多様な人材・組織のポテンシャルの最大発揮
(主な取り組み)
組織カルチャー変革
組織カルチャーは、自然に形成されるのを待つのではなく、事業の成果を最大化するために意図的にデザインすることが重要です。どれほど優れた戦略があっても、実行するのは人です。その戦略実行の成果は、一人ひとりの行動や組織のあり方によって大きく左右されます。社員が自身のポテンシャルを「UNLOCK」できなければ、挑戦や成長にはつながりませんし、行動変容を促すカルチャーが戦略と噛み合わなければ、組織全体の力を十分に発揮することはできません。そこで、私たちはOrganization Performance Model(OPM)というフレームワークを活用してグループとしての「組織デザイン:6つの原則」を作成し、組織カルチャーのありたい姿を明確化しました。
「組織デザイン:6つの原則」は、それぞれが互いに連動し、整合してこそ機能し、組織全体の成長を支えます。例えば、成果に対しては、「評価・報酬」の原則に基づき、メリハリをつけて適切に報いることが必要です。「情報共有・学びのプロセス」では内向き志向からの脱却を促し、好奇心に火をつけていきます。「採用・トレーニング・リーダーの選抜」においては、多様な変革型リーダーを育成し、大胆に登用することを重視します。そのリーダーがメンバーの挑戦を支援し、熱狂的にフローで働ける環境を提供できるよう、「仕事デザイン」を行います。このようにそれぞれの要素が結びつくことで、人と組織がともに成長し、事業の成果にもつながる姿を目指しています。
(各社事例)パナソニック コネクト株式会社 モバイルソリューションズ事業部
ノートPC事業などを手掛けるモバイルソリューションズ事業部では、「利益にこだわる経営」を目指し、「選択と集中」の改革を進めています。改革で捻出した利益を新たな成長へ繋げる戦略を全員の理解を得ながら推進。経営数値などはオープンにし、組織もフラット化することで意思決定を迅速化しています。メリハリある昇給や抜擢、人材流動化などにより、多様な知見を取り込んでいます。
(各社事例)パナソニック株式会社 中国・北東アジア社
中国・北東アジア社では、「中国のことは中国で決める」という方針のもと、社員4,000人の意見も取り入れながら組織デザインに取り組んでいます。意思決定の面では、「チャイナスピード、チャイナコスト、チャイナスタイル」の実践を重視。現場に近い意思決定体制を確立し、市場や顧客の変化に迅速に対応できる組織を目指しています。また、現地の社員のリーダー登用や他社の学びを積極的に推進し、組織の成長を加速させています。
▪組織構造・配置
グループ経営改革の一環としての人員の適正化
「組織デザイン6つの原則」の「組織構造・配置」においては、常に顧客視点でシンプル&フラットな組織体制を構築すること、また「評価・報酬」においては、一人ひとりの成果と行動に必ず報いることを原則の一つに掲げています。その狙いは社会からお預かりしている一人ひとりがその力を余すことなく発揮することにあります。生成AIなどのデータ・テクノロジーも駆使して生産性の高い業務プロセスを構築すると同時に、2025年度にはグループ経営改革の一環としてグローバル各地域における人員の適正化を実施します。さらに継続的な人員数の厳格管理を実施しながら、グループの持続的な成長を可能とするリーンで環境変化に強い会社の構造を作りあげていきます。
▪評価・報酬
成果と行動に報いる仕組み(日本)※3
当社グループでは、本人が現在担っている「役割の大きさ」により、本人の処遇のベースとなる「役割等級」を決定しています。そのねらいは、グループに集う多様な人材を、現在担っている「役割の大きさ」により処遇することで、処遇の透明性と納得性をより高めるとともに、新しいことへのチャレンジ目標を明確にし、その目標に対して失敗を恐れず、積極果敢にチャレンジする人と組織を求めていく、というところにあります。
評価については、毎年、一人ひとりが掲げた目標に対する行動や実績について、評価を実施しています。評価にあたっては本人と上司間の対話を通じて納得性とさらなる挑戦意欲の醸成をはかっています。
