材料分析 Materials Analiysis

ついに見えた!ファイバーの分散状態が材料設計のヒントに

2022年4月20日

こんにちは。材料ソリューション部 微細構造分析課の黒岡です。

複合樹脂材料の内部構造観察でお困りではないですか。

材料の内部構造の観察方法には、試料を切断し、その断面を走査電子顕微鏡(SEM)や光学顕微鏡(OM)で観察する断面観察法と、レントゲン撮影やX線CT法のように非破壊で内部構造を観察する方法があります。
断面観察法の場合、綺麗な断面作製にはノウハウが必要であること、観察が一断面であるため連続的な内部構造を観察できない、などの課題がありました。
一方、 X線CT法の場合、透過観察像から立体像を再構成させることにより、非破壊で内部構造の連続的な観察ができる利点があります。しかし、従来のX線CT法(吸収イメージング法)は、密度の大きい材料に対してはX線が透過しにくい(吸収されやすい)一方で、軽い材料に対してはX線が透過しやすい(吸収されにくい)という特徴を利用しているため、携帯電話の内部構造観察のように金属と樹脂のような密度が大きく異なる材料の観察は得意でしたが、複合樹脂材料や生体材料など、密度が小さかったり、材料間の密度差が小さい複合材料の観察は不得手でした。両手法の違いを下図に示します。

従来X線CT法による観察例
(携帯電話の内部構造)

位相イメージング法と吸収イメージング法の比較

観察条件

位相イメージング法

吸収イメージング法

観察結果

位相イメージング法図
吸収イメージング法図

対象元素

軽元素

金属

透過能力

質量分解能

観察条件(電圧)

10keV

20keV(金属100~200keV)

X線が物質を透過する際に吸収と位相シフトの両方が起こっていますが、位相シフトは、密度に対して吸収よりも敏感であるため、今回紹介するX線CT法(位相イメージング法)では、セルロースファイバーとポリプロピレン樹脂のような密度差が小さい混合物の分散状態を明瞭に観察することができます。
下図は、セルロースファイバーとポリプロピレン樹脂との混合物を、X線CT法(位相イメージング法)で実際に非破壊で観察した像ですが、僅かな密度差しかない両材料の混合状態を明瞭に可視化できていることが分かります。また、データ処理によって、分散、空隙、配向性などを可視化、数値化することも可能です。

位相イメージング法によるX線CT像(3D)と空隙部の抽出像(3D)

当センターでは、外部研究機関とも連携し、このようなソフトマテリアルの内部構造可視化サービスをご提供しておりますので、ご興味のある方はぜひお問合せ下さい。

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