基本的な考え方

パナソニックグループは、事業に必要なリソースはすべて社会からお預かりしている「社会の公器」という認識に立ち、地域社会と対話をしながら事業活動を推進しています。

事業進出・撤退の際は、現地政府や住民との対話、環境等への影響度評価を行い、地域社会への貢献と、マイナス影響の最小化に努めています。

特に地域社会の一員として企業市民活動を積極的に推進し、企業と地域がともに発展していくことに努めています。

企業市民活動のマネジメントシステム

私たちは、後述するグループ方針に基づき、各事業会社・各地域の実態に合わせた企業市民活動を展開しています。主な活動については主要評価指標(KPI)を定め、実績を評価し改善につなげています。定期的にグループ企業市民活動会議を開催して情報共有や意見交換を行い、より良い活動推進に向けた検討を続けています。それらの活動については「企業市民活動ニュース」にてグループCEO以下、関連する取締役・役員、世界各地域の企業市民活動担当者に共有しています。また、年1回、企業市民活動の実態をグループ内で調査し、サステナビリティサイトで社外に公表しています。

企業市民活動のマネジメント体制図

方針

3年毎の中期計画で、企業市民活動の方針、重点テーマを定めています。重点テーマについては、事業方針や社会情勢、社会からの要請事項、有識者からの意見等を総合的に勘案し、決定しています。

企業市民活動の中期(2022~2024年度)方針

当社グループは「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」を目指し、事業活動とともに企業市民活動でも、社会課題に正面から向き合って、新しい価値の創造に取り組んでいます。

現在の中期方針においては、2030年に社会があるべき姿を「誰もが自分らしく活き活きとくらすサステナブルな共生社会」と考え、グローバルに事業を展開する企業として、世界の社会課題と経営基本方針の両面から当社グループが取り組むべき優先課題を「貧困の解消」、「環境活動」、「人材育成(学び支援)」と選定しました。

昨今、世界が直面する課題のうち、新興国・途上国のみならず先進国にも存在する様々な貧困は深刻なものとなっており、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の1番目には「貧困をなくそう」と記されています。また創業者 松下幸之助は、「貧困」を罪悪として捉え、それをなくすことが企業の使命と考えました。人々のくらしの水準は向上し、一部の貧困は解消されましたが、豊かさから取り残される国や地域も多く、先進国の中でも格差が大きく広がっています。そうした状況を踏まえて、創業100周年(2018年)を機に、共生社会の実現に向けた「貧困の解消」を重点テーマと設定しました。

また、「地球環境問題はグループが一丸となって取り組む最優先課題である」という経営基本方針を受けて、「環境活動」を企業市民活動の重点テーマと選定しました。グループ長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT(PGI)」を一層加速するため、今年度、企業市民活動では「生物多様性保全」に焦点を当て、一人ひとりの行動変容や環境意識を向上させる活動を行っていきます。

さらに課題解決の土台として、貧困や環境問題の解決に向けて取り組む人材の育成にも重点を置いています。次代を担う人々の学びたい気持ちを応援する「学び支援」において、一人ひとりが、互いの個性を受け容れ活かしあう“DEI (Diversity, Equity & Inclusion)”の視点を大切に、学びと実践の場を提供します。

従業員の積極的な参画を促すとともに、私たちの製品や技術、モノづくりで培ったノウハウやリソースを活かし、ステークホルダーの皆様と協働しながら、「貧困の解消」、「環境活動」、「人材育成(学び支援)等の企業市民活動を通じて、社会課題の解決やサステナブルな共生社会の実現に貢献したいと考えています。

企業市民活動の位置づけ図と体制表

企業市民活動の責任者・体制

企業市民活動は、グループCEOが直接管掌し担当します(2024年8月現在)。
パナソニックホールディングス(株)(PHD) 企業市民活動担当室がグループ全体の戦略策定機能を担当し、パナソニック オペレーショナルエクセレンス(株)(PEX) 企業市民活動推進部、事業会社等とともに活動を推進しています。各事業会社には企業市民活動担当者を設置し、各社・各地域の実態に合わせた活動を展開しています。