報酬については、前年度の会社業績を反映して、当年度の賞与水準を決定する、業績連動型の報酬体系を採用しています。報酬決定における会社業績の反映度合いは、より上位の幹部階層になるほど高くなります。また、個人ごとの賞与額は、担当業務における前年度の個人の実績も反映して決定します。このように会社業績や個人の実績を一定の範囲内で報酬に反映することで、業績・実績向上に向けた意欲喚起につなげています。
なお、具体的にはそれぞれの会社が向き合う産業や市場に適した形で、例えばジョブ型人材マネジメントなどの導入や、運用の見直しを進めています。
※3 対象: PHD、PEX および6事業会社の雇用期間に定めのないすべての社員
(各社事例) ジョブ型人材マネジメント(パナソニック インダストリー株式会社)
パナソニック インダストリーは社員の挑戦を後押しするため、「役割・人財要件定義」と「2つの等級体系」を導入しました。「役割・人財要件定義」では、社内外の視点を踏まえた人財要件を明確化し、社員が主体的にキャリアを選択できる環境を整備。さらに、「マネジメント」「スペシャリスト」の2つの等級体系を導入するなど社員の柔軟なキャリア形成を支援しています。
▪情報共有・学びのプロセス
社員の自発的なコミュニティ活動(ERG)※4
当社グループでは、所属する事業会社や職位等に関わらず、共通の関心や課題感をもつ社員が自発的にコミュニティを形成しています。職場環境や組織、経営をより良くしたいという想いで、多彩な活動を展開しています。コミュニティのテーマは例えば、育児や介護、障がい、ジェンダー、LGBTQ+、キャリア入社、ビジネスモデル構築、技術開発など多岐にわたります。社員一人ひとりにとっては、会社への提言や経営参画、困りごとの解決、自分の居場所づくりなどにつながります。また会社にとっては経営課題の解決やイノベーション、職場環境の改善、離職リスク低減や意欲向上につながっています。こうした社員の自発的な取り組みを会社としても大事にしています。
※4 Employee Resource Group (ERG)と呼ばれ、同じ価値観や思いを持つ社員が事業会社・部門を越えて主体的に活動する組織・団体全般を指します
アルムナイコミュニティ(日本)
2024年4月よりアルムナイ(退職者)とつながり続け、協業・共創を生み出すコミュニティとして「パナソニックグループ・アルムナイコミュニティ」を運用しています。これまで退職によって途切れていた会社とアルムナイとの関係を見直し、再びつながることで退職で終わらない企業と個人の新たな関係を構築し、協業・共創を生み出すことを目的としています。2025年5月時点で500人を超えるアルムナイが登録され、今後さまざまな交流の機会を設けていきます。さらにこの活動は、当社グループが「戻ってきたくなる会社」として認識されるきっかけとなっています。なお2024年度にカムバックした人材は27人で、アルムナイコミュニティを通じた実績も出ています。
▪採用・トレーニング・リーダーの選抜
行動指針に基づく採用選考のグローバル展開
2024年度より、当社グループの経営基本方針を実践するための行動指針である「Panasonic Leadership Principles(PLP)に基づいた採用選考プロセスをグローバルに展開しています。これは、経営基本方針に共感するとともに、行動を実践しうる人材を獲得することを目的としています。具体的には、選考プロセスの設計、特にPLPを基にした選考基準、用いるべき面接手法の標準モデルをもとに、各国・各地域、各社にて、それぞれが対峙する労働市場、経営環境に応じて活用・展開しています。行動を重視することで特定の属性に偏らない多様な人材の獲得につなげています。
人材開発の基本体系
社会からお預かりした貴重な「人財」を育て、活かすことは経営の根幹です。当社グループの人材開発体系では階層別・職種別など多くのプログラムを用意していますが、その推進主体は各事業場・職場と考えています。各職場では、上司との1on1 Meetingなどを通じて本人の成長マインドを喚起します。日々のきめ細かいOJTを行うことが人材育成の基本となります。そこに効果的に集合研修を組み合わせることで、成長に必要な知識・スキル・経験を補完し強化していきます。会社が一方的に教育機会を提供するのではなく、個人が「ありたい自分」、「なりたい自分」の姿を明確に描き、その実現に向けて、主体的に学びの機会を得られるよう職場としてサポートしています。
