事業活動におけるエネルギー・CO2削減

当社グループは、Panasonic GREEN IMPACT実現に向け2030年までに全事業会社で自社拠点におけるCO2排出の実質ゼロ化を社内外に発信※1しCO2ゼロの工場づくり※2を推進しています。
この中期は環境行動計画GREEN IMPACT PLAN 2024を策定し、OWN IMPACTのスコープ1,2について、CO2ゼロ工場の数を37工場へ拡大し、26万トンのCO2排出削減を目指しています。2021年9月に立ち上げた「CO2ゼロ工場推進タスクフォース」ではグループ全体で共通となる施策等の検討や提供によりCO2ゼロの工場づくりをさらに加速推進することを目指しており、省エネの取り組みを検討推進する省エネWG、自社拠点における再生可能エネルギーの利活用拡大を検討する再エネ利活用WG、再生可能エネルギーの調達を推進する再エネ調達WG、で構成されています。モノづくり、調達、環境等の関連職能が連携し、関連部門の参画を得ながら全事業会社の取り組みを支援します。今年度はグループ内向けに社内の優秀事例や省エネ、再エネの最新情報を提供するためのセミナーを開催しました。また海外でも地域別に勉強会を開催しています。
その他、当社グループは電機電子業界を挙げての温暖化防止の自主行動計画である経団連カーボンニュートラル行動計画に参画しています。業界が掲げる目標「2030年に向けて、工場と大規模オフィスのエネルギー原単位改善率 年平均1%」の達成を目指し、工場などにおける省エネを着実に進めています。

※1 パナソニックの方向性:「環境」と「事業でのお役立ち」でトップランナーに
※2 当社グループが取り組むCO2ゼロの工場づくりとは、従来から継続する省エネ活動(例えば照明のLED化)や、FEMS(Factory Energy Management System)などの先進的省エネ技術、生産性向上、革新的モノづくりなどを推進するとともに、太陽光発電システムや蓄エネルギー機器、水素燃料電池などにより再⽣可能エネルギーの利活用の推進、100%再生可能エネルギー由来の電力や環境価値の調達、などの取り組みを組み合わせることにより、事業活動におけるCO2排出を実質ゼロとする工場等をグローバルすべてで実現することです。当社グループは2030年までに全事業会社で自社拠点におけるCO2排出の実質ゼロ化を社内外に発信し本取り組みを進めています。

CO2ゼロ工場の拡大

当社グループでは2018年度にグループ初となるCO2ゼロ工場を実現して以降、2021年度までに5地域※39工場でCO2ゼロ工場を実現しました。以降は拡大フェーズに入り、2022年度は31工場、2023年度は日本:13、中国・北東アジア:16、東南アジア・大洋州・インド・南アジア・中東阿:6、北米・中南米:8、欧州・CIS:1の計44工場※4でCO2ゼロを達成、GIP2024の目標である「CO2ゼロ工場数 37工場」を上回りました。

2023年度の事例として、パナソニック エナジー(株)二色の浜工場では、環境と調和したモノづくりを目指して、太陽光パネルを屋上全面に設置する等、再生可能エネルギーを最大限活用し、稼働開始した2023年度からCO2排出実質ゼロを達成しています※5。太陽光発電(2MWクラス)の導入に際しては、工場内の変電所の大幅な改造工事を伴わない導入方法を新たに考案し、工事費の大幅な削減ならびに工期の大幅な短縮を実現しました※6。今後は純水素燃料電池や蓄電システムを導入し、工場全体のエネルギーマネジメントを図ることで、効率的でクリーンなモノづくりをさらに加速していきます。

