パナソニックグループは、社員※1一人ひとりの個性が尊重され、安全に安心して健康的に働くことができる職場環境を整備し、不当な処遇、差別、偏見などによって権利や機会を侵害するリスクを排除することで、幸せと働きがいの実現に取り組んでいます。社会からお預かりしている大切な「人」が育ち、活きることは経営の根幹です。そのために性別や年齢、国籍等あらゆる違いに関わらず、「社員一人ひとりが自らのポテンシャルをUNLOCK(アンロック)、つまり周囲の期待を超えて積極果敢に挑戦し、持てる力(能力・スキル)を最大限に発揮できる会社」になることを目指しています。

※1 社員:パナソニックグループ会社と雇用関係にある社員、嘱託等およびその指揮命令を受けて業務に従事する派遣社員・出向社員およびパナソニックグループ会社の取締役、執行役員、参与、フェロー、監査役、特別顧問および顧問の総称をいいます。なお、一部の人事諸制度等の適用対象は主要会社と雇用関係にある社員を指しています。

方針

当社グループの創業者 松下幸之助は、「物をつくる前に人をつくる」という考えのもと、人を育て、人を活かすことに重きを置いた経営を進めてきました。私たちはそのDNAを受け継ぎ、経営基本方針という揺るぎない経営の軸の下で、社会からお預かりした大切な資本である人が活きる人的資本経営を実践しています。

当社グループにおいて経営は経営者だけのものではありません。一人ひとりが自らを仕事の責任者・経営者と自覚して仕事に取り組む「社員稼業」の実践とともに、全員の知恵を結集し多様な個性や能力を経営に活かす「衆知経営」を大切にしています。「経営基本方針」は、この「社員稼業」と「衆知経営」の両輪によって、「自主責任経営」を実現していくことを定めています。

また、多様な価値観や視点を尊重することが、より良い意思決定と成長につながると考え、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)をグループ全体で推進しています。

2023年4月には経営基本方針の実践を目指すための行動指針として、「Panasonic Leadership Principles(PLP)」を策定しました。この指針のもと、チームを持つマネージャーであるかどうかにかかわらず、一人ひとりがより高いレベルのリーダーシップを発揮することを目指しています。

責任者・体制

パナソニック ホールディングス(株)(以下、PHD)およびグループ共通の人事戦略を構築・推進する責任者は、グループ・チーフ・ヒューマン・リソース・オフィサー(グループCHRO)の執行役員です。PHDの戦略人事部がグループ横断の戦略を企画・立案し、事業会社および傘下の事業部に設置された人事部門は各事業会社の戦略の企画・立案、日常的な管理責任を担当しています。

2022年4月からの持株会社制のもと、各事業会社は自主責任経営を徹底し、向き合う業界、顧客、競合に対して最適な事業体制の構築を図っています。人材の獲得、報酬や評価制度のあり方、組織開発、人材開発の推進といった人事戦略の立案と遂行も、各事業会社が責任を負います。PHDはガバナンスとステークホルダーエンゲージメントの観点から、パナソニック オペレーショナルエクセレンス(株)(以下、PEX)はソリューション提供によるグループ競争力強化の観点から、それぞれ事業会社を支える役割を担います。

人事戦略の責任者・体制図

グループCHROのガバナンスとは「安全・労働コンプライアンス・人権尊重」、「経営基本方針の浸透」、「グループ共通人事戦略」の見届けを行うことです。このために、グループCHROは各事業会社CHROとの1on1 Meetingを実施し、かつ各事業会社のCHROより各事業会社の取締役会に報告される人事戦略の内容を確認しています。さらに、PHD取締役会でグループ共通の人事戦略について報告し活発な議論を行っています。

現状の課題

当社グループでは、毎年グローバル約15万人の社員を対象に従業員意識調査を実施しています。これまで特に重視してきたのは、「社員エンゲージメント」(自発的な貢献意欲)と「社員を活かす環境」(適材適所、働きやすい環境)に関する設問群です。これらの肯定回答率は、働き方改革などの取り組みにより、継続的に上昇傾向にあります。

これらの結果は、日本企業としては高い水準にあると言えますが、グローバルトップクラスの企業に比肩するレベルを目指すには欠けているものがあると考えます。そこで、これらの肯定回答率の推移を分析した結果、「社員エンゲージメント」と「社員を活かす環境」を構成する計9つの設問のうち2つについて、その肯定回答率が低迷を続けていることが分かりました。

それが「会社や上司からの動機づけによる意欲向上」と「挑戦への阻害要因がない」という項目です。これは、社員一人ひとりがポテンシャルを発揮し、挑戦しやすい環境について大きな伸びしろがあることを示しています。

