パナソニックグループでは、品質と製品安全を通じてお客様からの信頼を獲得することで、競争力と企業価値に転換しています。創業者が掲げた「お客様大事を基本に製品やサービスを通じて社会に貢献する」という考えのもと、常に公明正大に事業を行います。
方針
当社グループは、品質経営の実践により、お客様の信頼と満足を高め、持続的な事業成長と企業価値向上を目指しています。その指針として、品質向上および製品安全の確保に関する基本事項をグループ共通規程として定めています。特に、品質不正への取り組みは、「パナソニック グループコンプライアンス行動基準」にて、製品やサービスに関するお客様や社会との約束を守り、製品サービスの安全性と品質の確保に向けた活動を行うことを明確にしています。加えて、製品安全については、自主行動計画に係る基本方針を定め、「お客様大事」と「公明正大」に徹して、製品安全の確保に積極的に取り組んでいます。
当社グループは、経営基本方針に則り、常に製造・販売する製品の安全性を確保して、お客様に安全・安心をお届けすることが経営上の重要課題であり、社会的責任であると考えています。製品安全の確保においては、FF式石油暖房機事故を痛恨の教訓とし、具体的にはグループ独自の製品安全規格をそれぞれの製品において企画・設計からサービス・廃棄までの全工程に適用して、製品安全の確保に取り組んでいます。また、グループのイントラネットを通じて、全製品の製品安全に関する情報をタイムリーに、各事業会社・事業場の品質担当者・設計担当者等従業員へ共有し、事故ゼロを必達目標として取り組んでいます。
責任者・体制
当社グループでは、永続的な品質経営基盤強化に向けた体制を構築しています。品質担当役員は、グループ・チーフ・テクノロジー・オフィサー(グループCTO)です(2026年8月現在)。各事業会社に品質責任者を配置し、自主責任・自己完結型で事業推進していく体制を基本としつつ、パナソニック ホールディングス(株)(以下、PHD)/パナソニック オペレーショナルエクセレンス(株)(以下、PEX)においてはグループとしての重要リスクへ迅速かつ的確に対応する体制としています。また、グループ全体で獲得した品質資産の横展開を進めております。
▪品質施策の検討体制(会議・委員会)
当社グループの品質改善取り組みや品質状況は、グループ品質担当役員、各事業会社チーフ・クオリティ・オフィサー(CQO)ならびに品質・製品法規等の関係者が参加する「CQO会議」で検討・総括しています。会議では中長期視点でのグループにおける品質のあるべき姿の議論等を通して、グループの品質基盤をより強固なものにするための取り組みを決定しています。また、具体的な品質施策協議の場として、各事業会社の品質責任者が参加する「品質委員会」を開催しています。
品質マネジメントシステム
当社グループでは、事業ごとに向き合うお客様からの信頼の向上を目指し、多様な事業特性に合った品質マネジメントシステムを構築し、その有効性を継続的に向上しています。事業会社/事業場自己完結型の品質保証プロセスを確立するために、ISO9001の要求事項を包含した上でグループ独自の品質保証の手法やノウハウを加えた品質マネジメントシステムを「品質マネジメントシステム(P-QMS) 構築ガイドライン」として2004年に制定し、ISO9001-2015の改定に合わせて本ガイドラインも改定しています。事業会社/事業場は、本ガイドラインを参照しつつ、それぞれの事業特性に合わせて独自の品質マネジメントシステムを構築し、その推進状況を確認するための品質アセスメントや品質監査を事業会社や事業場等の様々な階層で定期的に実施し、不足事項があれば是正計画を策定し、継続的な品質改善に取り組んでいます。
また、事業の多様化に対応するため、本ガイドラインと事業分野ごとの家電・住宅・デバイス・BtoBソリューション・薬事・サービス等のセクター規格を事業会社ごとに運用しています。
事業会社/事業場での品質監査に加えて、製品に関する定期的な第二者監査の観点を強化する目的で、事業会社(特定製品含む)に対し、PHD監査部門、品質部門合同による「品質機能監査」を実施しています。製品の開発製造における各種プロセスを評価し、事業会社/事業場の品質マネジメントシステムの有効性を把握する取り組みを行っています。加えて、事業会社および事業場では、品質認証(ISO9001/IATF16949)を取得する等、第三者機関による監査を定期的に取り入れることで、開発・製造・検査等各プロセスのチェック機能を強化し、お客様への信頼性向上を実践しています。
なお、パナソニック インダストリー(株)が製造・販売する電子材料製品において複数の不正行為があった影響で、対象事業場の品質マネジメントシステムに関する国際規格「ISO9001」(2024年3月)および「IATF16949」(2024年5月)認証が取り消されました。両規格とも再認証の取得に向け、改善に取り組んでいます。当該不正行為の対応状況については、「コンプライアンス」をご確認ください。