パナソニック エナジー 二色の浜工場
太陽光発電システム

CO2ゼロ工場グローバルマップ 

CO2ゼロ工場グローバルマップ

※3 日本、中国・北東アジア、東南アジア・大洋州・インド・南アジア・中東阿、北米・中南米、欧州・CISの5地域
※4 ★現時点では44工場がCO2ゼロ工場を実現しています。
~2021年度:①パナソニック エコテクノロジーセンター(株)、②パナソニック エナジー無錫(有)、③パナソニックエナジー蘇州(有)、④パナソニック マニュファクチャリング 北京(有)、⑤パナソニック エナジータイ(株)、⑥⑦⑧パナソニック ブラジル(有)(サンジョセ、マナウス、エストレマの3工場)、⑨パナソニック セントロアメリカーナ(株)
2022年度:⑩パナソニックセンター東京、⑪パナソニック オートモーティブシステムズ(株)松本地区、⑫パナソニック オートモーティブシステムズ(株)敦賀地区、⑬パナソニック オートモーティブシステムズ(株)白河地区、⑭パナソニック オートモーティブシステムズ(株)横浜ビル、⑮パナソニック エナジー(株)洲本工場、⑯パナソニック エナジー東浦(株)、⑰パナソニック エナジー南淡(株)、⑱パナソニック エレクトロニックデバイス江門(有)、⑲パナソニック デバイス天津(有)、⑳パナソニック デバイスマテリアル広州(有)、㉑パナソニック デバイスSUNX蘇州(有)、㉒パナソニック オートモーティブシステムズ大連(有)、㉓パナソニックAS 蘇州(有)、㉔パナソニック オートモーティブシステムズアジアパシフィック(株)、㉕パナソニック オートモーティブシステムズマレーシア(株)、㉖パナソニック エナジー インド(株)、㉗パナソニック オートモーティブシステムズモンテレイ メキシコ(株)、㉘パナソニック オートモーティブシステムズメキシコ(株)、㉙パナソニック オートモーティブシステムズレイノサメキシコ(株)、㉚パナソニック エナジー メキシコ(株)、㉛パナソニック オートモーティブシステムズチェコ(有)
2023年度:㉜パナソニック インダストリー(株)本宮、㉝パナソニック エナジー(株)住之江工場、㉞パナソニック エナジー(株)徳島工場、㉟パナソニック エナジー(株)二色の浜工場、㊱パナソニック モータ珠海(有)、㊲パナソニック モータ杭州(有)、㊳パナソニック デバイス タイコー深圳(有)、㊴パナソニック デバイス青島(有)、㊵パナソニック マニュファクチャリング厦門(有)、㊶パナソニック デバイスマテリアル蘇州(有)、㊷パナソニック デバイスマテリアル上海(有)、㊸パナソニック デバイス シンガポール(株)、㊹パナソニック カーボン インド(株)
※5 プレスリリース(2023 年11月20日)
https://news.panasonic.com/jp/press/jn231120-1
※6 プレスリリース(2024 年2月1日)
https://news.panasonic.com/jp/topics/205544
※7 非製造拠点

再生可能エネルギー利用拡大

当社グループは再生可能エネルギーの利用拡大に向け、再生可能エネルギーの自社拠点導入と外部調達の推進に取り組んでいます。

2023年度の自社拠点における再生可能エネルギー導入量※8は67GWhとなりました。
再生可能エネルギーの自社拠点導入に関しては、地域ごとの特性に応じてグローバルで推進しており、特に太陽光発電については太陽光発電システムを導入可能な拠点へ積極導入を進めています。主な事例としては、日本での太陽光発電システムの導入があります。
パナソニック インダストリー(株)佐賀拠点にて、PPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)モデルを採用し、太陽光発電システムを導入しました。太陽光パネルは全部で5,984枚、発電能力は3,011kWです。これにより再生可能エネルギーの活用を図っていきます。

パナソニック インダストリー 佐賀拠点
太陽光発電システム

再生可能エネルギーの外部調達もグローバルで推進しています。日本において、自社拠点は電力の使用者であると同時に小売電気事業者(登録番号A0136)でもあり、2005年より自社拠点工場やオフィスへの電力供給を行ってきました。再生可能エネルギーに関しても、これまで培ってきた電力調達・電力取引のノウハウや経験を活かし、風力等に由来する100%再生可能エネルギー電力、ならびに非化石証書等や化石燃料由来CO2排出をオフセットするクレジット等の環境価値の調達を行っています。この取り組みは、日本のみならず中国や東南アジア地域のCO2ゼロ工場実現にも貢献しました。加えて、2021年度に開発を決定した自社拠点専用太陽光発電所(約18,000kW)について、2023年2月、パナソニック エナジー(株)向けに稼働を開始しております。2023年度は、パナソニック オートモーティブシステムズ(株)、パナソニック インダストリー(株)向けの発電所(約11,500kW)の稼働も開始し、2024年度はさらに約18,000kWの発電所の稼働を開始する予定です。このように当社グループは新たな再生可能エネルギー電源の普及拡大にも貢献していきます。また、2020年度からは、再生可能エネルギー実質100%の電力提供を当社グループ日本国内従業員向けに開始しています。
https://news.panasonic.com/jp/topics/204036.html

当社グループは2019年8月、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際的なイニシアチブ「RE100」に加盟しました※9。2050年までにグローバルで使用する電力のすべてを100%再生可能エネルギーへ切り替えることを目指しており、2023年度の進捗率は24.3%です。

※8 太陽光、風力などが対象。ヒートポンプ含まず
※9 プレスリリース(2019年8月30日)
パナソニックが「RE100」に加盟 100%再生可能エネルギーによる事業運営を目指す

