パナソニックグループは約13,000社の購入先様とグローバルに取引を行っています。当社グループは、優れた技術と品質を提供するだけでなく、人権や環境への配慮、良好な労働環境、公正な取引等、社会的責任を果たされている購入先様と取引を行うよう努めています。調達する部品・材料は、原材料から電気・電子部品、加工部品まで幅広く、購入先様の所在する地域・国も多岐に渡り、中には移住労働者の多い地域・国での部品・材料も一部含まれています。製造に直接用いる部品・材料の購入先様数の地域別比率は、日本35%、中国29%、アセアン・インド30%、欧州2%、北米3%、中南米1%で、業種別比率は、加工部品53%、原材料23%、電気・電子部品22%、その他(金型等)2%でした。


取引の状況〔地域別(%)〕

取引の状況〔地域別(%)〕


取引の状況(地域別)

取引の状況〔業種別(%)〕

取引の状況〔業種別(%)〕


取引の状況(業種別)

方針

▪調達方針

当社グループは、調達についての基本的な考え方を「調達方針」として以下の3項目にまとめています。その根底にあるのは、「購入先様は当社との相互の信頼関係に基づき研鑽や協力を重ねながら、お客様が求める価値を創造するための不可欠なパートナーである」との考え方です。

  • グローバル調達活動の実践
    グローバルでの生産活動に対応するために、グローバルに購入先様とのパートナーシップを築き、相互の信頼、研鑽、協力のもと、求められる機能・価値を創造してまいります。
  • CSR調達の実践
    法令や国際規範・社会規範、企業倫理を順守し、人権・労働、安全衛生、地球環境保全、情報セキュリティなど社会的責任を果たす調達活動を購入先様とともに推進してまいります。
  • 購入先様と一体となった調達活動
    お客様に受け入れられる商品価値を実現するために、部材・商品の市場動向や新技術・新材料・新工法等、購入先様との情報窓口としての役割を果たし、購入品の品質確保と維持・向上、競争力ある価格の実現、市場変化への対応を推進してまいります。

また、2022年4月には、サプライチェーンにおけるCSR推進の取り組みを強化するため、「サプライチェーン・コンプライアンス規程」を制定し、サプライチェーン・コンプライアンスに関する基本方針や、その実践のための社内ルールを定めました。また、購入先様向けには「パナソニック サプライチェーンCSR推進ガイドライン」(以下、CSRガイドライン)を発行し、ともに協働して責任ある調達活動を推進しています。

▪クリーン調達の徹底

当社グループは、「企業は社会の公器である」という考えのもと、グローバルな購入先様と公平公正な取引を行います。調達部門は、購入先様との関係において、より厳しい節度・倫理観が求められていることから、健全な関係を構築するため、2004年に「クリーン調達宣言」を行い、この宣言に則った調達活動を進めています。

日本では、当社グループの調達社員に対し、毎年eラーニングや教育啓発コンテンツの提供等を通して「クリーン調達」の理解促進および周知徹底を行っています。

購入先様からの金品等の受領の禁止、供応接待・会食の禁止

当社グループはグローバルで適用される社内規程として、「贈収賄・腐敗行為防止に向けた贈答・接待等に関する規程」を定め、購入先様を含む取引先等からの食事、もてなし、旅費負担を含む贈答・接待等の受入れに関する厳格なルールを示しています。同規程では、贈答・接待等の目的、金額・頻度、現地の慣習に照らして合理性・均衡性があること、そしてビジネス判断へ不当な影響を与えるものでないこと、といった通則を定め、より詳細な基準や厳格なルールはさらに地域ごとに設けています。

責任者・体制

パナソニック ホールディングス(株)(以下、PHD)代表取締役兼副社長執行役員が調達担当役員を務めています(2024年8月現在)。当社グループでは、責任ある調達活動を全社で推進するため、各事業会社や地域の調達部門と連携しながら全社的に取り組む体制を構築しています。また、各事業会社および傘下の事業部、関係会社が、責任ある調達活動の実践主体として、社内規程や業務基準、マニュアル等に沿ってPDCAサイクルを回しています。パナソニック オペレーショナルエクセレンス(株)(以下、PEX)グローバル調達本部は、全社施策の立案と各事業会社における推進を支援する役割を担っています。推進上の課題は、事業会社・事業部の調達責任者で構成する全社会議等で議論し、適切な対応を行っています。

