2024年2月1日、第4回キャリア教育オンラインセミナーが開催されました。本セミナーは、より質の高いキャリア教育を実施したいと日々努力している先生方を応援するために、キャリア教育についての学びをお届けするセミナーです。本記事では、その内容をご紹介します。

第4回 中学校教員対象 キャリア教育オンラインセミナー 実践校に学ぶ!企業プログラムを活用したキャリア教育指導計画 2024年2月1日(木)16:00~17:30

【第一部】実践校に学ぶ!企業プログラムを活用したキャリア教育指導計画

第一部では、「企業プログラムを活用したキャリア教育の指導計画」をテーマに、長岡京市立長岡第二中学校 教諭 富岡慧先生、三田学園中学校高等学校 教頭 平山茂先生からお話を伺いました。長岡第二中学校は2015年度、三田学園中学校は2018年度から「私の行き方発見プログラム」を導入されており、キャリア教育での企業プログラム活用を長年実践されています。そのポイントや活用事例をお話いただきました。

スピーカーのご紹介 富岡 慧 先生(長岡京市立長岡第二中学校 教諭)2学年主任。「私の行き方発見プログラム」はクラス担任で1回、学年主任で2回活用した。担当教科は保健体育。野球部顧問。、平山 茂 先生(三田学園中学校高等学校 教頭)中高一貫校中学教頭。総合学習としてキャリア教育を推進。産学連携という位置づけで「私の行き方発見プログラム」を活用。担当教科は英語。

■職業観、勤労観を深める系統立ったキャリア教育につなげるため導入

---まず、「私の行き方発見プログラム」導入の経緯をお聞かせください。

富岡先生:

8年前、現在の教務主任が本校に赴任した際に導入しました。彼が前任校で活用していたそうで、本校キャリア教育の課題解決にも役立つと思い、導入を提案したと聞いています。それまで本校のキャリア教育は、職業講話や職場体験に向けてのマナー指導がほとんどでした。一部、教育系企業のプログラムを使用していましたが、内容は自己の適正把握の要素が強く、実際の職業や働くことを考えるためのプログラムではありませんでした。そのため、職業観や勤労観を深める系統立てた指導ができていないこと、また教員自身が、教職以外の知識がなく、指導法がわからないということが課題でした。もっと系統立ててキャリア教育を行う方法があればと感じていた時に、教務主任が「私の行き方発見プログラム」を紹介したそうです。コロナによる職場体験学習の中止などイレギュラーもあるので、毎年の状況にあわせて活用方法を変えながら、8年間継続してこのプログラムを実施しています。

平山先生:

2018年度から「私の行き方発見プログラム」を導入しています。本校は私学で、いわゆる職場体験を行っていません。導入当初は、職場体験の代わりとして、中学2年生でプログラム①を、3年生で出前授業を実施していました。コロナの影響で、2021、2022年度は活用できませんでしたが、2023年度は活用法を見直し、中学1年生を対象に、プログラム①②④と出前授業を実施しました。
見直しのきっかけとなったのが、文部科学省が作成している冊子『2023年中学校・高等学校キャリア教育の手引き』(第1章P27)に挙げられているキャリア教育の課題感で、特に「社会への接続」と「『働くこと』の現実や必要な資質・能力につなげていく指導」というところに本校の課題もあると感じ、1年生で本プログラムを採用することにしました。

企業プログラムを活用しようと思ったきっかけ

■独自のプログラムと企業プログラムを併用した、中高通してのキャリア教育

---「私の行き方発見プログラム」や他の企業プログラムを活用したキャリア教育の取り組みについて、具体的に教えてください。

平山先生:

本校のキャリア教育は学習指導要領にあるように「生徒が自ら生き方を考え主体的に進路を選択することができる」ことを目指しています。そのため、生徒が自らの将来の職業選択や生き方を考え、 それを実現するための進路選定や、その目標に向けての適切な準備が実現できるような、アドバイスや相談、 職業見学や職業人による講演会など、生徒にとっての動機づけになる機会を提供しています。
本校は中高一貫校で、連続して高校でもキャリア教育を進めていくことになりますので、進学に向けた、あるいは将来の職業に向けた研究機関や企業への訪問プログラムや大学合同説明会の開催なども独自に実施しています。

