サーキュラーエコノミー型事業の創出

資源の有効活用と顧客価値の最大化を実現するため、サーキュラーエコノミー型事業の創出に取り組んでいます。まずその1つの事業モデルであるシェアリングサービスとして、2019年5月から2022年3月までTsunashima SST※1内の3カ所と日吉駅に駐輪場を設置し、タウン内の住人や商業施設の従業員、近隣住人などを対象に30台の新たに開発した省電力のスマートロックを搭載したIoT電動アシスト自転車を提供し、IoT電動アシスト自転車の稼働検証を実施いたしました。この実証実験を通して、自転車に対するニーズの把握、走行範囲、距離などのデータ蓄積・解析により、最適な自転車運行管理システムの検証を進めています。また、プライムライフテクノロジーズグループのトヨタホーム(株)様が開発・販売をしている愛知県みよし市の大規模戸建分譲地「TENKUU no MORIZONO MIYOSHI MIRAITO(てんくうのもりぞのみよしみらいと)」のシェアサイクルステーションに、IoT電動アシスト自転車を納入しました※2。当社グループ製IoT電動アシスト自転車の最初の納入事例で、今後も順次、販売、普及させていく予定です。さらに、2022年1月から2年間の予定で、集合住宅における居住者向けIoT電動アシスト自転車シェアリングサービスの実証実験を実施します※3。昨今、近距離移動における高い利便性、快適性から電動アシスト自転車へのニーズが増加傾向にありますが、駐輪スペースに限りがある集合住宅の居住者や、自転車を使用する頻度が限られている人にとっては、個人で電動アシスト自転車を所有することが難しいケースがあります。そこで、集合住宅の居住者に限定したIoT電動アシスト自転車のシェアリングサービスの実証実験を実施することにより、クローズドなシェアリングサービスの受容性および運用面での課題の検証を行います。具体的には、当社グループが提供する賃貸物件「noiful base駒込」※4に設置したIoT電動アシスト自転車3台を6戸でシェアします。居住者は、電動アシスト自転車を利用する際に専用アプリを用いて予約、解錠を行います。また、物件管理者は、専用管理画面でIoT電動アシスト自転車の利用状況をモニタリングし、バッテリー残量が少なくなった場合、充電ロッカーから満充電されたバッテリーを取り出し、交換します。今後は、最寄駅から遠い物件における物件価値向上の可能性や充電ロッカーで充電しているバッテリーを停電時の非常用電源として使用することなどの検証も検討します。今回の実証実験で得た結果を基に、利便性の高い新たなモビリティサービスの開発を目指します。

IoT電動アシスト自転車

モノのサービス化のモデルとして、冷凍冷蔵ショーケースの冷やす価値提供サービスとリファービッシュスキームを実施しています。冷やす価値提供サービスとは、スーパーやコンビニなどの食品小売業の方々にショーケースを販売するのではなく、月額利用料で“食品を冷やす”という価値自体を提供するものです。リファービッシュスキームは、チェーン店で使用されたショーケースを検査・修繕し別の店舗で再活用するというものです。これらのサービスを導入することにより、メンテナンスコストやエネルギーコストを含むトータルライフサイクルコストを抑えるとともに、限られた投資予算の中でより多くの店舗改装や老朽化設備の入れ替えが可能となり、効率的な事業経営を支援します。

また、別の冷やす価値提供モデルとして、医薬品の安心・安全輸送を実現する保冷ボックス「VIXELL®」のレンタルサービスを開始しました※5。医薬品輸送の現場においては、厳格な温度管理や追跡管理、作業効率性などが求められています。2021年度はコロナウィルスまん延防止のため数多くの団体で職域接種が実施されました。ワクチンの輸送や保管には医薬品と同様に厳格な温度管理(例えば2℃~8℃)が求められるため、家庭用冷蔵庫ではワクチンの保管が困難です※6。そのため、職域接種ではワクチンを保管するために医薬品保管用の冷蔵庫を購入されるケースが一般的ですが、職域接種という限られた期間のために冷蔵庫を購入し期間が終わったら廃棄するという行為は持続可能な社会を構築する面では適切ではありません。そこで当社グループはVIXELLをワクチンの一時保管庫としてレンタル提供し、使用後は当社グループでリファービッシュのうえ他のレンタル先へ貸し出す取り組みを実践することで、持続可能な生産のパターンの確保に挑戦しています。またこの取り組みは保冷に必要な保冷剤の凍結は職場の事務所などに設置されている冷蔵庫が活用できるため、お客様にとっても持続可能な消費に貢献することができます。さらに凍結未然防止機能付き保冷ボックス「VIXELL Anti Freeze」は輸送中の凍結リスクを判定することができます。判定結果はクラウドサーバーに保存され、保冷ボックスの検査日時や稼働状態をウェブ上で確認できるため、保冷ボックスの効率的な運用にもつながります。