サプライチェーンのデュー・ディリジェンス

▪「パナソニックサプライチェーンCSR推進ガイドライン」の徹底

当社グループは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」をはじめとした国際的な規範・原則を支持し、購入先様に対しても支持いただくことを求めています。このような当社グループのCSR調達に関する考え方を示し、購入先様への要請事項を明確に伝えるため、CSRガイドラインを定めて取引開始時に交付し、その順守を契約書等で購入先様に義務付けています。CSRガイドラインでは法令や国際規範の原則を加味し、下記のような内容を定めています。

1)労働:強制労働・児童労働の禁止、適正な労働時間と賃金の支払い、人道的な処遇と差別の撤廃、結社の自由
2)安全衛生:職場の安全・緊急時対応のためのトレーニング、機械設備の安全対策、施設の安全衛生
3)環境:当社グループが発行する「グリーン調達基準書」に準ずる
4)倫理:汚職・賄賂の禁止、公正な取引、責任ある鉱物調達
5)情報セキュリティ:情報漏洩の防止、コンピューター・ネットワークの脅威に対する防御
6)品質・安全性:品質マネジメントシステムの構築、正確な製品・サービス情報の提供、製品安全性の確保
7)社会貢献:社会・地域への貢献
8)マネジメントシステム

CSRガイドラインは、日本語、英語、中国語で作成し、ホームページに掲載するとともに、改訂した場合は購入先様に配布し周知徹底を図っています。また、必要に応じて購入先様とのワークショップでも周知徹底しています。購入先様には、同ガイドラインの要求事項を二次以降の購入先様に対しても伝達し、その順守状況を確認するよう要請しています。詳細は、下記をご覧ください。

▪購入先様からのコミットメントの取得

当社グループは、「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準」および「パナソニックグループ人権・労働方針」への賛同を購入先様に要請するとともに、CSRガイドラインの順守を定めた取引基本契約書の締結を原材料・部品調達の取引開始時の必須条件としています。なお、CSRガイドラインでは、国連の規範や原則に表明されている人権の尊重、購入先様における人権に関する取り組み状況の評価と予防・軽減・是正措置の実施、二次購入先様への順守要請、当社グループの人権デュー・ディリジェンスへの協力要請等を定めています。当社グループの取引基本契約書の雛形では、このCSRガイドラインの順守を購入先様に義務づけています。また、すべてのケースで漏れなく購入先様からコミットメントを取得するために、既存の購入先様からは、2022年12月のCSRガイドライン改訂時から順守同意書の提出をお願いしています。

▪CSR自主アセスメントの実施と監査

当社グループは、サプライチェーンにおける人権デュー・ディリジェンスをはじめとするCSR推進のため、購入先様に対してCSR自主アセスメントの実施を要請しています。

CSR自主アセスメントは、当社グループのCSRガイドラインに基づき構成されていて、新規の購入先様については取引開始時に必ず実施を要請しています。既存の購入先様に対しても、定期的に実施を要請しています。

このCSR自主アセスメントは、WEBアンケートの形式で回収し、購入先様と当社グループ双方の負担軽減と回収効率・回収精度の向上にも努めています。2024年3月末時点では12,300社以上の購入先様(95%)から回収しました。移住労働者の労働環境など、特にCSR自主アセスメントで重点管理項目と定めている課題が見つかった場合には、必要に応じて現場確認やヒアリング等の監査を実施し、是正に向けた働きかけを行っています。今後も定期的な回収を継続していきます。

また、当社グループは2022年度より、人権デュー・ディリジェンスの仕組みの構築を開始しています。外部の専門家の知見を得ながら、国際機関の公表しているリスク指標やインデックスを用いて購入先様の人権リスクを評価するテーブルを作成し、優先的に対応すべき購入先様を特定しています。