エネルギー・CO2削減に向けた取り組み

エネルギー・CO2削減を確実に実行するためには、工場の各施設のエネルギー使用状況や対策による削減効果の見える化が重要です。これまでグローバル全製造拠点において4万点以上の計測装置やファクトリーエネルギーマネジメントシステム(FEMS)を導入し、エネルギー使用状況の見える化や分析を行うメタゲジ※10を推進しています。下記のWebサイトには、工場省エネ支援サービスの具体事例を掲載しています。

パナソニック(株)は滋賀県草津拠点で、純水素型燃料電池を活用したRE100化ソリューション※11の実証実験を行っています。さらに、中国にあるパナソニック エナジー無錫(PECW)で、電気と熱を供給する純水素型燃料電池の実証実験を開始しました。そして、英国にあるパナソニック マニュファクチャリングイギリス(PMUK)では、純水素型燃料電池と太陽電池を活用した自家発電により、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄うための電力需給運用の実証を、2024年に開始する予定です※12。PMUKでの実証には、5kWタイプの純水素型燃料電池21台(合計出力:105kW)、太陽電池(300kW)、蓄電池(1MWh)の設備を新たに導入し、英国カーディフでの気象変化や電力事情に応じた電力需給運用を検証し、電子レンジ工場のRE100化を目指します。純水素型燃料電池を活用することで、設置スペースの削減や安定電源の確保だけでなく、水素発電時に発生する熱を暖房・給湯に利用するなど、さらなるエネルギー効率の向上も図っていきます。PMUKでのRE100ソリューションの実証を通じ、地域特性に最適なソリューションを開発するとともに、水素事業に関連する現地パートナー企業やビジネス顧客との関係構築に取り組みます。

PMUK RE100ソリューション

パナソニック(株)彦根工場では、シェーバーの刃の生産工法の変更によるCO2排出量の削減を実現しています。外刃は深剃りを実現するために、2種類の厚みで構成された複雑で高精度な形状をしており、従来はステンレス板をプレス加工後、熱を加えて曲げていました。加熱せずに曲げると、キズ、割れ、バラつきが発生するため、常温で曲げる取り組みは難しいチャレンジでしたが、これまでの技術や経験の蓄積と、2年近くの曲げ加工条件の開発により、常温での曲げ加工を実現しました。これにより、加熱電力の削減を達成するとともに、刃の製造工程の1工程削減につながり、製造時間も短縮されました。
パナソニックグループは、今後も環境負荷の小さいエネルギーや工法を積極的に開発・採用し、Panasonic GREEN IMPACTの実現を加速していきます。

※10 当社グループの造語で、メータやゲージなどの計測器を導入してエネルギー使用量を見える化し、測定可能
な削減対策を実行すること
※11 プレスリリース(2021年5月24日)
https://news.panasonic.com/jp/press/jn210524-1
※12 プレスリリース(2023年11月14日)
https://news.panasonic.com/jp/press/jn231114-1

中国における純水素型燃料電池の実証実験

2022年2月から、中国にあるパナソニック エナジー無錫(PECW)で、電気と熱を供給する純水素型燃料電池の実証実験を開始しました。PECWは、省エネの推進、太陽光パネルの導入、再生可能エネルギーの調達によって、2021年度にCO2排出量実質ゼロを達成しています。今回実証実験を行う純水素型燃料電池は、発電効率が高い5kWモデルを6台連結する30kWの小規模発電からはじめ、中長期的には300kWの中規模、1MWの大規模商用化を目指しています。純水素型燃料電池システムは、電気と熱を供給することができ、夏場は臭化リチウム冷凍機へ温水を供給して冷熱を作り、冷房に活用することもできます。今回の実証試験は、再生可能エネルギーの調達に頼ることなく、省エネ、創エネを通じたゼロ化に向けた取り組みとなります。

燃料電池システムを制御するグリーンハウス
PECWで設置された純水素燃料電池

シンガポールにおける太陽光発電システムの導入

シンガポールでは、2016年9月にパナソニック ファクトリーソリューションズ アジアパシフィック社(PFSAP)の工場に発電容量1.0MWの太陽光発電システムを導入しました。3棟の工場建屋の屋上に、パナソニック製の太陽電池モジュールHIT®を計3,476枚設置し、これによりピーク出力時には電力総需要の約20%をまかなうことが可能となりました。パナソニック製HIT®は、業界トップレベルの高効率で、限られた屋上スペースでもより多くのエネルギーを生み出すことができます。また、高温の環境下においても高い発電性能を維持することができるため、熱帯性気候の地域により適しています。本製品は、マレーシア ケダ州のクリム ハイテクパーク工業団地にあるパナソニック エナジー マレーシア株式会社で製造されています。
この太陽光発電システムの導入は、東南アジア最大のクリーンエネルギー供給会社の一つであるサンシープ社とのリース契約によるものです。シンガポールにおいては、2015年10月にもパナソニック アプライアンス 冷機デバイス シンガポール社(PAPRDSG)の工場へサンシープ社とのリース契約により発電容量2.4MWの太陽光発電システムを導入しており、PFSAPの工場への導入は、サンシープ社のリース契約を活用した当社の2つ目の事例となりました。