グローバル人材の育成
各国・地域では、ビジネスリーダーの育成強化に向けて、日本と連携しながら、独自の選抜型の幹部開発研修を企画・運営しています。例えば、欧州では、12か月にわたる人材育成プログラム「Next Generation Talent Program(NGTP)」を実施しています。経営基本方針やダイバーシティに関するワークショップ、実際のビジネスプロジェクトの立上げ・推進、メンタリングとコーチング等内容は多岐にわたり、参加者は総合的なビジネス知識・スキルの向上のため、欧州内の他の関係会社の社員とバディを組んで研修に取り組みます。その他にもインドでは「Middle Management Development Program(MMDP)」を実施しています。2024年度はIndian Institute of Management(インド経営大学院)とタイアップして研修カリキュラムを策定し、インドを中心にトルコなどから総勢27名が参加しました。また、日本においては、グローバル地域の基幹シニアマネージャー(ダイレクター、ゼネラルマネージャー、マネージャーなど)を対象に「Senior Management Development Program(SMDP)」を開催し、直近では2024年8月に13か国から34名が受講しました。また、グループ全体を対象とした「Panasonic Global Mobility Policy」という地域間の異動規程を整備し、海外社員の日本勤務や地域間異動のプログラムも実施しています。
レジリエンス研修
人間の特性への理解を深めることを通じて一人ひとりの能力を最大化し、変化に強い人と組織になることを目的とした「レジリエンスプログラム」を2021年度に導入しました。本プログラムでは、「Peak Performance」「Resilience」「Integration」という3つの軸を設定。医学・心理学的知見をもとに、個人のパフォーマンス向上、逆境を自身と組織の成長に転換する知性、多様性を活かす組織づくりについて学びます。このプログラムを経てレジリエンスを高めた社員が主体となり、共通目的に向かって困難なプロジェクトに挑むチームの結成、開発・製造・販売を一体化させた活動の加速、多様な職種の知見を結集した新商品開発など、様々な成果が生まれています。
データ・テクノロジー利活用人材の育成
当社グループは、DX を軸に企業変革を進める「Panasonic Transformation(PX)」の一環として、データ・テクノロジーを利活用できる人材の育成に注力しています。「PXアンバサダー」制度では、自ら手を挙げた社員が現場課題の解決を支援。2025年3月現在、グループ全体で62名が活躍中で、累計170件以上のお困りごとを解決しています。また、「現場PXコンテスト」も開催し、社内のPX事例を公募したところ、2024年度は803件の応募が寄せられ、合計1,112人の社員が受賞しました。
▪仕事デザイン
仕事デザインとは、一人ひとりが自らのタスクにわくわくしながら取り組める状態をつくるということです。そのためには、当社グループは、一人ひとりが社会へのお役立ちに向かって自発的に挑戦する機会を提供し最大限支援していくことが重要であると考え、A Better Dialogue(本人と上司の対話)、公募型異動、キャリア&ライフデザインセミナー、キャリア相談などの取り組みを日本地域で推進しています。またグローバル共通ではグローバルモビリティも推進しています。
自発的な挑戦と自律的キャリア支援(公募)(日本)
一人ひとりの自発的な挑戦意欲、自律したキャリア形成を支援する仕組みの一つが公募型異動です。グループ共通の制度としては、eチャレンジ・eアピール、複業があり、事業会社制に移行後も会社をまたぐ人材交流が行われています。
さらに事業会社独自の公募制度も活発化しています。パナソニック インダストリー㈱、パナソニック コネクト㈱、パナソニック ハウジングソリューションズ㈱では、公募型異動・登用を導入し、応募条件を満たせば部課長等の責任者や上位等級ポジションに応募が可能です。