ISO 認証取得事業場公開Webサイト(一例)
主な取り組み
当社グループでは、競争力の強化、企業価値の向上を目指し、国際安全規格の認証取得、製品表示、製品セキュリティ、インクルーシブデザインなど、製品の企画・設計から出荷後対応にわたる取り組みを進めています。
▪国際安全規格などの安全・安心に関する最近の認証取得事例
IEC62443-4-1認証取得
産業用制御システムにおけるセキュアな製品開発ライフサイクルプロセスを規定した国際規格。2025年度、パナソニック インダストリー(株)の産業デバイス事業部が、同規格に適合していると認められました。
EN 18031-1およびEN 18031-2認証取得
欧州RE(無線機器)指令のサイバーセキュリティ要件を満たす規格。インターネットに接続された無線機器の共通セキュリティ要件、データ保護やプライバシーに関する要件を満たす規格です。2025年度、パナソニック コネクト(株)の堅牢タブレットとPCタフブックが、同規格に適合していると認められました。
JC-STAR★1適合ラベル取得
セキュリティ技術に関する日本の制度。国内外の関連規格とも調和しながら定められた基準に基づき、IoT製品に対する適合要件への適合性を可視化する制度です。2025年3月の制度開始以降、当社グループでは家電製品としては他社より先駆けて初めて取得したエアコンをはじめ、多くの製品が同制度に適合していると認められ、今後も新たな製品での取得への取り組みを広げています。
NSF/ANSI/CAN372認証取得
米国、カナダ、および国際的に使用される飲料水の安全性に関する規格。飲料水の給水器具に対する鉛含有量に関する基準を定める規格です。2024年度、パナソニック(株)空質空調社のヒートポンプ給湯器の飲料水システム構成部品が、同規格に適合していると認められました。
▪製品表示に関する社内ルール
各事業会社がそれぞれの製品に適した製品の取り扱いや施工・サービスに関する考え方や順守すべき事項を定めています。具体的には、「警告表示」ならびに「取扱説明書・施工説明書」の設計方法において、製品の安全に係る警告表示方法、法律に定められた製品のリサイクル・廃棄時の留意事項(リサイクル法等)の表示、また、お客様が製品・サービスを安全に使用していただくための情報を表示し、お客様が誤った使用をされないよう配慮しています。
▪製品セキュリティの確保
ソフトウェアを搭載した様々な製品をネットワークにつなげて便利にご利用いただく中で、情報の漏えいや改ざん、誤作動の誘発をねらった悪意ある第三者の攻撃による被害を防ぐことを目的として、製品のセキュリティ確保が必要とされています。当社グループでは、お客様に安心してパナソニック製品をご利用いただくために、全社の製品セキュリティを扱う専門組織を持ち、セキュリティを意識した開発を進めるための指針を策定するなど、社内の体制・ルールを整備し、それらを定期的に見直すことにより、情報セキュリティ活動や製造システムセキュリティの活動と連携し、全社一丸となって製品のセキュリティの確保に取り組んでいます。
継続的な情報収集
製品のセキュリティにおける問題や解決策は日々新たに更新されています。当社グループでは、例えばセキュリティのインシデント等の情報共有を行うFIRST※1等の、セキュリティ専門団体への加盟や各種国際会議での調査を通して、製品のセキュリティにおける最新情報を常に収集しています。これによって得られた情報は、関連部門と共有するとともに、製品のセキュリティに関する社内活動に活かすことで、グループ全体の製品セキュリティ対策の改善に務めています。
※1 Forum of Incident Response and Security Teams
製品セキュリティを意識した開発の推進
製品の開発段階においては、守るべき資産・機能やそれらに対する攻撃の可能性を検討し、適切なセキュリティ対策が施されるように製品開発を行います。出荷前には、専門家による最新の攻撃方法等を取り入れたセキュリティ診断を行うことで、ハードウェアとソフトウェアの両面に、脆弱性と呼ばれる「製品のセキュリティ上の弱点」が、パナソニック製品に含まれることのないように努めます。
出荷後の対応
出荷後の製品のモニタリングの一環として、お客様がパナソニック製品の脆弱性を発見された際に届け出られる窓口を開設しています。脆弱性情報を入手したときは、直ちに当社グループ製品に関する影響の確認を行い、当社グループ製品のセキュリティ上の問題があることが判明したときには、アップデート等によって製品セキュリティの確保を行うとともに、チェック体制の整備等の再発防止に向けた取り組みを行います。担当事業部が対応を完了するまで製品セキュリティセンターが進捗確認と支援をする体制を整えています。
