使用済み製品リサイクルのグローバルでの取り組み
使用済み製品リサイクルのグローバルでの取り組み
資源の有効利用や環境汚染防止などを目的として、世界各国ではリサイクルに関する法制度や仕組みの整備が進められています。日本では特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)や資源有効利用促進法が施行されており、EUではWEEE(Waste Electrical and Electronic Equipment:廃電気電子機器)指令が、米国の多くの州や、中国でもリサイクルに関する法令が制定・施行されています。パナソニックグループは非OECD諸国への有害廃棄物の移動を規制するバーゼル条約および各国の関連法令の順守はもとより、サードパーティーの活用も含めて、各国のリサイクルインフラの実情に即した最も効率的な仕組みづくりに貢献しています。
2024年度の製品リサイクル実績は以下のとおりです。近年では、国外において各国の事業領域の変革に伴い、回収・リサイクル量の減少傾向にあり、実績重量も横ばいまたは減少傾向にあります。
2024年度実績
日本 | 使用済み家電4品目を約145.3kt再商品化等処理 |
米国 | 使用済み電気電子機器を約110t回収 |
日本における製品リサイクルの取り組み
2001年に4品目を対象とした家電リサイクル法の施行に伴い、メーカーはA・B2つのグループに集約され使用済み家電4品目※1の回収および再商品化等(リサイクル)を実施することになりました。当社グループはAグループに属し、既存インフラを活用した地域分散型処理システムを運営管理する(株)エコロジーネットを(株)東芝様と設立しリサイクルに取り組んでいます。この管理会社は、Aグループ(当社グループをはじめとする18社)のメーカーの委託を受けて、指定引取場所319カ所(A・Bグループ共有)と再商品化工場30カ所を管理運営しています。また当社グループはパナソニック エコテクノロジーセンター(株)(PETEC)、パナソニック エコテクノロジー関東(株)(PETECK)、中部エコテクノロジー(株)(CETEC)※2に出資し、リサイクルしやすい商品の設計のための情報交換を製品の製造事業部と行うとともに、効率的かつより多くの資源を回収・供給できるよう研究開発を進めており、2024年度は使用済み家電4品目を約145.3ktリサイクルしました。
法定リサイクル率※3は段階的に引き上げられてきていますが、パナソニックグループの各リサイクル工場は、製品の特性や使用原材料、リサイクル効率化の観点より適宜リサイクル設備や工程の見直しを行い、法定リサイクル率を上回るリサイクル実績を収めています。
当社グループでは家電リサイクル業界が抱える課題解決に向けて、手作業が多い解体作業の機械化というアプローチで技術開発に着手。国の回収率向上目標の達成に向けた施策の推進により、今後、回収量の増加が見込まれるエアコン室外機に焦点を当てた「廃家電自動解体システム」を開発しました。部品ごとに解体品位を維持したまま、解体工程で最も時間がかかる室外機カバーからコンプレッサー外しまでの工程を自動化することで、より安定的・継続的な家電リサイクルを実現しました。
また、PETECでは、プラスチック選別装置を用いた高品位の単一プラスチック再資源化の取り組みを進めています。詳細は再生樹脂の使用拡大を参照ください。
※1 エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目
※2 PETECは当社グループ単独出資会社、PETECKとCETECは三菱マテリアル(株)様と当社グループの合弁会社
※3 法定リサイクル率=法令で定められたリサイクル率(有価資源重量÷使用済み家電総重量)
法定リサイクル率は2009年と2015年に引き上げられ、現在はエアコン80%以上、ブラウン管式テレビ55%以上、液晶・有機EL・プラズマ式テレビ74%以上、冷蔵庫・冷凍庫70%以上、洗濯機・衣類乾燥機82%以上
欧州・CIS地域における取り組み
WEEE(廃電気電子機器)指令と循環経済
◇ WEEE(Waste Electrical and Electronic Equipment Directive)指令