従業員の参画とそれを支える制度

従業員が社会課題への関心や解決への意欲を高めることは、企業市民活動を推進する上でも、事業活動を行っていく上でも非常に重要です。当社グループでは、従業員の参画を促進するため、ボランティアや講演会情報の提供、社員食堂にて社会課題に繋がるメニューの提供などを行っています。以下に、特徴的な活動を記載します。

▪従業員の社会参画を促進する活動

社員食堂へのサステナブル・シーフードの導入(日本)

当社グループは、日本で初めてサステナブル・シーフードを継続的に社員食堂へ導入した企業です。2018年3月、2拠点からスタートしたこの取り組みは、現在、日本国内累計57拠点で展開しています(2024年3月末時点)。
食堂での喫食を通じて、危機的状況にある世界の水産資源への関心を高め、消費行動の変革を促し、周囲への影響拡大を目指します。
※ 持続可能な生産(漁獲・養殖)に加え、加工・流通・販売過程における管理やトレーサビリティの確保について認証を取得しているシーフード

福島『復興』応援アクション(日本)

社員食堂における福島県産の農畜水産品によるメニューの提供や、福島県産品を販売する「ふくしまマルシェ」の開催を通して、従業員が福島の現状を正しく知る機会を設け、風評被害の影響が残る福島の震災復興を応援する取り組みです。社員食堂でのメニュー提供は、2022年1月に2拠点から開始し、現在は国内24拠点へ拡がっています(2024年3月末時点)。「ふくしまマルシェ」は、2022年9月に開始し、現在は国内11拠点で実施しています(2024年3月末時点)。また、福島県が実施している食の安心安全確保の取り組みについて、福島県庁職員の方から従業員に講演いただくなどの啓発活動も継続的に実施しています。

みんなで“AKARI”アクション

社員の福利厚生サービスのカフェテリアポイントや、古本やDVD等のリサイクル品の寄贈等で集めた資金で、無電化地域にソーラーランタンを届ける寄付活動です。2009年に会社の寄贈からスタートし、これまでに34か国に12万台以上を届けてきました。2023年度は、のべ545人の社員がカフェテリアポイント寄付に参加し、一般の方も含め、32,412点のリサイクル品が集まりました。

プロボノ活動(日本)

従業員が、仕事で培ったスキルや経験を活かし、NPO/NGO等社会課題解決に取り組む団体の事業展開力の強化を支援するプログラムです。2011年からこれまでに392人の従業員が参加し、66団体の中期計画策定や営業資料の作成、ウェブサイトの再構築等を支援しました。

パナソニックエコリレー・フォー・サステナブル・アース

1998年、従業員とその家族が家庭や地域社会でも積極的に環境活動を行うことで環境意識を高め、ライフスタイルを変革することを目的に、「地球を愛する市民活動(Love the Earth=LE)」が日本でスタートしました。その後、グローバルに活動を拡大し、「パナソニック エコリレー・フォー・サステナブル・アース」と名称を変え、地球市民として持続可能な地球環境と社会づくりへの貢献を目指し、生物多様性保全などの環境活動に取り組んでいます。2023年度はグローバルでのべ8,395人が清掃活動や植樹など地域での環境活動に参加しました。

ボランティア活動の紹介・機会の提供

グループ各拠点が主体となり、各地域・事業会社の特性にあわせて様々なボランティア活動を展開しています。例えば、欧州では、いくつかの会社で2024年にパリで開催されるオリンピックとパラリンピックでのボランティア活動支援を実施、北米では従業員ボランティアプログラムを用意し、”Month of Service”(ボランティア月間)を設けるなど、従業員によるボランティアを奨励しています。また中国では、国内の様々な拠点が同じ時間に、同じテーマのボランティア活動を行う「在華地域統一グループボランティア活動」を年に数回企画しています。さらに日本では、NPO団体等が主催するボランティア情報を定期的に紹介するサイトを従業員向けに設け、外部のボランティア活動への参画を推奨しています。

