サーキュラーエコノミー型事業の創出
●IoT電動アシスト自転車シェアリングサービス
資源の有効活用と顧客価値の最大化を実現するため、サーキュラーエコノミー型事業の創出に取り組んでいます。まずその1つの事業モデルであるシェアリングサービスとして、2019年5月から2022年3月までTsunashima SST※1内の3カ所と日吉駅に駐輪場を設置し、タウン内の住人や商業施設の従業員、近隣住人などを対象に30台の新たに開発した省電力のスマートロックを搭載したIoT電動アシスト自転車を提供し、IoT電動アシスト自転車の稼働検証を実施いたしました。この実証実験を通して、自転車に対するニーズの把握、走行範囲、距離などのデータ蓄積・解析により、最適な自転車運行管理システムの検証を進めています。また、プライムライフテクノロジーズグループのトヨタホーム(株)様が開発・販売をしている愛知県みよし市の大規模戸建分譲地「TENKUU no MORIZONO MIYOSHI MIRAITO(てんくうのもりぞのみよしみらいと)」のシェアサイクルステーションに、IoT電動アシスト自転車を納入しました※2。当社グループ製IoT電動アシスト自転車の最初の納入事例で、今後も順次、販売、普及させていく予定です。さらに、2022年1月から2024年1月末まで、集合住宅における居住者向けIoT電動アシスト自転車シェアリングサービスの実証実験を実施しました※3。昨今、近距離移動における高い利便性、快適性から電動アシスト自転車へのニーズが増加傾向にありますが、駐輪スペースに限りがある集合住宅の居住者や、自転車を使用する頻度が限られている人にとっては、個人で電動アシスト自転車を所有することが難しいケースがあります。そこで、集合住宅の居住者に限定したIoT電動アシスト自転車のシェアリングサービスの実証実験を実施することにより、クローズドなシェアリングサービスの受容性および運用面での課題の検証を行いました。実証実験の期間中は委託先のメンテナンスも確実に実施いただく事で、トラブルもなく実証実験を終えることができました。今回の実証実験で得た結果を基に、利便性の高い新たなモビリティサービスの開発を目指します。
※1 https://tsunashimasst.com/JP/ 参照
※2 https://news.panasonic.com/jp/press/data/2020/10/jn201014-3/jn201014-3.html 参照
※3 https://news.panasonic.com/jp/topics/204533.html 参照
●LAUNDROOM(ランドルーム)
別のシェアリングサービスとして、シェア型賃貸住宅などでの洗濯機の共同利用をより快適にする、業界初の新サービス「LAUNDROOM(ランドルーム)」の提供を開始しました※4。節電・節水性能に優れた当社のななめドラム式洗濯乾燥機を設置し、さらにIoT対応によって入居者が洗濯機の稼働状況を確認したり、洗濯完了の通知を受け取ったりできる機能を提供しています。また、修理窓口の設置により、万が一のトラブルにも迅速に対応可能です。これらの取り組みにより、複数人で生活する賃貸物件における洗濯機の共同利用を、より快適で便利なものへと進化させるトータルソリューションを実現しています。
●冷やす価値提供サービス「S-cubo Cs(エスクーボシーズ)」
モノのサービス化のモデルとして、冷凍・冷蔵ショーケースの冷やす価値提供サービスを実施しています。冷やす価値提供サービス「S-cubo Cs(エスクーボシーズ)」とは、スーパーマーケットを中心とする食品小売業様にショーケース等の冷凍冷蔵設備を販売するのではなく、当社グループより“食品を冷やす”という価値自体を提供し、設備のユーザー様からはサービス利用料を月額でいただくというサービスです。また新しいサービスとして、店舗の省エネ維持(機器設定の最適化)、冷凍冷蔵設備の遠隔監視と予防保全運用、点検サービスと老朽化抑制対策提案といったデジタルとリアルを融合させた「S-cubo(エスクーボ)見守りサービス」も提供しています。
これらのサービスを導入することにより、メンテナンスコストやエネルギーコストを含むライフサイクルコストを抑えるとともに、限られた投資予算の中でより多くの店舗改装や老朽化設備の入れ替えが可能となり、効率的な事業経営を支援します。
