パナソニックグループは、総合エレクトロニクスメーカーとして、関連する事業分野について、国内外のグループ各社との緊密な連携のもとに、開発・生産・販売・サービス活動を展開しています。すべての事業活動は、グループで働く社員  はもとより、製品・サービスをご利用いただいているお客様、調達・販売などに関わっていただいているお取引先様、さらにはビジネスパートナーの皆様など、多くの方々に支えていただくことで成り立っています。従って、当社事業活動はこれらの方々にプラス・マイナスのインパクトを与える可能性があります。私たちは、「企業は社会の公器である」という経営理念を掲げる企業として、こうしたすべての人々の犠牲の上に自らの発展を図ることは許されず、権利を守り、心身の健康や幸せな人生に貢献する責任があると認識しています。

さらに、私たちは、グローバルで事業を展開しているグローバル企業として、すべての人々の人権に配慮しながら、事業活動において適用されるすべての法令を順守するとともに、「国際人権章典」や国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則および権利に関する宣言」で表明された国際的に認められた人権を尊重します。私たちの事業活動や製品・サービス、それらの取引などを通じて個人や労働者、社会への悪影響が想定される場合においても、その予防、軽減、是正に努めます。

また、購入先様やお取引先様などに対しても、人権・労働コンプライアンスに関する当社の方針、施策への理解と実行を求め、相互に協力しながら、サプライチェーンのリスクの監視、発現の防止や軽減、是正のための適切な措置に努めます。

具体的には、以下の活動に取り組んでいます。

  • 人権方針の策定・見直し
  • 人権啓発活動・人権デュー・ディリジェンス
  • サプライチェーンにおける人権リスクの対応
  • 救済メカニズムの整備・運用
  • ステークホルダーエンゲージメント

これらの活動については外部専門家のアドバイスも参考にしています。

なお、「人権の尊重」は、当社グループにおけるマテリアリティのうち、最重要課題の1つです。マテリアリティに関する詳細はこちらをご確認ください

※ 社員:パナソニックグループ会社と雇用関係にある社員、嘱託等およびその指揮命令を受けて業務に従事する派遣社員・出向社員およびパナソニックグループ会社の取締役、執行役員、参与、フェロー、監査役、特別顧問および顧問の総称をいいます。なお、一部の人事諸制度等の適用対象は主要会社と雇用関係にある社員を指しています。

方針

当社グループは、以下の国際規範の内容を参照し、社外の専門家の意見も踏まえた「パナソニックグループ 人権・労働方針(以下、「人権・労働方針」)」を定めています。この方針には、国際規範や事業活動・取引に適用される各国法令の順守を前提として、国際的に認められた人権の尊重へのコミットメント、人権侵害のリスクの特定・予防・是正、被害者の救済などの推進、働きがいのある労働環境の実現、これらに関する様々なステークホルダーの皆様との対話に取り組んでいくことを明記しています。この方針に従って、社内ルールを定め、推進体制の整備ならびに人権の尊重や働きがいのある労働環境の実現に向けた具体的な取り組みを推進しています。

また、当社グループの社員一人ひとりが果たすべき約束を定めた「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準(以下、「コンプライアンス行動基準」)」においても「人権の尊重」を「私たちの社会的責任」と位置づけ、その啓発に努めています。

<参照している主な国際規範>

  • 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」
  • 国連「国際人権章典」(世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約、経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約)
  • ILO「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」およびILO基本条約(中核的労働基準)

これらの方針は、社外有識者や当社の影響を受けるステークホルダーおよびその代表者のご意見を踏まえて、定期的に、また必要に応じて随時見直し改善しています。直近では2023年8月に、人権・労働方針を、ILOの中核的労働基準に労働安全衛生が追加されたことへの対応と、サプライチェーンにおける強制労働防止の取組みをより充実・定着させるために、社内外の専門家の意見も踏まえて改訂しました。本方針は、当社グループおよび事業会社各社の経営陣および労働組合との意見交換を経て、グループCEOが承認・公布しました。
「人権・労働方針」は日英両言語でウェブサイトに掲載しています。

