エピソードシートのアレンジで生徒の思考を喚起

~“行き方”語録をクイズ化し導入で活用~

パワーアップ情報ファイルの実践校訪問では、「私の行き方発見プログラム」で提供している「教材」と「出前授業」をより効果的に活用するための各校での特色ある実践等を紹介しています。

今回は、4つのプログラムで構成されている「教材」の中から3つのプログラム(①会社の役割発見/②職業と能力の関係発見/③職場体験での仕事発見)を活用した川崎市立中原中学校(川崎市中原区)を訪問し、2学年担当の田中恵美子先生から、生徒の関心と学習意欲を喚起するための様々な工夫についてお話を伺いました。ポイントは以下の4つです。

川崎市立中原中学校での取り組みのポイント 【ポイント1】「役割カード1」と「役割カード2」を同時に学習(プログラム①) 【ポイント2】2つの「エピソードシート」を1枚のシートにアレンジ(プログラム②) 【ポイント3】職場体験先確定前でもできるグループごとの職場調べ(プログラム③) 【ポイント4】“行き方”語録クイズを導入で活用(各プログラム)
ポイント1

<プログラム①:会社の役割発見>

「役割カード1」と「役割カード2」を同時に学習

  • 「プログラム①:会社の役割発見」の主なねらいは、社会には多様な職業・職種があることに 気づき、
    それぞれの役割の人が連携しながら会社(組織)が成り立っていることを理解することです。
    中心となる学習活動は、「パナソニックで働く人々の役割」について、30種類の役割カ ードを
    工程等に応じて分類し台紙に配置するグループワークです。
  • 役割カードは、「モノづくりに直接関わる役割(役割カード1:18種類)と「会社全体をサポートする
    役割(役割カード2:12種類)で構成されており、ティーチャーズガイドで示した授業 展開例では、
    まず「役割カード1」について上記のグループワークを行った後、「役割カード2」 を取り上げる流れを
    基本としています。

<役割カード1のサンプル>

役割カード1 製造
役割カード1 販売

<役割カード2のサンプル>

役割カー2 人材開発
役割カー2 経理
  • 「中原中学校の場合は、「いろいろな仕事について最初から線引きしてしまうことは、生徒達の思 考を制約してしまうことになるのではないか」という考えから、「役割カード1」と「役割カー ド2」の区別をなくし、両方のカードを一緒にして考えさせる方法で学習を進めました。
  • グループによっては役割カード1と2の色の違いによって分類の仕方を推測するようなケース も見られたようですが、田中先生は「そもそも会社にどのような役割があるのかを知らない中 学生の段階では、一つの企業の中でも多様な仕事・役割があることを生徒なりにイメージでき ればよいので、個々の仕事・役割の内容まであまり深く入る必要はないのでは」と、授業の進 め方を工夫した意図について説明されました。限られた授業時間の中で、グループワークの活 性化と効率的な展開にもつながる参考事例ではないでしょうか。
ログラム①用ワークシート

「プログラム①:会社の役割発見」で行う「役割カード」を使ったグループワークの参考例。通常は上部の「役割カード1:パナソニックで働く人々の役割」と下部の「役割カード2:会社全体をサポートする役割」に分けてグループワークを行うが、中原中学校では最初からこれらを一緒にして生徒達に考えさせる方法で授業を進めた。