●保冷輸送容器「VIXELL®」のレンタルサービス
別の冷やす価値提供モデルとして、医薬品の安心・安全輸送を実現する保冷輸送容器「VIXELL®」のレンタルサービスを提供しています※5。抗がん剤などのバイオ医薬品は、保管や輸送中においても厳格な温度管理が求められています。製薬業界ではグローバル化が進み、医薬品の輸出入においても保冷容器が使われていますが、手間と費用を掛けて容器を回収し再利用する取り組みが十分に浸透しておらず、保冷容器が使い捨てられているのが現状です。そこで当社グループは持続可能な社会を実現するために、VIXELLを輸送容器として貸し出すだけでなく当社自らが輸送先からVIXELLを回収し、リファービッシュのうえ他のレンタル先へ貸し出すサービスを2023年4月から開始しています。このサービスは日本からの輸出だけでなく、ヨーロッパからの輸出にも対応しており、今後も対応地域を増やす計画です。
また、お客様からの要望に応え、より多くの貨物輸送に適した「VIXELLパレット」、「VIXELLコンテナ」のレンタルをそれぞれ2024年4月、2025年6月から開始しました※6。VIXELLパレットおよびVIXELLコンテナはVIXELLボックスの特長である堅牢・軽量・長時間保冷を踏襲しているため、保冷に電源を必要とする従来のコンテナに比べて軽量であり輸送時のCO2排出量の低減に貢献できると考えています。また、VIXELLパレットにおいては保冷車をチャーターすることなく複数の荷主の貨物をまとめて運ぶ「路線便」が利用でき、また幅が約1,000mmと国内の物流にも適した寸法であることから、日本の「物流2024年問題」の解決にも貢献できると考えています。
※5 https://www.panasonic.com/jp/business/vixell.html 参照
※6 https://news.panasonic.com/jp/press/jn240306-2 参照
●あかりEサポート
モノのサービス化の別モデルとして、照明器具の所有ではなく照明機能の提供を行う「あかりEサポート※7」を実施しています。「月額料金」でお客様ご指定のLEDの照明機能を修理対応等のサービス付きでご利用できる「あかりの機能提供型のサービス」です。LEDの照明機能の長期利用料、性能維持のための修理対応、動産総合保険、省エネ効果の認証などのサービスが含まれており、メンテナンスコストやエネルギーコストを抑えることが可能となります。
※7 https://www2.panasonic.biz/ls/lease/lighting-e-support/ 参照
●賃貸住宅向けサブスクリプションサービス「noiful(ノイフル)」
サブスクリプションモデルとして2022年1月より開始した賃貸住宅向けサブスクリプションサービス「noiful(ノイフル)」は、あらかじめ賃貸住宅に先進家電を備え付け、家電の使い方サポートや、もしもの時の修理交換、入退去時の家電クリーニングなどをパッケージで提供するサービスです※8。国内の不動産市場においては、人口減少などによりストック住宅(既存流通住宅)が増加傾向にあり、建物の老朽化や空き家・空室の増加など大きな社会課題となっています。noifulでは入居者に対して、「持たない豊かな住まい方」を提供することで住み替えを手軽にし、賃貸市場の活性化を図るとともに、物件オーナーや管理会社には競合物件との差別化による物件価値の向上をサポートすることで、空き家・空室の増加といった社会課題の解決に貢献しています。また、noifulはリカーリング型の安定・高収益事業となっており、物件オーナーや管理会社、入居者へ新たな価値を提供する「三方良し」のビジネスモデルとなっています。リユースによる退去時の家電廃棄といった環境負荷も低減し、家電の新たな循環スキームを構築することで持続可能なくらし・社会の実現に貢献しています。
※8 https://news.panasonic.com/jp/press/data/2022/01/jn220119-1/jn220119-1.html 参照
●業務用小型ロボット掃除機 RULO Bizを使った清掃プラットフォームサービス
