4つのプログラムを1冊にまとめた独自ワークシート集
~職業体験の事前授業として、連続性をもたせた取り組み~
パワーアップ情報ファイルの実践校訪問では、『私の行き方発見プログラム』で提供している「教材」と「出前授業」をより効果的に活用するための各校での特色ある実践等を紹介しています。
今回は、4つ全てのプログラム(①会社の役割発見/②職業と能力の関係発見/③職場体験での仕事発見/④自分の“行き方”発見)を活用した大阪市立港中学校(大阪市港区/生徒数237名)を訪問し、2学年担当の大利里美先生から、職業体験の事前授業としての活用法についてお話を伺いました。ポイントは以下の3つです。
大阪市立港中学校での取り組みのポイント
【ポイント1】「役割カード」にあらかじめ両面テープを貼付(プログラム①)
【ポイント2】「エピソードシート」をアレンジし解答は選択式に(プログラム②)
【ポイント3】 4つのプログラムを1冊にまとめた独自ワークシート集(全プログラム)
【ポイント1】「役割カード」にあらかじめ両面テープを貼付(プログラム①)
- 「プログラム①:会社の役割発見」の主なねらいは、社会には多様な職業・職種があることに気づき、それぞれの役割の人が連携をしながら会社が成り立っていることを理解することです。
- プログラム後半のグループワークでは、家電製品をつくる会社の中に、どのような役割があるか、「役割カード」の分類を通して理解させます。
- まず、生徒は「役割カード1:モノづくりに直接関わる役割(18種類)」をグループで話し合って分類し、「企画」「開発」「製造」「物流」「販売」「アフターサービス」の6つの工程が書かれた「役割台紙」に配置します。
- 港中学校では、「役割カード」の1枚1枚に番号を振り、どのカードについて話しているのか、一目でわかるように工夫しました。また、裏面にあらかじめ両面テープを貼り、「役割台紙」に配置、固定する作業を簡略化しました。その効果について、大利先生は「糊などで貼る作業は手間がかかり、作業ばかりに気を取られてしまう生徒が出てくる可能性があります。両面テープをあらかじめ付けておけば、台紙に簡単に貼り付けることができ、集中力を持続することにもつながります」と、振り返りました。
役割カードは番号を振り、裏に両面テープを貼った。
【ポイント2】「エピソードシート」をアレンジし解答は選択式に(プログラム②)
- 「プログラム②:職業と能力の関係発見」の主なねらいは、会社(社会)でそれぞれの役割を担うためにはどのような能力が必要なのかを考えることです。
- ティーチャーズガイドに記載している基本の授業案では、「設計」「商品企画」の役割に関する「エピソードシート」を読み、役割を担うために必要な「能力」や「態度」を考えるワークとなっています。
- 港中学校では、「課題発見力」や「情報収集力」など、生徒にとって使い慣れない言葉を解答するのは難しいと考え、ワークシートの解答編を利用して独自のワークシートを作成、解答を選択式にして、クイズ感覚で取り組むワークにアレンジしました。
- あらかじめ用意した選択肢で、理解が難しいと思われる言葉については、事前に教員が説明を加えました。
- 2つのエピソードシートにアルファベッドを振り、「エピソードA」「エピソードB」としました。また、選択肢、下線部分にもそれぞれ番号を振ったことで、グループワークを効率的に行うことができました。
選択式にアレンジしたワークシート
問題となる下線部分の後ろに回答の( )を設けた。
【ポイント3】4つのプログラムを1冊にまとめた独自ワークシート集
- 港中学校では2年生の9月に職業体験を行います。プログラム①、②、④は7月の期末テスト後に職場体験の導入として行い、プログラム③は職場体験の直前、体験先決定後に実施しました。
- 4つのプログラムを1冊にまとめた独自のワークシート集を作成しました。冊子は、各授業の前に生徒に配付し、授業後に回収するようにしました。単独でワークシートを使用すると、その場限りのものになってしまいますが、4つのプログラムを1冊にまとめることで、授業の間隔が開いても、取り組みに連続性を持たせることができました。
- ワークシート集は保護者懇談の際、保護者に返すようにしました。理由として、大利先生は「ワークシート集を保護者に渡すことで、学校がどのような取り組みをしているのか、発信することができます」と、説明されました。港中学校では、他にも、「PTA実行委員会」で報告したり、「学年だより」で紹介するなど、様々な方法でこの取り組みを発信しています。
4つのプログラムのワークシートをアレンジし、8頁の冊子にまとめた。
港中学校では、2年生の9月に行う職場体験を有意義なものにするため、早くから計画的に本プログラムを実施しました。大利先生は「職場体験を単独で行う場合、体験先以外の仕事を知る機会はあまりありません。しかし、教材を活用したことで他の仕事や企業についても知ることができ、たいへん良かったと思います。このプログラムは『正解すること』だけが目的ではありません。取り組みを通じて、普段あまり意識することがない『仕事や職業について考えること』が大事だと思います」と語り、各学校でのキャリア教育全体計画の中で、『私の行き方発見プログラム』の位置付けを明確にすることの重要性を強調しました。