2023年度からは、各事業会社がこの特定された購入先様の中から前述のリスクアプローチで監査対象を絞り込み、各社で策定した購入先監査実施計画に沿って、自社および第三者機関による購入先監査を合計で141社(うち16社は第三者機関による監査)に対して実施しました。

購入先監査において指摘した事項には、下表のようなものがあります。指摘事項については購入先様に改善を依頼し、改善状況について確認を行っています。

分野改善を依頼した指摘事項例
労働勤務時間・休み時間・残業時間の履歴が適切に管理されていない
人権女性に配慮したプライバシーを保てる休憩室が整備されていない
安全衛生有事の際の避難経路が不明確
環境環境影響評価が適切に実施されていない
倫理贈収賄防止等の全従業員に対する教育がなされていない
情報セキュリティ管理不足、社員教育が徹底されていない

環境負荷低減の取り組み

当社グループは購入先様・物流パートナー様との連携を通じて、環境負荷の低減を図っています。詳細は、環境の章をご確認ください。

責任ある鉱物調達

▪基本的な考え方

当社グループは、紛争地域で武装勢力の資金源となるリスク、および高リスク地域での人権侵害、採掘現場における児童労働、劣悪な労働環境、環境破壊、汚職等のリスクに関連する錫、タンタル、タングステン、金、コバルト、マイカ等の鉱物問題を重大な社会課題として懸念しています。そして、調達活動における社会的責任を果たすため、サプライチェーン全体で責任ある鉱物調達を行っています。

対象地域には、合法的に事業活動を行っている企業や人々もいます。そのような人々の事業活動やくらしを阻害することのないよう十分な注意を払いながら、問題のある鉱物の不使用に取り組んでいかなければなりません。そのためには対象地域で健全な鉱物サプライチェーンの構築に取り組んでいる国々や企業、NPOを含めたさまざまなステークホルダーと連携して取り組む必要があります。

当社グループは、経済協力開発機構(OECD)の「デュー・ディリジェンス・ガイダンス」に沿った取り組みを行い、グローバルスタンダードに則したマネジメントプロセスを構築し、継続した取り組みを実施します。

責任ある鉱物調達を推進するためには、鉱山等の川上企業から、製錬/精錬企業、川下企業まで、サプライチェーン全体にわたるデュー・ディリジェンスの取り組みが必要となります。関連するすべての購入先様に、サプライチェーンを通じて製錬/精錬所に関する情報提供をお願いするとともに、問題のない製錬/精錬所からの調達を目指します。また、責任ある鉱物イニシアティブ(RMI)に参画し、業界全体での取り組みを促進しています。

▪責任ある鉱物調達体制

PHDの調達担当役員を最高責任者とし、全社体制を構築して取り組んでいます。各事業会社と連携しながら、それぞれの事業特性に応じた体制構築と調査実施を行っています。

▪デュー・ディリジェンスの取り組み

責任ある鉱物調査は、製錬/精錬所に至るすべての購入先様のご協力が必要なことから、当社グループでは、調査ツールとしてRMIの発行する錫・タンタル・タングステン・金(3TG)の調査票(CMRT)およびコバルト・マイカの調査票(EMRT)など業界標準の調査票を使用しています。

責任ある鉱物調査

当社グループは、各事業会社または事業部ごとに購入先様に対して責任ある鉱物調査を実施しています。2023年度は、CMRT調査を依頼した延べ3,041社の購入先様のうち2,850社から調査票を回収し、EMRT調査を依頼した延べ3,711社の購入先様のうち3,474社から調査票を回収しました(2024年3月末時点)。回収した調査票に基づき、リスク分析と評価を実施しリスクに応じて購入先様へさらなる調査をお願いしました。

2023年度、特定した製錬/精錬所のうちConformant/ Active Smelter(RMIの監査に合格しているか、監査受審中の製錬/精錬所)は、全体の約6割でした。残る4割についても、業界活動などを通じて、製錬/精錬所に責任ある鉱物保証プロセス(RMAP)への参加の働きかけを行っています。また、万一サプライチェーン上で紛争や人権侵害に加担する鉱物が見つかった場合には、調達先の変更など不使用化に向けた取り組みをお願いしています。

