パナソニック技報
【5月号】MAY 2022 Vol.68 No.1

(2022年6月3日公開)

特集:受賞技術

当社は,経営理念に込められた「事業を通じて,世界の人々の生活をより豊かで,より幸福なものにする」という考え方をあらゆる行動の根幹に置いて,多くの優れた商品を世に送り出すことで発展してきました.当社が研究・開発した,最先端技術や要素技術,商品やサービスを支える技術は,外部機関や団体からも高い評価を頂いています.本特集では,最近の受賞技術のなかで代表的な技術業績の内容をご紹介いたします.

受賞技術特集によせて

パナソニック ホールディングス(株) 執行役員 グループ・チーフ・テクノロジー・オフィサー 薬事担当
コーポレートイノベーション・ベンチャー戦略担当 小川 立夫

特別寄稿

表彰に励まされて 受賞人生のすすめ

パナソニック ホールディングス(株) 名誉技監 事業開発室 ESL研究所 所長/京都大学 特命教授 大嶋 光昭

技術論文

積層バリスタの高周波/高速信号対応と卑金属化

古賀 英一,東 佳子

P型粒界の新規SrCoO3系ZnOバリスタ材料を見出した.新たな材料開発構想に加え、その積層バリスタへの展開として,従来特性を一新する新原理内蔵での超低容量化および世界初の卑金属内部電極対応に関して述べる.

代表図

自動車の進化を支える金属系パワーチョークコイルの開発と実用化

大坪 睦泰,松谷 伸哉,堀内 一志

独自の金属系複合磁性材(メタルコンポジット:MC)とコイル一体成形技術を開発し,車載用途で世界で初めて事業化に成功した.開発した車載用PCC-MCは従来比で約2倍の電流を流せるため,電源回路の40 %以上の小型化が図れ,各種ECUの小型化を可能にした.

代表図

第4世代HD-PLC技術と国際標準化

川畑 直弘,古賀 久雄

IEEE 1901準拠のHD-PLCを社会インフラにおけるIoT通信基盤技術として活用するため,伝送路特性に応じて最適なモードとチャネルを選択し,通信の長距離化と高速化を切り替え可能な第4世代技術を開発した.

代表図

折り畳み型有機ELデバイスに適用可能な吸湿性・密着性を有する封止材料の開発

浦岡 祐輔,池上 裕基,千秋 考弘,山口 敦史

独自開発したナノ吸湿フィラーを均一に分散することで水分浸入防止性を確保でき,分子レベルでの濡れ性制御により折り曲げ部で剥離が生じない有機EL向け封止樹脂材料を開発した.これにより,小径折曲げ可能な有機ELデバイスの実現・普及に貢献する.

代表図

熱画像を用いた温冷感推定技術および車載空調への応用

式井 愼一,米田 亜旗,野坂 健一郎,吉岡 元貴,久保 博子

人の熱画像から人の暑い寒いの感覚を着衣量によらず推定する独自アルゴリズムを開発した.さらに,直接エアコンからの風が人にあたる車室内でも適用可能なモデルへと進化させた.車室内での温熱快適性向上および空調の省電力化への貢献が期待される.

代表図

海中内小型移動体向けkW級,高効率,位置自由度の高い無線電力伝送技術

枷場 亮祐,八木 達雄,山口 修一郎,江口 和弘,小柳 芳雄

海洋資源探査,インフラ監視等,海洋産業の発展に伴い海中内移動体の活躍が期待されている.移動体を効率的に活用するため,海中内小型移動体向け高電力,高効率,高い位置自由度の無線電力伝送システムを提案する.

代表図

大面積ペロブスカイト太陽電池モジュールの高効率化

樋口 洋,西原 孝史,山本 輝明,松井 太佑,熊澤 謙太郎,根上 卓之

不定形の建材一体型太陽電池をターゲットとし,塗布工法と特長とするペロブスカイト太陽電池を開発している.高効率材料とフリー形状塗布が可能なインクジェット塗布工法による均一塗布によって,世界最高効率を実現した.

代表図

伸縮性と耐熱性を備えた熱硬化樹脂フィルム

道上 恭佑,深尾 朋寛,阿部 孝寿,澤田 知昭

耐熱性が高く伸縮復元性に優れる樹脂フィルム「BEYOLEX」を開発した.プリンテッドエレクトロニクスに対応し,導電配線の印刷と熱処理が可能である.さらに部品実装することでストレッチャブルデバイスを作製できる.

代表図

6Gに向けた300 GHz帯テラヘルツ無線通信によるリアルタイム動画伝送

森下 陽平,寺岡 俊浩,樫野 祐一,浅野 仁,坂本 剛憲,白方 亨宗

第6世代移動通信システム(6G)での利用が検討されている300 GHz帯の無線通信機を開発した.本無線機は,300 GHz帯では業界初となる直交周波数多重分割(OFDM)信号を用いた通信距離10 mのリアルタイム動画伝送を実現した.

代表図

おいしい「冷凍」や,調理時の時短・省手間を実現した家庭用冷蔵庫の開発

安信 淑子,松山 真衣

近年,食品の美味しさを保ちたいというニーズに加え,調理の短縮や手間の軽減が求められている.そこで,最適な冷凍条件を適応した『はやうま冷凍』と,調理時間と労力を削減する『はやうま冷却』を開発した.

代表図

技術解説

電動車用 高機能金属化フィルムコンデンサ

竹岡 宏樹

電動車用途のフィルムコンデンサには高い耐湿性能が要求されている.現行のAlの蒸着電極に水との反応性の高いMgを添加することにより,蒸着電極の劣化を抑制し,高い耐湿性能を達成した.

代表図

トマト収穫ロボットの開発

戸島 亮,岡本 眞二

AI技術,センシング技術,エンドエフェクタ設計・制御技術などを生かし,これまで人が実施してきたトマトの収穫を,人の代わりに実施するロボットを開発し,農作業における人の作業負担の軽減を図った.

代表図

超高精度三次元測定機「UA3P」の技術紹介と評価事例

半田 宏治,田中 仁

側面と上面測定技術を融合し,レンズユニット形状を±100 nm以下の精度で評価する三次元測定機を実用化している.本技術はスマートフォンなどに搭載されたカメラの更なる品質向上に寄与すると期待されている.

代表図