水資源保全に対する考え方

地球上で利用可能な淡水は水資源全体の0.01%程度に過ぎません。今後の経済発展や人口増加による水使用量の増加を見据えると、水資源保全はグローバルリスクの一つとしてあげられるものと捉えています。
社会問題として水不足の深刻さが増す中、当社グループは、企業の社会的責任の遂行と経営リスク低減のため、商品・生産活動の両面から水資源保全に取り組んでおり、環境基本方針において、効率的な水の利用と汚染防止により、水資源の保全に努めることを定めています。さらに、環境行動計画GREEN IMPACT PLAN 2028においても継続課題として定め、水資源マネジメントの推進を新たに掲げ、水リスクが高い拠点に対するマネジメントを強化していきます。同計画に基づき、事業活動および製品・サービスでの水使用量の削減にも取り組んでいます。
当社グループでは、水管理を含む環境経営の推進体制を構築し、PDCAサイクルに基づくマネジメントを通じて、環境経営の継続的な高度化を図っています。また、環境リスクを継続的に低減するための体制として、環境リスク管理体制を組織し、毎年度、環境リスクの洗い出しを実施しています。これにより、グループ全体でのリスクマネジメントを推進するとともに、環境リスクが顕在した際には迅速な対応が可能となるよう取り組んでいます。こうした取り組みは、衛生的な水へのアクセスを基本的人権と捉える立場にも基づいています。
さらに、当社グループは2014年に日本の環境省主導で発足した官民連携啓発プロジェクトであるウォータープロジェクトおよびその後続的な枠組みである水辺の環境活動プラットフォームへも参画しています。このプロジェクトは関係者の連携を強化し水辺の保全・再生活動を活性化することを目的としており、地域、企業、NPO、行政等の多様な主体の連携促進、情報プラットフォームの提供による活動交流促進や情報の発信を行っています。当社グループは日本政府や他社とも協働して、水資源保全に取り組んでいきます。

TNFDフレームワークに基づく水資源のLEAP分析

当社グループでは、2017年度までに水リスクアセスメントを実施済みでしたが、評価基準の進化や事業環境の変化を踏まえ、再評価を開始しました。現在は、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークに準拠し、水資源に関するリスクと影響の特定・評価を進め、その一環として、全製造拠点を対象に、「LEAPアプローチ※1」に基づく体系的なリスク評価を実施しています。
第1段階である「Locate(特定)フェーズ」では、自社拠点の位置と自然資本との関係性を明確化しました。具体的には、すべての製造拠点がどのような自然環境下に位置しているかを把握するために、水リスク評価ツールであるWRI(世界資源研究所)のAqueductやWWF(世界自然保護基金)のWater Risk Filterを活用し、水ストレスや水質汚濁に関するリスク評価を実施しました。その結果、水資源に対する物理的リスクの高い拠点を特定することができました。これらの高リスク拠点の中には、すでに物理的リスクの低減に向けた取り組みを積極的に推進している拠点もあり、当社Webサイトにてその内容を紹介しています。
「Evaluate(診断)フェーズ」では、Locateフェーズで特定した高リスク拠点に対して、水資源への依存(使用する水の種類、用途、取水量など)や排水による影響(排出方法、排出先、保護地域への近接性など)を精査し、水資源への依存度および自然環境への影響を評価しています。
具体的には、製造工程における水の用途(洗浄・冷却・ボイラーなど)、取水量や水質、排水の処理方法や排出先の情報など拠点における水利用状況の確認を進めています。特定の水質に高度に依存している工程についてはその代替可能性や代替手段の有無についても検討するなど、事業継続性およびリスク低減の観点から整理しています。
さらに「Assess(評価)フェーズ」では、評価結果に基づき、想定されるリスクと機会を明確に洗い出し、「Prepare(準備)フェーズ」における効果的な目標設定と対応策の策定につなげていく予定です。

※1 LEAPアプローチ
TNFDは、自然関連のリスクと機会を総合的に評価するプロセスとしてLEAPアプローチを策定しました。
LEAPアプローチは、事業と自然との接点の特定(Locate)、依存関係と影響の診断(Evaluate)、リスクと機会の評価(Assess)、そして自然関連リスクと機会に対応する準備と開示(Prepare)の4つのステップから構成されています。

水ストレスリスク(高リスク拠点割合)

水ストレスリスク(高リスク拠点割合)

※2024年12月に連結対象外となったパナソニック オートモーティブシステムズ(株)傘下工場を除く

水質汚濁リスク(高リスク拠点割合)

水質汚濁リスク(高リスク拠点割合)