また、すべての購入先様に順守いただく「パナソニックサプライチェーンCSR推進ガイドライン」の中で人権を尊重することを要請しています。

責任者・体制

パナソニックグループの人権尊重の取り組みの責任者は、グループ・チーフ・ヒューマン・リソース・オフィサー(グループCHRO)です(2024年8月現在)。当社グループの執行役員は、担当する分野のサステナビリティに関わる項目を、報酬に反映される評価指標として設定しています。2023年度、グループCHROは、人権の尊重、労働コンプライアンスの取り組みを、短期および中期の業績連動報酬の指標の一部としています。詳細は、「社員のウェルビーイング」PDFファイル をご確認ください。

人権に関する重要課題は、当社グループCEOが委員長を務めるサステナビリティ経営委員会で議論し、グループ経営会議や取締役会に報告します。また、取締役会からはその監督を受けています。2022年度は人権・労働に関する各国の法制化対応についての議論、2023年度は情報開示におけるSocial(社会)領域の課題についての議論がありました。2024年度の「グループ重要リスク」としても「人権・労働コンプライアンス」、「サプライチェーンマネジメント」を特定し、各事業場でリスク低減に取り組んでいます。詳細は、「リスクマネジメント」をご確認ください。

日常の人権の尊重の取り組みは、パナソニック ホールディングス(株)(以下、PHD)CHRO傘下の戦略人事部 内に当社グループの人権・労働の取り組みの統括組織を設置し、人事機能中心に関連機能と連携しながらグループ傘下の事業場における取り組みを各事業会社とともに推進しています。サプライチェーンにおける取り組みに関しては、「責任ある調達活動」をご確認ください。

※ 組織改編により、2024年4月1日からは、ソーシャルサステナビリティ部が当社グループの人権・労働の取り組みの統括組織。

啓発活動

当社グループは、「人権の尊重」を含むコンプライアンス行動基準について、22言語に翻訳し、入社時・昇格時など定期的に徹底する機会を設けています。全社員を対象とした研修も実施しており、2023年度は15万人が受講しました。また、22年度からは、主要関連部門である人事部門において、日本国内のグループ人事社員向けに実施する基礎研修の選択項目として「人権・労働コンプライアンス」を追加しました。そのほか、日本から海外会社に赴任する経営者を含むすべての出向者に対して、企業の人権尊重責任についての国際基準や各国法規制、グループの人権労働方針を含む当社グループの取り組みに関する理解を目的とした研修を実施しています(23年度実績:474人)。加えて、当社のモノづくりが集中するアジア各国で、製造拠点の責任者や人事責任者に対し研修を実施しました(23年度実績:中国29人、インド20人)。

人権デュー・ディリジェンス

当社グループは、事業活動や製品・サービス、取引に関連する人々の人権の尊重のため、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、OECD「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」を参照して、「人権デュー・ディリジェンス」に取り組んでいます。の仕組みやプロセスの策定については、社外の専門家やステークホルダーからの意見も取り入れています。

当社グループは、バリューチェーンを含む事業活動全体での人権課題の特定が必要であると認識し、優先課題の分析に着手しています。また、グローバルに広範な事業領域で事業を展開しており、事業によっては裾野の広いサプライチェーンを持つことから、国や地域によって当社グループの製造拠点およびサプライチェーンで働く労働者が脆弱な立場や危険な労働環境に置かれるリスクがあると認識しています。このことから、まず当社グループの製造拠点およびサプライチェーンから取り組みを開始しています。サプライチェーンの取り組みの詳細は、「責任ある調達活動」をご確認ください。

構築した仕組みや、その継続的な改善については、関連する社内外のステークホルダーと対話や協議・連携を行っています。また、取り組みについては、公式ウェブサイトおよび関連する報告書やその他のコミュニケーション手段を通じて適切に開示しています。

