「組織カルチャー変⾰」は、「未来を創る多様な変⾰型リーダーの開発‧登⽤」「HRモダナイゼーション」と並ぶ、パナソニックグループにおける⼈的資本経営の重点取り組みの⼀つです。その推進に向け、「組織デザイン:6つの原則」に基づき、組織カルチャーを戦略的にデザインしています。
変⾰に向けたアプローチ
組織カルチャーは、⾃然に形成されるのを待つのではなく、事業の成果を最⼤化するために意図的にデザインすることが重要です。どれほど優れた戦略があっても、実⾏するのは⼈。その戦略実⾏の成果は、⼀⼈ひとりの⾏動や組織のあり⽅に⼤きく左右されます。しかし、社員が⾃⾝のポテンシャルを「UNLOCK」できなければ、挑戦や成⻑にはつながりません。また、⾏動変容を促すカルチャーが戦略と噛み合わなければ、組織全体の⼒を⼗分に発揮することはできません。そこで、私たちは「組織デザイン:6つの原則」を策定しました。
「組織デザイン:6つの原則」とは?
「組織デザイン:6つの原則」は、どれか⼀つの原則を強化すれば変⾰が実現するわけではなく、それぞれが互いに連動し、整合してこそ機能し、組織全体の成⻑を⽀えます。例えば、「採⽤‧トレーニング‧リーダーの選抜」においては、多様な変⾰型リーダーを育成し、⼤胆に登⽤することを重視。そのリーダーがメンバーの挑戦を⽀援し、熱狂的にフローで働ける環境を提供できるよう、「仕事デザイン」を⾏う。成果に対しては、「評価‧報酬」の原則に基づき、メリハリをつけて適切に報いる。さらに、「情報共有‧学びのプロセス」では内向き志向から脱却し、好奇⼼に⽕をつける。こうした要素が結びつくことで、⼈と組織がともに成⻑し、事業の成果にもつながる姿を⽬指しています。
- 評価‧報酬(⾮⾦銭的報酬を含む):「ぬるま湯」から脱却し、⼀⼈ひとりの成果と⾏動に必ず報いる
- 意思決定:完璧を求めず、スピード重視で決める
- 情報共有‧学びのプロセス:内向き志向から脱却し、好奇⼼に⽕をつける
- 採⽤‧トレーニング‧リーダーの選抜:変⾰型リーダーを育成し、⼤胆に登⽤する
- 仕事デザイン:熱狂的に、フローで働ける環境をつくる
- 組織構造‧配置:縦割りを排し、シンプルな組織を構築する
※上記は、あくまでグループ全社の「原則」です。6つの視点別のアクションは、各組織の状況に合わせて、⾃由に定義することができます。
「組織デザイン:6つの原則」に宿る、創業者の哲学
〜「意思決定」と「評価‧報酬」に対する考え⽅〜
「組織デザイン:6つの原則」の核となっている考え⽅は、パナソニックグループにとって新しいものではなく、創業者‧松下幸之助が⼤切にしていた経営への想いを現在の組織環境に合わせて体系化したものです。創業者は著書「指導者の条件」(PHP研究所刊)の中で、組織を率いる者としてのあるべき姿を102カ条の⼼得として⽰しました。本コラムではその⼀部をご紹介します。
意思決定への考え⽅ 〜「決断する⼒」と「任せる⼒」〜
創業者は、「⼤事にあたって即断速攻できる⾒識と機敏な実⾏⼒は、指導者に不可⽋の要件」と述べ、指導者には迅速な意思決定が求められると説いています。「決断もせず、実⾏もせずといった姿で⽇々を過ごすことは許されない」の⾔葉の通り、判断を先送りすれば機会を逃し、競争⼒を失うことにつながります。
⼀⽅で、すべての意思決定を指導者⼀⼈で抱え込むのではなく、⼈に任せる⼒の重要性にも⾔及。「⼀⼈の⼈間の⼒というものはどうしても限りがある。その限りある⼒以上のことをしたり、させたりすれば往々にして失敗する。⼒に合った適正な範囲で事を⾏うのがいちばんよいのであって、そのことが⼒に余るようであれば、それを分割して何⼈かの⼒によって⾏わせることが望ましい。」と語っています。権限を適切に委譲することで、組織全体として意思決定のスピードを⾼めることができるのです。
