パナソニック環境ビジョン2050からPanasonic GREEN IMPACTへ
当社グループが2017年に策定した「パナソニック環境ビジョン2050」は、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立に向けて、クリーンなエネルギーでより良く快適にくらせる社会を目指し、使うエネルギーを削減すると同時に、それを超えるクリーンなエネルギーの創出・活用を進めるものでした。
具体的には、製品の省エネ性能向上のための技術開発や、モノづくりプロセスの革新で「使うエネルギー」を抑制することに加えて、創・蓄エネルギー事業などを通じてクリーンなエネルギーの創出・活用の機会を増大(「創るエネルギー」)し、2050年までに「創るエネルギー」が「使うエネルギー」を超えることに挑戦してまいりました。

いま、気候変動を含む地球環境問題の解決は、当社グループが目指す「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」という遠大な使命の中で最優先で取り組むべき課題と考えます。
2022年1月、当社グループは環境に関する長期ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を発信しました。
「Panasonic GREEN IMPACT」は、気候変動対応の問題に関して、当社グループが持つ責務の大きさに向き合い、エネルギー視点での取り組みから、当社グループや社会のCO2排出を削減する視点に広げ、一つひとつの取り組み(ACT)の積み重ねによって、社会とともにカーボンニュートラルを目指す、との思いを込めて「パナソニック環境ビジョン2050」から移行したものです。

GREEN IMPACTの目標は、2050年までにグループの事業活動を通じた、現時点の全世界CO2総排出量336億トン※1の「約1%」にあたる3億トン※2以上の削減インパクトです。
削減インパクト3億トンの内訳は3つあります。
1つ目は、「OWN IMPACT」として自社バリューチェーン全体の排出量約1.1億トン※3をエネルギー削減の加速で徹底して削減し、同時に2050年に向けて進む社会全体の脱炭素効果と合わせることで実現する自社CO2排出量の実質ゼロ化です。
2つ目は、「CONTRIBUTION IMPACT」として現在の事業領域で、車載電池による環境車の普及拡大や、サプライチェーンソフトウェアや空質空調事業などによる、お客様のエネルギー削減を通じた1億トンの削減貢献です。
3つ目は、「FUTURE IMPACT」として水素エネルギー領域などの新技術、新規事業を創出することで、社会のエネルギー変革にインパクトを与える1億トンの削減貢献です。
さらに、現時点では直接的な当社グループのCO2削減として算出できるものではありませんが、当社グループの積極的な取り組みによる、社会のエネルギー変革に対する波及を「INFLUENCE」とし、3つのインパクトを通じて与える影響を表します。
※1 2019年エネルギー起源CO2排出量336億トン(出典:IEA)
※2 CO2排出係数は2020年基準
※3 2020年度実績値
環境行動計画「GREEN IMPACT PLAN 2024」
当社グループの長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」で定める2050年の目標に至るまでのマイルストーンとして、2022年度から2024年度までの3ヵ年の環境行動計画である「GREEN IMPACT PLAN 2024」(以下GIP2024)において自社のCO2排出削減量や社会へのCO2排出の削減貢献量などの、具体的な目標数値を定めました。
OWN IMPACTは、いわゆるスコープ1,2,3の領域で、現在1.1億トンの排出量から、事業成長とともに、2024年度に1,634万トンのCO2排出削減を目指します。特に、製品を作る過程で排出するCO2を実質ゼロにする工場の数を、2021年度の9工場から、2024年度までに37工場へ拡大します。さらにCONTRIBUTION IMPACTは、社会への削減貢献量を2024年度3,830万トンを生み出します。
また、循環型経済(サーキュラーエコノミー、以下CE)の取り組みを強化します。ひとつは工場廃棄物のリサイクル率で、廃棄物処理の手段が整っていない国や地域が残るなか、製品設計の見直しや分別の徹底などで、グローバルでリサイクル率99%以上を常態化します。再生樹脂の使用拡大に関しては、3年間で使用する量を前中期期間(2019~21年度)の2倍以上となる90,000トンまで増やします。そして、前中期期間で完成した既存事業とCEの関連性マップに基づき、CE型事業モデルの創出に力を入れてまいります。セルロース混合樹脂の事業展開など2021年度には6つのCE型事業がありましたが、2024年度までに家電サブスク事業、電動アシスト自転車のシェア事業など、13以上の事業を展開します。
さらにGIP2024と同時に2030年度の目標値も定めました。既に2021年5月にコミットしている、自社工場・オフィスの、スコープ1,2の排出量を実質ゼロにする取り組みのほか、スコープ3では、くらし事業領域での省エネを徹底しOWN IMPACT 3,145万トンを目指します。
CONTRIBUTION IMPACTでは、「電化」「エネルギー効率」「水素」の分野を中心に、事業の競争力を高め、9,300万トンの削減貢献量を目指します。
一方で、この削減貢献量は共通的な算定方法が確立されていません。10年後には、算定方法の標準化が進み、当社グループが現在採用している方法と異なるものになれば、その時点で見直しが必要なものは修正しつつ、これらの目標を順次達成し、一刻も早いカーボンニュートラル社会の実現に貢献できるよう取り組んでまいります。
なお、継続課題は、環境行動指針に基づき、課題の大きさや社会との共感を考慮して、事業会社や地域の特性・ニーズに合わせて設定しています。
GREEN IMPACT PLAN 2024と2030年度目標