VIXELLと検査アプリケーション
VIXELL職域接種

また、モノのサービス化の別モデルとして、照明器具の所有ではなく照明機能の提供を行う「あかりEサポート※7」を実施しています。「月額料金」でお客様ご指定のLEDの照明機能を修理対応等のサービス付きでご利用できる「あかりの機能提供型のサービス」です。LEDの照明機能の長期利用料、性能維持のための修理対応、動産総合保険、省エネ効果の認証などのサービスが含まれており、メンテナンスコストやエネルギーコストを抑えることが可能となります。
当社グループのノートパソコンのカスタマイズメニュー「バッテリーライフサイクルNAVI※8」では、製品価値を長寿命化できます。本サービスは、バッテリー満充電容量の低下を自動で検知し、基準値を下回ったタイミングでパソコン画面上にお知らせを送り、その後に交換をお申し込みいただくだけで、新しいバッテリーをお送りするものです。長年使用して短くなった駆動時間も購入時と同等のパフォーマンスを取り戻すことができます。

また、当社グループの「エアコンクリーニングサービス※9」では、サービス対象のエアコンにおいてクリーニングが必要となる目安のタイミングでの無料通知とクリーニング申し込み専用WEBサイトの新設による利便性の向上を11月上旬に行いました。従来、お客様がクリーニングのタイミングを判断されていましたが、本サービスにより、お客様にとってクリーニング実施の判断がしやすくなります。通知は、ネットに接続されていないエアコンは購入からの経過年数を元に、ネットに接続されたIoT対応エアコンは購入からの経過年数と運転稼働時間等を元に行います。また、クリーニング(有料)の申し込み専用のWEBサイトを新設し申し込みがしやすくなり利便性が向上します。室内機の分解洗浄および点検は、これまで同様、専門技術員が出張して行います。室内機は、ルーバー、ファン、フィルター等の部品に分解し手洗い洗浄、熱交換機は高圧水で洗浄し、エアコンを長く安心して使用いただけるようサポートします。

エアコンクリーニングサービス

また、メンテナンスサービスとして、ヒートポンプ式温水給湯暖房機「Aquarea(アクエリア)」のクラウド活用遠隔監視サービスを欧州で提供しています。運転状況を常時把握し、即座に異常を検知することが可能です。デンマークでは機器の状況に応じて速やかに点検・修理するサービス体制も構築しており、今後、欧州他国にも拡大予定です。当社グループは製品にIoTを活用することで、製品のより安心・安全・快適で長期間にわたる使用を実現し、長寿命化に貢献します。

次に、サーキュラーエコノミーの考え方をベースとした以下のような取り組みを進めています。
その1つは、建築におけるリノベーションです。かつて当社グループがショウルーム等として20年近く利用してきたビルをパートナー企業と共にリノベーションし、コワーキングスペース、スタジオ、ラウンジ、カフェなどを有する複合施設であるTENNOZ Rim※10へと生まれ変わらせました。既存の建物を有効活用し、新築の時以上の性能になる工事であるリノベーションはリマニュファクチュアリングの1つと考えています。

TENNOZ Rim内のコワーキングスペース

また、TENNOZ Rim内のカフェにて、利用者が定額プランに加入し、高濃度セルロースファイバー成形材料のリユースカップを持参すると、ドリンク1杯もしくはフード1品を提供される飲食サブスクリプションモデルの実証実験※11を実施し、使い捨てプラスチック容器削減に貢献しました。本実証実験を通して、文化・アートの発信基地として近年注目を集める天王洲エリア全体の新たな賑わいづくりと使い捨てプラスチック容器削減に貢献すると共に、環境に優しい容器の普及活動によるサーキュラーエコノミーの貢献を目指していきます。

リバリュープロジェクト

また、工場排出物をクリエイティブなデザインにより全く別のプロダクトとして新たな価値を創出するリバリュープロジェクトを進めています。今まで、アイロン、炊飯器、システムキッチンの製造過程で生じた工場排出物をもとに、パートナーと共創でブックエンド、照明、テーブルなどを製作しました。本プロジェクトの活動が認められ、2020年度グッドデザイン賞(ビジネスモデル分野)を受賞しました。さらに、製造工程で排出される工場端材を「データ活用」「二次利用エコシステム」「クリエイターとの協業」という3つのアプローチによって、事業性のある端材としての活用を推進するプロジェクトを開始しました。キッチンカウンターなどで使用する「人造大理石」の工場端材はこのプロジェクトの中でさらなるプロダクトに発展しています。今後も、共創拡大による新たな価値創造にチャレンジしていきます。