WEEE指令2012/19/EUとは、2012年7月4日に発行された電気電子機器廃棄物に関する欧州議会・理事会指令2012/19/EUを指し、電気電子機器廃棄物の環境負荷低減を目的とした欧州連合の法律です。廃棄物の再利用、リサイクル、回収を促進し、廃棄の責任を生産者に負わせるものです。当社グループは、これらすべての要求事項に対するソリューションを積極的に開発してきました。当社グループは、欧州で多様な製品を展開しています。EU全域でのWEEE コンプライアンスを管理するために、法的に会社が存在する国の適切なリサイクル制度に直接登録することを方針としています。
◇ 循環経済(Circular Economy)
欧州では、今後の廃棄物関連法整備において、循環型経済が重要な要素となります。欧州では、リサイクルコンテンツの重要性がますます高まっており、各国の法律や入札プロセスにさらに組み込まれるようになります。循環型経済の基準を満たさない製品は、リサイクル料金が高くなります。リサイクルが容易な製品、リサイクル材料を含む製品、修理が容易な製品などは、リサイクル料金が低くなります。当社グループは、このような新しいリサイクル材料の要件に対応するために準備検討しています。
◇ 欧州の気候変動への目標
欧州のグリーンディールとサーキュラーエコノミーの行動計画は、廃棄物、排出量を削減し、資源をより効率的に利用するために、企業にとって大きな圧力となっていますが、当社グループでは、これを単なるコンプライアンスの問題ではなく、チャンスとして捉えています。
◇ 今後の展望
当社グループのサーキュラーエコノミーへの取り組みは、多国籍企業がサステナビリティを中心的な戦略とする時代に適応できることを示しています。リサイクル材の義務化目標に関する法律など、EUの法律が一段と進む中、当社グループはさらなる取り組みを拡大していきます。
北米における取り組み
当社グループは、北米における廃電池や使用済み製品に対するリサイクルシステムの構築・運営を継続的に主導しています。2007年7月にミネソタ州でリサイクル法が施行されたことを契機に、同年9月には(株)東芝様およびシャープ(株)様と共同でアメリカリサイクルマネジメントLLC(MRM)を設立し、テレビ、パソコン、その他の電子機器製品のリサイクルを開始しました。MRMは複数のリサイクル業者数社と提携し、多数の企業から委託を受けて、20州およびコロンビア特別区において回収プログラムを運営しています。2007年の開始以来、MRMの総回収量は17億ポンド(約771kt)を超えました。
廃電池については、1994年に他の電池メーカーと協働してCall2Recycleというプログラムを立ち上げ、全米およびカナダで二次電池のリサイクルプログラムを提供しています。
Call2Recycleは400社以上の企業に回収プログラムと小売店回収ネットワークを提供しており、設立以来、米国内とカナダで118kt以上の一次電池と二次電池を回収しています。
カナダにおける使用済み製品のリサイクルは、アルバータ州政府拡大生産者責任(EPR)法の下、2004年に開始されました。それ以来、10州と2準州でWEEEの法制化が完了しており、それぞれに独自の特徴と要求事項が盛り込まれています。パナソニック カナダはこれらプログラムの調和を図るために、非営利組織である電子製品リサイクル協会(EPRA)の管理のもと、積極的な役割を担っています。2024年のカナダ・オンタリオ州では138tの使用済み製品が回収されました。現在運営されている各州のEPRプログラムがWEEE対応に非常に有効であることが実証されています。
中国における取り組み
中国では、2012年から実施されていた「廃棄電器電子製品回収処理管理条例」に基づく廃棄電器電子製品処理基金の徴収が、2024年1月1日以降、一時停止することが明示されています。今後、回収処理業者への廃家電処理補助金は、国家の一般公共予算(主に税金から)から支払われることになっています。
2017年1月に政府より公布された「生産者責任延伸制度推進方案」や、2020年9月に施行された「固体廃棄物環境汚染防止法」などの関連政策、さらに2022年からはローカル大手家電6社が参加している「廃旧家電回収目標責任制度」の実証、加えて、2024年から始まった消費品の「以旧換新」政策などの動向にも注目し、対応検討を進めています。