※2024年12月に連結対象外となったパナソニック オートモーティブシステムズ(株)傘下工場を除く
※91拠点の内1拠点は埋立地に位置しているためWRFによる評価結果が取得できませんでしたが、当該拠点の事業特性や周辺環境、立地特性を踏まえ、総合的に評価4としています。

水資源に対する物理的リスクの高い拠点におけるリスク低減に向けた取り組み

水資源に対する物理的リスクとは、渇水や水質汚濁、洪水などにより水の利用可能性や質が変化することで、生産活動や設備運用に直接影響をおよぼすリスクを指します。物理的リスクは、突発的な気象災害の増加により発生し操業に即時的な影響を及ぼす「急性リスク(例:洪水など)」と、長期的に水資源の状態が変化することで影響が顕在化する「慢性リスク(例:水ストレスの進行や水質の悪化)」に分けられます。当社グループでは、こうしたリスク把握および評価を進めるとともに、拠点において水資源への依存および影響の低減に向けた取り組みを推進しています。
なお、これらのリスクが事業活動に与える影響を踏まえ、操業停止やコスト増加などの観点から財務影響についても検討を進めています。

パナソニック・ゴーベル エナジー インドネシア(株)

パナソニック・ゴーベル エナジー インドネシア(株)では、これまで排水されていたRO(逆浸透膜)システムからの凝縮水を、冷却塔用水として再利用する取り組みを開始しました。この再利用により、冷却塔の運転に必要な水の使用量を削減できるほか、電力消費量や水処理に使用する化学薬品の使用量の削減が可能となりました。
この取り組みによって、年間約23,904m3の水使用量を削減し、CO2排出量についても年間10.44トンの削減を実現しています。

パナソニック ライフソリューションズ インド(株)Kutch工場

パナソニック ライフソリューションズ インド(株)Kutch工場では、乾燥した砂漠地帯に立地しており、水をタンクローリーで調達しています。
インド国内の中でもKutch工場は、水資源が限られた水調達コストが高い地域に位置していることから、雨水の再利用や給水システムの自動化を積極的に推進しています。まず、原水タンクの屋根を改修し、雨水を効率的に収集できるように整備しました。収集した雨水は、ガーデニングや運転手待機室、食堂エリアの手洗い用水として再利用しています。また、原水タンクから工場のタンクへ送水する際には、これまで制御機能がなかったため、給水時に水のオーバーフローが発生するという課題がありました。
この課題に対しては、自動運転機能を導入することでタンクの水位を適切に管理し、水のオーバーフローを防止することができました。さらに、水の移送には新たに水中ポンプを導入し、節水と省エネルギーの両立を実現しました。これらの取り組みによって、年間で約154m3の水使用量を削減し、15,076INR(インド・ルピー)のコスト削減につなげることができました。

パナソニックライフソリューションズインド(株)Kutch工場 原水タンクの屋根(雨水を効率的に収取できるよう改修)

パナソニックAP冷蔵庫無錫(有)

パナソニックAP冷蔵庫無錫(有)では、排水および雨水の管理体制を強化し、環境保全に向けた取り組みを積極的に推進しています。
まず、排水管および関連施設の全面的な更新を実施し、定期的な保守点検とメンテナンスを通じて、未処理排水の混入防止のため排水管と雨水道の分離を厳密に管理しています。
また、雨水の水質についても定期的にチェックを行い、適切な状態を維持するよう努めています。さらに、作業場内のすべての雨水井口には識別ラベルを貼付し、人為的な廃棄物の投棄を防止する対策を講じています。
加えて、雨水排出口には遮断装置と折りたたみ式の緊急プールを新たに設置し、万が一雨水に汚染が発生した場合でも、外部への流出を防ぐための訓練を定期的に実施しています。

パナソニックAP冷蔵庫無錫(有) 雨水排出口 遮断装置

パナソニック(株)彦根工場

パナソニック(株)彦根工場では、水環境への影響を最小限に抑えることを目的として、様々な取り組みを実施しています。
まず、水質測定に関しては、県や市の条例で定められた基準よりも厳しい独自基準を設定し、より高い水準での管理を行っています。
また、水質汚濁防止法に関連する特定施設を保有する部署や、各部門の環境推進担当者に対して、年に一度の環境法規研修を実施し、法令遵守と環境意識の向上に努めています。
さらに、排水の管理体制として、pH計・濁度計・UV計を備えた排水監視盤を設置し、24時間365日体制で常時モニタリングを行っています。
異常値が検出された場合には、監視装置からアラームが発報され、迅速に対応できる体制を整えています。