別のサブスクリプションモデルとして、2022年4月より、業務用小型ロボット掃除機 RULO Bizを使った月額定額制の清掃プラットフォームサービスを開始しています※9。RULO Bizは業界最小クラスのクラウド型業務用ロボット掃除機で、オフィスビルの専有部や店舗、飲食店など障害物の多い狭小空間の清掃に適しており、集塵作業の省人化・自動化をサポートします。また、当社独自のレーザーSLAM技術による清掃マップの自動作成やクラウド管理によるマップの一元管理・清掃結果の見える化により、清掃品質の向上を図ります。RULO Bizの導入により、利用者は人員不足の解消や清掃コストの削減、月額定額制による初期費用の抑制が可能となります。24年度からは従来の年1回の定期点検・メンテナンスを実施するプランに加え、導入時の必要項目を最小限に絞り込んだ新たなプランを開始しました。これにより、より多くのお客様のニーズに対応できるようになり、安心してご利用いただけるサービスの提供領域が広がりました。
※9 https://www.panasonic.com/jp/company/pmj/new-business/solution/rulo-biz.html 参照
●サブスクリプションを活用したエアコン普及促進モデル事業
当社グループは、環境省が2022年1月に公募を行った「サブスクリプションを活用したエアコン普及促進モデル事業」(以下、本モデル事業)において、本モデル事業の趣旨に賛同し応募申請を行い採択されました※10。熱中症による全国の死亡者は、65歳以上の高齢者が約8割を占め、大きな社会問題となっています。特に2021年の東京23区での死亡者は、65歳以上の高齢者が8割を超し、そのほとんどが屋内で死亡されており、亡くなられた方の約9割がエアコン未使用でした。エアコン未使用のケースでは、エアコンが設置されていないご家庭が2割ほどありました。熱中症予防のためにはエアコンの設置及び適切な利用の促進が重要である一方で、エアコン設置等の初期費用が課題の一つとなっています。このような大きな社会問題である熱中症予防の解決に貢献すべく、高齢者世帯・子育て世帯に向けた「サブスクリプション型サービス」を活用した本モデル事業を実施する為、熱中症予防の一層の推進と二酸化炭素削減に関する「包括連携協定」を埼玉県熊谷市・栃木県鹿沼市・工事事業会社と締結しました。当社グループがもつ販売スキームやサポート体制と地方公共団体(埼玉県熊谷市・栃木県鹿沼市)がもつ安心感・フィールド力など、行政と民間のそれぞれの強みを活かした「官民連携」による新たな価値を創造することができました。2023年も引き続き、環境省との随意契約(PMJ直接契約)を履行し、高齢者等のエアコン活用に関するデータ分析・検証業務(埼玉県熊谷市および栃木県鹿沼市)を実施しました(契約締結日:2023年7月5日)。この業務では、省エネエアコンとIoTを活用し、高齢者などの使用状況がどのように変化したかを検証。IoTログデータに加え、定量アンケートやご自宅訪問調査の結果を組み合わせて分析を行い、2022年度の報告書との比較を通じて変化点を整理し、2024年2月末に環境省へ報告いたしました。検証の結果、省エネエアコンをサブスクリプション(定額制)で利用できるという安心感が、暑い日の稼働習慣の定着につながっていることが確認されました。また、IoT活用により、離れて暮らすご家族による見守りや熱中症対策への有効性も明らかになりました。提出済みの報告書は、第三者機関による提言報告書とともに国会図書館に納入・公表されています。
●エアコンクリーニングサービス
当社グループの「エアコンクリーニングサービス※11」では、サービス対象のエアコンにおいてクリーニングが必要となる目安のタイミングでの無料通知と、クリーニング申し込み専用WEBサイトの新設による利便性の向上を2021年11月上旬に実施しました。従来はお客様がクリーニングのタイミングを判断されていましたが、本サービスにより、お客様にとってクリーニング実施の判断がしやすくなります。通知は、インターネットに接続されたIoT対応エアコンに対して、購入からの経過年数や運転稼働時間などのデータをもとに行われます。また、有料クリーニングの申し込み専用Webサイトを新たに開設し、より簡単に申し込みできるようになりました。室内機の分解洗浄および点検は、これまで通り専門の技術員がご自宅へ訪問して対応いたします。作業では、室内機はルーバー、ファン、フィルターなどの部品に分解し、手洗いで丁寧に洗浄。さらに熱交換器は高圧水を用いてしっかりと洗浄します。これにより、エアコンをより長く、安心してご使用いただけるようサポートいたします。