「私の行き方発見プログラム」の活用法としては、中学校1年生でまず自己理解を深めるようなワークを独自に行い、2学期に3コマを使い、プログラム①②と出前授業、3学期に2コマを使いプログラム④と1年の振り返りを行いました。
2年生、3年生では違う企業プログラムを展開しています。2年生では企業の構造より企業の活動を意識していきたいということで、「課題特定」「課題解決」ができるようにサプライチェーン、イノベーションといったキーワードに着目しながら「社会活動」をテーマに取り組んでいます。
3年生では、自分の進路を考えていくための価値観、判断基準を様々なワークを通じて深掘りし、進路の決め方を考える学習に取り組んでいます。
そこから、高校で自分の「在り方・生き方」を考えられるようになってほしいので、中学では、そのきっかけ作りをしています。

富岡先生:

本校のキャリア教育の具体的な取り組みとしては、1年生では1学期にワークシートを使った自己分析、2学期には職業講話を行いました。3学期には、職場体験に向けた学習の一環で職業について考えます。そこで、「私の行き方発見プログラム」のプログラム①②を用いて「仕事」と「仕事に必要な能力」について学習します。
2年生では6月に職場体験があります。その事前の取り組みとしてプログラム③を活用しています。その際、過去の職場体験先でお世話になった事業者によるアンケートの内容を伝え、自分たちがお世話になる実際の事業者さんたちの声を知ることで、挨拶の重要性などにも気づくことができ、職場体験に臨む意識を高めることができていると感じています。
職場体験後は、外部の方に講話をお願いしています。それ以降は高校への進路指導がメインになります。

■8年間継続できている最大の理由は、教員の負担が少ないこと

---「私の行き方発見プログラム」を活用するメリットを教えてください。

富岡先生:

最大の理由は、クラス担任もキャリア教育担当も負担が少ないことです。「私の行き方発見プログラム」には現場の負担が軽減されるような工夫がたくさんあります。例えば、指導案があること、4時間分の系統立てた授業数があることが負担軽減の理由として挙げられます。
他に、無償であることやオンラインの授業では、学校からでも自宅からでも授業が受けられることも継続して活用している理由だと思います。

また、同じプログラムを継続して活用することで、教員自身の知見も高まっていくので、2回目以降はさらに負担が減ります。そのため、継続して行うことのメリットはとても大きいと感じています。

8年間継続出来ている理由 最大の理由は、担任も担当も負担が少ない!・授業を行う担任の負担が少なく、進めやすい。・指導案があることでイメージを持ちやすい。・生徒の活動があることで、話し続けなければならない不安感が少ない。・4時間分の授業案を生み出すのはものすごく大変。【その他】・自己理解や一種類にとどまらず、さまざまな働き方に触れられる。・無償であること。・導入した教員がまだ本校に在籍していること。・職場体験に行けない別室登校の生徒にも、キャリア教育を行うことができる。

■学校とは異なる企業の組織構造を学べるところがメリット

平山先生:

メリットとしては、生徒が過ごしている学校とは異なる企業のなかの組織構造を学べることです。外からは見えにくい企業のなかの職種や、様々な職種が協力して成り立っているということが学べる点は、とても良いと思います。逆に、モノづくり企業以外の業種、ベンチャー企業やユーチューバーなど新しい業種の組織構造については、あまり触れられていませんので、補足する必要があるかなと思っています。

■中心となる役割の先生がいることでプログラム活用が定着

---企業のプログラムを継続・定着させるポイントがありましたら、教えてください。

平山先生:

本校は私学のため、教員の異動は少ないですが、クラス数が多く、常勤、非常勤合わせると教員も100名程度になります。その中で、プログラム活用を続けて行くためには、中心になる役割の人が必要だと思っています。このプログラムは、今は教頭である自分が中心となって推進しているため、次の学年につなぐことができ、それが定着している要因だと思います。