▪リスクアセスメント

当社グループの製造拠点における自主精査

2021年度は、当社グループ内のリスクを鳥瞰する目的で、当社グループのほぼすべての海外製造会社において、人権・労働に関する自主精査を実施しました。自主精査の質問は、Responsible Business Alliance(RBA)の自主アセスメント項目を参照し、当社グループ向けに応用したものを使用しました。これを通して、人権・労働に関する課題を大まかに把握することはできましたが、課題に対する速やかな是正のためには、より具体的な課題把握が必要あると認識しました。

これを踏まえ、2022年度は質問項目の見直し・追加を行い、事業会社傘下の海外製造会社に加え、事業会社が必要と判断した国内の一部製造拠点を対象として、潜在的な課題を含む人権課題の特定と是正に繋げることを目的に、再度自主精査を実施しました(計127社・拠点)。その結果特定した課題に関しては、2024年3月末までに、事業会社が、該当の会社および拠点が策定した改善計画に従い是正を完了しました。

2023年度は、当社グループのすべての国内外製造会社・拠点を対象とし、前年度に特定した課題の是正状況の経過確認を含め自主精査を実施し、ほぼすべての対象から質問票を回収しました(計202社・拠点から回収済)。回収した結果についてはPHDが評価をし、検出した課題について、事業会社の見届けの下、該当の会社および拠点が24年度末までの是正完了を目指します。

▪研修

人権デュー・ディリジェンスを通じて特定した課題については、その防止を目的とし、地域やテーマごとに研修を実施しています。2023年度は、マレーシアにおいて、マレーシアおよびシンガポールの社内のマネジメント層、人事・経理・購買・法務・製造等の責任者や担当者を対象とした強制労働の防止に関する研修を実施しました(240人参加)。加えて、マレーシアにおいて、国連開発計画(UNDP)との協働で、社内のマネジメント層などを対象にビジネスと人権、人権デュー・ディリジェンスの基本と当社グループの人権・労働方針など当社の人権の取り組みに関する研修を実施しました(182人参加)。

今後も重点的に取組む課題や地域を特定し、適切な研修を実施していきます。

人権啓発活動については「啓発活動」、サプライチェーンの取り組みの詳細は、「責任ある調達活動」をご確認ください。

主な取り組み課題

グローバルに広範な事業領域で事業を展開している当社グループにおいては、バリューチェーン上の人権課題は以下の通り様々であり、優先順位をつけて取り組むことが重要であると考えています。当社グループの製造会社・拠点においては、事業の特性やこれまでの自主精査の結果なども考慮して特定した結果、強制労働と労働安全衛生が特に重点的に取組むべき課題であると認識しています。課題の特定における具体的なプロセスは以下の通りです。

1) 当社の活動によって負の影響を受ける可能性のある人権全般を列挙
2) 深刻度(規模・範囲・修復可能性)と発生可能性(公開データや過去実施した自主精査の結果)を評価
3) 社外および社内の利害関係者と連携し、手法や結果の妥当性を確認

2024年度は、これらの課題に優先的に取り組みつつ、以下に挙げる課題についても引き続き取り組みます。

また、重点的に取組む課題の特定プロセスは継続的に改善するとともに、特に差し迫った人権リスクが発生した場合には結果を見直し、特定された人権リスクを可能な限り速やかに予防・軽減・是正するように努めます。

▪児童労働の禁止、若年労働者の保護

当社グループは、「人権・労働方針」において、児童労働の実効的な廃止に向けて取り組むことを明記しています。

社員の採用時には、当該国の法令を順守した活動を行うとともに、人材紹介会社や購入先様などの取引先にも同様の対応を求めています。また、18歳未満の労働者が深夜労働および重労働や危険を伴う労働に従事することは認めていません。

若年層への就業機会の提供

若年層の求職者に対し、インターンシップ等を通じて、キャリア教育、産学協働の人材育成、また就業機会を提供しています。

日本では、パナソニックキャリアデザインプログラムとして、若年層からキャリアを考える機会を提供し、更に、卒業間近の若年層に対しては、インターンシッププログラムを提供し、リアルに働く体験の場を提供しています。

