平成29年春 紫綬褒章を受章
2017年5月15日、「平成29年春の褒章」でパナソニックから1名が紫綬褒章を受章しました。
紫綬褒章は、科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術分野における優れた業績を挙げた個人に授与されます。
今回の受章者と業績は以下のとおりです。

『柔軟性を有する結晶性グラファイトシートの開発』
受章者
西木 直巳/生産技術本部 生産技術研究所 材料技術開発部 主幹技師
開発の背景
スマートフォンやタブレットパソコン等のモバイル機器は、高機能化、軽量・小形・薄型化、通信速度の高速化に伴い、機器内部で発生する熱が、機能維持の障害として大きな課題となっていました。その対策として、従来は、銅等の金属箔が熱拡散材として用いられていましたが、熱伝導率、重さ、加工性等の要求を満足する材料がありませんでした。

開発技術の概要
特定の高分子フィルムが熱処理条件により溶けたり・縮んだり・燃えたりすることなく、結晶性のグラファイトシートになることを見出し、さらに結晶性を保ったまま柔軟性を付与する工法の開発に成功しました。
今回受章した技術のポイントは下記になります。
- ポリイミドフィルムを3000℃で熱処理し再結晶させることで、結晶性を保ったまま、グラファイトシートに変換できることを見出したこと
- 上記に加え、結晶性を保ったまま柔軟性を付与する工法を世界で初めて開発すると共に、量産化技術も確立したこと
- さらに、機器内部の高温部の熱を低温部に移動させて平均化し、ピーク温度を抑える方法、すなわち、熱拡散による熱対策を提案したこと
開発技術の成果
本技術開発の成果である結晶性グラファイトシートは、モバイル機器に不可欠な熱拡散材として、高機能化、高性能化に寄与し、情報化社会の進展に貢献しています。

スマートフォンでの熱対策効果
受章者コメント

西木 直巳
栄誉ある褒章をいただき、ご関係の皆様に感謝申し上げます。ありがとうございます。入社まもなくグラファイト開発に関わり、定年退職まで、何度も開発中断になりかけながらも、多くの方々に支えていただき、この道一筋で続けることができました。皆様に出会えた幸運にも感謝しております。研究開発には時間がかかりますが、先頭にいることが重要です。我が国の優位技術が世界を牽引し続けることを願っております。