「組織基盤強化ワークショップ 2016」イベントレポート

NPO/NGOの組織基盤強化のためのワークショップin兵庫

2016年5月23日、NPO法人シミンズシーズ主催、認定NPO法人日本NPOセンターとパナソニックの共催のもと、「NPO/NGOの組織基盤強化のためのワークショップin兵庫」を開催しました。
2013年からスタートした本ワークショップ、今年は東京、兵庫、岩手、北海道、宮崎、愛媛の順に全国6カ所で開催します。組織基盤強化に関心を寄せるNPO/NGOのリーダーやスタッフに参加いただくこのワークショップは、学ぶ(基調講演)、知る(事例報告)、考える(ワークショップ)という3つの要素で構成されています。ワークショップを通して、組織基盤強化の重要性とご自身の組織の課題について何らかの「気づき」を持ち帰っていただけたらと考えています。今回は、兵庫で開かれたワークショップの模様をレポートします。

今日の気づきを
組織基盤強化の実践に移すきっかけに

組織運営について日頃から気になりつつも、日々の活動に追われてなかなかゆっくりと考えられる機会が少ないと思います。今日はお時間を割いてお越しいただいた中で、組織基盤強化の取り組み事例を聞いたり、課題をグループの方と深堀りする体験などにより、組織基盤強化の意義について考えていただきたいと思います。そして、今日の学びを組織の皆さんと共有し、組織基盤強化への行動に移すきっかけにしていただければ、と考えています。

パナソニック CSR・社会文化部
東郷 琴子

基調講演「組織基盤の強化とは」

個々のプロジェクトが順調に進んでいても、まず土台固めしないと船は沈む

日本NPOセンター 代表理事
早瀬 昇さん

【自立】は英語でIndependence。dependence(依存)しないことですが、NPOの場合、その解釈は一般的なものと異なります。判断を他者に頼らず、「自分で決めること」が自立なのです。この意味で自立した組織となるためには、NPOが支援者の共感を高め、「参加の機会」を提供することが必要不可欠です。

さて、「参加しやすい」組織を作る鍵の一つは、「ビジョン」「ミッション」「バリュー」の確立。“夢”はNPO最大の経営資源ですから、自分たちが目指す「夢」の提案が大切です。特にビジョンとミッションが重要で、“何を目指して何に取り組むか”を掲げていると、多くの人が参加しやすくなります。これが、NPOの組織基盤として注目すべき【目標設定】です。なおビジョンとする状態と現状のギャップが「課題」です。

それから【人的基盤】も忘れてはなりません。
事務局の体制整備や、スタッフが活躍しやすい環境作りなど、組織体制の確立は非常に大切だと言えます。NPOとは「Nonprofit Organization」の略ですが、イギリス英語では「Voluntary Organisation」。つまり、「意欲的に動ける」「自分から進んで動ける」場であるべきです。逆に言えば、頑張る人が疲れやすい場なので、それをケアする体制も必要になります。また、普通の企業にはない、ボランティアと有給スタッフの協働体制作りも重要です。

次に、NPOの【財政基盤】について。
主に「会費・寄付金」「自主事業収入」「助成金・補助金」「受託事業収入」の4つに分類できます。「助成金・補助金」と「受託事業収入」は額は大きいものの、変動しやすくて不安定。逆に「会費・寄付金」と「自主事業収入」は小口だけど安定型です。また、「自主事業収入」「受託事業収入」を提供するのは私たちにとって消費者ですが、「会費・寄付金」「助成金・補助金」の出し手は共にビジョン実現に参加する創造者だと言えます。

最後の組織基盤は【組織統治(ガバナンスの確立)】
理想のリーダーシップとは、専制型・民主型・放任型の3つをうまく使い分けることです。

なお、組織作りの際には外発的・内発的という2種類のモチベーションを整理しなければなりません。外発的なものには「お金」や「表彰」がありますが、外発的なモチベーションが内発的なモチベーションを損なう場合もあり、ボランティアもスタッフも内側からの動機づけが特に大事です。その向上には大きく右の4つが鍵となります。
これらがあればボランタリーなエネルギーで動く組織を作ることができます。

●内発的動機づけの鍵
1.自分で選び、企画できること
2.困難を克服し成し遂げた達成感を得られること
3.社会的に意味があると実感できること
4.成長欲求が満たされること

組織基盤の強化により組織の発展につながった事例報告(1)

子どもの安心・自信・自由のため、
覚悟を持って組織基盤強化に取り組んだ

CAPセンター・JAPANでは子どもへの暴力の防止や予防教育について学校を舞台に活動しています。また、教職員や保護者という子どもの周りの人へのプログラム提供を行い、暴力の未然防止や発生防止、悪化防止、再発防止を狙いとしています。

組織基盤強化を行ったきっかけは、2009年に大きな組織改編があり、会員数が減った中で財政の不安定さの打開が迫られたことに遡ります。NPOサポートファンドの助成を受け始めた当時は、正直、組織診断から取り掛かるということで面倒な気持ちはありました。しかし、私自身と事務局・理事会が共通認識を持ち、外部の方やコンサルタントの力を借りて取り組んだ結果、財政が本当の課題ではないことがわかったのです。
そこで、何となく過ごしている日々の活動の再評価を行い、子どもの人権が尊重される社会を目指して何をすべきかを見出したところ、「できていること」や「やってきたこと」がたくさんある、ということを外部の方からご指摘いただけました。組織基盤強化のモチベーションを保ちながら意欲的に取り組み、自己肯定感を持ちながら新しい一歩を踏み出せたのは大きな経験だったと思います。