中国でも、グループ会社全体でインターンシッププログラムを実施し、長期休暇に合わせて事業場で大学生を受け入れ、課題発見や解決策提案の実践の場を提供しています。

子どもの権利を守る取り組み

下記の取り組みを通じて、子どもたちの人権を尊重し、その健全な成長を応援しています。

▪強制労働の禁止

当社グループは「人権・労働方針」において、「あらゆる形態の強制労働の禁止」を明記しています。とりわけ製造拠点、サプライチェーンにおいて、国や地域を越境して働く移住労働者は脆弱な立場にあると認識しています。これを踏まえ当社グループは、当該労働者の人権を尊重するとともに、ILOなどが策定している国際規範・ガイドラインも参照しつつ、適用されるすべての法令・規制および社内ルールに従って、強制労働や不当な扱いのない採用・雇用環境の確立に向けた取り組みを推進しています。2023年度は、社内ルールを改訂し、サプライチェーンを含むバリューチェーン全体における強制労働防止の取り組みへの対応手順と、取り組みにおけるPHDおよびパナソニック オペレーショナルエクセレンス(株)(PEX)関連機能や事業会社の果たすべき役割をより明確にしました。具体的には、万一、当社グループまたは購入先、取引先、ビジネスパートナーなどの第三者が、強制労働またはILOによる11の強制労働指標 に該当するまたはその疑いのある行為を行っていることなどが確認された場合、社内ルールに従い、そのような行為の中止・是正・軽減や被害者の救済を含めて、速やかに人権への負の影響に対処するよう、社内ルールで定めています。

外国人移住労働者が多く、強制労働が発生する可能性が高いと言われているマレーシアにおいては、国際移住機関(IOM)等の社外専門家による助言や技術支援、啓発・トレーニングに基づき、マレーシアのグループ会社の経営幹部や人事責任者がディスカッションを積み重ね、「外国人労働者の責任ある採用と雇用に関する方針」や業務手順書を策定、その運用実態を現場で確認、是正するなど、人権・労働コンプライアンスの定着に向けて取り組んでいます。この方針に書かれている内容の一例は以下の通りです。

  • パスポートなど個人文書の会社保持の禁止
  • 採用および雇用に関する手数料の外国人移住労働者負担の禁止
  • 安全で衛生的な寮の提供

また、2023年度は、PHDの指導の下、請負会社などバリューチェーンにおける強制労働を中心とした人権課題への取り組みに着手し始め、取引先との契約内容に、バリューチェーンで働く従業員の人権尊重に関する順守要請と、当社による監査権も追加しました。2024年度は、IOMの支援の下、取引先へのキャパシティビルディングを計画しています。

潜在的なリスクのある国に対しては、マレーシアでの経験をもとに、各製造会社の取り組みをヒアリングし、是正に向けた助言、是正状況の確認を行っています。2022年度は、シンガポールと台湾において助言と指導を行いました。また、2023年度は、日本において、外国人技能実習生受け入れにおける人権侵害リスクへの対応についての注意喚起を目的に、人事担当者向け勉強会を実施し、人事責任者向けの通達を発信しました。

サプライチェーンにおいては、パナソニック サプライチェーンCSR推進ガイドラインを通じて購入先様に同様の要請を行っています。詳細は、「責任ある調達活動」をご確認ください。

※ ILOの11の強制労働指標:脆弱性の悪用、欺瞞、移動の制限、隔離、身体的・性的暴力、威嚇・脅迫、身分証明書の保持、賃金の留保、借金による束縛、虐待的な労働・生活環境、過度な時間外労働

▪差別・ハラスメントの禁止

当社グループは、「人権・労働方針」において、「雇用および職業における差別の排除」を明記しています。その上で、当社グループは、「コンプライアンス行動基準」等において、「年齢、性別、人種、肌の色、信条、宗教、社会的身分、国籍、民族、配偶者の有無、性的指向、性同一性と性表現、妊娠、病歴、ウイルス等への感染の有無、遺伝情報、障がいの有無、所属政党や政治的指向、所属労働組合、兵役経験など」による差別や差別につながる行為およびハラスメントなどを禁止し、その啓発に努めています。これらにより、多様な人材がお互いを重要なパートナーとして尊重し合い、活き活きと活躍できる働きやすい職場づくりを進めています。

