パナソニックでは、キャリア教育に関わる立場におられる中学校の先生方を対象に、企業と連携してより質の高いキャリア教育を実践するための情報を提供することを目的としたオンラインセミナーを定期的に実施しています。
2024年8月1日、第5回キャリア教育オンラインセミナーを開催いたしました。今回のセミナーは、「私の行き方発見プログラム」をまだ使ったことがない学校や新規でお申し込みいただいた学校の先生を主な対象と位置づけ、過去に本プログラムを活用いただいた学校の先生を登壇者としてお招きし、第一部では「プログラム①『会社の役割発見』模擬授業」、第二部では「私の行き方発見プログラム活用事例紹介」を行いました。
「私の行き方発見プログラム」教材紹介
第一部の前に、「私の行き方発見プログラム」教材紹介動画を上映、その後、プログラムの特長などを紹介しました。
◇第一部:プログラム①「会社の役割発見」模擬授業
第一部では、釧路市立桜が丘中学校教諭、菊地 浩行(きくち ひろゆき)先生にご登壇いただき「私の行き方発見プログラム」、基本編プログラム①『会社の役割発見』の模擬授業を実施していただきました。
◆釧路市立桜が丘中学校 菊地 浩行先生
これまでも、総合的な学習の時間にキャリア学習(仕事調べ・職場体験等)の取り組みは行っていましたが、より現実的な「起業」や「労働(給与)」的な視点もあってもいいのではないかと考えていました。そこで、様々な角度からの資料が豊富で、各校の考えで再構成が可能な「私の行き方発見プログラム」を活用することにしました。
■授業プログラム①と②を1コマで実施
本校では、「私の行き方発見プログラム」の授業を教育課程のひとつとしてではなく、総合的な学習の時間の予備時数を使って実施しました。そのため、多くの時間を確保することが難しく、1コマ内でプログラム①とプログラム②を活用する形式で、スライドを独自にアレンジして授業を展開しました。
「授業の内容」を紹介するスライド。テーマ1と2はプログラム①、テーマ3はプログラム②の内容に合わせアレンジ。
■展開1:クイズ形式で日本の会社や仕事について考える(プログラム①)
仕事や働くことを考える最初のステップとして、クイズ形式で日本の会社や産業について学習しました。
■展開2:役割カードを使って、モノづくりの会社のさまざまな役割を考える(プログラム①)
モノづくり企業を例に挙げ、家電製品が届くまでの工程を考えました。その後、役割カードを使い、様々な仕事や役割の人々が連携して働いていることを学習しました。
■展開3:身近な職業から必要な力を考える(プログラム②)
続いて、プログラム②の「職業と能力の関係発見」のスライドを使い、身近な職業から必要な力を考えました。
■展開4:エピソードシートを使って重要な能力や態度を考える(プログラム②)
生徒用ワークシートのエピソードシートを使い、その仕事に重要な能力や態度を考えました。
■ポイント1:生徒の活動を重視し、スライドを限定して簡潔に展開
2時間分の授業を1時間で行う展開でしたが、役割カードの並べ替えや、エピソードシートを使った演習など、生徒の活動を中心にして「聞くだけ」の授業にならないよう工夫をしました。そのため、スライドの枚数を限定し、簡潔に進めました。
■ポイント2:「参考資料集」収録の資料を活用
生徒の興味を喚起するため、要所で「参考資料集」に収納されている資料を差し込んで授業を展開しました。
付属の参考資料集より。
「人生における必要なお金」などのスライドを抜粋して活用
■生徒の感想
授業後、生徒からは「仕事にはいろいろな役割があることがわかった」「将来の自分がどんな仕事をしているか考えさせられた」などの感想がありました。また、「コミュニケーション能力の必要性や重要性」というような記載が数名見られたことは、授業の成果としてあげてもよいかと思っています。
現在、多くの企業が、学校をサポートする取り組みを行っています。「私の行き方発見プログラム」もそうです。こういった取り組みを無理のない範囲で上手に活用したり、取り入れたりすることで、学校現場の働き方や風向きも変わってくるのではないかと思っています。そして、それらの活動が同時に、教員自身が『異業種に学ぶ』ことにつながり、自身の成長にもつながるのではないかと思っています。
◇第二部「私の行き方発見プログラム」活用事例紹介
第二部では、横浜市立本牧中学校教諭、遠藤 来人(えんどう らいと)先生、弘前市立船沢中学校教諭、中野 綾(なかの りょう)先生にご登壇いただき「私の行き方発見プログラム」教材の活用事例についてお話しいただきました。
◆横浜市立本牧中学校 遠藤 来人先生
ここ数年、教育現場では、「コロナウイルスの感染拡大防止」、「アクティブラーニング」、「生徒の主体性の向上」、「体験学習の重視」など、様々な観点が必要となってきています。そこで、なにか新しい取り組みを始めたいと思っていたところ、出会った教材が「私の行き方発見プログラム」でした。
本校では、2023年度「私の行き方発見プログラム」を取り入れ、1年生でプログラム①「会社の役割発見」とプログラム②「職業と能力の関係発見」を行い、その後、まとめとして、出前授業を実施しました。
プログラム実施後、教員の間で話し合ったところ、「企業内での役割の明確化ができた」「仕事をする上で必要な知識や態度、考え方などを確認することができた」など高評価でした。一方で、「モノづくりに関わる仕事以外の内容も扱いたい」「もう少し、生徒が主体的に活動できる場面がほしい」という声があり、2024年度は 「私の行き方発見プログラム」を学年ごとに振り分け、生徒たちが「主体的」に取り組める内容を重視し、プログラムを再編しました。