※11 https://news.panasonic.com/jp/press/data/2021/09/jn210921-5/jn210921-5.html 参照
●ヒートポンプユニットクリーニングサービス
当社グループは、ドラム式洗濯乾燥機 NA-LXシリーズを対象に省エネ性能に優れたヒートポンプ乾燥機能を長く安心してご使用いただくための「ヒートポンプユニットクリーニングサービス※12」を、2024年5月に開始しました。このサービスでは、専用治具の開発および独自の研修を受けた認定技術員がご自宅を訪問し、ヒートポンプユニットおよび乾燥経路を丁寧にクリーニングします。当社独自の「トップユニット構造」により、ヒートポンプユニットを本体上部に配置しているため、本体の移動や大がかりな分解作業が不要で、設置されたその場で本格的なクリーニングが可能です。これにより、最適な乾燥性能を維持し続けることができます。本サービスを通じて、常に快適にご使用いただける安心を提供するとともに、長く使い続けることで自然と環境貢献につながる価値をお届けします。今後も、環境負荷の低減を意識したモノづくりをさらに加速していきます。
●ヒートポンプ式温水給湯暖房機「Aquarea」のクラウド活用遠隔監視サービス
メンテナンスサービスとして、ヒートポンプ式温水給湯暖房機「Aquarea(アクエリア)」のクラウド活用遠隔監視サービスを欧州で提供しています。運転状況を常時把握し、即座に異常を検知することが可能です。既に複数の国で機器の状況に応じて速やかに点検・修理するサービス体制も構築しており、今後、さらなる展開を計画しています。当社グループは製品にIoTを活用することで、製品のより安心・安全・快適で長期間にわたる使用を実現し、長寿命化に貢献します。
●道路トンネル環境を浄化するトータルソリューションの機器メンテナンスサービス
メンテナンスサービスとして、社会インフラであり私たちの生活に欠かすことのできない道路トンネルにおけるトンネル環境を浄化するトータルソリューションの機器メンテナンスサービスを行っています※13。本ソリューションに使用されるジェットファンなどの機器に対し、定期点検やオーバーホールを実施して、経年劣化による機能低下をできる限り少なくし、長期にわたり安全・安心にご使用いただくことが可能となります。
●Panasonic Factory Refresh
リファービッシュとして、2024年4月10日からパナソニック検査済み再生品(保証付)「Panasonic Factory Refresh」の販売と定額利用サービスの事業をスタートしました。本事業では、当社グループに戻ってきた家電(洗濯機や冷蔵庫やテレビなど計13カテゴリー)をもう一度使える状態に再生して販売する活動に取り組んでいます※14。当社グループの監修による高い品質基準の下、当社グループ品質として認められたものだけをご提供しています。例えば、テレビの場合では本体や付属品の使用に支障があるキズ・破損・欠品の確認、外観の清掃、映像の確認、不良個所に応じた部品交換、製品安全検査の全数実施、当社グループ基準の画質調整・性能検査を行った上でお客様にお届けしています。
●顧客店舗設備のリファービッシュ
当社グループは、パートナーであるローソン様と共同で省エネ・CO2削減、資源の有効活用に取り組んでいます。2020年7月に南京でオープンした店舗では、プレハブ工法や資材の再利用により建設廃棄を大幅に削減し瀋陽や天津でも同様の店舗を展開しています。瀋陽や武漢では要冷機器等の店舗設備を搭載し移動しながらの販売を行う移動販売車も導入し、より流動性の高い出店を実現しています。また、2021年から重慶を皮切りに成都、上海、浙江、江蘇等の各地域で古くなった店舗設備をリファービッシュし再利用するサービスを展開、2023年時点で数百店舗に対しリファービッシュ設備を供給しており、店舗設備の使用寿命を延ばすことで、コスト削減と同時に設備廃棄量の削減に貢献しています。さらに、2021年4月に上海、7月には大連で環境配慮モデル店舗をオープンし、省エネ・省CO2最新設備を導入した次世代型店舗を構築したほか、EMS(エネルギーマネジメントシステム)を通じ要冷機器や空調等の電力見える化、省エネ制御を行うことで、店舗全体の省エネ・CO2削減に取り組んでいます。
