『ソウゾウするちから~現役アスリートから学ぶ教育の重要性~』イベントレポート

『ソウゾウするちから~現役アスリートから学ぶ教育の重要性~』イベントレポート

2021年8月1日(日曜日)、パナソニックセンター東京が、中高生を対象に、「スポーツとSTEAM教育」をテーマにしたオンラインイベントを開催しました。当イベントは、昨年5月に開催されたオンラインイベントの第2弾で前回に引き続き、東京2020オリンピック競技大会、競泳女子800m自由形・1500m自由形の金メダリストで、当社ブランドアンバサダーでもあるケイティ・レデッキーさんにご参加いただきました。昨年のワークショップに参加した子供たちが、これまでの学びや自身の考えについてケイティさんと英語でコミュニケーションを実施すると共に、今回のワークショップでは特別ゲストとして、元競泳選手で、北京2008オリンピック競技大会およびロンドン2012オリンピック競技大会に出場された伊藤華英さんにもご参加いただきました。
イベントの開始時には、東京2020オリンピックで金メダルを獲得したばかりのケイティさんを参加者全員で祝福し、とても和やかな雰囲気でイベントが始まりました。

※STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)を統合的に学習する「STEM教育」に、Art(芸術)を加えて提唱された「STEAM教育」の略称です。

【セッション1:伊藤華英さんからケイティさんへの質問】

写真:イベントの様子

初めに、元競泳選手の伊藤華英さんが、新型コロナウイルス感染症拡大によるオリンピックの延期、そしてスポーツとSTEAM教育について、ケイティさんに英語で質問をしてくださいました。

伊藤さん:昨年のイベントでケイティさんは、「来年日本でオリンピックに出場できることを願っている」とおっしゃっていましたが、実際に1年延期されたオリンピックに参加して、今どのように感じていますか?

ケイティさん:本当に素晴らしい経験ができて嬉しいです。東京に来ることができてよかったと感じています。オリンピックが1年延期となり、トレーニングは大変でしたが、最高のステージの中で競技をすることができたと思います。

伊藤さん:この1年間、ケイティさんを含め多くのアスリートが一時期十分に練習をすることができなかったと考えます。このような困難な状況を乗り越えて、ケイティさんが今回のオリンピックで結果を出すことができたのはなぜだと思いますか?

ケイティさん:トレーニング施設が数ヶ月間閉鎖され、以前とは全く異なる環境になりました。しかし、その限られた環境の中でも、自分たちで創意工夫して、できるだけ従来のトレーニング環境に近い形にして、できることはすべてやる必要がありました。この点に関して、私は十分にできたと感じています。多くの選手がそれぞれの形でできることに取り組んできました。その結果、私もオリンピックで良い試合ができ、良い結果を残すことができたのだと思います。

伊藤さん:昨年もSTEAM教育のイベントに参加してくださいましたが、ケイティさんはなぜ教育、特にSTEAM教育が大切だと考えていますか?

ケイティさん:教育は人生という建物を建てる上で非常に重要なものだと考えます。特にSTEAMは今求められている領域で、それは、多くの仕事がこれらのスキルを必要としているからです。テクノロジーとスポーツは大きく関係があります。水泳であれば、泳ぎ方や水の動きを理解したり、ビデオ判定をしたり、また、0.1秒、0.01秒の差で優位に立つには数学や統計も必要になります。金メダルを獲得するには、テクニックやトレーニングに加えてテクノロジーや統計などあらゆることが関係しています。

【セッション2:学生たちによる発表】

写真:ワークショップに参加の学生たち

続いてのセッションでは、昨年のワークショップに参加してケイティさんからメッセージを受け取った学生たちが、その後どのようなことに取り組んできたのか、今どのようなことを感じているのか、英語で発表をしてくれました。

最初に発表をしてくれた学生は、「ケイティさんは教育に興味をお持ちで、大学にも通っていたと聞きました。世界に通用するアスリートであり、非常に多くの練習をしなければならない中、勉強もするのはとても難しいことではないでしょうか。私はダンスを習っていて、教育にも興味を持っています」と述べました。そしてケイティさんは、「ダンスに取り組み、勉強も両立させることは素晴らしいことです。バランスを取るのは難しいけれど、これからもどちらも頑張ってください」と笑顔でエールを送ってくれました。