また、発売後の当社グループ製品に影響しうる最新の脅威情報のモニタリングを行うことで、脆弱性の報告を待つだけではなく、自主的に情報を得て対応する体制を整えています。
▪インクルーシブデザイン・ユニバーサルデザインの推進
当社グループでは、「人にやさしいモノづくり」を創業以来のDNAとして大切にしています。この考えのもと、多様な人々が製品やサービスを安心して利用できる社会の実現に向け、インクルーシブデザイン・ユニバーサルデザインの取り組みを推進しています。
社会やくらしが変化し、多様なニーズが顕在化する中で、従来見落とされてきた使いにくさや潜在的なリスクに着目し、品質向上と製品安全の確保につなげています。
規程に基づく全社推進
当社は、これらの取り組みを全社的かつ継続的に推進するため、2003年に制定した「ユニバーサルデザイン業務規程」を、2025年2月に「インクルーシブデザイン・ユニバーサルデザイン業務規程」へと改定しました。本規程では、行動指針および達成要件を明確化するとともに、開発プロセスにおいて、多様なユーザーとの対話・検証を組み込む仕組みとして全社で展開しています。
開発プロセスにおける実践と共創
商品・サービスの構想段階から、課題を経験する当事者との対話を重ね、課題の本質を捉えるインサイトを獲得しています。加えて、社内の当事者ERG(Employee Resource Group)や特例子会社、法務・品質管理・技術・デザインなど部門が連携し、多様な視点を取り入れながら検証を実施しています。
その成果の一つとして、個々のニーズに応じてフラットな操作部をもつ家電の操作性を補完する「アタッチメントチップ」などの開発につながっており、使いやすさの向上に加え、ヒューマンエラーや利用時の不具合といった潜在的リスクの低減にも寄与しています。
価値創出への貢献
これらの取り組みを通じて、多様な人々が安心して利用できる製品・サービスの提供を実現するとともに、新たな価値創出にもつなげています。また、本取り組みは国際的にも高い評価を受けており、国内外からの視察受け入れや国際会議での発信などを通じて、その知見を社外にも広く共有しています(詳しくは「受賞実績」をご参照ください)。
今後もインクルーシブデザイン・ユニバーサルデザインの実践を通じて、「人にやさしいモノづくり」を進化させ、持続可能な社会への貢献を目指していきます。
重大事故と対策
▪製品事故への対応
製品事故への対応力を継続的に高め、お客様の安全と信頼の確保を通じて、企業価値の維持・向上を図っています。製品事故が発生した場合、直ちに事実確認を行い、原因解析と検証を行います。重大製品事故と判断した場合には、お客様の安全を確保するため、事業会社/事業場およびPHD/PEXが一丸となり、適切な対策をとることに努めています。具体的な初動対応として消費者庁等の所管官庁、事業会社社長、グループCEOおよび経営幹部への報告を行い、対策方針を検討します。また、過去に発生したトラブル事象をもとに、事業会社は製品の故障対策マニュアルや安全試験文書等を作成し、新製品開発や仕様変更等で実践して、再発防止に取り組んでいます。
▪重大製品事故情報
日本国内では、消費生活用製品安全法ならびに製品安全に関する自主行動計画に係る基本方針に基づき、重大製品事故※2について、製品起因が疑われる事故※3、ならびに製品に起因して生じた事故かどうか不明であると判断した事故※4を公表しています。
※2 消費生活用製品安全法に規定された下記の事故
- 死亡事故
- 重傷病事故(治療に要する期間が30日以上の負傷・疾病)または後遺障害事故
- 一酸化炭素中毒
- 火災(消防が火災として確認したもの)
※3 以下のいずれか
- ガス機器・石油機器に関する事故(製品起因か否か特定できていない事故を含む)
- ガス機器・石油機器以外の製品に関する事故であって、製品起因が疑われる事故
※4 重大製品事故のうち、日本の経済産業省の消費経済審議会製品安全部会において、製品に起因して生じた事故かどうか依然として不明であると判断された事故
日本以外においても、各国の法律や指針に基づき、製品が関連する事故の把握と情報開示を行っています。
▪FF式石油暖房機事故への対応状況
2005年にFF式石油暖房機の事故により緊急命令を受け全社を挙げた市場対策を開始してから21年が経ちました。私たちは新たな事故を二度と起こさないための取り組みを、FF市場対策部を中心に進めています。
リコール対象製品把握のための探索活動は東北・長野県を中心に実施していますが、2025年度は北陸にも活動を広げ、ローラー活動による対象製品の給排気筒調査、リコール告知チラシのポスティングなどを実施しました。また2024年度より導入したITツールを引き続き活用し、新たな発見につながる業務推進に取り組んでいます。加えて点検・修理済のお客様には誠意をもって回収促進に取り組むとともに、すべてのお客様にリコールが伝わるように告知活動も継続しています。