パナソニック(株)くらしアプライアンス社 彦根工場 施設管理事務所内排水監視モニター

パナソニック(株)加東資源循環工場

パナソニック(株)加東資源循環工場では、再生樹脂の洗浄工程において、従来主流だった湿式洗浄に代わり、水を一切使用しない乾式洗浄方式を採用しています。湿式洗浄では、排水中にマイクロプラスチックが含まれるリスクがある一方で、乾式洗浄を用いることでそのリスクを大幅に低減することが可能です。
この乾式洗浄装置は、精米装置を転用し活用されたものであり、加東工場および一部の外部協力企業に導入されています。独自性の高いこの取り組みによって、水資源の使用量を削減するとともに、マイクロプラスチックの流出を防止することができます。これらの工夫は、水資源の保全と海洋プラスチック汚染の防止という、二つの重要な環境課題に対して有効なアプローチとなっています。

(採用)パナソニック(株)くらしアプライアンス社 加東資源循環工場 乾式洗浄装置

商品による水資源保全への取り組み

当社グループは、商品における水の使い方を徹底的に分析し、水流制御、循環利用などの機能を向上させ、水を最大限に活用することで、気遣いなくとも節水を可能にする節水商品の開発に取り組んでいます。

食器洗い乾燥機(フロントオープンタイプ)

フロントオープンタイプ食器洗い乾燥機NP-60EF1Wは、12人分の食器を収納できる大容量な仕様で、1日分をまとめ洗いでき、ユーザーの家事負担を軽減するとともに、食器洗い時の使用水量削減にも貢献します。手洗いと比較した使用水量は約1/9(手洗い約133.6Lに対して約15.1Lで2Lペットボトル約59本分の節約)となり食器洗い時の節水に貢献します。食洗機と手洗いでそれぞれ使用する電力、ガス、水、洗剤をCO2排出量に換算(当社試算)した場合、食洗機の方がCO2排出量は小さくなります。
さらに60cmタイプに加え、2025年に45cmタイプのフロントオープンタイプ食洗機NP-45EF1Wを新たに市場投入し、設置性の幅を広げることで導入促進を図り、さらなる節水に貢献しています。
また、本製品は、高温・高圧水流の高い洗浄力で汚れをしっかり洗い落とすことができるので、食器セット前の予洗いは不要です。さらに新構造の「残さいフィルター」は、当社独自技術により、洗浄中の各工程でフィルターを洗浄する「自動洗浄システム」を採用。運転後のお手入れの頻度を減らすことができます。

フロントオープンタイプ食器洗い乾燥機NP-60EF1W

ななめドラム洗濯乾燥機LXシリーズ

ななめドラム洗濯乾燥機LXシリーズは、縦型洗濯機と比較し、洗濯時の消費電力量を約30%節電するとともに、使用水量を約67L節水することができ、水資源の保全に貢献します。上水、下水の水処理に掛かるエネルギーを考慮すると、節水はCO2削減にも貢献します。また、液体洗剤・柔軟剤の「トリプル自動投入」により洗剤の入れすぎを防ぎ、環境負荷の低減を図ることができます。詰め替え用の特大タイプを使用すれば、洗剤容器のプラスチック使用量を約88%削減することも可能です。

ななめドラム洗濯乾燥機LXシリーズ

リズムeシャワープラス

シャワーの流量・温度を一定リズムで変動させて、「省エネ:最大約20%」「節水:最大約10%」を実現しました。
ひとセンサーと流量センサーがシャワーの使用を検知し、流量調整弁と制御技術でシャワー流量を高速で変動させます。

※当社独自の条件により評価。数値はあくまでめやすであり、使用方法によって異なります。
※当社試験設備にて、家庭用ヒートポンプ給湯機JIS C 9220負荷条件による。夏期給湯モード加熱条件:外気温(乾球温度/湿球温度)25℃/21℃水温24℃ 給湯設定温度40℃ ダイレクト出湯、シャワー使用時間5分/回を使用したときの比較(浴室シャワーのみ使用時)。シャワー使用流量合計:リズムeシャワープラス ON(設定:強)時 45L/OFF時 50L JP、J、W、FP、Fシリーズ フルオートにおいて 省エネ条件:リズムeシャワープラス ON(設定:強)時のシャワー熱量2.6MJ/OFF時のシャワー熱量3.3MJ 節水条件:リズムeシャワープラス ON(設定:強)時のシャワー流量8~10L/分 OFF時のシャワー流量10L/分

