国内助成 選考委員長
小河 光治
はじめに
コロナ禍以前も困窮していた世帯にコロナが襲い、その後は、未曾有の物価高騰が続いています。困窮する方々の苦難は、深刻さが増すばかりですが、一方で、こうした方々を支える組織や人々の課題も放置できない状況です。
「人件費アップなどのために、ラーメン屋さんなら、お客さんにお願いして値段をあげることで対応できるが、私たちは、それもできない。どうしたらいいのか…」
困窮子育て世帯を支えるNPO代表者のこんな切実な声に心が痛みます。困窮者への支援とともに、こうした団体への支援も、さらなる「公助」による取り組みが必要です。しかしながら、すぐにその実現が難しいという現実があります。
「貧困の解消」に向けて活動している非営利組織の方々が、厳しい現実に立ち向かうために、チーム一丸となって組織基盤強化に取り組もうとしたときに、「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」助成事業は、とても大きな支えになります。
「生産者の使命は、この社会から『貧困』をなくしていくこと」と語られたパナソニックグループ創業者の松下幸之助さんの遺志を受け継ぐ、この助成事業は、こうした大きな社会課題を抱えるいまこそ、とても価値があります。
パナソニックグループは、自社の利益や従業員の幸福を追求するだけではなく、世界中の人々の幸せを願って尽力されているという崇高な理念の下、グローバルな「リーディング・カンパニー」であるように、助成団体には「リーディング・NPO」としての役割が求められているのではないか。これは、長年にわたって選考委員を務めさせていただいている私の実感です。
助成団体は、この助成金をフル活用し、組織基盤強化を進めることで、自団体の発展のみならず、同じ分野で活動する全国各地の団体や活動する地域の幅広い分野の団体など、縦にも横にも大きな影響を与える「リーディング・NPO」にさらに成長してほしいと心から願っています。
今回、応募いただいた多くの団体が、それぞれの団体の課題に真正面から向き合い、あふれる熱意で挑戦したいという深い思いを、応募書類を拝読し、強く感じました。今回の選考委員会も委員が、各専門分野から多面的な視野で、活発な審議を行いました。選考にあたりご尽力いただいた選考委員のみなさまに心からお礼申し上げます。
応募と選考経過など
2025年募集は、42件の応募がありました(新規35件、継続7件)。
新規助成の選考は、まず事務局が応募要件を確認し、「要件を満たしているもの」が33件、「要件を満たさないもの」が2件と判断されました。次に「要件を満たしている」33件について、選考委員長と選考委員4名が選考基準ごとに評価を行った上で、さらに総合評価を行い、コメントを添えて事務局に提出しました。
継続助成の選考は、7件全てについて、選考委員長と選考委員4名が選考基準ごとに評価を行った上で、さらに総合評価を行い、コメントを添えて事務局に提出しました。
10月1日に選考委員会を開催し、選考委員長と選考委員4名が出席して、新規助成と継続助成についての審議を行いました。その結果、新規助成7件と継続助成4件が事務局による選考ヒアリングの対象となりました。
審議では、①本助成事業の趣旨に合致しているか、②他機関・団体や地域との連携体制や今後の影響力があるか、③事業内容が具体的で団体の実情などを認識しているか、④目的などが明確で社会的に意味があるか、⑤貧困の解消など課題解決の見通しがあるか、などを重視しました。なお、選考委員に関連する団体からの応募があった場合、当該選考委員は選考に携わりませんでした。
その後、事務局が団体のヒアリングを行い、その結果を受けて11月11日に新規助成5件(組織診断からはじめるコース4件・組織基盤強化からはじめるコース1件、助成総額799万円)、継続助成4件(助成総額701万円)を決定しました。合計の助成件数は9件、助成総額は1,500万円となりました。
採択された団体の①事業分野、②助成対象事業のテーマ、③所在地、は以下のとおりです。
【新規助成】5団体
- ①フリースクール事業など、②「理念を軸に安心できる学びの場を支える組織診断と運営体制づくり」-こどもと家庭の孤独を防ぐ持続可能な多拠点運営と地域との連携強化に向けて、③岩手県
- ①困窮する若者支援、②多様な価値観を活かし、切れ目のない若者支援実現に向けた組織変革プロジェクト、③宮城県
- ①フリースクール、学習支援、居場所事業、②困難な環境に生きる群馬県内の子ども・若者への支援体制および財務基盤強化に向けた組織診断、③群馬県
- ①外国ルーツの子ども支援、②外国ルーツの子ども支援を持続可能に-「共に育つ社会」へ向けた中長期計画と組織強化、③東京都
- ①子どもアドボカシー推進事業、②中長期計画策定による組織基盤強化と持続可能な子どもアドボカシー推進事業、③福岡県
【継続助成】4団体
- ①移動困難な人の送迎ボランティア事業、②強固な組織基盤形成によって、移動支援が地域の貧困対策解消のリーダーヘと成長してゆく取組み、③宮城県
- ①LGBT法整備に向けた全国連合組織、②性的マイノリティの貧困の解消に向け、持続可能な組織・ファンドレイジングの仕組みづくり、③東京都
- ①「にんしんSOS」事業など、②「妊娠の社会的孤立」解消に向けた多様な活動の持続運営のため、組織横断型で取り組む対話を通した人材育成・組織文化作り、③東京都
- ①自立援助ホームの運営など、②地域の子ども・若者に向けた多様な支援事業と制度の狭間を埋める活動を継続していくため、ブランド化を通した人材育成と法人事務強化の取り組み、③広島県
今回採択された団体については、事業分野も、助成対象事業のテーマも多様で、団体の所在地も日本各地に拡がっています。新規助成団体は、助成申請にあたって、団体の事業継続期間、財政規模や人的リソース、事業内容の特徴などを踏まえて、団体が抱えている現状と課題、今後の目指すべき姿などをしっかりと検討されていました。また、継続助成団体は、組織診断や組織基盤強化において、これまでの助成の成果が十分であり、今後の計画について、より具体的に検討していると評価できます。
助成対象団体には、「貧困の解消」など社会課題の解決に向け、各分野、各地域における「リーディング・NPO」を目指して、さらに尽力していただくことを願っています。
また、採択に至らなかった団体においては、大変お忙しい中、応募に多大な労力をかけていただいたことと存じます。心苦しい限りですが、ぜひ次年以降の応募に改めてチャレンジをいただければ幸いです。
| <選考委員> | ★選考委員長 |
|---|
| 小河 光治 ★ | 公益財団法人 あすのば 代表理事 |
| 阿部 真紀 | 認定特定非営利活動法人 エンパワメントかながわ 理事長 |
| 実吉 威 | 公益財団法人 ひょうごコミュニティ財団 代表理事 |
| 立岡 学 | 特定非営利活動法人 ワンファミリー仙台 理事長 |
| 東郷 琴子 | パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 企業市民活動推進部 ソーシャルアクション推進課 課長 |