1年生では他企業のプログラムや講演会等と「私の行き方発見プログラム」のプログラム①②の教材を活用し、「仕事とは?いろいろな仕事が誰のために?何のために役立っているの?」をはじめとした授業に取り組みました。
2年生では、校内で9社による職業体験を実施、その際、プログラム③の資料を参考にしました。
3年生では、「これからの社会と求められる役割と考え方」と題した講演会を実施する予定で、その際は、「私の行き方発見プログラム」発展編のワークシートを活用します。
教職員という職は、子どもたちの未来に一番近くで接触しているのにも関わらず、一番「社会」から隔離されているという立場にあります。実社会で活躍されている方々から仕事の話や体験談を聞くことは、生徒のみならず教職員への刺激にもなり、非常に価値のあるもので、それが、外部リソースを活用するメリットのひとつだと思います。日々の授業や業務の連続で忙しいことも多々あるとは思います。そういったなかで「私の行き方発見プログラム」は新しいことに挑戦するとても良い教材だと感じました。
◆弘前市立船沢中学校 中野 綾先生
このプログラムを導入した理由は、3つあります。まずは、「①自己を正しく理解し、主体的に進路を選択することを通して、自己実現のために努力する態度を育成する」、「②職業観、勤労観、人生観についての継続的な指導を通して、卒業後の生活への適応やさらなる進歩に向けて努力する態度や能力を育てる」という本校のキャリア教育の目標と「私の行き方発見プログラム」のテーマが合致していることです。
二つ目は無償で実施できること。無償で教材提供やパナソニック社員による出前授業を受けられるというのは魅力的でした。
三つ目は、まずは自分が担当している学年で先行実施し、キャリア教育効果を検証することでした。
2023年度、職場体験の事前事後学習としてプログラム①〜③を2年生を対象に実施しました。事後学習では、参考資料集を活用し、給与や生活費について考え、社会に出た時に必要となる能力などについて学習しました。参考資料は、知識を体験と結び付けることができるので、生徒はより具体的に理解を深めることができました。
2024年度は3年生を対象に、進路学習の一環としてプログラム④を実施。「自分の価値観を発見しよう」をテーマに、自分にとっての大切な言葉を探し、“行き方”に関する自分なりの価値観について考えました。
7月9日には、全校を対象にオンラインによる出前授業を実施しました。パナソニック社員から「自分の今が未来につながる」をテーマに話をしていただき、その後、ワークシートを使い「5年後のなりたい自分」を具体的に考え、全体で発表・共有しました。堂々と自分の夢や目標について発表している姿に、オンライン出前授業の確かな成果を感じました。
発展編の①と②は2学期後半に実施する予定です。すべてのプログラムを終えて、どのような生徒の変容が見られかを楽しみにしています。
「私の行き方発見プログラム」は、現場のキャリア教育とはまた違った視点と切り口でアプローチしており、そのことが深い学びと気づきを生徒に与えてくれます。そして、パワーポイントやティーチャーズガイドが付属してあるので、授業準備が負担なくできます。また、付属の参考資料集も役立ち、生徒の実態に応じてアレンジできるところも利点です。
◇質疑応答
第一部と第二部の終わりに質疑応答を行いました。第一部では、「プログラム実施後の生徒の変容」に関する質問がありました。第二部終了後は、「職場体験はどのような職種の方にお願いしたのか」という質問に回答していただきました。
参加いただいた先生から、これら以外にも「導入にあたって、どのように他の先生を説得したか?」、「プログラムを教育課程のどこに組み込んだか?」など、多くの質問をいただき、それぞれの先生から回答をいただきました。
◇参加いただいた先生方の感想
- プログラムを具体的にどのように授業に組み込むか、や、生徒の反応などが知れてよかったです。
- 実際にどのような投げかけを生徒にしていくのか、どの資料を使っていくか具体的に知れた。
- 実際の流れが見えたのでとても良かったです。資料の使い方や、先生方の思いに合わせて教材を使えるということがよくわかりました。
- 子どもの反応が具体的でわかりやすかったです。
- 生徒に向けた授業の視点で語られていたので想像しやすかった。
- 生徒の意見・感想なども交えて、どのように進めていったのかがわかりやすかった。
第一部で「模擬授業」を行っていただいた釧路市立桜が丘中学校は、時数確保が難しい中、2つのプログラムを1コマで実践する工夫についてお話いただきました。第二部「活用事例紹介」に登場していただいた横浜市立本牧中学校は、プログラムをそのまま使うのではなく、自校のキャリア教育に合わせた形で資料やワークシートをアレンジして活用する方法をご紹介いただきました。また、弘前市立船沢中学校には、2〜3年生の2年間で全プログラムに取り組んだ実践例についてお話いただきました。どのお話しも具体的でわかりやすく、ご参加いただいた先生方には、自校で活用するイメージを持っていただけたのではないかと思います。
「私の行き方発見プログラム」は、キャリア教育に携わる先生方にお役立ていただけるよう、オンラインセミナーやメルマガ、活用のヒント集で紹介しています。