【11月号】NOVEMBER 2013 Vol.59 No.2

情報ネットワーク通信技術と映像技術の進化により，広域状況の迅速な把握 や多地点の見守りを効率よく行うことを可能とした統合IPネットワークシステムが，安心・安全な社会の実現にお役立ちできるソリューションとして注目されています．本特集では，ユーザーが安心して便利で快適な生活を送ることを実現するための当社技術について，最新の情報セキュリティ技術や映像技術，画像認識技術も含めてご紹介いたします．

パナソニック システムネットワークス(株)　専務取締役　松本 時和

情報セキュリティ大学院大学　教授　後藤　厚宏

ビッグデータをわれわれの社会生活や産業として活用するために，センシングから分析・応用に至るフェーズごとのリスク分析とセキュリティ対策の作り込み，および今後のエコシステム拡大に向けた柔軟性のあるセキュリティ技術への取り組みが重要である．

北岡　裕一，中村　学

ネットワークビデオ製品を含むIPベースの物理セキュリティ機器インタフェースの標準化（ONVIF: Open Network Video Interface Forum）が進められている．ONVIF標準規格について解説し，当社の取り組みを紹介する．

キーワード / ONVIF，ネットワークカメラ， 監視カメラ，標準規格，フォーラム，i-Pro

代表図

外舘　弘理，由雄　宏明，矢野　公嗣，篠原　利章

ビジネスインテリジェンス拡張キットDG-NVF20は，人数カウント，年齢性別判定機能を搭載した商品である．商品化にあたり，監視システム環境下での「ロバスト性確保」や，システムの低コスト化による「安価な組込み機器への搭載」という課題があった．監視ロバスト性確保については，カメラ内部の信号処理特性を調査し，年齢性別判定に適した映像になるようにパラメータを最適化し，レコーダーからカメラに設定することで実現した．安価な組込み搭載については，並列演算処理に特化したDPP（Data Parallel Processor）ブロックに年齢性別判定処理の一部を並列演算化して搭載することで実現した．

キーワード / 監視システム，顔照合，年齢性別，人数カウント，画像認識，ロバスト性

代表図

篠原　利章，高瀬　行夫，斉藤　秀雄，東沢　義人，藤田　真継，ラワンカル　アビジート

スマートフォンのSoC（System-on-a-chip）の能力向上を背景に，監視カメラのSoCにも同様なARM構造をもつSoCが開発され，その能力も飛躍的に向上している．CPUが複数実装され，SIMD（Single Instruction Multiple Data）処理が可能なプロセッサを実装し，デスクトップPCに迫る能力をもつSoCもある．今回の報告では，監視機器においてハードウェアやDSP（Digital Signal Processor）により，実現可能になりつつある顔照合やAVMD（Advanced Video Motion Detector）のアルゴリズムについて，SIMD処理に最適化することで，約2.5～3倍の性能向上を確認し，ソフトウェア処理のみで実装可能であることを確認したので報告する．このソフトウェア最適化技術は，画像処理など連続的な処理を繰り返し行う際に有効である．

キーワード / SIMD，NEON，AVMD，顔照合，画像認識

代表図

田中　裕之，松尾　正克，豊永　三朗

インターネットに対応した組込み機器では暗号機能が必須となっているが，暗号は処理負荷が大きく音声・映像機器では音とびや映像コマ落ちの原因となる．そこで筆者らは，音声・映像機器などのリアルタイム処理が求められる組込み機器向けに暗号モジュールを開発した．また，SSL（Secure Socket Layer）通信でサーバーに集中する暗号の処理負荷を分散させる負荷分散技術や，高速なUDP（User Datagram Protocol）暗号方式を開発している．本稿では，音声・映像機器に適した暗号技術に関して，これらの取組みを説明する．

キーワード / 音声・映像機器，暗号技術，リアルタイム処理，SSL/TLS，負荷分散，UDP暗号

代表図

松尾　正克，武藤　浩二

多項式を用いる(k, n)しきい値秘密分散法では高速処理が困難なため，排他的論理和を用いた高速処理可能な(k, n)しきい値秘密分散法が期待されている．しかし，これら排他的論理和を用いる従来の(k, n)しきい値秘密分散法は，特定のしきい値k，分散数nでしか実現できず，クラウドにおけるデータバックアップなど，適用困難な用途が存在した．そこで当社は，任意のk, nで実現できる排他的論理和を用いた高速処理可能な(k, n)しきい値秘密分散法を考案した．本稿において，その概念，およびアルゴリズムを解説する．

キーワード / 秘密分散，RAID，情報理論的安全性，排他的論理和，クラウド，モバイル，情報漏えい，BC

代表図

上村　隆哉，佐藤　泉，和田　穣二，内田　保，直原　佑哉，安田　秀樹

比較的住環境に近い環境で使用される屋内モデルに対し，屋外に設置される監視カメラはさまざまな過酷な環境にさらされながらも映像を撮影し続けることが必要とされる．本稿では-50 ℃～50 ℃の温度範囲での使用，50 Jの衝撃，噴流を含む防水・防塵（ぼうじん）に対応したカメラの構造，その他，塩害，暴露，風雪，結露，水滴の付着，汚れによる画質劣化などの厳しい環境での使用を可能とした独自の機構技術とその評価方法について解説する．

キーワード / 屋外，監視カメラ，耐環境，機構技術，画質，雨天，夜間，衝撃

代表図

王　親和，川井　大次郎

身体に装着するウェアラブルカメラにおいて，撮影された映像を安定化させるための①カメラの動きを検出する技術，②検出結果を用いて映像を補正する技術について解説を行う．

キーワード / ウェアラブルカメラ，映像安定化技術，動き検出技術，揺れ補正技術

代表図

吉貝　規，大井　健治

ネットワークカメラの通信方式として IEEE802.11n/g/b準拠の無線LANが一般化している．この方式は広く普及しているため，同じ周波数帯に複数の無線機器が存在することによる輻輳（ふくそう）の発生や，障害物の影響など無線特有の課題がある．劣悪な環境下でも安定した通信を得るべく，ダイバーシティアンテナ特性改善と無線QoS技術開発を実現して，通信品質を改善した．

キーワード / ネットワークカメラ，無線LAN，ダイバーシティアンテナ，無線QoS

代表図

田中　哲夫，池田　淳

従来，ネットワークカメラから出力された映像に対して専用のアプリケーションを利用して霧補正処理を行う方法があった．しかし映像を見る地点の数だけ専用のアプリケーションが必要になるだけでなく，リアルタイムなライブ映像と録画映像が異なるという課題があった．そこで，カメラ内部の制御で霧補正処理を実現するために高速かつ高精度な処理を開発した．

キーワード / ネットワークカメラ，霧，コントラスト，認識

代表図