▪業界連携の取り組み

当社グループでは、電子情報技術産業協会(JEITA)「責任ある鉱物調達検討会」に参画し、業界連携によるサプライチェーンへの啓発活動や調査効率の向上に取り組んでいます。具体的には、国内外の業界団体と連携し、責任ある鉱物調達に対する正しい取り組みを促進するためのセミナー開催や調査説明会の実施、製錬/精錬所情報の精査等に取り組んでいます。

また、JEITAのワーキンググループに参加し、他の会員会社とともに製錬所が責任ある鉱物保証プロセス(RMAP)に参加するよう継続して働きかけています。

また当社グループは、最新の業界動向を学び調達活動に関するベストプラクティスを推進することを目的に、2017年7月よりRMIに参加しています。引き続き、業界の動向を見ながら責任ある鉱物調査を継続していきます。

社内教育と社外での啓発活動

調達部門では、調達業務における社会的責任を果たせる人材を育成するため、CSRに関する考え方や調達活動におけるコンプライアンスの知識を習得するための研修を実施しています。また、海外(欧州の一部・米国・中国・アジア)でも調達社員に対する研修を実施し、その中で、環境や汚職・腐敗防止等のコンプライアンス、サプライチェーンにおける人権・労働、安全衛生、クリーン調達等を含むCSR調達の基本事項やコンプライアンスの重要性について、理解度を確認しながら知識の定着を図っています。その他、調達部門の新入社員や転入者向けの研修カリキュラムにもCSR調達の基本事項を盛り込んでいます。

また、昨年度は購入先監査を担う監査員を養成するための研修を日本で2回、アジアで7回、中国で2回、合計11回実施し、合計152名を購入先監査員として育成しました。調達社員向けのポータルサイトに、CSR調達のために調達社員が実践すべき各手順書や、購入先様に実施を要請するCSR自主アセスメントや監査の実施要領等、責任ある調達活動に必要な情報を掲載し、常に最新の情報に基づいて業務推進ができるようにしています。

サプライチェーンにおける啓発としては、2022年度は、マレーシアを中心に購入先様とのワークショップやサプライヤーミーティングを約100社、CSR監査をアジアで約50社に対して実施しました。2023年度は、マレーシアにて国連開発計画(UNDP)と連携した人権デュー・ディリジェンス研修を6回開催し、在マレーシアの購入先様約500社のうち特に取引金額の多い購入先様207社(228名)に受講いただきました。今後さらにリスクの高い地域・購入先様から優先的に、対象地域を拡大して購入先様への教育を実施していく予定です。

通報・相談窓口

当社グループは、「グローバルホットライン EARS」を設置し、当社グループのサプライチェーンにおいて、法令・規則、購入先様との契約、「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準」等への違反が生じている場合、または違反の疑いがある場合に、グループ社員および購入先様が匿名で通報できるようにしています。通報があった場合は、社内規程や、通報者の保護に関する各国の法令を順守して、適切な調査と措置を行います。
なお、自社のグローバルホットラインに加え、当社グループのサプライチェーンにおいて人権に対する負の影響が発生した場合に、購入先様またはその従業員の方が利用できる救済申立て窓口として、電子情報技術産業協会(JEITA)CSR委員会が設立した業界共同の苦情処理プラットフォーム「JaCER」に参加しています。第三者窓口を介して苦情を受け付けることで、苦情処理の公平性・透明性を図り、従来以上に対話・救済の促進につなげ、人権における本質的な課題解決に取り組んでいます。いずれの通報制度においても、通報者の匿名性や通報内容の秘匿性を確保し、購入先様向けのポータルサイトおよび当社Webサイト「購入先様へのお願い」にて通報窓口の周知を行っています。

通報窓口にて受領した購入先様における人権課題については、第三者機関を通じて監査を実施し、購入先様による是正の見届けを行いました。