パナソニックグループではこの考え⽅に⽴ち返り、スピードと柔軟性を備えた意思決定の⽂化をより⼀層根付かせていこうとしています。
評価‧報酬への考え⽅ 〜⼀⼈ひとりの挑戦と成果に報いる〜
創業者は、「功績あればこれを賞し、過ちあればこれを罰する。その信賞必罰が適切に⾏われてはじめて、集団の規律も保たれ、⼈々も励むようになる。」と述べ、公正な評価と報酬が組織の成⻑に不可⽋であることを説いています。
成果を正しく評価し、挑戦する姿勢に応えることで、社員の意欲を引き出し、さらなる挑戦につなげることができるのです。また、「⾃分の働きが⼈にみとめられないほど寂しいことはないと思う。ほめられればうれしくもあり、⾃信もつく。今度はもっと成果をあげてやろうという意欲もおこって、成⻑への励みともなる。もちろん、失敗や過ちに対しては、⼤いに叱ることは必要である。しかし、何かいいことをした時、成果をあげた時には、⼼からの賞賛とねぎらいを惜しまないことが、指導者としての⼀つの要諦であろう。」とも語っています。適切な評価とフィードバックは、社員のモチベーションを⾼め、次の成⻑を促す原動⼒となります。
パナソニックグループではこうした考え⽅を⼤切に、⼀⼈ひとりの挑戦と成果を正しく評価し、報いる⽂化の定着を⽬指しています。
「組織デザイン:6つの原則」活⽤事例
各部⾨の組織⻑は、⾃部⾨の事業環境や戦略、組織カルチャーに関する現状課題‧⽬指す姿を踏まえてこの「組織デザイン:6つの原則」を⾃由に定義し、アクションプランへと落とし込むことができます。本コラムでは、その活⽤事例をご紹介します。
モバイルソリューションズ事業部(パナソニック コネクト株式会社)
ノートPC事業などを⼿掛けるモバイルソリューションズ事業部では、「利益にこだわる経営」を⽬指し、事業の無駄を徹底的に取り除く「選択と集中」の改⾰を進めています。すべてをゼロベースで⾒直す中で、改⾰には痛みを伴うものの、改⾰で捻出した利益を新たな成⻑へ繋げる戦略をAll Hands Meeting(所属社員全員が参加する双⽅向ミーティング)やQ&A、1 on 1ミーティングなどの場を通じて全員の理解を得ながら推進しています。また、経営数値や主要会議の資料等の情報はできる限りオープンにし、組織もフラット化することで意思決定を迅速化。情報共有と双⽅向のコミュニケーションを活性化するために、「ちょっといいですか?」と気軽に声を掛け合える⽂化の醸成にも取り組んでいます。
⼈材戦略の⾯では、パナソニック コネクト独⾃の「新⼈材マネジメント」を実践し、メリハリある昇給や抜擢、事業部内外での⼈材流動化を促進することで、多様な知⾒を取り込んでいます。これらの取り組みにより、業績向上と社員エンゲージメントの向上を図り、さらなる発展を⽬指しています。
中国‧北東アジア社(パナソニック株式会社)
中国‧北東アジア社では、「中国のことは中国で決める」という⽅針のもと、社員4000⼈の意⾒も取り⼊れながら「組織デザイン:6つの原則」に基づいた組織デザインに取り組んでいます。意思決定の⾯では、「チャイナスピード、チャイナコスト、チャイナスタイル」の実践を重視。現場に近い意思決定体制を確⽴することで、市場や顧客の変化に迅速に対応できる組織を⽬指しています。また、現地社員のリーダー登用を積極的に進め、多様な⼈材が活躍できる環境を整備。さらに、他社や他拠点からの学びを推奨し、外部の知⾒を積極的に取り⼊れることで組織の成⻑を加速させています。
- 「組織カルチャー変⾰」「未来を創る変⾰型リーダーの開発‧登⽤」「HRモダナイゼーション」という3つの重点取り組みの推進状況や、人材と多様性・働き方、キャリアに関する基本情報については、データで見るパナソニックグループの人的資本経営をご確認ください。