社会インパクトの可視化の試行 - CE型事業の事例

当社グループは、事業を通じて社会へ与えるインパクトを貨幣価値として可視化することで、自社の取り組みの意義と成果を客観的に把握し、ステークホルダーの皆様との対話を深めたいと考えています。今回、新しい取り組みとして、インパクトの因果関係が複雑に絡み合うサーキュラーエコノミー(CE)型事業の試算に新たにチャレンジし、環境インパクトの「貨幣価値化」を進めましたので、その取り組みを紹介します。

CE型事業がもたらす環境貢献は、製品のリサイクル率やCO₂排出削減量といった物理的な指標にとどまらず、社会に向けた「環境価値」として捉えられます。当社グループでは、この価値を統合的かつ客観的に評価し、ステークホルダーの皆様にわかりやすく伝えることが重要であると考えています。こうした認識のもと、当社グループでは、環境負荷の低減や資源循環によって生じる社会的ベネフィットを、貨幣という共通尺度で可視化する取り組みを推進しています。具体的には、経済活動に伴う自然資源の過剰な採取や、自然の浄化能力を超える廃棄物の拡散といった環境課題に対し、CE型事業は「採取」と「拡散」の両面を極小化することで、環境負荷の緩和に寄与しています。これらの活動は、当社グループが定義する「環境価値」の中核を成しており、その貨幣価値化は、企業の社会的責任を果たすうえで重要な役割を担っています。

なお、当社グループでは、CE型事業による環境インパクトを、リニア型(従来型)との比較によって得られる差分として定義しています。この差分には、ポジティブなインパクト(例えば廃棄物削減)もあれば、ネガティブなインパクト(例えば再資源化工程に伴うエネルギー消費)も含まれます。これらの貨幣価値化に際しては、国際的な枠組みであるInternational Foundation for Valuing Impacts(IFVI)や、ライフサイクル影響評価(Life Cycle Impact Assessment: LCIA)といった指標・手法の動向を踏まえた上で、各インパクトドライバーに応じた貨幣化係数を用いて算出しています。

主要な環境インパクトの一覧

インパクトドライバー

インパクトの解説

主要なインパクト

鉱物資源

資源を現在採取することにより、将来入手できなくなることへのインパクト(資源ストックの消滅/将来の採取費用および利潤へのインパクト)

マテリアル・リサイクルによる鉱物の使用削減量

土地利用

鉱物資源採掘に伴う土地の転換・占有に伴って失われた生態系サービスへのインパクト

鉱物資源の採掘により改変された土地面積/改変を防いだ土地面積

化石燃料
(エネルギー使用量)

資源を現在採取することにより、将来入手できなくなることへのインパクト(資源ストックの消滅/将来の採取費用および利潤へのインパクト)

自社やVC企業活動に伴うエネルギー使用量

化石燃料
(プラスチック)

自社やVC企業活動に伴うプラスチック削減量

水消費

水消費による人間健康への影響(水に関連する感染症被害や栄養失調被害)や、水不足による干ばつが人間の生活に与える影響(文化資産・コミュニティの減少等)、水へのアクセスへのインパクト

事業活動において使用した水消費量

気候変動

CO2排出が、人間健康(死亡率上昇による被害)・生物多様性(植物生育面積の減少、絶滅リスクの増加)、労働生産性、エネルギー消費・生産による所得への影響等、社会経済面に及ぼすインパクト

自社やVC企業の活動に伴うCO2排出量

大気汚染
(SOx、NOx、PM2.5)

その他大気排出物(SOx、NOx、PM2.5)が、人間健康(死亡率、疾病率、慢性気管支炎や活動制限)や視界への影響(特に海運、航空、娯楽等)、また農業生産へ及ぼすインパクト

自社やVC企業の活動に伴う大気中の汚染物質排出量

廃棄物

CO2排出が、人間健康(死亡率上昇による被害)・生物多様性(植物生育面積の減少、絶滅リスクの増加)、労働生産性、エネルギー消費・生産による所得への影響等、社会経済面に及ぼすインパクト

製品廃棄時に発生するCO2排出削減量

2024年は当社グループのいくつかのCE型事業における環境インパクトを貨幣価値として定量化する取り組みを進めました。その中から、家電リサイクル事業および家電リファービッシュ事業の評価結果について紹介します。

家電リサイクル事業 (パナソニック エコテクノロジーセンター(株))

2001年に施行された家電リサイクル法に基づき、テレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機の4品目を対象に、指定引取場所からの回収・分解・素材の再資源化を実施しています。この事業を通じて、使用済み家電から有用資源(鉄、銅、アルミニウムなど)を効率的に回収し、資源の有効活用を推進しています。特にマテリアルリサイクルは、気候変動の緩和や鉱物資源の持続可能な利用に大きく貢献する一方で、輸送時のCO₂排出などのネガティブインパクトも存在しています。これらを総合的に評価し、定量的に環境価値を算出しています。

家電リファービッシュ事業 (Panasonic Factory Refresh)

廃棄予定の家電製品の中から、再使用可能なものを整備・再生し「リフレッシュ家電」として再出荷する取り組みです。2024年の評価対象はテレビと食洗機で、初期不良品の再生およびサブスクリプション製品の使用期間延長による環境効果を分析しました。その結果、廃棄物排出の抑制や製造・廃棄工程におけるCO₂排出の大幅な削減といったポジティブインパクトが確認されました。一方で、再生工程に伴う追加的なエネルギー使用や水消費、CO₂排出といったネガティブインパクトも見られましたが、総合的にポジティブインパクトが上回ることが定量的に示されました。

両事業がもたらす2024年の環境ポジティブインパクトは17.1億円、2025年は17.5億円(見込み)と評価されました。これらの定量的評価により、各CE型事業における注力すべき領域の可視化が進み、今後の経営判断等の高度化に向けた分析基盤としての活用を検討していきます。

家電リサイクル事業および家電リファービッシュ事業がもたらす環境インパクト

[百万円]

 

鉱物資源

土地利用

化石燃料
(エネルギー)

化石燃料
(プラスチック使用削減)

水消費

気候変動

大気汚染

廃棄物

合計

2024年

472

17

358

32

-3

799

24

11

1,709

2025年

613

22

369

35

-2

783

23

31

1,875

 

2024年

2025年

鉱物資源

472

613

土地利用

17

22

化石燃料
(エネルギー)

358

369

化石燃料
(プラスチック使用削減)

32

35

水消費

-3

-2

気候変動

799

783

大気汚染

24

23

廃棄物

11

31

合計

1,709

1,875