次に、サーキュラーエコノミーの考え方をベースとした以下のような取り組みを進めています。
●TENNOZ Rim
その1つは、建築におけるリノベーションです。かつて当社グループがショウルーム等として20年近く利用してきたビルをパートナー企業と共にリノベーションし、コワーキングスペース、スタジオ、ラウンジ、カフェなどを有する複合施設であるTENNOZ Rim※15へと生まれ変わらせました。既存の建物を有効活用し、新築の時以上の性能になる工事であるリノベーションはリマニュファクチュアリングの1つと考えています。
また、TENNOZ Rim内のカフェにて、利用者が定額プランに加入し、高濃度セルロースファイバー成形材料のリユースカップを持参すると、ドリンク1杯もしくはフード1品を提供される飲食サブスクリプションモデルの実証実験※16を実施し、使い捨てプラスチック容器削減に貢献しました。実証を経て、現在はコワーキングスペース(DOCK)で利用者がリユースカップを活用しています。本実証実験を通して、文化・アートの発信基地として近年注目を集める天王洲エリア全体の新たな賑わいづくりと使い捨てプラスチック容器削減に貢献すると共に、環境に優しい容器の普及活動によるサーキュラーエコノミーの貢献を目指していきます。
※16 https://news.panasonic.com/jp/press/data/2020/09/jn200910-1/jn200910-1.html 参照
●Archi Design(アーキデザイン)
製品設計による投入資源の削減のモデルとして、「空間の価値を高める美しさ」と「環境への貢献」を追求した配線器具、照明器具などの電気設備製品群「Archi Design(アーキデザイン)」を2024年11月より本格的に展開しました※17。「Archi Design(アーキデザイン)」では、製品の小型化や部品点数の削減による使用材料の低減に加え、梱包材や取扱説明書における資源削減など、多角的な視点から環境に配慮した取り組みを行っています。当社グループはこの取り組みを通じて、電気設備が空間に自然に調和する「心地よい空間」の創出と、環境負荷の軽減に貢献しています。
●再生樹脂を使用したセパレート型コードレススティック掃除機シリーズ
循環資源を活用した商品についても資源の有効活用を促進することから、サーキュラーエコノミー型事業と考えることができます。循環資源である再生樹脂の利用として、当社グループ独自のクリーンドック搭載のセパレート型コードレススティック掃除機シリーズにおいて、再生樹脂使用率を製品全体の約40%にまで高めた環境に配慮したモデル「MC-NS10KE」を2023年12月6日より発売しました※18。さらに、クリーンドック部分に再生樹脂を約60%使用したセパレート型コードレススティック掃除機「MC-NX810KM」を2024年10月下旬に発売しました※19。また、紙パック式コードレススティック掃除機において、リサイクル材比率95%の樹脂(バイオマス材等)を使用した環境に配慮したモデル「MC-PB60J」を2024年2月末より発売しました。「MC-PB60J」は国内家庭用コードレススティック掃除機として、業界初のバイオマスマークを取得した商品です(2024年2月29日時点当社調べ)※20。
※18 https://ec-plus.panasonic.jp/store/page/contents/cleaner-NS10KE-sus/ 参照
※19 https://news.panasonic.com/jp/press/jn240926-1 参照
※20 https://panasonic.jp/soji/products/stick/mc-pb60j.html 参照
●再生樹脂を使用したドラム式洗濯乾燥機NA-LX129D シリーズ