リズムeシャワープラス
リズムeシャワープラス

洗浄機能付きフラット形レンジフード

レンジフードは油汚れがつきやすく、1回のお手入れで約28Lの水を使用します。
AIエコナビ搭載洗浄機能付フラット形レンジフードDWシリーズは、給湯トレイにお湯を入れて本体にセットし、「洗浄」ボタンを押すだけで、ファンフィルターで集めた油汚れを自動洗浄します。約2ヶ月に1回の洗浄で約10年間ファンフィルターを取り外さずに掃除が可能。日常的なお手入れにおける水の使用を抑制します。
お手入れの負担を軽くしながら、清掃性と節水性を両立したレンジフードです。

※本体の洗浄ランプが点灯したら、必ずファンフィルターの自動洗浄を行ってください。
※自動洗浄は換気性能を維持するための機能であり、使用時間とともに若干の汚れは残ります。
※約10年間は、中運転での換気を1日あたり5時間運転させた場合の換気風量から算出した値です。また、常時換気をご使用の場合は、洗浄回数は月に1回程度となり、ファンフィルターの寿命は通常の約半分となります。湯煙の発生量が多い場合、ホコリを吸い込みやすい場合など、調理状況や使用環境によってはファンフィルターの交換時期が短くなる場合があります。ファンフィルターを交換すれば引き続き自動洗浄をご使用できます。

洗浄機能付きフラット形レンジフード

生産活動における水資源保全への取り組み

当社グループは生産工程排水、空調系統排水などを回収し、水を再利用することで、外部からの取水量および排水放流量を削減し、生産活動の取水・排水による水資源への負荷を削減しています。世界には水不足に脅かされる地域が数多く存在しており、当社グループでは、各拠点における取水量・排水量をモニタリングするとともに、水リスク評価ツールを活用し、重点取り組み地域を絞り、活動を進めています。2025年度の工場取水量は、1,345万m3となり、前年度比マイナス0.2%とほぼ横ばいとなりました。また、工場取水量生産高原単位※2は2.76となり、生産高の減少の影響により前年度比で悪化しました。2025年度の水の循環利用量※3は133万m3であり、取水量に対する循環水量の割合は9.9%となりました。排水量は削減傾向が継続しており、2023年度・2024年度・2025年度は、それぞれ1,060万m3、1,045万m3、1,023万m3となっています。
今後は、水リスクの高い拠点を中心に、拠点ごとの水利用特性を踏まえた対応を強化していきます。

※2 工場取水量生産高原単位=工場取水量÷生産高
※3 同じ目的のために単に循環させている水(クーリングタワーの冷却水など)は除外して算定

生産活動における取水量と原単位

生産活動における水使用量と原単位。工場取水量生産高原単位※2(2009年度比)は、2009年度49百万㎥(100%)、2021年度17百万㎥(48.2%)、2022年度15百万n㎥(38.1%)、2023年度14百万㎥(35.1%)、2024年度13百万㎥(35.4%)、2025年度13百万㎥(36.6%)

注: 2009年度は当時の三洋電機・パナソニック液晶ディスプレイを含まず

2025年度 水使用の内訳(地域別)

(単位:万m3

地域 取水量   排水量   消費量
  上水道・
工業用水
地下水 河川・
湖水
  下水 公共用
水域
日本 763 308 455 0 637 142 495 126
中国・北東アジア 262 261 1 0 196 164 33 66
東南アジア・大洋州 228 206 23 0 145 111 34 84
北米・中南米 61 52 9 0 36 33 3 25
欧州・CIS 7 6 1 0 5 5 0 2
インド・南アジア・
中東阿
24 3 21 0 3 3 0 21
合計 1,345 837 509 0 1,023 458 565 322

グループ内で最も多く水を使用する事業会社であるパナソニック インダストリー(株)では、2025年度の取水量の実績は生産増の影響もあり546万m3と前年度比で2.7%増加しました。一方で、工場での水のリサイクル使用等により、取水量原単位は前年比94%になりました。

パナソニック インダストリー(株)佐賀拠点では、近年の地震・豪雨災害などの自然災害が頻発する中で屋外で保管する化学薬品の漏洩リスクにも配慮し、化学薬品が必要な樹脂再生式純水製造装置から、化学薬品を使用しない電気再生方式装置に置き換えることで、工場周辺への環境リスク低減および環境負荷の低減を図りました。その際、新たに導入した排水回収装置により純水製造装置から発生する排水を再利用することで工場全体の取水量を6.18万m3/年削減することができました。

当社グループは今後も水資源保全の取り組みを進めていきます。


パナソニック インダストリー(株) 佐賀拠点
電気再生式純水装置