従業員意識調査今後の課題

さらに分析を進めると特に日本地域では女性、若手人材、キャリア入社者について取り組むべき課題があることが分かります。例えば従業員意識調査における「当社グループにおけるキャリア目標の達成」の設問では女性は男性に比べてキャリア目標を達成できると答えた人が比較的少ない状況です。経営や組織の意思決定層への女性の配置をさらに進めることで女性のキャリアの幅を広げ、多様なリーダーによる質の高い意思決定の実現につなげていく必要があると考えています。

女性管理職比率の推移

また若手人材やキャリア入社者においても、入社時点の高いエンゲージメントを維持しながら活躍の機会を提供し、早期に意思決定層に配置していくことが必要です。

一方で、そうした質の高い意思決定や施策の実行にあたっては高い生産性をともなうことが不可欠です。人的資本経営とは社会からお預かりしている人がその力を余すことなく存分に発揮することと考え、生産性の高い業務プロセスを構築し、固定費構造の抜本的な見直しを図ることで「世界一の生産性を追求」(前述したPLPの一つ)することも必要です。

目指す姿

グループの変革と成長をさらに加速させるためには、先に述べた課題に正面から向き合い、社員一人ひとりが意欲的に挑戦し、人と組織がともに成長できる環境を整えていくことが必要です。

そこで私たちは改めて、「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現に向け、社員一人ひとりが自らのポテンシャルをUNLOCK(アンロック)、つまり周囲の期待を超えて積極果敢に挑戦し、持てる力(能力・スキル)を最大限に発揮できる会社を目指すことを決意しました。

かつて創業者 松下幸之助は、「仕事に夢中になる。働きがいを感じ、働くことが楽しくてたまらない」環境、つまり挑戦と能力の発揮レベルがともに高いフローな状態を提供することが社員への最上の贈り物であると語りました。UNLOCKは、この松下幸之助の考えが源流にあります。

事業戦略を実行する人材がフローであればあるほど、事業の成果が高まります。そこで、フロー人材の比率を表すUNLOCK指標を設定し、グローバルで60%を目指します。

目指す姿 - フローとUNLOCK

重要指標

当社グループでは人的資本に関わるマテリアリティに関して次の通り指標化の上、モニタリングしていきます。

「多様な人材・組織のポテンシャルの最大発揮」に関するマテリアリティと指標

マテリアリティ

目指す姿

指標

 

現状

目標

組織カルチャー変革

社員が積極果敢に挑戦し、持てる力を最大限発揮している状態の実現

UNLOCK指標

従業員意識調査の設問「会社や上司からの動機付けによる意欲向上」「挑戦への阻害要因がない」がともに肯定回答の割合(グローバル)

2024年度:43%

2027年度:60%
2030年度:70%

未来を創る多様な変革型リーダーの開発・登用

多様な変革型リーダーによる質の高い意思決定の実現

経営チームの多様性比率

PHD執行役員の多様性(女性・日本以外の国籍・キャリア入社)の割合

2025年4月:54%

半数以上

女性管理職比率

管理職に占める女性の割合(日本地域)

2025年4月:7.9%

2028年4月:12%
2031年4月:16%

安全・安心健康な職場づくり

事業活動の大前提としての安全・安心・健康な環境の実現

重篤災害発生件数

死亡災害および身体に障害が残る災害の発生件数

7件

0件

重大災害発生件数

同時に3名以上が被災する災害の発生件数

0件

0件

「組織カルチャー変革」においては、社員が積極果敢に挑戦し、持てる力を最大限発揮している状態を実現するために、前述した通り従業員意識調査からフォーカスした2つの課題をもとにUNLOCK指標を重要指標に設定しました。

「未来を創る多様な変革型リーダーの開発・登用」においては、経営における質の高い意思決定を実現していくために、各社の経営チームにおける多様性(女性・日本以外の国籍・キャリア入社者)比率を重要指標と設定しました。さらに、性別による能力の差はないにもかかわらず、日本地域では当社グループの管理職に占める女性の割合が低い現状があります。これについて、違いを強みとして活かし新たな価値を生み出していくDEI推進の課題の代表事例と位置付け、女性管理職比率も重要指標としています。

「安全・安心・健康な職場づくり」においては、事業活動の大前提としての安全・安心・健康な環境の実現のために、「重篤災害・重大災害」の発生件数を設定しています。

なお上記に加え、付加価値労働生産性を高め世界一の生産性を追求していくために、「EBITDA※2÷人件費」についてグループ内でモニタリングを実施します。

※2 EBITDA:営業利益と減価償却費(有形/使用権資産)、償却費(無形)の合計