再生樹脂を約20%使用したヒートポンプユニット搭載のドラム式洗濯乾燥機NA-LX129D シリーズを2024年10月より販売開始しました。本製品では、本体を支える台枠、ヒートポンプユニットを覆うヒーターカバー、洗濯槽とヒートポンプユニット間の空気を循環させるファンを覆うファンケースに再生樹脂を採用しています。特に、本体重量や脱水時の振動を支える台枠には、CAE解析と実機検証を組み合わせた設計手法を導入。これにより再生樹脂で成形しても必要な強度と品質を確保できることを実証しました。
●タイにおける使用済み乾電池のリサイクル
当社グループはタイにおいて、7-Eleven様を運営するCP ALL Plc.様との協業により、2022年6月から使用済み乾電池の回収を開始しました。2024年3月には製鉄会社のUMCMetals Ltd.様と協業し、当社グループ製使用済み乾電池のリサイクルスキームを確立しました※21。これにより、環境負荷物質を含まない当社グループ製乾電池を溶融して再利用可能な材料を取り出すことが可能となり、電池リサイクルを通じた資源の有効活用を促進していきます。なお、2024年6月には、7-Eleven様の設置回収ボックス拠点数1,000店舗を達成しています。
●使用済み乾電池の肥料原料へのリサイクル
当社グループは、東洋製罐グループホールディングス(株)様の連結子会社であるTOMATEC(株)様と共同で、当社グループが製造した使用済み乾電池から分離・回収した亜鉛やマンガンなどの成分を含む混合粉末を微量要素肥料の原料として活用するリサイクルプロセスを確立しました※22。さらに、この乾電池由来の肥料については、2024年度中にTOMATEC(株)様より販売を開始することが決定しています。乾電池リサイクルを農業分野に応用するのは、当社グループとして初の取り組みとなります。今後も当社グループは、使用済み乾電池のより効率的な回収方法や再資源化プロセスの研究・確立に取り組み、乾電池リサイクルの取り組みを一層強化していきます。
●工場廃材の部材への活用
工場排出物をクリエイティブなデザインにより全く別のプロダクトとして新たな価値を創出するリバリュープロジェクトを進めています。今まで、アイロン、炊飯器、システムキッチンの製造過程で生じた工場排出物をもとに、パートナーと共創でブックエンド、照明、テーブルなどを製作しました。本プロジェクトの活動が認められ、2020年度グッドデザイン賞(ビジネスモデル分野)を受賞しました。さらに、製造工程で排出される工場端材を「データ活用」「二次利用エコシステム」「クリエイターとの協業」という3つのアプローチによって、事業性のある端材としての活用を推進するプロジェクトを開始しました。キッチンカウンターなどで使用する「人造大理石」の工場端材はこのプロジェクトの中でさらなるプロダクトに発展しています。今後も、共創拡大による新たな価値創造にチャレンジしていきます。
●モジュール式パーソナルケアシステム
モジュール型設計によって投入資源を削減した商品も資源の有効活用を促進する点で、サーキュラーエコノミー型事業と位置づけることができます。
2022年6月より、欧州・北米市場向けに販売を開始したモジュール式パーソナルケアシステムは、一つのボディに5種のヘッドが着脱可能なモジュール式パーソナルケア商品です※23。髭・髪・体毛・鼻毛のトリミング、髭剃りや歯磨きなどの必要なケアパーツだけを購入できます。バッテリーやモータを1台のボディに集約し、日常のケアや旅先出張先での身だしなみニーズの変化にも柔軟に対応することができます。
また、メインユニットおよび電源アダプターの共通化設計により製品重量を従来比約60%削減し、省資源化を実現しています。このような合理的なシステムのアイデアで環境負荷低減に貢献していることが高く評価され、インターナショナルフォーラムデザインが主催する「iFデザインアワード2023」において金賞を受賞しました。その後も様々なメディアで取り上げられ、賞を獲得するなどの高い評価を受けています。
2024年9月より、欧州・米国市場に向けて新たに4種類のヘッドを追加しました。これにより本格的なバリカンを使用したヘアカットや、髭の繊細なスタイリング、眉毛ケアに加え、ブラシによる洗顔や足の角質ケアなど、全身のトータルケアが可能となりました。