2024年度はグループ共通および事業会社独自の制度を合わせ、合計3,211人の社員が手を挙げ、うち1,420人が異動しました。また複業には33人が挑戦しました。
未来を創る多様な変革型リーダーの開発・登用
▪サクセッションプランの策定と後継者の育成
持続的な事業成長を通じて「物と心が共に豊かな理想の社会」を実現するには、質の高い意思決定が欠かせません。そのためには多様な変革型リーダーの育成と登用が不可欠です。当社グループは、経営ポストの後継者育成において、「Panasonic Leadership Principles」のリーダーシップ行動に加え、経験(事業経営、日本以外の拠点の経営、ビジネス創出など)や知見とスキル(意思決定・判断力、戦略立案・実行力など)を重視しています。
一方で、不確実性が高まる事業環境においては、理想の未来を大胆に描き、多様な視点を活かして質の高い意思決定を実行し、変革を推進できるリーダーの存在がこれまで以上に重要となります。こうしたリーダーを継続的に育成するため、「グループの全重要ポストの人材要件とサクセッションプランの策定」、「中長期かつ意図的な後継者の見出し(みいだし)・育成・モニタリング」を推進しています。
そこで、重要ポストに求められる人材要件を明確化し、次世代リーダーの計画的な育成と配置するための仕組みとして「タレントマネジメントコミッティ」を設置の上、短期・中期・長期の視点で「後継者の見出し・育成・モニタリング」を実施しています。
なお、当社グループにおける経営ポストは以下の2体系があり、これらに対して後継者育成のプラットフォームを整備し取り組みを進めています。
後継者育成の仕組み
経営ポスト | 後継者分類 | 議論・意思決定の場 | 共通の仕組み |
|---|---|---|---|
トップ経営層(事業会社社長、分社社長、PHD執行役員) | H人材 | グループタレントマネジメントコミッティ |
|
事業経営層(事業会社執行役員、分社経営会議メンバー) | G人材 | 事業会社タレントマネジメントコミッティ |
上記のうち、トップ経営層の後継者育成については、候補者を「即時任命可能な人材」「5年以内に任命可能な人材」「10年以内に任命可能な人材」として可視化し、合計23の重要ポストに対する育成計画を策定しています。また、各地域と連携したグローバル幹部開発研修や、若年層の早期見出しを目的とした選抜研修など、包括的な後継者育成プログラムを展開し、次世代リーダーの育成を加速させています。
後継者向け研修
後継者向け研修については社内外の最適なプログラムを準備し、2020年度にスタートしたLaunching Executive LeadersやCreating Executive Leadersなどのプログラムを継続的に開催しています。前者にはのべ177名(16日間)、後者にはのべ251名(14日間)がこれまでに参加しています。さらに2021年度からは、新任役員研修やグループ経営研究会、2022年度からは若年層の幹部候補へ経営リテラシー研修も実施し充実を図っています。2024年度からは、事業責任者だけではなく執行役員候補にまで対象層を拡大し、経営チームの育成に力を入れています。
経営者の育成状況のモニタリング
当社グループでは、現任の事業会社社長、PHDや一部の事業会社の役員等を対象に「Panasonic Leadership Principles (PLP)アセスメント」(360度アセスメント) を実施しています。これは、経営基本方針の実践を支える行動指針「PLP」 を基準としたリーダーシップ行動の発揮状況を上位者/同等者/下位者がアセスメントするものです。日常の行動を周囲からどう捉えられているかを認識することで、自らの行動を振り返り、自らが変えていくべき行動を考える機会を年1回提供します。さらに、次世代のトップ経営層の育成を目的として、「即時任命可能な人材」「5年以内に任命可能な人材」「10年以内に任命可能な人材」は本アセスメントの対象となっています。
