≪プログラム①・②の活用事例≫

生徒に身近な題材を組み入れた工夫

~授業の様子を学年便りで保護者に発信~

2018年度「私の行き方発見プログラム」では、222校への教材提供と52校での出前授業を行いました。パワーアップ情報ファイルでは、昨年度と今年度のプログラム実施校の中から特色ある実践を行っている学校を訪問し、「私の行き方発見プログラム」をより効果的に活用いただくための事例やヒントを紹介していきます。その第1回目は、昨年度に初めて教材を活用した岐阜県中津川市立第一中学校(岩久義和校長)を訪問し、担当された中島健先生から授業実践での工夫や留意点等についてお話を伺いました。

岐阜県中津川市立第一中学校 中島 健先生

■職場体験に協力的な地域の事業所

中津川市立第一中学校は、市内を一望できる丘の中腹にあり、生徒数は261名。学校経営の基盤となる基本施策の一つに「望ましい勤労観や職業観の育成」を位置づけ、総合的な学習の時間等の中で、岐阜県進路指導研究会作成の副読本を基本教材としながら、職場体験等を通して、労働や奉仕の尊さ、喜びを実感できるようにするとともに、将来の夢や希望の実現に向けた進路設計ができるような指導を行っている。
同校の2年生が職場体験を行う10月の時期は地元名産の栗菓子作りの最盛期ということもあり、受け入れ先には和菓子関連の職場も多い。中島先生の話では「市内の多くの事業所が職場体験に協力的で、今年はいつですかと問い合わせがあるほど」とのこと。生徒達にとっても、自分たちの地域を知るきっかになっているようだ。

■各プログラムのつながりを意識することが重要

同校が活用した教材は、4つあるプログラムの中の「①会社の役割発見」と「②職業と能力の関係発見」で、1年生を対象に、キャリア教育の導入としての位置づけで各1時限の授業を実施した。昨年度に1学年主任を務めた中島先生はもともと企業が行うキャリア教育の教材開発に関心があり、多くの「行き方語録」を遺した松下幸之助氏が創業した会社が作成した教材ということから、クラス担任の先生方にこのプログラムを紹介し導入を決めた。
授業の実施時期については、結果的にプログラム①が11月末でプログラム②は1月となったが、中島先生としては「生徒の関心や意識がつながっていくので、この2つのプログラムは連続して行うことがより効果的だ。翌年の職場体験にも活きてくるのではないか」との認識を持っている。

■生徒に身近な製品を題材とした導入での工夫

プログラム①「会社の役割発見」について中島先生は、「学校生活の中で一人一人が役割を持って係活動等に励んでいることと、社会に出てからの仕事や生活とがつながる良いテーマであり、カード教材を使いゲーム感覚で仲間と関わりながら学べる教材」と捉えている。その上で、カード教材を活用する際の留意点として、「カードごとに書かれている30種類の仕事自体を知ることが学習の目的ではなく、一つの会社や組織を運営していくためには様々な仕事や役割があり、それらが支え合っていることをイメージさせることが重要」と指摘した。加えて、「例えば、購買と販売の違いや知的財産、生産技術など生徒に馴染みの薄い仕事や言葉については、教師向けの情報として補足説明や例示があると良い」とのアドバイスもいただいた。
実際の授業では、特に導入部分でいくつかの工夫が加えられた。まず、「現在日本にはどのくらいの会社があるのだろう?」というクイズから始まり、カード教材を使う前に、生徒達に身近な製品(洋服、文具、お米)を取り上げ、私たちの手元に届くまでにどれくらいの人が関わっているのかを考えるというステップを組み入れた。その際、それぞれの品物のイラストを入れたシートを黒板に貼り出すことで、イメージしやすくしている。中島先生は「ちょっとしたことですが、生徒の取り組み方が変わってくる」と感じている。
プログラム②「職業と能力の関係発見」については、授業展開例を一部アレンジした形で授業が行われた。具体的には、エピソードシートで「役割を担うために求められる能力」を読みとるワークで生徒が困難を感じている様子だったことから、最後のまとめのワークの3つの設問を精選することで、全体の時間配分の調整を行った。

■学年便りで授業の様子を発信

プログラム実施後の生徒対象アンケートでは、印象に残ったこととして「会社には多種多様な仕事や役割があること」と「それぞれの仕事や役割を果たすために必要な能力があること」への回答が高く、授業を行った先生方も生徒達のキャリア形成への関心の高まりを感じている。

<生徒の授業後の感想から>

  • 一つのものでも使用する人の手に渡るまでに、たくさんの人が関わっていて、いろいろな仕事があってすごいなぁと思いました。自分も人の役に立てる仕事をしたいと思います。

  • 「環境推進」の仕事に興味を持ちました。会社で働いている人が楽に働けるような職場作りが出来たら素敵だなと思いました。

  • 「商品企画」に興味を持ちました。あったら便利だなぁと思うものなどを作れるように企画したりするのが面白そうでした。

同校では、こうした授業の様子を「学年だより」に取り上げ、保護者等への発信を行っている。プログラムに取り組んだ生徒達にとっても励みになっているようだ。

■先生自身の引き出しを増やすことが大事

中島先生は今年度3学年主任となったが、昨年度に使用した教材セットは1学年担当の先生方に確実に引き継がれている。2年生の職場体験の事前学習としての活用等も検討されている。
最後に、キャリア教育に携わる全国の先生方へのメッセージと今後の取り組みについて中島先生に伺った。
「学校の中だけでは限界があります。日頃からキャリア教育に関連する様々な情報を収集し、積極的に教材開発にチャレンジする姿勢が大事で、資料を取り寄せて目を通すだけでも、自分たちの引き出しを増やすことにつながります。『私の行き方発見プログラム』を活用した授業は、私自身が外の世界を垣間見るきっかけになりました。これからも生徒達が活き活きと取り組めるような授業を実践していきたい。出前授業もその一つだと思います」。