学びの場の提供(日本)

社会課題への関心や解決の意欲を高めるため、社会課題に取り組む多様なゲスト講師を招いての講演会「従業員向け社会課題講演会 Social Good Meetup(SGM)」、頻発する自然災害に備え、ボランティアとして活動するための知識や技能を身につける「災害ボランティア育成講座」等を終業後の時間を用いて実施し、2023年度はのべ2,178名の従業員が参加しました。また、年に1回、従業員に向けたeラーニングも実施し、社会課題を学ぶ機会を提供しています。

▪社員参画を支える人事制度

日本国内主要グループ会社の事例

  • ボランティア活動へ参画するための柔軟な働き方
    ボランティア活動への参画や挑戦を後押しするため、多様な働き方の選択肢を拡充しています。具体的には、ボランティアと仕事の両立を可能とする短時間・短日勤務制度や、ボランティア活動への参加を目的とした最長1年間(青年海外協力隊に参加する場合は必要期間)の休業制度があります。その他、節目年齢で付与される10日の「チャレンジ休暇」や、年次有給休暇25日のうち5日間をボランティア目的で取得する場合には会社として連続取得を配慮するなど、各種休暇を活用したボランティア参画も促進しています。
  • 社内有志活動の実践と表彰
    当社グループでは、所属会社や職位に関係なく、共通の関心や課題感を持つ社員が自発的にコミュニティを形成し、多彩な活動を展開しています(従業員リソースグループ(ERG))。こうした社員の自発的な取り組みの支援と認知向上策として24年度にグループCEO表彰に「BEST有志活動賞」を新設しました。24年度は「聞こえない人と聞こえる人が働きやすい職場づくり」の活動や「事業場構内のアクセシビリティマップづくり」の協働など、多様な一人ひとりが個性を発揮するための組織風土活性化に寄与した功績が表彰されました。

北米の事例

各自が地域社会への貢献ができるよう、就業時間の中から年に最大5日分をボランティア活動に充てることができる制度を設けています。さらに各事業拠点での活動をコーディネートする等、従業員のボランティア活動への参画を奨励しています。

欧州の事例

従業員の社会参加をさらに奨励するため、欧州の一部のグループ会社では、2022年5月1日より、就業時間の中から年に最大16時間をボランティアのために有給休暇を取得することができるようになりました。

企業市民活動の評価

主だった活動に対し、その特性に合わせた効果測定をおこなっています。

LIGHT UP THE FUTURE

NGO/NPOや国際機関など様々なパートナーと連携して、無電化地域にあかりを届ける「LIGHT UP THE FUTURE」プロジェクトでは、ソーラーランタンの寄贈に加え、現地での支援プログラムを通して「教育」「健康」「収入向上」の機会創出を目指しています。ソーラーランタンの寄贈や支援プログラムがどのような効果をもたらしたのかを検証するため、アンケート調査を実施しています。寄贈パートナーである国連人口基金(UNFPA)が2023年にケニアで行った調査では、ソーラーランタンを活用することで、就学児童の約8割が家庭での学習時間が増加(全体の33%が1時間、42%が2時間、8%が3時間以上増加)したと回答しました。さらにビーズ製作に従事する女性の収入が平均で1.5倍に増えたことが分かりました。また、公益財団法人JELAが2023年にカンボジアで行った調査では、ソーラーランタンを活用することで、年間のエネルギー支出が約26USドル節約されたことや、呼吸器疾患などの健康問題が80%減少したことが示されました。

Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs(旧Panasonic NPOサポートファンド)