■職場体験をこの先の未来につなげるために『発展編』活用に期待

---多くの先生方から職場体験が単発で終わってしまうという声を聞きます。職場体験を学びに繋げて「線」にしていくという部分について、工夫や気を付けているポイントを教えてください。

富岡先生:

職場体験が単発で終わってしまうというのは私自身も感じているところです。そこで、生徒が社会の課題を考えて未来につなげていくために、職場体験後の3年時に「私の行き方発見プログラム」の発展編を取り入れることを考えています。このプログラムは、生徒の今の経験(職場体験)と、この先の未来をつなげる教材になってくれるのではないかと期待しています

---最後にご参加いただいた皆さんにメッセージをお願いします。

富岡先生:

私自身、キャリア教育担当ではないのですが、2年の学年主任という立場で発表させていただきました。発表することで自分自身、深めることもできましたし、また、平山先生のお話を聞いて、それもいいなと思うこともありました。これからも、企業のプログラムを活用しながら、子どもたちのためになるキャリア教育ができたらと思っていますので、一緒にがんばりましょう。

平山先生:

本日はお時間をいただき、ありがとうございました。みなさまも同様だと思いますが、キャリア教育を進めていく上で、たくさんの課題があると思います。そういった課題をみなさまと共有させていただき、少しでも解決できて、生徒のためになれればと思っております。

【第二部】「私の行き方発見プログラム」2024年度版のご紹介

「私の行き方発見プログラム」の教材は、先生方から寄せられたご意見をもとに、毎年、アップデートを行っています。セミナーの第二部では、2024年3月1日受付開始予定の「私の行き方発見プログラム」2024年度版について紹介しました。

【2024年度版 改訂のポイント】グーグルスライドに対応、授業スライドを見やすく改良、統計データを更新、合同出前授業を開催予定

第二部では各プログラムを紹介する動画をご覧いただきました

第一部、第二部の終了後には質疑応答が行われ、「基礎的・汎用的能力の育成についての考え」や「プログラムをキャリアパスポートに活かしているか」など、活発なご質問をいただきました。

■第一部、第二部ともに、参加者から嬉しいお声をいただきました。

【第一部】実践校に学ぶ!企業プログラムを活用したキャリア教育指導計画

  • 活用されている先生方の話を聞くことができ、自分がどう活用するかのイメージが湧いた。
  • 同じ方向性に進んでいる学校を確認できた。
  • 職業体験に対する考え方、それを含めたプログラムの使い方や意見が聴けたので良かった。

【第二部】「私の行き方発見プログラム」2024年度版のご紹介

  • 毎年改編されていることがわかり、ぜひ導入したいと感じました。
  • 職場体験に向けての事前学習として具体的に活用する場面が想定できた。
    また、今本校にあるキャリア教育の教材やプログラムと合わせて使うこともイメージできた。
  • たゆまず改善を続ける企業の姿勢に感心した。

■第4回キャリア教育オンラインセミナーを終えて

第4回キャリア教育オンラインセミナーでは、多くの先生から「キャリア教育指導計画を立てる上で、企業プログラムを活用したいが、具体的な活用方法が知りたい」という声をいただき、「私の行き方発見プログラム」を長年ご活用いただいておられる長岡京市立長岡第二中学校から富岡先生、三田学園中学校高等学校から平山先生のお二人にご登壇いただきました。
企業が提供させていただくプログラムは多くの先生方にご活用いただいて初めて意味を持ちます。その意味でも常に謙虚に、先生方のお声に耳を傾け、よりよいプログラムを模索し続けることの重要性をあらためて認識しました。
「私の行き方発見プログラム」は、先生方の声を反映し、今後もよりよいプログラム作りに取り組んで参ります。ご質問やご要望等がございましたら、「私の行き方発見プログラム」事務局までお問合せください。

【私の行き方発見プログラム事務局】
メール:ikikata@plus-m.co.jp
電話:03-5541-7080 FAX:03-8222-4823