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地球と暮らしと体にやさしい風を

エアコン「エオリア」

1988

2度のオイルショックを経た1980年代、あらゆる分野で省エネ化が求められるようになっていた。家電製品の中でも消費電力が抜きん出て高かったエアコンにとって、省電力化は最大の課題であり、松下電器も早くからコンプレッサーや熱交換器の改良など、さまざまな方向で省電力化に懸命に取り組んでいた。1983(昭和58)年には、インバータエアコンを開発し、これによりエアコンの性能向上だけでなく、省電力化が実現。エアコンの新しい時代が始まろうとしていた。それから5年後の1988(昭和63)年、エアコン事業30周年を機に、これまでの集大成ともいえる製品を誕生させる。単なる空調という枠組みを越え、“快適住空間”の創造をめざして開発されたエアコンは「エオリア」と名付けられた。「エオリア」とは、ギリシア神話の「風の神:アイオロス」に由来するネーミングである。

「エオリア」のコンセプトは3つ。操作しやすく家計にやさしい「生活空調」、体にやさしい「健康空調」、住まいにやさしい「インテリア空調」である。まず何よりも重視したのは家計にやさしい「省エネ性能」。室内機の熱交換器に“高効率Zフィン”を採用。さらに、インバータやコンプレッサーなどの要素技術を見直すことで消費電力を325Wも低減。エネルギー効率を30%も向上させている。そして、使う部屋、人、状況にあわせた3枚のカードで6種類の運転が簡単に選べる“カードインリモコン”を採用。(だんらん-リビング、ひかえめ-節約運転、おやすみ-寝室、まなび-子供部屋、ぱわふる-暑がり寒がり、やわらぎ-お年寄り)という6種類の温度設定を簡単に選ぶことができた。さらに、「エオリア」には電気集塵方式の空気清浄機能が搭載された。現在では業界の主流になっている「体にやさしい健康空調」は、ここから始まっている。

「エオリア」はデザインにおいても思い切った新トレンドを取り入れている。それまで5年間3代にわたって継続してきた“ミラノストライブ基調”のデザインから、インテリアとの調和に配慮した控えめなデザインに一新された。新しいデザインのポイントは、技術部門と共同開発した新機構によるスマートな吹出部の造形。さらに、さまざまなインテリアとの調和を考慮した、同一機種での4色展開も初の試みだった。「エオリア」のめざした「インテリア空調」は市場にも受け入れられ、後継機にも継承されていった。

その後、ナショナルからパナソニックへのブランド変更とともに、「エオリア」の名前は一旦は使われなくなるが、2016(平成28)年に、エアコン事業60周年を迎える節目の製品で復活を果たしている。現在の「エオリア」は、さらに省エネ性能を高め、「ナノイー」やお掃除ロボットの搭載で、ますます生活にやさしく、体にやさしく進化している。時代の風向きが変わる時、「風の神」が現れるのかもしれない。

「エオリア」1号機の広告(1988年)

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