CAPセンター・JAPAN 事務局次長
重松 和枝さん

まずは、組織基盤に欠けていた中長期計画や数値目標を立てました。また、活動が「独りよがり」になっているというキーワードが出てきたため、社会発信力の強化をすることに。さらに、地域の活動拠点の強化も必要だということがわかり、委員会を立ち上げて具体的に考えていきました。

以前は具体的な目標を持たずに進んできた組織の取り組みも動き出しました。また、ここからミッションや中期目標、行動方針や重点目標などを立て、毎年の事業方針を設定し、会員にもすべて公開するようにしました。
基盤強化を進めて、何より、多くの夢を語れるようになったことが嬉しく、結果的に寄付金が4年間で約4倍にもなりました。強化前に比べて組織の中身を見つめられるようになったこと、外部の方を巻き込んで考えることを習慣化できるようになったことや、目的を明確にしてから行動できるようになったことは、大きな財産だと思っています。

組織基盤の強化により組織の発展につながった事例報告(2)

強みを発揮し協働する相手とともに成長するために、
組織基盤の強化が必要不可欠

文化・福祉・人権サポート アエソン
代表理事 政本 和子さん

2004年に設立したアエソンは、兵庫県立東はりま特別支援学校敷地内の地域連携交流施設に拠点をおいて活動しています。障害福祉とのかかわりは、25年前に私の子どもと仲間の子どもが療育施設で出会ったのが、そもそものきっかけでした。
アエソンのビジョンは「一緒に考え、行動に移し、新しい価値を創りだす」です。そのために、本人の持つ力を引き出したり、力が発揮できそうな環境づくりをサポートしています。
主な事業の一例としては、16歳以上の障害者の居場所を作り、相談支援、「障害児・者とその家族のための家族再生」プロジェクトや、支援学校と地域、障害のある人と地域をつなぐ活動などがあります。

組織基盤を強くする必要性を考えたきっかけは、3年前に播磨地域福祉サービスの第三者評価を受け、2回目の評価を受ける前に、職員がどう考えているかを知るべきだと思ったことと、シミンズシーズさんからマーケティングなどを学んだことが大きかったです。また、次の10年をどうしていくのかを考えた時に、専門集団になっている職員とどう運営していくのか、その方向性を見出したかったというのもありました。
組織基盤強化の取り掛かりとしては、会議を充実させたり、毎朝朝礼を行ったり、事業毎にカンファレンスを行いました。また、アエソンの2カ月毎のブランディングも進めました。

その中で苦労したことや意外な発見もありましたが、結果的には理事や職員と頻繁に意見交換を行うようになったり、就業規則や人事考査内容などを見直して「見える化」を図りました。
また、イベントの担当者を決めて任せることで組織全体で取り組めるようになり、地域の人たちや大学の先生などから専門的なアドバイスをいただけるようになるなど、多くのことが改善されました。
それにより、、私から理事・職員への相談、職員から私への連絡・報告も増えました。さらに、職員に任せることで職員が自ら考えて動けるようになり、運営がうまくシステム化できつつあり、外からどう見られているかも意識できるようになったと実感しています。

今後の課題はまだ残っていますが、アエソンとしての強みを活かして皆さんと協働することで新しい価値を作り、新たな挑戦をしながら今後も活動を続けていきたいと思っています。

組織基盤の課題について考えるワークショップ

多種多様な活動に携わるメンバーで、組織基盤の課題を深掘りするワークを実施

事例発表の後、5~6名のグループに1名のファシリテーター(進行係)が付く形式でワークショップが行われました。

さいごに
Panasonic NPOサポート ファンドのご紹介

「Panasonic NPOサポート ファンド」は、国内で先進的な取り組みを展開するNPOや、新興国・途上国で活動するNGOの組織基盤の強化を応援する公募型の助成プログラムです。

2016年度の助成テーマは「客観的な視点を取り入れた組織基盤の強化」であり、そこには第三者の視点が必要です。ご応募いただく際には、応援団体が選定するNPO支援機関やNPO経営支援の専門家等をご自身で選んでいただき、助成事業を実施していただきます。
助成事業には大きく、第三者に関わってもらいながら組織診断をして計画を策定する「組織診断フェーズ」と、計画を具体化して実行する「組織基盤強化フェーズ」の2つがあります。それらの取り組みを通して、過去には「組織運営のための多様な視点を学ぶことができたり、スタッフ一人ひとりが数字を意識するようになった」、「組織診断という大変なプロセスを経て、スタッフの熱い想いを再確認できた」などの感想をいただいており、このプロセスが皆さんの組織内の絆を深め、スタッフの意識を変える大事な要素になると思っています。

社会課題の解決の促進に向けて、皆さんの活動を持続的に発展させるためには組織基盤の強化が大切です。
ぜひ、「Panasonic NPOサポート ファンド」をご活用いただければと思っております。皆さまからのご応募をお待ちしています。

【2016年募集 応募受付期間】 2016年7月14日(木)~7月29日(金)必着