ポイント2

<プログラム②:職業と能力の関係発見>

2つの「エピソードシート」を1枚のシートにアレンジ

  • 「プログラム②:職業と能力の関係発見」の主なねらいは、会社(社会)でそれぞれの役割を担 うためにはどのような能力が必要なのかを考えることです。中心となる学習活動は、「家電製品 をつくる人々に必要な力」について、「設計」と「商品企画」の2つの職種を取り上げ、その仕 事に従事する社員の「エピソードシート」から、それぞれの役割に必要となる能力を読み取る グループワークです。
  • ティーチャーズガイドで示した授業展開例では、グループごとに担当する「エピソードシート」 を一つだけ選び、個人ワークとグループワークを通して、仕事と必要な能力の関係を考える学 習の流れを基本としています。
  • 具体的には、「商品企画」の回答編(教師用)のシートを左側に、「設計」のエピソードシート(生徒用)を右側に配置した1枚のワークシートにアレンジすることで、仕事に求められる能力 のイメージやエピソードシートを読み取るポイントなどを生徒達が把握する一助としています。 「中学2年生の段階では、考えられる元があってはじめてできることも多い」(田中先生)とい う経験から生み出された、実践的な工夫の一つです。
エピソードシート

「プログラム②:職業と能力の関係発見」で使ったエピソードシート。左側の「商品企画」の回答例を参考にしながら、右側の「設計」の仕事で必要となる能力を読み取るような構成にアレンジされている。

ポイント3

<プログラム③:職場体験での仕事発見>

職場体験先確定前でもできるグループごとの職場調べ

  • 「プログラム③:職場体験での仕事発見」の主なねらいは、会社には社会的な役割があること や、その社会的な役割を一人ひとりが果たすことの大切さを理解することで、職場体験の事前 学習としての位置づけとなります。中心となる学習活動は、自分の職場体験先の社会的な役割、 仕事内容、その仕事と能力との関係について考える個人ワークです。
  • ティーチャーズガイドの授業展開例は、基本的に各生徒の職場体験先が具体的に決まった後で の学習を想定していますが、中原中学校の場合は、このプログラムを実施した時点ではすべて の職場体験先が確定していなかったことから、例年の実績から想定したいくつかの職場体験先 をグループごとに割り当て、上記の項目について調べ、考え、共有するという方法で学習を進 めました。
  • 自分達が担当した職場体験先が実際に行く職場とは異なるケースも出てきますが、いろいろな 職場について調べたことを相互に学び合うことに意味があり、生徒達が進路選択を考える際の 視野が広がるといった効果も期待できます。
ポイント4

<各プログラム共通>

“行き方”語録をクイズにし授業の導入で活用

  • ティーチャーズガイド巻末の参考資料の一つに、パナソニックの創業者である松下幸之助の“行 き方”語録が収められています。中原中学校では、約15編ある“行き方”語録の中から特に生 徒達に伝えたいメッセージを選び、付属のICT活用教材のデータを利用してパワーポイントを 作成しています。
  • 具体的には、選び出した“行き方”語録のキーワードをブランクにし、クイズ形式で生徒達に 考えさせるような工夫を行っています。例えば、「プログラム②:職業と能力の関係発見」では、 以下のような手順で授業の導入を行いました。
語録 モノづくりに重要なことは何か?

「モノづくりに重要なことは何だろう? 松下幸之助さんの考えは?」と生徒に問いかけ

矢印
語録 モノづくりに重要なことは何か?

“行き方”語録のキーワードをブランクにし、
クイズ形式で考えさせる

矢印
語録 モノづくりに重要なことは何か?

正解は「できない」です

松下幸之助の”行き方”語録をパワーポイントにアレンジし、クイズ形式で「モノづくりに重要なことは何か?」を生徒達に考えさせた

川崎市立中原中学校では、普段から外部講師をはじめ学校外部の様々な教育資源を積極的に活用しており、そうした授業が生徒達への刺激になっているようです。「キャリア教育は職場体験に行ってそれで終わりではありません。こうしたプログラムを使ってくり返しいろいろな仕事を意識させることで、職場体験先だけではない他の職種につなげやすくなります」という田中先生の言葉が印象的でした。

今回紹介した中原中学校での教材活用の様々な工夫は、多くの学校でもすぐにでも取り入れ可能な実践的なヒントばかりです。それぞれの学校の状況や活用するプログラムの種類等に応じて参考にしていただければ幸いです。