更に、毎年約700万トンの電子廃棄物が生産されている米国市場では、ユーザーが古い電子パーソナルケアデバイスを返送すると、モジュール式パーソナルケアシステムを特別価格で購入できるリサイクルプログラムを実施しています。回収したパーソナルケアデバイスはリサイクルされ、資源循環に貢献しています。また、販売国については2023年9月に中近東、2024年4月にオーストラリアなどへの追加をすることで、よりグローバルに環境負荷削減を実現しています。
●頑丈ノートパソコンTOUGHBOOK(タフブック)
別のモジュール型設計の例として、頑丈ノートパソコン「TOUGHBOOK(タフブック)」では、豊富なオプション(別売)により必要な機能を追加できるモジュラー構造を採用しています。例えばID認証方法の変更に伴い非接触ICカードリーダーを追加したい場合でも、機器本体を新たに購入する必要はありません※24。このモジュラー構造により、用途の変化に柔軟に対応するだけでなく、機器の長期利用を促進します。万一の故障が発生しても、必要なオプションのみを交換すれば済むため、本体ごとの買い替えが不要となり、廃棄ロスの削減を通じて環境負荷の低減にも貢献します。
●「バッテリーライフサイクルNAVI」・「スリムワークサポート」
当社グループのノートパソコンのカスタマイズメニュー「バッテリーライフサイクルNAVI※25」では、製品価値の長寿命化に貢献します。本サービスでは、パソコンのバッテリー満充電容量が基準値を下回った際に自動で検出し、画面上でお知らせします。その後、交換をお申し込みいただくことで、新しいバッテリーを工場から直接指定先へ配送。バッテリー交換は、簡単に行え、ダウンタイムも発生しません。これにより、長年使用して短くなった駆動時間も購入時と同等のパフォーマンスを取り戻すことができます。
さらに、法人向けPCに提供するサブスクリプションサービス「スリムワークサポート」では、PCマネージドサービスの機能をさらに拡充しました。中でも、故障・劣化検知機能では、各種デバイスの劣化度や累積稼働時間を一括管理し、劣化が検知された際には、IT部門の管理権限を持つユーザーへ自動でメール通知を行います。これにより、PCの交換や修理、バッテリーの予防交換などを事前に実施できるほか、故障後では救出が困難となる重要データの事前移行も可能となり、計画外の業務停止時間を最小限に抑えることができます。こうした取組みを通じて、法人向けPCの製品寿命の最大化と安定した運用を支援します。
※25 https://connect.panasonic.com/jp-ja/products-services/letsnote/pc-service/batterynavi 参照
●LED照明のリユース
当社グループは、環境省の実証事業を活用し、店舗Aバックヤードで使用しているLED照明器具に遠隔センサーを搭載、状態のモニタリングをおこないながら、店舗Bバックヤードの蛍光灯と交換して使用するとともに、取り外した蛍光灯については部品や部材に分け、リサイクルに回すという実証実験を4社の実証パートナー様および6社の協力企業様とで行いました。さらに、NFT(ブロックチェーン技術によって管理される電子証書)を活用し、原材料の調達から製品の使用、そして新たな照明器具として再利用されるまでのプロセスを追跡・証明する取り組みにも挑戦しています。店舗やオフィスの改修時には、照明器具の状態を確認せずに廃棄されるケースが少なくありません。一方、発売から約10年が経過したLED照明器具ですが、市場では依然として約半数が蛍光灯を使用しているのが現状です。当社グループは、LED照明器具のリユースを通じて、お客様の照明コストを大幅に削減するとともに、寿命末期を迎えた照明器具を素材として工場に戻す水平リサイクルにも取り組んでいます。今回の実証実験で得られた成果は、照明の機能提供型サービスのオプションとして提案し、早期のサービス運用開始を目指しています。
●「乾電池エボルタNEO」のエシカルパッケージ
