パナソニック技報

【11月号】NOVEMBER 2016 Vol.62 No.2

(2016年11月15日公開)

特集1:精密加工

機械,レーザ,成形,成膜などの加工技術は,モノづくりを支える基盤技術で,その高精度化が非常に重要です.これらの加工技術は,さまざまな物理,化学現象を利用し,加工単位の最小化を追求することで精密な加工を実現してきました.また,それらの加工技術と材料,機能設計技術との融合により,加工物に高度な機能を付与することも可能になりつつあります.本特集では,パナソニックの精密加工の最新の取り組みをご紹介します.

特集1:精密加工

精密加工特集によせて

パナソニック(株) 生産技術本部 R&D担当
(兼)生産技術本部 生産技術研究所
所長 西田 一人

招待論文

機能創成加工が拓く新しいものづくり

東北大学大学院医工学研究科
教授 厨川 常元

超精密加工表面上に微細構造体を創成することにより,新たな機能を発現することができる.このような究極の“形状創成”に“機能創成”を加味し,高付加価値創成を目指した新しいものづくり技術,「機能創成加工」について紹介する.

技術論文

単結晶ダイヤモンド測定針の高精度加工法

久保 雅裕,鷹巣 良史,和田 紀彦

紫外線を援用した独自の加工プロセス技術を開発し,結晶方位を有する単結晶ダイヤモンドに高精度な球形状加工を行うことが可能になった.

代表図

超短パルスレーザ加工機による精密加工

中奥 洋

高精度で微細な孔加工が可能なレーザ加工機を製品化した.超短パルスレーザと,新しく開発された加工用ソフトウェアを使用することにより,丸孔だけでなく多角形孔,星型孔といったさまざまな断面形状の孔の加工を実現した.

代表図

金属光造形複合加工法による成形金型の革新

阿部 諭,上本 誠一

金属粉末の3Dプリンティングと切削を組み合わせた金属光造形複合加工システムを開発した.従来より加工精度・表面粗さを向上させ,短納期で金型が製作できる.また,自由が温度調節回路が形成でき,成形時間短縮・精度向上が実現できる.

代表図

ロールプレスナノインプリントによる微細構造の大面積高速成形

岩瀬 鉄平,上木原 伸幸,石川 明弘,和田 紀彦

独自のロールプレス方式を用いたUVナノインプリント技術を開発し,基板上へナノオーダーの微細構造を高速かつ高精度に形成することが可能になった.

代表図

技術解説

太陽電池用シリコンウェハ加工システムの開発

高橋 正行,渡邉 衛

筆者らは新たな太陽電池用シリコンウェハの自動化ラインを開発した.技術のポイントは,(1)短時間接着プロセス,(2)スチームによる枚葉剝離,(3)水のみのウェハ洗浄システムの3点である.それらの結果,ラインタクト1.4秒/枚が実現し,加えてウェハ生産時の歩留まりを改善できた.

代表図

プリズム式導光板の加工・成形技術の開発

伊藤 正弥

近年,プリズム式導光板は,立体形状や透明性が求められる新たな用途への展開が行われている.
本稿では,新たな用途に適した配光特性や透明性などの光学特性と金型費および成形費の低コスト化との両立を実現する加工法について解説する.

代表図

関連するコンテンツ

【10月号】OCTOBER 2009 Vol.55 No.3

特集2:環境生産革新

持続可能で安心・安全な社会を実現させるために,環境を基軸において,商品設計やモノづくりの考え方を再構築する,生産技術の重要性が高まってきています.本特集では,次代の省エネ製品,資源循環を支えるリサイクル技術,それらを融合したソリューション技術など,当社の最新の環境生産技術についてご紹介いたします.

特集2:環境生産革新

環境生産革新特集によせて

パナソニック(株) 生産技術本部環境生産革新センター
所長 南尾 匡紀

招待論文

環境視点からのものづくりの課題と今後の方向性

東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻
教授 梅田 靖

ものづくりと環境問題の関係について,EUでは資源循環ビジネスを大きく変革するプラットフォーマーの出現が予感される.この問題に対応し,製品ライフサイクルシステムを構築するためのライフサイクル設計,ライフサイクル・プランニングの考え方を述べる.

技術論文

超低鉄損軟磁性材を用いた高効率モータ

西川 幸男,小島 徹,瀬川 彰継,谷本 憲司,小川 登史,金城 賢治

ナノ結晶軟磁性薄帯の冷蔵庫用モータへの適用において,モータの製作工程の開発と駆動実証に成功した.
効率は,モータで+3.1 %,圧縮機では+2.9 %の大幅な向上を示し,冷蔵庫の省エネルギーが可能になる.

代表図

ケミカルヒートポンプ技術

小林 晋

内部熱交換方式により自己水和が可能なケミカルヒートポンプシステム(CHP)を開発した.これにより外部熱源なしに蓄熱時-放熱時の双方で同一の熱負荷を駆動し,熱負荷のバックアップ動作が可能となる.このシステムの原理検証を行い,実用化に対する見通しを得た.

代表図

気流制御を用いた混合樹脂の3種同時選別技術

濱田 真吾,山口 直志,宮坂 将稔,八田 健一郎,楠元 寛史,南田 幸廣

使用済み家電のリサイクル工程で発生する混合樹脂から,気流制御を用いて,主要樹脂であるポリプロピレン,ポリスチレン,アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの3種を一度に選別回収する技術を開発した.

代表図

技術解説

電気パルスを用いた廃小型家電の高効率破砕技術

内海 省吾

電気パルス破砕とは,水中で高電圧放電を発生させ放電経路周辺の液体を急速に気化膨張させて衝撃波を発生させ対象物を破壊する破砕方法である.本方式にて回路基板からの電子部品の剝離検証を行ったので報告する.

代表図

省エネ型微細ミストノズルと暑熱対策への応用

田端 大助,磯見 晃

二流体ノズルを用いて微細なミストを発生させるには,高圧の圧縮空気が必要であるため,屋外における暑熱対策には不向きであった.そこで,低圧の圧縮空気でも省エネかつ微細なミストを生成できるノズルを開発し,暑熱対策への応用を検討した.

代表図

省エネ型植物工場システムの概要と活用事例

元山 恵太

植物工場の最大の課題は,生産コスト低減と生産する野菜の露地野菜との差別化である.筆者らは,解析技術を応用し省エネ型の植物工場システムを開発し,栽培環境条件を適切に制御することで付加価値が高い野菜の量産にも成功した.

代表図