水資源保全に対する考え方

地球上で利用可能な淡水は水資源全体の0.01%程度に過ぎません。今後の経済発展や人口増加による水使用量の増加を見据えると、水危機はグローバルリスクの一つとしてあげられるものと捉えています。
社会問題として水不足の深刻さが増す中、当社グループは、企業の社会的責任の遂行と経営リスク低減のため、商品・生産活動の両面から水資源保全に取り組んでおり、環境基本方針において、効率的な水の利用と汚染防止により、水資源の保全に努めることを定めています。環境行動計画GREEN IMPACT PLAN 2024においても継続課題として定め、事業活動および製品・サービスでの水使用量の削減に取り組んでいます。またリスク管理の観点から、2018年度までに当社グループのすべての製造拠点における水リスクアセスメントを完了させることを目指し活動を行い、水リスクアセスメント100%を達成しました。
具体的には、水に関する事業活動への影響を把握・軽減していくため、グローバルで製造拠点が位置するすべての地域において水リスクの大きさを評価しました。評価にあたっては、水量不足などの物理的なリスクだけでなく水に関する規制や地域の評判リスクなど、多様な側面からリスクを評価できる世界資源研究所(WRI)のAqueductや、世界自然保護基金(WWF)のWater Risk Filterといった評価ツールや各国政府などの公的データベースを活用しました。さらに、水リスクが高い可能性がある地域においては、現地の具体的な公的情報や、関連機関へのヒアリングなどを通した情報収集を行いました。そのような現地情報や水使用量などの拠点情報を詳細に分析し、事業活動への影響を、より具体的に特定していきました。このような水リスクアセスメントのプロセスを着実に進め、2017年度に当社グループのすべての製造拠点における水リスクアセスメントを完了しました。水ストレス下にはありません。また、現時点においても当社グループの事業活動へ影響を与えるような水リスクは顕在化していません。今後、今回行った水リスクアセスメントをベースにして、生産活動での水使用量削減に継続して取り組んでいきます。
このような活動を推進するにあたり、当社グループでは、水管理を含む環境経営の推進体制を構築し、PDCAのマネジメントサイクルを回して、環境経営のレベルアップを図っています。またリスクを継続的に低減させていくための環境リスク管理体制を組織し、(1)毎年度、環境リスクの洗い出しとグループ全社リスクマネジメント推進、(2)環境リスク発現時の迅速な対応を進めています。今後もこのような活動を通して、継続的に環境リスクの管理を行っていきます。
さらに、2014年に日本の環境省主導で発足した官民連携啓発プロジェクトであるウォータープロジェクトに当社グループは参画しています。このプロジェクトは健全な水循環の維持または回復の推進などを目的としており、企業の水の取り組みの紹介、水の重要性や情報の発信を行っています。当社グループは日本政府や他社とも協働して、水資源保全に取り組んでいきます。

商品による水資源保全への取り組み

当社グループは、商品における水の使い方を徹底的に分析し、水流制御、循環利用などの機能を向上させ、水を最大限に活用することで、気遣いなくとも節水を可能にします。節水商品の開発に取り組んでいます。

食器洗い乾燥機(卓上食洗機)

卓上食洗機は、ユーザーの家事負担を軽減するとともに。食器洗い時の使用水量削減にも貢献します。
2023年に発売した1人用卓上食洗機SOLOTAを含めると5人用、4人用、3人用、1人用と幅広い家族構成と設置環境に対応した商品ラインナップで、ユーザーの需要に対応しています。
手洗いと比較した使用水量は、5人用で約1/6(手洗い 約75Lに対して約11L 2Lのペットボトル約32本分の節約)、4人用で約1/5、3人用で約1/4、1人用で約1/8となり、食器洗い時の節水に貢献します。
また、エコナビ運転搭載機種では、エコナビ運転をすることにより、汚れの状態を検知し、洗浄の際の給水温度や乾燥の際の加熱温度を調整することで消費電力を約5%、運転時間を約4分短縮でき、節電に貢献します。(※)

