙った測定もできるようになりました。
表面元素分析ができるオージェ電子分光分析装置内で、電子線を試料に照射した際に発生する信号電子の立ち上がりのエネルギー値が仕事関数の値に相当します。主要な金属材料の仕事関数を測定したところ、文献値と比べて±0.3eVの精度での測定ができています。

仕事関数測定例(チタン(純度99.5%)
仕事関数測定例(金(純度99.95%))

仕事関数測定例

さらに、オージェ分析装置を使用しているため、表面元素分析も同時に実施することができます。
通電試験前後での銅配線を測定すると、通電試験で酸化した銅配線では仕事関数が増加していました。電子が移動しにくい状態になっていることが発熱を起こす原因と考えられます。

オージェ分析(表面元素分析)

オージェ分析(表面元素分析) 銅 100%
オージェ分析(表面元素分析) 酸素 59% 銅 41%

仕事関数測定

銅配線 通電試験前
銅配線 通電試験後

イオンビームエッチングによる深さ方向での測定も可能ですので、表面だけでなく内部の仕事関数の測定もできます。多層薄膜の表面層と下地層の仕事関数の差を知ることができます。

電子線を用いるため導電材料向けの測定になりますが、開発中の新規材料や実デバイスなどの測定に対応できますので、是非ご活用下さい。
「こんな材料の仕事関数も測定できるのかな?」とご興味をお持ちになられましたら、ホームページにてお気軽にお問い合わせ下さい。

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