2025年度新たに現品発見または廃棄されたことを確認した台数は64台で、2026年3月31日現在の名簿把握台数は118,706台(販売台数の78%)となりました。リコール対象とは気づかずに使用されていた製品もあり、未だリスクの高い状況は継続しています。引き続き、探索活動に取り組んでいきます。
教育
当社グループでは、経営層から現場従業員まで、品質文化の醸成と人的資本の強化に向けた取り組みを進めています。品質経営革新を推進するキーパーソンとなる品質幹部人材を育成することを目的に、事業会社/事業場の品質責任者に対する研修を毎年開催しています。特に、品質マネジメントシステムの責任を担う事業部長を対象とした「事業部長品質・環境研究会」を定期開催し、外部講師による講演やケーススタディ学習等、実践的な品質経営を学ぶ活動を推進しています。特定の階層者教育だけでなく、入社1~3年の品質機能社員への継続的品質研修や、製品や事業に特化したカスタマイズ研修を開催し、グループ全体での品質向上の意識醸成を推進しています。製品安全最優先の企業風土を全従業員に広げるために、「製品安全の基礎」等のeラーニングを実施しています。社内外の事例を通じて製品安全について考える「製品安全フォーラム」は、2025年度には1回開催し、累計86回目となりました。各事業会社においては、現場の課題解決手法を学びあうQC(Quality Control)活動を実施し、モノづくり現場の品質力強化を図る取り組みを行っています。
さらに、現場・現物に即した教訓の伝承と製品安全技術の学習を目的に、大阪府枚方市の組織・人材開発センター内に「製品安全学習室」を設置し、FF式石油暖房機事故をはじめとする過去のリコール社告製品の現物、原因・対策や、重要な不安全事象(トラッキング、強度劣化等)の防止策を学ぶことができるようにしています。また、「バーチャル製品安全学習室」では、オンラインで自由視聴できる展示室を提供しています。製品安全学習室を360度撮影しリアルに再現された空間を、見学者が自由に動き回ることができ、アイコンをクリックするだけでパネルやビデオを視聴できるようにしており、遠方の拠点や海外の従業員への裾野を広げた啓発活動も行っています。
特にFF式石油暖房機事故に関しては、先述の「製品安全学習室(枚方)」に加え、「製品安全館(草津)」・「教訓の伝承室(奈良)」・「教訓の伝承室(移動展)」での資料展示、各種研修等での講話で事故の教訓を伝承し、当社グループの製品安全を第一とする風土醸成に努めています。事故から20年を迎えるにあたり、事故の内容や経営トップの品質への認識を高めるため、「お客様大事」の行動変容を促すために枚方と奈良の展示を2025年度にリニューアルしました。枚方には、品質コンプライアンスゾーンを新たに設置しています。
受賞実績
▪製品安全対策優良企業表彰
経済産業省主催。企業における製品安全に対する意識の向上と、事業活動や消費生活において製品安全を重要な価値として位置づける「製品安全文化」の定着を図り、製品安全が持続的に向上していく、安全・安心な社会をつくることを目的とした表彰制度(2007年~)。
▪IAUD国際デザイン賞
一般財団法人 国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)主催。“一人でも多くの人が快適で暮らしやすい”UD社会の実現に向けて、特に顕著な活動の実践や提案を行っている団体・個人を表彰するもの。旧パナソニック(株)として、様々な商品や取り組みが2018年まで7年連続で金賞を受賞しているほか、近年では下記を受賞しています。
- 2020年度「パナソニックLED懐中電灯」非常時配慮デザイン部門銀賞受賞、「ファーストシェービングシリーズ」プロダクトデザイン部門銅賞受賞
- 2021年度「パナソニック顔認証付きカードリーダー」医療福祉部門金賞受賞、「パナソニック非常用放送設備」警備・治安部門銀賞受賞
- 2024 年度「パナソニックのインクルーシブデザイン」大賞(部門: 事業戦略) を受賞
- 2025 年度「アタッチメントチップ」プロダクトデザイン部門金賞受賞
▪Zero Project Award
オーストリアのエスル財団が2008年に設立した「Zero Project」は、バリアのない世界の実現を目指して国連障害者基本条約に基づく活動を展開しています。その取り組みの一環として、世界中の革新的な取り組みを表彰しているのがZero Project Awardです。93か国586件の応募の中からパナソニックのインクルーシブデザインが受賞しています。