※1 GHGプロトコル(排出量の算定・報告の基準)による区分
※2 CO2削減量は2020年度を起点に差分を表記
※3 CO2削減貢献量は、当社グループの製品・サービスがないと仮定した場合の生涯CO2排出量から、導入後の生涯CO2排出量を差し引いた量であり、2020年の排出係数で算出
※4 再資源化量/(再資源化量+最終処分量)
※5 当社グループの製品に利用された再生樹脂に含まれる再生材の質量

※6 製品の買い替え等によるCO2削減貢献量(2020年度1,099万トン・2024年度630万トン)を含む
脱炭素エネルギーの普及
当社グループは水素の本格活用という再生可能エネルギーの導入拡大に向けた新たな選択肢の提案を通じて、脱炭素社会の実現に貢献しています。具体的には、小型で業界最高効率56%を実現した5kW出力の純水素型燃料電池「H2 KIBOU」を開発し、2021年10月に業務用途として発売しました。複数台を連結制御する技術を搭載することで、電力需要に応じて発電出力のスケールアウト※7が可能になることに加え、建物の屋上や狭小地などへの設置が可能となりました。また、純水素型燃料電池と太陽電池、リチウムイオン蓄電池の三種類の電池を組み合わせた自家発電により事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄う「RE100ソリューション」を発表、2022年度から草津拠点で実証を開始します。
※7 処理を並列化、分散化してシステム全体の性能を向上させること


環境行動計画「グリーンプラン2021」
グリーンプラン2018の完遂を受け、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立に向け、クリーンなエネルギーでより良く快適にくらせる社会を目指すパナソニック環境ビジョン2050の実現に向けて、2019年度から2021年度までの計画として、グリーンプラン2021を定めました。
グリーンプラン2021では、環境ビジョン2050実現に向けた重点課題「エネルギー」「資源」に重きをおいた目標を設定しました。なお、重点課題以外は、環境行動指針に基づき、環境課題、社会との共感を考慮し、継続課題として、集約簡素化した目標を設定しました。2050年に向けて「創るエネルギー」が、「使うエネルギー」を超えることに挑戦し、かつ早期実現に貢献すべく取り組んできました。
エネルギーに関して、製品・サービスにおいては、「創るエネルギー量の拡大」、「使うエネルギーの削減貢献量の拡大」に取り組みました。当社グループの製品・サービスがお客様のところで使われる際に、当社グループのエネルギー削減努力を示す指標として、製品・サービスを通じたエネルギー削減貢献量の拡大に注力してきました。この指標は、社会全体におけるCO2排出総量ピークアウトの早期実現へ貢献すべく、当社グループのCO2削減努力を示す指標である、製品・サービスを通じたCO2削減貢献量の取り組みと同一で、エネルギー削減貢献量をCO2に換算すればCO2削減貢献量となります。
エネルギーに関して、⼯場においては、「CO2ゼロモデル⼯場の推進」、「再生可能エネルギー利用拡大」、「エネルギーミニマム生産の推進」に取り組んできました。
生産活動では、徹底した省エネ施策をグローバル全⼯場で実施し、使うエネルギー並びにCO2排出量の削減を進めてきました。
また、資源に関しては、「サーキュラーエコノミー型事業の創出」、「投入資源を減らし循環資源の活用を拡大」、「グローバルで⼯場廃棄物をゼロエミッション化」に取り組んできました。
また継続課題として、⽔、化学物質、生物多様性に関する課題、地域社会貢献および次世代育成の取り組みを推進するとともに、⼯場における環境汚染防⽌と製品に関する法令の順守徹底に取り組んできました。
社会へのよりよい影響を広げていくために、パナソニックグループだけでなく、サプライチェーン全体にわたって様々なパートナー様と連携を深め、環境活動に取り組んできました。
2021年度の目標達成に向け、この環境行動計画を実践してきました。
環境行動計画「グリーンプラン2021」と実績