東南アジア・大洋州における取り組み
ベトナム
2020年環境保護法は、ベトナム国内における使用済み製品の管理強化など、広範な環境課題への対処に向けた要求事項を定めています。また、政府は「環境保護法の多数の条項を詳述する政令」および「環境保護法の多数の条項の実施を詳述する省令」を発行しています。
これらの規定により、2022年1月1日から一次電池の廃棄物処理に対して、製造業者及び輸入業者に財政的な負担が求められています。Panasonic Sales Vietnam(PSV)は、一次電池の適正な廃棄物処理を支援するための財政的拠出を含め、環境規制への対応を積極的に進めてきました。2022年に市場に投入された一次電池に対して必要な財政的拠出を行い、適切な廃棄物処理を確保しています。
2024年1月1日から充電式電池、2025年1月1日から電子製品についても、製造業者および輸入業者に対して財政的な拠出または自社によるリサイクル管理が求められています。
2025年1月6日には、政府より「環境保護法に基づく拡大生産者責任(EPR)に関する規定を詳細化・補足する政令第05/2025/NĐ-CP」が公布されました。この政令により、充電式電池やその他の電子製品に関するリサイクル義務が拡大され、製造業者・輸入業者は財政的拠出または自社によるリサイクル管理が求められます。
また、2025年2月28日より施行された「通達第07/2025/TT-BTNMT」により、対象製品や包装材の単位重量あたりのリサイクル費用基準(Fs)も公表されました。
2024年4月から2025年3月までの間に、PSVは累計13,100kg以上の電子廃棄物を回収し、認可業者によりリサイクル・処理を実施しました。これは、環境規制の遵守と、電子製品のライフサイクル管理における持続可能な取り組みへのPSVの継続的なコミットメントを示す成果です。
PSVはまた、「政令第05/2025/NĐ-CP」に基づき、必要な製品輸入および財政的拠出に関する申告をベトナム政府に提出しています。PSVは、ベトナムにおける効果的な廃棄物処理および電子廃棄物リサイクル制度の導入を支援するため、今後も政府と緊密に連携していきます。
オーストラリア
オーストラリアでは、2011年にテレビ、パソコンの国家リサイクルスキーム(NTCRS)が策定されました。2021年7月1日から、NTCRSは、2020年リサイクルおよび廃棄物削減法に基づいて制定された、2021年リサイクルおよび廃棄物削減規則(製品管理-テレビおよびコンピューター)に取って代わられ、廃棄物、リサイクル、製品を管理するための新しい法的枠組みを規定しています。現在、国の枠組みはテレビとコンピューター(プリンター、コンピューター部品、周辺機器を含む)を対象としています。
パナソニック オーストラリア(PAU)は、2021年5月以降、この国家スキームの下、政府公認の共同規制協定であるEcycle Solutionsと提携し、法的責任を果たしています。2024年1月から2024年12月までにリサイクルした使用済み製品は20tでした。
2021年4月以降、PAUはバッテリー管理評議会(BSC)にも正会員として加入しています。会員としての義務の一環として、PAUは輸入した電池のリサイクル費用を負担しており、2024年1月から12月の間に輸入された68tの電池についても、リサイクル費用を拠出しています。
シンガポール
シンガポールでは、2021年7月からリサイクル法が施行され、生産者は当局が認定する生産者スキーム(Producer Responsibility Scheme: PRS)に加盟することが義務付けられています。4年度目(2024年7月から2025年6月)は、規制対象の大型家庭用電化製品(LHA)に60%、ポータブルバッテリーに20%の収集目標が設定されました。パナソニック シンガポールはこのスキームの円滑な実施に向けて当局やPRS事業者と密接に連携しています。
