平成30年春 紫綬褒章を受章

2018年5月15日、「平成30年春の褒章」でパナソニックから1名が紫綬褒章を受章しました。

紫綬褒章は、科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術分野における優れた業績を挙げた個人に授与されます。

今回の受章者と業績は以下のとおりです。

写真:金馬 慶明/要素技術開発センター ストレージ開発室 特任技監

『光ディスクピックアップにおけるDVD/CD互換共用レンズ方式の開発』

受章者

金馬 慶明/要素技術開発センター ストレージ開発室 特任技監

開発の背景

DVDは映画配布や動画記録を担う大容量の光ディスクですが、DVDの記録や再生を行う装置には、既に普及していたCDソフトも再生できる両用の光ピックアップが求められていました。しかしながら、DVDは大容量を実現するためにCDとはディスク基材厚と対物レンズの開口数という基本的な光学仕様を異なるものとする必要がありました。そのため、DVDとCDの両方を単一のレンズで記録や再生することが難しく、当時は両用の光ピックアップを小型軽量、低コスト、高信頼性をもって実現する技術がありませんでした。DVD/CD互換には、装置に2つのレンズを搭載して、これらを切替えて使用する必要があり、装置の大型化、部品数増大という問題がありました。

世界初のDVD/CD共用レンズの写真

開発技術の概要

単一の基材厚に単一の開口数で光スポットをつくるという対物レンズの従来概念を覆して、DVDとCDの両方に対応できる共用レンズを初めて考案しました。これによってCD記録/再生が可能なDVD装置を、簡素で小型、高性能で安価、高い信頼性で実現できることを明らかにしました。
今回受章した技術のポイントは下記になります。

  • 対物レンズの中心に近い内周部はDVDとCDの両方に使うとともに回折構造を用いて異なるディスク基材厚に対応し、さらに外周部はDVDのみに用いることで、異なる開口数に対応する新規な共用レンズ方式の対物レンズを発案しました。
  • 発案した本方式によるDVD/CD互換共用レンズと、この共用レンズを搭載した光ピックアップを世界で初めて開発、製品化に成功しました。
DVD/CD互換の方式図

開発技術の成果

本技術開発の成果であるDVD/CD互換共用レンズ方式は、音楽・映像用やPC用といった多様なDVD製品への展開に加え、さらに大容量のブルーレイディスク装置にも利用され、音楽・映像文化の発展、生活の利便性向上、情報化社会の進展に貢献しています。

受章者コメント

写真:金馬 慶明

金馬 慶明

このたび、受章の対象となった技術はDVDの高密度化と既存メディアCDの互換性を両立する技術です。DVDにとどまらずブルーレイディスクでもCDの互換は維持されており今現在も広く使われています。
我々光ディスク開発者は、CD、DVD、ブルーレイディスクという進化の中で最新の装置でも過去の媒体を再生できることを守ってきました。このような製品開発の取り組みも、規格作りも、日本の研究者、技術者が中心になって推進してきました。光ディスクは日本の技術といえます。このたび、紫綬褒章と言う形で、光ディスク技術が認められとても嬉しく思います。
DVD、ブルーレイディスクの装置はAV用PC用ともに大きな事業となりましたが、光ディスクの用途はこれら民生製品にとどまりません。増え続けるデータを低消費電力・低コストで長期間安全に保存する業務用アーカイブ媒体として光ディスクは最適で、これからますます必要性が高まることが予想されます。光ディスクのさらなる大容量化の開発を進め、文字通りデータの受け皿としてお役に立っていきたいと考えております。