※NP-TZ300、NP-TH4の場合。これらは最大値であり、食器の量や汚れ、室温により効果は異なります。

NP-TML1

ななめドラム洗濯乾燥機LXシリーズ

ななめドラム洗濯乾燥機LXシリーズは、縦型洗濯機と比較し、洗濯時の消費電力量を約30%節電するとともに、使用水量を約67L節水することができ、水資源の保全に貢献します。また、液体洗剤・柔軟剤の「トリプル自動投入」により洗剤の入れすぎを防ぎ、環境負荷の低減を図ることができます。詰め替え用の特大タイプを使用すれば、洗剤容器のプラスチック使用量を約88%削減することも可能です。

ななめドラム洗濯乾燥機LXシリーズ

リズムeシャワープラス

シャワーの流量・温度を一定リズムで変動させて、「省エネ:最大約20%」「節水:最大約10%」を実現しました。
ひとセンサーと流量センサーがシャワーの使用を検知し、流量調整弁と制御技術でシャワー流量を高速で変動させます。

※当社独自の条件により評価。数値はあくまでめやすであり、使用方法によって異なります。
※当社試験設備にて、家庭用ヒートポンプ給湯機JIS C 9220負荷条件による。夏期給湯モード加熱条件:外気温(乾球温度/湿球温度)25℃/21℃水温24℃ 給湯設定温度40℃ ダイレクト出湯、シャワー使用時間5分/回を使用したときの比較(浴室シャワーのみ使用時)。シャワー使用流量合計:リズムeシャワープラス ON(設定:強)時 45L/OFF時 50L JP、J、W、FP、Fシリーズ フルオートにおいて 省エネ条件:リズムeシャワープラス ON(設定:強)時のシャワー熱量2.6MJ/OFF時のシャワー熱量3.3MJ 節水条件:リズムeシャワープラス ON(設定:強)時のシャワー流量8~10L/分 OFF時のシャワー流量10L/分

リズムeシャワープラス
リズムeシャワープラス

洗浄機能付きフラット形レンジフード

レンジフードは油汚れがつきやすく、1回のお手入れで約28リットルの水を使用します。
エコナビ搭載洗浄機能付きフラット形レンジフードDWシリーズは、給湯トレイにお湯を入れて本体にセットし、「洗浄」ボタンを押すだけで、ファンフィルターで集めた油汚れを自動洗浄します。2か月に1回程度の洗浄で、10年間ファンフィルターを取り外さずに掃除が可能。従来のお手入れ時に比べ、約99%節水できます※1
2020年9月に発売したDEシリーズも、羽に付く油をはじく独自の塗装により油がこびりつきにくいだけでなく、運転終了前にファンを高速回転して羽根についた油汚れを遠心力で飛ばす“油トルネード機能”により、羽根の洗浄を3年に1度程度※2に減らすことができます。

※1 使用水量は自社基準による。月1回(2か月に2回)の従来お手入れと、2か月に1回の自動洗浄の水量比較
※2 (一財)ベターリビング優良住宅部品評価基準換気ユニット(台所用ファン)のフィルターの油捕集効率(レンジフードファン)試験での比較

洗浄機能付きフラット形レンジフードFY-60DWD4-S

トイレ

全自動おそうじトイレ「アラウーノ」は、独自の節水技術「ターントラップ方式」で効率的に水を使うことにより、従来のトイレと比較して、使用水量を年間で約1/3※3に削減できます。また、汚れが付きにくい有機ガラス系新素材を使用していることに加え、トビハネ汚れを抑える「トリプル汚れガード」によって掃除の回数が少なくて済むため、お手入れにおいても節水です。
2018年度はトップカバーやアームレストのカラーバリエーションを増やし、さらにインテリア性を強化。トイレ空間のコーディネイトに配慮される店舗やホテルへの展開を強化することで、住宅以外でも節水の機会を拡大しています。