2024年1月から2024年12月の間に、合計8,416tの規制された廃棄物がPRS事業者によって収集され、そのうちLHAは重量の合計が90%でした。
その他東南アジア・大洋州諸国
グローバルでの使用済み製品リサイクルの法的責任の規定化の流れに従い、マレーシア、タイ、フィリピン、ニュージーランドでも法策定に向けた動きが加速しています。当社グループでも規制当局や業界団体を通じて協議を進めています。こうした政府や業界団体との連携、リサイクルに関するパイロットプロジェクトへの参画を通して、当社グループは各国において持続可能な使用済み製品の管理政策の確立に向けて貢献していきます。
インドにおける取り組み
インドでは、環境・森林・気候変動省(MoEFCC)により、2023年4月1日から改正された電子廃棄物リサイクル法が施行されました。この改正法では、製品の使用終了時(EoL)やリサイクル後の金属回収量に基づいた拡大生産者責任(EPR)目標が設定されています。この改正規則は、リサイクル能力の強化と重点的な取り組みを目的として導入されました。さらに、2023年の電子廃棄物(管理)規則の追加改正では、収集された電子廃棄物から回収すべき金属の割合がメートルトン単位で定義されており、規定された割合に従って、軟鋼、銅、アルミニウム、金などの主要金属をリサイクル後に回収することが義務付けられています。
また、プラスチック廃棄物および電池廃棄物に関する拡大生産者責任(EPR)法にも、定められた割合に応じたリサイクル可能な成分の含有を義務付ける条項があり、これらの割合は年々増加しています。Panasonic India(PI)では、電子廃棄物法の遵守と消費者への啓発を目的として、2つの強力な取り組みを実施しています。
・「I Recycle」プログラム:PIがすでに導入しているこのプログラムでは、サービスセンターを訪れる既存の顧客に対して、電子廃棄物に関する情報を提供しています。
・「Panasonic Harit Umang」プログラム:過去6年間にわたり若者への啓発活動を行っており、電子廃棄物、プラスチック廃棄物、電池廃棄物の責任ある安全な処理を促進し、将来の循環型経済に向けた科学的リサイクルを支援することで「グリーン・インパクト」を創出しています。PIはまた、業界団体「家電製品製造業協会(CEAMA)」のサステナビリティ・環境委員会の議長も務めており、インド国内のリサイクル活動の現状分析や廃棄物問題に対する長期的な解決策の検討を行っています。さらに、インド商工会議所連盟(FICCI)などの複数の業界団体とも積極的に連携し、より効率的で強固なリサイクルシステムの構築を目指すとともに、より良いガバナンス体制の実現に向けて、インド政府に対して業界の意見を提出しています。
中南米における取り組み
中南米各国においても環境法令の強化が進む中、リサイクル法制化の検討・導入が進められています。ブラジルでは2019年10月に家電業界分野別協定が締結され、2021年1月に家庭用電気電子機器の回収・リサイクル制度を規定した政令が施行されました。当社グループはリバースロジスティクスシステム(使用済み製品を回収するためのシステム)構築にも、廃家電管理団体(ABREE)の主要メンバーとして、効率的な使用済み製品の回収・処理を推進しています。2023年は、分野別の合意に基づき、46.8tを回収・処理し目標を達成、2024年の目標の90.5tも無事に達成しました。2025年は目標を市場の27%、2025年4月時点で20.2tをすでに達成しています。
その他 中南米諸国
その他のラテンアメリカ諸国でも、ペルー、コロンビア、メキシコ、チリ、エクアドル、パナマ、エルサルバドル、ニカラグア、コスタリカなどが、電子廃棄物管理において国際基準への適合を目指しています。ペルーとコロンビアでは詳細なWEEE法が制定されており、チリなどでは現在規制の整備が進められています。
メキシコやコロンビアでは、業界主導のプログラムや政府承認のリサイクル計画が活発に展開されており、コスタリカでは公共キャンペーン、都市鉱山、サーキュラーエコノミーの取り組みなど、多様なイニシアチブが責任ある電子廃棄物処理を促進しています。
私たちは、政府、業界団体、実証的なリサイクル活動との連携を通じて、政策の発展を引き続き支援していきます。