例えば、日本では、セクシュアルハラスメントなどの性差別やパワーハラスメント防止、障害者差別解消法の順守のために、下記のような内容に取り組み、公正で明るい職場づくりに努めています。

  • セクシュアルハラスメントに対する方針の策定と周知徹底
  • セクシュアルハラスメントに関するリーフレット・マニュアルの配布
  • 職場風土の活性化・セクシュアルハラスメント・パワーハラスメントに関するセミナー・研修会の開催
  • ハラスメント行為を行わないことや、ハラスメントの報告を受けた際の対処方法などに関する、管理職研修の開催
  • LGBTQ研修の開催
  • 障がいのある人の困難や必要な配慮を理解するための教育コンテンツの配布
    詳細は、「社員のウェルビーイング」PDFファイルをご確認ください。

採用選考について

各国の法律やガイドラインを踏まえ継続的な啓発を実施、応募者の適正・能力・意欲に基づく実施を徹底しています。また、課題を確認した場合は、短期的な是正だけでなく、啓発・教育を通じ、再発防止策の徹底に努めます。

▪結社の自由と団体交渉権

当社グループは、「人権・労働方針」において、「結社の自由および団体交渉権の効果的な承認」を推進することを明記し、各国・地域において、社員との積極的な対話を通じて、健全な関係の構築や問題解決に努めています。また、「人権・労働方針」に基づき、法令により労働組合の結成が認められていない国の事業拠点においても、国際的に認められた人権の原則を尊重する方法を追求しています。

日本

当社グループではPHDおよび事業会社が対峙する各労働組合と締結している労働協約において、組合の団結権、団体交渉権、争議権を認めるとともに、組合加入者への差別の禁止、組合活動への干渉行為の禁止を定めています。管理職を含む社員の労働組合への加入率は75.2%となっており、管理職を除く加入率は97.7%となっています。

会社と労働組合は、会社の健全な発展と社員の労働福祉条件の向上および社会の発展が、それぞれ不離一体であるという共通認識に立ち、労使の対等性と強固な信頼関係に基づき、組合の経営参加制度を確立し、経営上の重要事項について会社と労働組合が協議する「労使協議会」を設置しています。

欧州

1994年に採択されたEU指令を受け、健全な労使間の協議の場として労使で自主協定を締結しています。パナソニック欧州従業員会議(PEEC)を設置し、従業員代表と会社代表による、経営戦略や社員のくらしサポートを含む事業課題に関する意見交換や議論を実施しています。

※ EU指令:欧州連合域内の2カ国以上にわたって1,000人以上を雇用するすべての企業に汎欧労使協議会の設置を義務づける指令

中国

ほとんどのグループ会社で組合(工会)を組織しています。定期的な労使対話、積極的な労使合同レクリエーションの開催、重要な経営判断についての組合への事前説明を行い、良好な労使関係づくりに力を入れていて、報酬、福利厚生、研修等に関する意見交換や協議も実施しています。

▪労働安全衛生

「安全で健康的な労働環境の実現」も、人権・労働方針に定め、重点的に対応しています。2023年度の「人権・労働方針」の改訂は、ILOの中核的労働基準に労働安全衛生が追加された事を踏まえています。詳細は、「社員のウェルビーイング」の章の「安全・安心・健康に、はたらく。」PDFファイルをご確認ください。

▪適正な労働時間の管理

当社グループは、各国の労働関連法令や労使間の協定(労働協約など)に基づき、労働時間および休憩時間、時間外労働、休日・休暇などの適正な管理に関する規則を就業規則で定めています。また、労働者との合意なく労働者に時間外労働を強制することは、強制労働または強制労働が疑われる行為の一つとして、社内ルールで禁止しています。

日本では、所定労働時間を7.75時間/日とし、それを超える労働時間については割増賃金の対象とするなど、法を上回る対応をしています。また、法定基準よりも厳格な労働時間管理基準を社内で設定し、過重労働の撲滅に取り組んでいます。