なお、2024年度のPLPアセスメントの状況は次の通りです。現在の経営者および次世代のトップ経営層ともに「誠意をもって行動する」「自主責任感を持つ」は強みであることが分かります。一方で「世界一の生産性を追求する」「違いを強みとして活かす」は今後の伸びしろであると認識し、今後の経営者育成プロセスにおいて強化していきます。
▪女性リーダーの獲得および育成(日本)
さらに日本地域においては「女性リーダーの獲得および計画的育成」にも注力しています。パナソニックグループでは、報酬体系上、性別・性自認を含む個々の属性による格差はありませんが、経営チームや管理職への女性登用は男性に比較して遅れているのが実態です。未来に向かって、より多様なメンバーの知恵を引き出し、イノベーティブな商品・サービスを生み出すために、採用の強化、働き方の選択肢の拡大やキャリア開発の支援などを通じて、女性リーダーの獲得と計画的な育成に取り組んでいます。なお、評価や登用のあり方について公平性の観点からの見直し、キャリアストレッチやロールモデルの価値観や仕事観にふれる機会づくりなども実施しています。
(各社事例) パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 製造現場でのジェンダー ギャップ解消
製造現場での安全管理、機械設備の運用、トラブル対応など、突発対応や体力を要するとみなされる職種やリーダーには、「男性でないと難しい」というアンコンシャスバイアスが根強く、同質性の高い職場環境が形成されていました。そこで全国の製造拠点で活躍する女性リーダーが参加し、「女性リーダーTalk」を開催。ジェンダーギャップの解消とともに製造現場での働きやすさを追及し、すべての社員が活躍できる現場づくりを進めています。
▪Diversity, Equity & Inclusionの取り組み
トップコミットメント
トップコミットメントとは、経営者自らがコミットし、事業戦略に織り込んでDEIを推進していくことです。グループCEOがチェアパーソンを務め、各事業会社社長と社員が参加する「グループDEI推進委員会」を定期的に開催し、経営者と社員の対話を通じて主要なアクションを決定し、推進しています。また、PHD取締役会においては定期的に人事戦略の一つとしてDEIに関する報告が実施されています。
インクルーシブな職場環境づくり(日本)
インクルーシブな職場環境づくりとは、一人ひとりが多様な個性を尊重し、それが活きる職場環境をつくっていくことです。
◇アンコンシャスバイアス トレーニング
誰もが持っている思い込みの存在について学び、気づくための「アンコンシャスバイアストレーニング」を日本地域の約6万人の社員に対して継続的に実施しています。一方的なものの見方を変え、他の可能性について考えをめぐらすことで、職場コミュニケーションを見直し、誰もが働きやすく、多様性が活きる職場風土の醸成を図っています。北米、欧州地域やブラジル、インド、シンガポール、ベトナムでも、それぞれの地域や国の事情に応じてトレーニングを展開しています。
◇アクセシビリティマップの取り組み
グループ内の拠点構内の「アクセシビリティマップ」整備を進めています。「アクセシビリティマップ」の制作にあたっては当事者やその周囲の社員を巻き込みながら自ら現地を調査するプロセスを取り入れており、制作プロセスそのものが多様性を理解する機会として位置付けて展開しています。
一人ひとりへのサポート
一人ひとりへのサポートとは、多様な個性をもつ一人ひとりが挑戦に向き合えるように支援していくことです。サポート体制の構築、人事の制度や仕組みの改善などに取り組んでいきます。
◇多様な働き方の推進、妊娠・育児、介護中の社員へのサポート
グループ各社において、それぞれキャリアやワーク・ライフ・バランスを後押しする「働き方の選択肢拡大」に取り組んでいます。例えば、1日の最低労働時間の撤廃により働く時間や曜日を柔軟に選択できる制度を導入し、週休3日や4日といった柔軟な働き方を可能としています。このような働き方の導入や、キャリア開発のための勤務制度の拡充等により、他社副業やボランティア、自己学習など、自律したキャリア形成に向けての個人の挑戦を後押ししています。また、フルリモート勤務の推進により通勤圏外からの勤務を可能とするなど、働く場所の選択肢拡大にも取り組んでいます。これにより育児・介護やパートナーの転勤等のライフイベントとキャリアの両立を実現しています。