また、学校の新聞部に所属する高校生は、自身の高校および新聞部が取り組むSTEAM教育について発表してくれました。「高校では今年から一人ひとりの生徒がタブレットを使用し、学校にプロジェクターも導入されました。新聞部では、新型コロナウイルス感染症の拡大により、対面のインタビューを実施することができなくなりましたが、代わりに、テクノロジーを利用することで海外を含め遠くに離れている人にもインタビューをすることができるようになりました。」この発表に対しケイティさんは、「対面で人に会えない中でも、誰かと協働することは素晴らしいです。そして、人々をつなげるために非常に良い形でテクノロジーを利用していますね。また、私自身もこの1年間難しい状況の中でもテクノロジーを使ってパナソニックと共に頑張ってきました。実際に会うことができなくてもあらゆるプラットフォームを通じて、このような形で皆さんとお会いできるのは嬉しいです」とコメントしました。

そして、別の高校生は、「昨年のイベントに参加して、ケイティさんがSTEAM教育に貢献をされていることを知り感銘を受けました。また、テレビを通じてケイティさんのオリンピックでの活躍を拝見しました。スポーツには多くの人を勇気づけるパワーがあると思います」と述べました。そしてケイティさんは、「スポーツには人を元気にさせる力があるのは本当にその通りだと思います。オリンピックは色々な競技がありますので、まだこれからもたくさんのアスリートを応援してください。私自身は、自分の競技が終わったため、すぐにアメリカに帰国しなければなりませんが、改めて東京で私たちを迎え入れてくれたことに感謝しています」と述べました。

【セッション3:学生たちからケイティさんへの質問】

写真:質問に答えるケイティさん

最後のセッションでは、参加してくれた学生たちが、ケイティさんに英語で質問をしました。大勢を前にして英語で質問をするのはとても勇気のいることですが、学生たちは一生懸命取り組んでいました。

学生:オリンピックが1年延期されるというのは、精神的にも肉体的にも厳しいと思います。どのようにモチベーションを維持しましたか?

ケイティさん:選手は4年のサイクルでオリンピックに向けて準備をしているので、それが1年延期となり、トレーニングやあらゆる計画を調整する必要がありました。精神的にも肉体的にも消耗しましたが、その中で、うまく適応し、私を含むすべてのアスリートが一生懸命練習し、ベストを尽くせるように努力してきました。今回のオリンピックはこういった努力をみせることができたという点でも特別です。

学生:金メダルを獲得するというのは、ケイティさんにとってどのような意味がありますか?

ケイティさん:金メダルは私にとって非常に意味のあるもので、努力の証だと思っています。これは、自分1人ではなく、支えてくれた家族、友人、コーチ、チームメイト、このステージに来るまで支えてくれたすべての人の努力です。ですが、オリンピックでメダルが貰える、貰えないに関係なく、私はオリンピックを楽しむことができたと思います。自分が情熱を持ち、とにかくその過程を楽しみながら取り組むことが大切ですね。

学生:ケイティさんは今回のオリンピックでの競技を終えて、「人生には勝利よりも大切なものがある」と仰っていましたが、これは具体的にどのような意味ですか?

ケイティさん:勝つことだけが目標ではなく、その結果とその結果に至るまでの努力に満足することが大切であると私は考えています。最後の舞台に立つ上で、私は毎日の厳しい練習を楽しんで取り組むようにしています。レースが始まる時に、今まで自分がやれることはすべてやったと自分でわかっていると、勝っても負けても喜びは同じであると私は考えます。

そしてイベントの最後に、ケイティさんが学生に対して、「皆さんがこれまで学んできたことについて、昨年に引き続き今年も意見交換ができてとても嬉しかったです。またこのような機会があることを願っています。自分が取り組んでいることを楽しみながらこれからも頑張ってください」と笑顔でメッセージを送ってくださり、イベントが終了しました。

イベント終了後の参加者アンケートでは、「ケイティさんの謙虚な人柄や、教育に対する強い想いが印象的だった」、「質疑応答を通じて自分の世界が広がった様に感じる」などのコメントが寄せられた。現役オリンピアンとの活発な触れ合いを通じて、参加してくれた学生たちにとって多くの学びや刺激を得るきっかけになったと思います。