年次有給休暇制度についても法を上回る水準を付与し、取得残日数については最大50日まで積立て可能としています。その取得にあたっては、時間単位や半日単位での取得を可能とするなど、よりフレキシブルに個人のニーズに対応できる制度としています。

これらの制度面での充実に加え、時間外労働が特定の社員に偏らないための最適な人材配置、および、万一長時間労働となってしまった従業員については、追加で健康診断を実施するなど、社員の心身の健康管理に総合的に取り組んでいます。

▪適正な賃金の管理

当社グループは、報酬制度設計ガイドラインを定め、市場競争力のある報酬水準の実現を目指すとともに、各国の労働関連法令や労使間の協定(労働協約など)に基づき、適切な賃金、諸手当、賞与、その他臨時に支払われる給与、退職金などを就業規則にて定めています。

また、国ごとに、最低賃金、法定給付、時間外労働等に関するすべての賃金関連法令を順守した規則を定め、これに基づいて運用し、決められた支払い期間と時期で、給与明細および電子データにより社員への通知を行い、直接支給しています。

なお、国・地域において金銭的懲罰が法令で認められている場合、当社グループは、それを懲罰の一選択肢として認め、禁止はしていません。ただし、懲戒手続や懲罰金額が法令の範囲内で設定されていることを前提としています。

苦情メカニズム

当社グループは、人権侵害に関する苦情への対処が早期になされ、救済を可能とするために、グローバルな通報窓口として、従業員およびお取引先様を含む社外のステークホルダーが対象のホットライン(32言語対応)を設置しており、人権・労働問題を含むコンプライアンス違反の被害を受けたり見聞きした場合、通報することができます。この仕組みは、通報者が特定されないよう、外部の独立したシステムを使用し、通報の秘守を徹底するとともに、社内外の通報者が通報を理由に報復行為や不利益な扱いを受けることがないよう、社内規程で定めています。詳細は、「企業倫理:通報制度」をご確認ください。

加えて、当社グループ外からの通報をより広く受け付けて対応するため、電子情報技術産業協会(JEITA)CSR委員会が設立した業界共同の苦情処理プラットフォーム「JaCER」に参加しています。詳細は、「責任ある調達活動」の「通報・相談窓口」をご確認ください。

国際・業界連携の取り組み

当社グループは、2022年1月より国連グローバル・コンパクトに参加しています。「人権」を含む、4分野10原則への支持を表明するとともに、人権・労働の取り組みを国際基準に則り、その進捗・成果を社会に開示することにより、説明責任を履行しています。

また、当社グループは、2021年10月より電子・ICT・自動車分野の国際的なCSR団体であるResponsible Business Alliance(RBA)に加盟し、RBAの自主精査ツールや問題の是正のためのガイダンス文書などを活用しています。さらに、責任ある鉱物調達の取り組みの推進に向けたRBA傘下のResponsible Minerals Initiative(RMI)にも参画しています。

2023年には、マレーシアで外国人労働者の責任ある採用と雇用について支援実績がある国連の専門機関、国連移住機関(IOM)と、サプライチェーンにおける移住労働者の権利向上を目的とした戦略的グローバルパートナシップを締結しました。

当社グループは、上記の活動を通じて、信頼性の高いマネジメントシステムの構築に取り組んでいます。

当社グループは、国内、国際機関との渉外を通じて人権の尊重の活動についての意見を積極的に発信しています。2023年度は、PHDの担当者がOECDの公的諮問機関である経済産業諮問会議(BIAC)に参加、また在欧日系ビジネス協議会(JBCE)のコーポレートサステナビリティ委員会を副委員長としてリードし、欧州における人権やデュー・ディリジェンスとかかわりのある政策への貢献を継続的に行っています。また、ILOが経済産業省と共催した「アジアにおける責任あるビジネス、人権、ディーセント・ワーク」会議や、マレーシアの国家人権委員会(SUHAKAM)が主催した人権会議に登壇しました。