また、別のサブスクリプションモデルとして2022年1月より開始した賃貸住宅向けサブスクリプションサービス「noiful(ノイフル)」は、あらかじめ賃貸住宅に先進家電を備え付け、家電の使い方サポートや、もしもの時の修理交換、入退去時の家電クリーニングなどをパッケージで提供するサービスです。※12国内の不動産市場においては、人口減少などによりストック住宅(既存流通住宅)が増加傾向にあり、建物の老朽化や空き家・空室の増加など大きな社会課題となっています。noifulでは入居者に対して、「持たない豊かな住まい方」を提供することで住み替えを手軽にし、賃貸市場の活性化を図るとともに、物件オーナーや管理会社には競合物件との差別化による物件価値の向上をサポートすることで、空き家・空室の増加といった社会課題の解決に貢献しています。また、noifulはリカーリング型の安定・高収益事業となっており、物件オーナーや管理会社、入居者へ新たな価値を提供する「三方良し」のビジネスモデルとなっています。リユースによる退去時の家電廃棄といった環境負荷も低減し、家電の新たな循環スキームを構築することで持続可能なくらし・社会の実現に貢献しています。

家電サブスクリプションサービス「noiful」

さらに、別のサブスクリプションモデルとして、2022年4月より、業務用小型ロボット掃除機 RULO Bizを使った月額定額制の清掃プラットフォームサービスを開始しています※13。RULO Bizは業界最小クラスのクラウド型業務用ロボット掃除機で、オフィスビルの専有部や店舗、飲食店など障害物の多い狭小空間の清掃に適しており、集塵作業の省人化・自動化をサポートします。また、当社独自のレーザーSLAM技術による清掃マップの自動作成やクラウド管理によるマップの一元管理・清掃結果の見える化により、清掃品質の向上を図ります。RULO Bizの導入により、利用者は人員不足の解消や清掃コストの削減、月額定額制による初期費用の抑制が可能となります。RULO Biz本体とシステム利用料に加え、年1回の定期点検・メンテナンス、故障時の代替機支給などが本サービスの月額料に含まれるため、毎日の清掃予定に穴をあけることなく安心してお使いいただけます。

RULO

また、当社グループは、環境省が2022年1月に公募を行った「サブスクリプションを活用したエアコン普及促進モデル事業」(以下、本モデル事業)において、本モデル事業の趣旨に賛同し応募申請を行い採択されました※14。熱中症による全国の死亡者は、65歳以上の高齢者が約8割を占め、大きな社会問題となっています。特に2021年の東京23区での死亡者は、65歳以上の高齢者が8割を超し、そのほとんどが屋内で死亡されており、亡くなられた方の約9割がエアコン未使用でした。エアコン未使用のケースでは、エアコンが設置されていないご家庭が2割ほどありました。熱中症予防のためにはエアコンの設置及び適切な利用の促進が重要である一方で、エアコン設置等の初期費用が課題の一つとなっています。このような大きな社会問題である熱中症予防の解決に貢献すべく、高齢者世帯・子育て世帯に向けた「サブスクリプション型サービス」を活用した本モデル事業を実施する為、熱中症予防の一層の推進と二酸化炭素削減に関する「包括連携協定」を埼玉県熊谷市・栃木県鹿沼市・工事事業会社と締結しました。当社グループがもつ販売スキームやサポート体制と地方公共団体(埼玉県熊谷市・栃木県鹿沼市)がもつ安心感・フィールド力など、行政と民間のそれぞれの強みを活かした「官民連携」による新たな価値を創造することができました。今後も環境省が提唱する熱中症予防方策の検討に資する統計データ等を収集し、事業の有効性を検証していきます。確実なリサイクル促進によるサーキュラーエコノミー進展に向けて貢献します。

さらに、紙パッケージを採用することで、環境負荷の低減と使いやすさを両立し、エシカル消費(環境課題の解決を考慮した消費行動)を促進しています。※15、16第一弾として、2021年10月に「乾電池エボルタNEO」の一部モデルにエシカルパッケージを採用。2023年4月からは、「乾電池エボルタNEO」のモデル数を拡大するとともに、「乾電池エボルタ」にも展開を図っています。加えて、くり返し使用回数を低下させることなく容量アップを実現することで、1回の充電でより長時間お使いいただける充電式ニッケル水素電池「エネループ」の新製品を発売しており、この「エネループ」にもエシカルパッケージを採用しています。近年、地球温暖化に伴う気候変動、深刻化しているプラスチックごみ廃棄の問題等から環境に配慮した包装の需要が高まっています。当社グループの調査によると約9割の方が普段の日常生活の中で無駄なプラスチックごみや過剰包装があると感じており、約8割の方が商品購入の際には環境に配慮したパッケージを重視していることがわかりました。本製品は紙主体のエシカルパッケージを採用することで従来のブリスターパッケージに比べて包装材使用を約38~70%削減しました。ラインアップを拡大することで、年間で約5.7トンのプラスチックと約21.5トンの紙、合計約27トンの包装材削減を実現します。また、シュリンクフィルム(乾電池を包むプラスチックのフィルム)を使用しないことで開封時の手間も軽減します。パッケージはすぐに使わない電池の保管袋としても使え、廃棄する際にも紙(可燃物)として分類することが可能です。当社グループは包装材の使用量を削減することにより環境負荷を減らすとともに、開封から廃棄までの手間を軽減する使いやすいパッケージで、環境に配慮したくらしをサポートします。