NPO/NGOの組織基盤強化を支援する「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」では、助成事業終了の1年半後に助成先のフォロー調査を行い、組織基盤強化の有効性について第三者が定量的・定性的な評価を実施しています。さらに2021年度には、サポートファンド設立20周年の節目として、2011年~2018年に助成した「子ども・環境分野」63団体と「アフリカ分野」23団体に対して「組織基盤強化助成20周年節目評価」を実施しました。

「子ども・環境分野」の調査結果では、助成前に比べて、財政規模は平均19.1%拡大、さらにスタッフ数は平均27.8%増加しています。また、受益者数が増えた団体は全体の87.2%、受益者数が最も増えた団体では14.9倍、平均で3.07倍となり、本助成プログラムによる組織基盤強化の取り組みが、社会的成果の増大に有効であったことを示しています。

「アフリカ分野」の調査結果では、助成により作成した広報ツールの効果が2年以上続いたと回答したのは全体の64%、さらに5年以上効果が続いたと回答したのは全体の29%となりました。定性調査では、本助成プログラムを通じて、啓発を担うボランティア人材が育成され、広報体制の基盤が構築されることで資金調達力の向上等にもつながった事例が確認されました。

キッド・ウィットネス・ニュース(KWN)

小・中・高等学校の子どもたちを対象とした教育支援プログラム「キッド・ウィットネス・ニュース」では、映像制作を通じて、創造性・コミュニケーション能力やチームワークを高めることを目指しています。本プログラムへの参加が子どもたちにどのような効果をもたらしたのかを検証するため、2017年から5年間にわたりアンケートとインタビューによる調査を実施しました。その結果、子どもたちの資質・能力を9つのコンピテンシーに整理することができ、内7項目でプログラムに参加した子どもたちの伸長がプログラムに参加していない子どもたちの伸長を上回っていました。特に、「人間関係形成」「コミュニケーション」「将来設計」の3項目は大きな伸長となりました。さらに、特別支援学校を対象とした調査結果や参加校の種類(小学校・中学校・高等学校)別の調査結果より、障がいの有無や発達段階に関わりなく、本プログラムを通して、子ども達の成長が確認できました。

私の行き方発見プログラム

中学生向けキャリア教育プログラム「私の行き方発見プログラム」では、毎年、教員や生徒を対象に授業実施前後でアンケート調査を行い、生徒の変化やプログラムの有用性などを確認し、プログラムの改善などにつなげています。

2023年度のアンケートでは、授業が理解できたと回答した生徒は97%、ワークシートや教材が使いやすかったと回答した生徒は93%となりました。また、学校での勉強や活動が仕事に就いたときに「役に立つ」と回答した割合が授業実施前後で14%増加する結果となり、本プログラムが子どもたちに有益であることを示しています。

▪外部評価・受賞等

2023年度の主な受賞および外部からの評価は以下の通りです。

■文部科学省主催 令和5年度「青少年の体験活動推進企業表彰」優秀賞を受賞
パナソニック(株)

■環境省主催 第11回グッドライフアワード「実行委員会特別賞 地球と人への想いやり賞」受賞
パナソニック(株)

■中国 CSR中国教育榜主催 最佳责任企业品牌(CSR CHINA TOP 100)
青年影响力优秀項目(Youth Impact Special Award)受賞
パナソニックチャイナ(有) 青少年教育支援プロジェクト

■プラチナパートナー認定(11年連続)
TABLE FOR TWO 「途上国の子どもたちに温かい学校給食を届ける」活動

■文部科学省から永年の教育分野での事業活動に対して感謝状授与
公益財団法人 パナソニック教育財団

■All India Business & Community Foundation主催 AIBCF Award
(教育分野におけるCSR・サステナビリティ賞)
パナソニック ライフソリューションズ インド(株)

2023年度企業市民活動の費用


地域別活動費

地域別活動費


地域別活動費

分野別構成比

分野別構成比


分野別構成比