※3 1990年頃の当社サイホンゼット式トイレ(CH43)との比較

全自動おそうじトイレ「アラウーノ」
全自動おそうじトイレ「アラウーノ L150」

生産活動における水資源保全への取り組み

当社グループは生産工程排水、空調系統排水などを回収し、水を再利用することで、新規補給水および排水放流量を削減し、生産活動の取水・排水による水資源への負荷を削減しています。世界には水不足に脅かされる地域が数多く存在しており、当社グループは重点取り組み地域を絞り、活動を進めています。2022年度の工場水使用量は、15.27million m3となり、前年度比で11.4%減少しました。また、工場水使用量生産高原単位※4は、事業再編の影響により前年度比で原単位は良化しました。2022年度の水の循環利用量※5は1.55million m3であり、水使用量に対する循環水量の割合は10.2%となりました。2020年度・2021年度・2022年度の排水量は、それぞれ、14.81million m3、13.39million m3、11.78million m3です。

※4 工場水使用量生産高原単位=工場水使用量÷生産高
※5 同じ目的のために単に循環させている水(クーリングタワーの冷却水など)は除外して算定

生産活動における水使用量と原単位

生産活動における水使用量と原単位。工場水使用量生産高原単位※4(2009年度比)は、2009年度49million ㎥(100%)、2018年度25million㎥(59.6%)、2019年度23million㎥(60.9%)、2020年度19million㎥(55.1%)、2021年度17million㎥(48.2%)、2022年度15million㎥(38.1%)

注:2009年度は当時の三洋電機・パナソニック液晶ディスプレイを含まず

2022年度 水使用の内訳(地域別)

(単位:10thousand m3

(単位:10thousand m3)日本「使用量822(上水道・工業用水 312/地下水 510/河川・湖水 0)、排水量687(下水 158/公共用水域 638)」、中国・北東アジア「使用量339(上水道・工業用水 337/地下水 1/河川・湖水 0)、排水量233(下水 176/公共用水域 57)」、東南アジア・大洋州「使用量292(上水道・工業用水 268/地下水 24/河川・湖水 0)、排水量207(下水 157/公共用水域 50)」、北米・中南米「使用量45(上水道・工業用水 33/地下水 13/河川・湖水 0)、排水量35(下水 32/公共用水域 2)」、欧州・CIS「使用量10(上水道・工業用水 9/地下水 1/河川・湖水 0)、排水量9(下水 8/公共用水域 1)」、インド・南アジア・中東阿「使用量20(上水道・工業用水 1/地下水 18/河川・湖水 0)、排水量7(下水 7/公共用水域 0)」、使用量合計1,527(上水道・工業用水合計 960/地下水合計 567/河川・湖水合計 0)、排水量合計1,178(下水合計 539/公共用水域合計 639)

グループ内で最も多く水を使用する事業会社であるパナソニック インダストリー(株)(54事業場)では、2022年度の水使用量の実績は削減取り組みのほか、事業再編の影響もあり6.47million m3と前年度比で18.0%削減しました。工場での水のリサイクル使用等により、使用量原単位の削減目標達成率は103%と良化しています。

パナソニック インダストリー(株) 佐賀拠点では、近年の地震・豪雨災害などの自然災害が頻発する中で屋外で保管する化学薬品の漏洩リスクにも配慮し、化学薬品が必要な樹脂再生式純水製造装置から、化学薬品を使用しない電気再生方式装置に置き換えることで、工場周辺への環境リスク低減及び環境負荷の低減を図りました。その際、新たに導入した排水回収装置により純水製造装置から発生する排水を濃縮排水と回収水に分離し、その回収水を再利用することで工場全体の水使用量を18 thousand m3/年削減することができました。

パナソニック オートモーティブシステムズ(株)では、以下の水の取り組みが実施されています。

  1. 中国大連工場では、トイレの排水用タンクをセンサー感知型電磁弁に改造することで、押しボタン式より1回あたり6リットルの水量を節水した(1回10リットルを4リットルに節水)。
  2. 松本工場のLCD工程用純水精製装置の送水配管を調査し、サイフォン現象を発見し、バルブで防止することで、排水量を削減することができました。

以下の事業会社では、水使用量の目標を立てて取り組んでいます。
パナソニック エナジー(株) (目標)1.82 (実績)1.75 million m3
パナソニック オートモーティブシステムズ(株) (目標)0.46 (実績)0.415 million m3

当社グループは今後も水資源保全の取り組みを進めていきます。

パナソニック インダストリー(株) 佐賀拠点
電気再生式純水装置