※1 事業活動、およびその活動で生み出した製品・サービスが使用するエネルギー
※2 事業活動、およびその活動で生み出した製品・サービスが創出・活用するクリーンなエネルギー
※3 製品の省エネ性能改善がないと仮定した場合の想定エネルギー使用量から省エネ性能改善後のエネルギー使用量を差し引いたエネルギー量
※4 当社グループの主要製品による削減貢献量
※5 他社製品に組み込まれる部材やソリューションなどによる削減貢献量
※6 日本、中国・北東アジア、東南アジア・大洋州・インド・南アジア・中東阿、北米・中南米、欧州・CISの5地域
※7 自社拠点設置の再生可能エネルギー発電設備で発電した再生可能エネルギー(太陽光・風力・バイオマスなど)のうち、自社拠点での使用量
※8 当社グループの製品に利用された再生樹脂に含まれる再生材の質量
※9 再資源化量/(再資源化量+最終処分量)
製品・サービスによる創るエネルギー量
製品・サービスによる「創るエネルギー量」には、当社グループの製品がお客様のもとで発電する「創出」と、蓄えた電力をお客様のもとで使用する「活用」があります。具体的には、太陽光発電システム、燃料電池による発電量を創出、車載電池、定置用蓄電池などからの使用量を活用としています。製品・サービスによる「創るエネルギー量」は、創出と活用を合わせたものであり、当社グループの製品・サービスがお客様のもとで創出・活用するエネルギーの拡大努力を示す指標として数値目標を設定しています。
2021年度の実績は13TWhでした。
太陽電池の販売は継続していますが、マレーシア工場および島根工場における太陽電池の生産終息が影響し、目標未達となりました。
同様の理由で、使う:創るの比率も目標に未達となりました。
製品・サービスによる使うエネルギー削減貢献量
当社グループの定める、製品・サービスによる使うエネルギー量は、当社グループの製品がお客様のもとで使用するエネルギー量と定義しています。製品の省エネ性能を向上させることで、製品・サービスによる使うエネルギー量の削減を進めていきます。
製品・サービスによる使うエネルギー量の削減を進めるために、「使うエネルギーの削減貢献量」を導入しました。「使うエネルギーの削減貢献量」とは、2013年度からの製品の省エネ性能向上がないと仮定した場合の想定エネルギー使用量から実際のエネルギー使用量を差し引いた量と定義しており、エネルギー削減の継続的な努力を示す指標として数値目標を設定しています。
「使うエネルギーの削減貢献量」の内、当社グループ最終製品によるものを直接貢献※10、当社グループ最終製品以外の製品・サービスによるものを間接貢献※11と区分しています。 間接貢献は、当社グループの中間製品やサービスが支えている他社最終製品でのエネルギー削減効果を表します。 2021年度の「使うエネルギーの削減貢献量」は、35TWhでした。内訳は、直接貢献32TWh、間接貢献2.4TWhです。
※10 家庭用エアコン、業務用エアコン、照明器具・ランプ、家庭用冷蔵庫、業務用冷蔵庫、液晶テレビ、洗濯乾燥機、全自動洗濯機、食器洗い乾燥機、IHクッキングヒーター、エコキュート、バス換気乾燥機、加湿器、除湿機、空気清浄機、換気扇、扇風機、ジャー炊飯器、電子レンジ、温水洗浄便座、アイロン、ドライヤー、電気シャワー、電気温?器、電気カーペット、掃除機、ジャーポット、レンジフード、プロジェクター、実装機など
※11 間接貢献の対象:モータ、熱交換気ユニット
使うエネルギー量の削減は、他方でGHG排出量の削減でもあります。使うエネルギーの削減貢献量をCO2に換算※12した「CO2削減貢献量」は、18Mtでした。
※12 地域別のCO2排出係数(kg-CO2/kWh)は、0.487(日本)、0.277(欧州)、0.383(北米)、0.623(中国・北東アジア)、0.723(インド・南アジア)、0.386(東南アジア・大洋州)、0.252(中南米)、0.616(中東阿)を使用
創るエネルギー/省エネルギー事業の拡大
2050年にエネルギー自給率48.9%をめざすエコアイランド宮古島では、2011年から島嶼型スマートコミュニティ実証事業が実施され、家庭・事業所・農地にエネルギーマネジメントシステムの導入が進んでいます。
2016年以降にはクラウド制御システムの開発に移行し、「エコパーク宮古」の実証サイトではエコキュートなどの蓄エネ設備を標準プロトコルECHONETLite※13を用いてマルチベンダ環境※14における制御・動作検証が実施され、当社グループの製品が貢献しています。
また、高容量の車載用リチウムイオン電池の導入拡大、北米新ライン稼働が寄与し、車載事業の2021年度の売上高は、前年比145%となりました。
※13 経産省が推奨するスマートハウスを構成するHEMSの標準通信規約
※14 異なるメーカーの機器を組み合わせた環境