PFSAPの太陽光発電システム

各工場の取り組み

EV車で使用するリチウムイオン電池(LIB)を生産するパナソニックエナジー貝塚(株)は、Panasonic GREEN IMPACTの実現に向けたCO2排出量の削減と近年のEV車向けの需要の高まりに対応する生産性向上の両立に部門横断で取り組んでいます。原動設備などの管理を行う施設管理部のメンバーが中心となり、パナソニックエナジー(株)住之江工場、和歌山工場、貝塚工場の3拠点で合同発足した「カーボンニュートラル推進委員会」には、工場技術・製造技術のプロフェッショナルも参画し、「エネルギーミニマム生産推進活動」を推進してきました。具体的には、生産効率の向上によるエネルギー原単位の削減として、極板製造工程の生産効率向上のネックであった電極材料塗布工程において、科学的手法を用いて効果的な乾燥条件を確立し、塗布速度の増速を実現しました。この工法は、LIBの一大生産拠点であるアメリカなど国外の工場へも展開可能です。また、工程の無駄の削除として、検査工程における充放電装置の運用方法の見直しによる待機電力の削減を実現しました。さらに、工場敷地内外での再生可能エネルギー率の向上として、工場敷地内への太陽光発電設備の導入を進めるとともに、オフサイトPPAを活用した工場外の太陽光発電電力の購入も開始しました。

パナソニックエナジー貝塚 活動メンバー

中国地域省エネ支援活動

中国ではカーボンピークアウト・カーボンニュートラルの長期国家方針が発表され、CO2排出削減をより一層重視しています。中国国内に多くの事業場を有する当社グループは、地域全体の効率的な省エネ活動の実現を目指し、2022年度から3年間の中国地域省エネ支援活動を本格的に推進しています。
具体的には、モデル拠点にて社内外の専門家と連携した省エネ診断を実施し、CO2削減に繋げるとともに、省エネ人材の育成も強化しています。また、省エネ診断等で得られた知見から、事例の共通性や展開性を考慮してベストプラクティスを選定し、地域内の事業場に発信することで、各事業場での省エネ活動への徹底活用を図っています。さらに、省エネインフラ(ポータブル測定機器の配置、省エネ事例データベースの開発)の整備により、省エネ取り組みの見える化と効率化を図っています。引き続き、CO2ゼロ工場の実現に向け、ハイスピードかつ低コストで省エネ取り組みを推進し、中国地域における省エネレベルの向上を図っていきます。

中国地域 省エネ診断活動

2023年度の実績

2023年度の事業活動で使うエネルギー量は4.5TWh※13となり、CO2排出量は1.37Mtでした。
2023年度のエネルギー・CO2削減取り組みへの投資額は37億円※14でした。

※13 2020年度より事業活動で使うエネルギー量の単位をTJからTWhに変更。電力はkWh、燃料は熱量を電力量単位である3.6MJ/kWhで換算し合算
※14 エネルギー・CO2削減に関する投資はすべて含む。ただし差額集計あるいは按分集計を行っていない

事業活動におけるCO2排出量(地域別)と原単位

事業活動におけるCO2排出量(事業会社別)※19

※15 2020年度以降パナソニックエナジーノースアメリカ(株)を含む
※16 CO2排出量を、グループ全社の売上高で除して算出した「CO2原単位」の2013年度対比の改善率を算出
※17 燃料関係は環境省温室効果ガス排出量算定・報告マニュアルの係数に基づく。各年度の各国の購入電力の係数は、International Energy Agency(IEA)の発行する「CO2 emissions from fuel combustion」の係数を元に当社グループで設定。引用bookは、2013年度:book2017、2017~2020年度:book2019、2021年度:IEA Emissions factors 2021、2022年度:IEA Emissions factors 2022、2023年度:IEA Emissions factors 2023
※18 2022年度以降非製造事業場を含む
※19 期中でCO2排出実質ゼロを達成した場合はそれ以前のCO2排出実績が残存

事業活動における温室効果ガス排出量(CO2換算)の内訳(種類別)※20

[単位kt]

※20 エネルギー起源CO2以外の温室効果ガス排出量には、Hussmann Parent社およびその連結子会社の実績、パナソニックエナジーノースアメリカ(株)の実績、非製造拠点の実績を含まず