紙パッケージを採用することで、環境負荷の低減と使いやすさを両立し、エシカル消費(環境課題の解決を考慮した消費行動)を促進しています。※26、27、28 第一弾として、2021年10月に「乾電池エボルタNEO」の一部モデルにエシカルパッケージを採用。2023年4月からは、「乾電池エボルタNEO」のモデル数を拡大するとともに、「乾電池エボルタ」にも展開を図っています。加えて、くり返し使用回数を低下させることなく容量アップを実現することで、1回の充電でより長時間お使いいただける充電式ニッケル水素電池「エネループ」の新製品を発売しており、この「エネループ」にもエシカルパッケージを採用しています。近年、地球温暖化に伴う気候変動、深刻化しているプラスチックごみ廃棄の問題等から環境に配慮した包装の需要が高まっています。当社グループの調査によると約9割の方が普段の日常生活の中で無駄なプラスチックごみや過剰包装があると感じており、約8割の方が商品購入の際には環境に配慮したパッケージを重視していることがわかりました。本製品は紙主体のエシカルパッケージを採用することで従来のブリスターパッケージに比べて包装材使用を約38~70%削減しました。ラインアップを拡大することで、年間で約5.7トンのプラスチックと約21.5トンの紙、合計約27トンの包装材削減を実現します。また、シュリンクフィルム(乾電池を包むプラスチックのフィルム)を使用しないことで開封時の手間も軽減します。パッケージはすぐに使わない電池の保管袋としても使え、廃棄する際にも紙(可燃物)として分類することが可能です。当社グループは包装材の使用量を削減することにより環境負荷を減らすとともに、開封から廃棄までの手間を軽減する使いやすいパッケージで、環境に配慮したくらしをサポートします。
※26 https://panasonic.jp/topics/2023/03/000000746.html 参照
※27 https://news.panasonic.com/jp/press/jn230330-1 参照
※28 https://news.panasonic.com/jp/press/jn240626-1 参照
●2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の当社グループパビリオン「ノモの国」
当社グループは、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の当社グループパビリオン「ノモの国」の建築において、「3つの循環で生まれるパビリオン」をテーマに掲げ、使用済みの家電から回収したリサイクル材料や工場から出る端材・廃材、当社グループが開発した廃材を使った製品などを積極的に採用しています※29。例えばパビリオンの外構部を舗装するブロックの製造にドラム式洗濯乾燥機約9,200台分のリサイクルガラスを採用しました※30。また、万博期間終了後も建築に利用した材料を循環スキームに戻すことで、博覧会協会が目標とする98.1%(重量ベース)のリサイクル率を、当社グループパビリオンとしても目指していきます。
※29 https://news.panasonic.com/jp/press/jn230712-1 参照
※30 https://news.panasonic.com/jp/stories/15810 参照
以上のように、当社グループはサーキュラーエコノミー型事業の創出に向け、様々な取り組みを開始しています。2019 年度に開発した分析手法に沿って完成させた既存事業と循環経済の関連性マッピングを踏まえ、既存事業のサーキュラーエコノミー型事業への転換を進め、本年度は既存の13事業から2事業追加し、15事業を立ち上げました。今後、さらにサーキュラーエコノミー型事業の創出を拡大していきます。
1 | 冷凍冷蔵ショーケースのサブスク事業 |
|---|---|
2 | 医療向けクーラーボックスのサブスク事業 |
3 | あかりEサポート事業 |
4 | PCサブスク事業での電池管理事業 |
5 | 所有建物の有効活用 |
6 | セルロース混合樹脂の事業展開 |
7 | ローソン様とのリファービッシュ事業 |
8 | 家電サブスク事業(noiful) |
9 | 工場廃材の部材への活用 |
10 | 乾電池の紙パッケージ採用および使用済み乾電池のリサイクル |
11 | 道路トンネル用換気送風システムのメンテナンス事業 |
12 | 洗濯機や冷蔵庫やテレビなどのリファービッシュ |
13 | 再生樹脂を使用した掃除機や洗濯機など |
14 | ビューティー機器や業務用ノートパソコンなどのモジュラー設計 |
15 | 洗濯のシェアリングサービス |