信頼性 Reliability Evalution

サステナブル社会実現に向けて、中古樹脂の余寿命を予測します!

2022年6月30日

信頼性ソリューション部の宇津木です。
昨今、サステナブル社会を実現するための一環で環境課題に取り組む企業が増えてきましたね。SDGsという言葉も様々なメディアで頻繁に見かけるようになりました。当社も環境問題に大きなIMPACTを与える一企業として様々な取り組みをしております。

そのような中で、今回はプロダクト解析センターが環境課題に対して取り組んでいる技術開発事例を紹介したいと思います。
プロダクト解析センターは評価・解析技術に強みを持つ技術集団です。そんな我々がお役立ちできるところとして注目しているのがサーキュラーエコノミー社会への大転換です。下の図は樹脂材料のサーキュラーエコノミー概念図です。
従来の設計から保守に至る一方通行の使用から、大きくいくつかのサイクルへとモノの使い方が変化するとされています。

リユース・リファービッシュ  (ものの所有から・利用への価値観転換)
  • 家電のレンタルや中古品の再利用といった、リユース・リファービッシュ
    (ものの所有から・利用への価値観転換)
  • 廃棄された製品から材料をリサイクル
  • 植物由来の材料へ転換し、土に還す

この図にはいくつかの枝分かれがあることに気づきます。この循環を回していくには要所要所でまだ使えるか、リサイクル可能なのかといった判断が必要になるのですね。

リサイクル可能の分岐点

それでは私たちは何をよりどころに方向を決めたらよいのでしょうか。
プロダクト解析センターには過去の樹脂寿命予測のノウハウやデータがありますので、
それを使って何かお役立ちできないかと考えました。
いろいろな案をチームのメンバーと議論していく中で、目に留まったのが一度使用されて返ってきた中古品の寿命予測ができたらいいんじゃないかというアイデアです。

ここで、診断するためには簡単・迅速・非破壊の3要素が求められます。
中古品を「ピッ」と読み取って、すぐに余命や強度が分かれば商品のサイクルがもっとスムーズになることが期待されます。

中古品を「ピッ」と読み取って、すぐに余命や強度測定

プロダクト解析センターは「ピッ」=分光測定として、測定した光のデータと中古状態(劣化度合い、強度)を紐づける技術開発を進めています。

Electromagnetic Spectrum

開発の苦労話は別の機会に語らせていただきますが、分光測定器(ポータブル、カメラ)によって測定した光(スペクトル)のデータと、使用年数、強度などの物性値が経時変化するさまをすべてデータベースにまとめ上げました。
ただし、これらのスペクトルデータが使用年数、強度にどう紐づくのかはわかりませんよね。

ABSのFT-IRスペクトル(174データ)

大量にデータがある場合、機械学習により使用年数や強度と紐づけることが可能です。

InputとOutput例

以下はABS樹脂を熱加速劣化させたダンベル試験片の余命を診断した事例です。
使用相当年数と機械学習で予測した年数の相関係数が高く、精度良く予測できていることが分かります。イメージングで出力することで、場所ごとの劣化度合いも可視化できます。

ABSの劣化スペクトル学習結果
ABSの劣化診断イメージング例

樹脂の分別などはこれまでもされてきましたが、余命を予測するのは初めてではないでしょうか。加速試験や寿命予測にノウハウを保有するプロダクト解析センターだからこそできた技術です。

スペクトルデータ解析と寿命予測の組み合わせで、余命診断モデルの作成を行うサービスをご提供いたします。これにより、サンプルのスペクトルデータのみから余命を予測することが可能となります。すでにスペクトルデータ等をお持ちの場合は解析のみも承ります。

お客様からの情報提供(情報の内訳・保有サンプル・保有データなどがあれば)→データ解析・寿命予測→余命診断モデル(プロダクト解析センター・ケモメトリクス・加速劣化試験※・スペクトルや物性値の取得※  ※必要に応じて実施)

また、予測根拠を解析することで、劣化メカニズム解明にも活用可能です。

余命が予測できると以下の様な活用法が思いつきます。

【製品のレンタル事業をされている方】

  • 中古回収品の定量検査により、在庫の適正管理が可能に
  • 価格査定の根拠
  • 適正な感覚で修理が可能になり、修理コスト低減
     

【製品レンタル利用者】(構想)

  • 日常製品の健康診断
  • 返却前の状態確認
     

また、本技術は企業で製品を開発・販売している方にも活用いただけます。

  • 市場不良品の非破壊診断(部分的に大きな負荷がかかり、寿命が短くなっていないか)
  • 形骸化している信頼性試験規格の妥当性検証
  • リサイクル材の適正受け入れ

ご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にご相談ください。

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