充電池の紙パッケージ

また、パナソニックグループは、パートナーであるローソンと共同で省エネ・CO2削減、資源の有効活用に取り組んでいます。2020年7月に南京でオープンした店舗では、プレハブ工法や資材の再利用により建設廃棄を大幅に削減し瀋陽や天津でも同様の店舗を展開しています。瀋陽や武漢では要冷機器等の店舗設備を搭載し移動しながらの販売を行う移動販売車も導入し、より流動性の高い出店を実現しています。また、重慶や上海をはじめ各地域で古くなった店舗設備をリファービッシュし再利用するサービスを展開しており、設備廃棄の削減も行っています。さらに、2021年4月に上海、7月には大連で環境配慮モデル店舗をオープンし、省エネ・省CO2最新設備を導入した次世代型店舗を構築したほか、EMS(エネルギーマネジメントシステム)を通じ要冷機器や空調等の電力見える化、省エネ制御を行うことで、店舗全体の省エネ・CO2削減に取り組んでいます。これらのソリューションは、2022年に上海で開催された中国国際輸入博覧会でも高い評価をいただきました。

ローソンのプレハブ店舗

以上のように、当社グループはサーキュラーエコノミー型事業の創出に向け、様々な取り組みを開始しています。2019年度に開発した分析手法に沿って完成させた既存事業と循環経済の関連性マッピングを踏まえ、既存事業のサーキュラーエコノミー型事業への転換を進め、本年度は既存の6事業から4事業追加し、10事業を立ち上げました。今後、さらにサーキュラーエコノミー型事業の創出を拡大していきます。

1

冷凍冷蔵ショーケースのサブスク事業

2

医療向けクーラーボックスのサブスク事業

3

あかりEサポート事業

4

PCサブスク事業での電池管理事業

5

所有建物の有効活用

6

セルロース混合樹脂の事業展開

7

ローソン様とのリファービッシュ事業

8

家電サブスク事業(noiful)

9

工場廃材の部材への活用

10

乾電池の紙パッケージ採用

※1 2018年3月に神奈川県横浜市にグランドオープンした次世代都市型スマートタウン。パナソニックをはじめとする異業種12団体で構成された「Tsunashima SSTまちづくり運営協議会」により運営され、先進的な環境配慮の取り組みに加え、街に関わる事業者や住民、自治体との協業による新たなサービス創出を目指しています。(https://tsunashimasst.com/JP/
※2 https://news.panasonic.com/jp/press/data/2020/10/jn201014-3/jn201014-3.html 参照
※3 https://news.panasonic.com/jp/topics/204533.html 参照
※4 くらしアプライアンス社が提供する、家電と調和する空間リノベーションにより物件の資産価値向上と安定運用をサポートするリノベーション・物件マネジメントサービス「noiful LIFE」の第一号物件。所在地:東京都北区中里二丁目21番15
※5 https://www.panasonic.com/jp/business/vixell.html 参照
※6 家庭用冷凍冷蔵庫における冷蔵室の要求特性は、霜取り期間中を含め0℃以上10℃以下です。(JIS C9801参照)
※7 https://www2.panasonic.biz/ls/lease/lighting-e-support/ 参照
※8 https://panasonic.biz/cns/pc/letsnote/and_connect/battery.html 参照
※9 https://news.panasonic.com/jp/press/data/2021/09/jn210921-5/jn210921-5.html 参照
※10 https://www.tennoz-rim.tokyo/ 参照
※11 https://news.panasonic.com/jp/press/data/2020/09/jn200910-1/jn200910-1.html 参照
※12 https://news.panasonic.com/jp/press/data/2022/01/jn220119-1/jn220119-1.html 参照
※13 https://news.panasonic.com/jp/press/data/2022/03/jn220322-2/jn220322-2.html 参照
※14 https://news.panasonic.com/jp/press/jn220425-1 参照
※15 https://panasonic.jp/topics/2023/03/000000746.html 参照
※16 https://news.panasonic.com/jp/press/jn230330-1 参照