その他、社員それぞれの勤務形態や属性を問わず、誰もが年次有給休暇を半日単位・時間単位で取得することに加えて、労働時間中に一定時間業務から離れる、いわゆる「中抜け」や、それに対する時間単位休暇の当てはめ充当についても可能とするなど、各種制度の拡充により、多様で柔軟な働き方への対応を推進しています。
◇LGBTQ+
「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準」において、各国の法令を踏まえ、性的指向、性自認に関する差別的言動を行わないことを明記しています。当社では2016年4月より慶弔休暇、育児・介護支援、単身赴任手当等の人事関連制度において、法的要件等で対象外となるものを除き、同性パートナーにも配偶者に準じた取り扱いを適用しています。また、LGBTQ+の人への理解を促し、LGBTQ+の社員が働きやすい職場を実現するために、LGBTQ+の人に関する基礎知識に加え、差別的言動への対処方法、当事者のニーズへの対応方法などを含めた教育や啓発活動も積極的に展開しています。
◇障がいのある人
2025年6月現在の日本における当社グループの障がいのある方の雇用率は2.53%です。それぞれの職場においては、障がいの有無に関わらず誰もが自分らしく働けるように、聴覚障がい者への情報保証、バリアフリー環境の整備、教育コンテンツの整備など、様々な取り組みを実践しており、障がいのある人の自立と社会参加を推進する取り組みを継続していきます。
◇高年齢の社員
自律的なキャリアづくりの推進、高年齢者の就業機会の確保、退職後のサポートなど、グループ各社において高年齢の社員についても活き活きと活躍できる環境づくりに取り組んでいます。
◇グローバル各地域の取り組み
グローバル各地域においても多様な人材が最大限に力を発揮できるよう、それぞれの地域の課題に応じたDEI推進の活動に取り組んでいます。
その他詳細はこちら
HRモダナイゼーション
HRモダナイゼーションは、最先端テクノロジーとデータを活用し、社員の働き方や人材マネジメントのあり方を進化させる取り組みです。人事データや生成AIを駆使して、パナソニックグループで働くすべての社員の体験価値を向上させるとともに、組織・人材マネジメントの最適化を図ります。さらに、人事業務の標準化・効率化を推進することで、人事機能が事業戦略を支えるプロフェッショナル集団へと進化。一人ひとりがより創造的な仕事に集中できる環境を整え、社員一人ひとりのポテンシャルを最大限に引き出しながら、グループ全体で成果を共有し、社員の成長と組織の競争力強化につなげていきます。
例えば今後も、社員一人ひとりのスキル情報をもとにAIが最適な研修や社内の新たなポジションを提案することでキャリアの選択肢を広げることを可能にしたり、AIにより空きポジションにフィットする人材を社内外から迅速に見つけることで適材適所を実現していくなどの取り組みも進めていきます。
このように人事機能の貢献領域において最先端テクノロジーの活用を進めることで、人事社員1FTE※5あたりの社員数や人事社員が「人事戦略や組織・人材開発の領域」を担当する割合をグローバル先進企業の水準に引き上げていきます。
※5 FTE:「Full-Time Equivalent」の略で、フルタイム勤務に換算した場合の業務量。1.0は、フルタイムの社員1名分の業務量を表す。
▪生成AI を活用した社員7万人対象の「ワンストップ人事サービス」
ポータルサイト「ワンストップ人事サービス」を導入し、分散していた人事情報や問い合わせ窓口を一本化。お知らせやTo Doをパーソナライズ表示できる「マイページ」、AIチャットボットによる自動回答・自動申請が可能な「バーチャルエージェント」、Face to Face対応の安心感を新たな形で実現する「メタバース」など、複数のサポート手段を提供することで、セルフサービスの利便性と有人対応の安心感を両立しています。なお、2024年度は毎月約1.9万人が「マイページ」上でサービスを利用しました。継続的に利用は拡大し、利便性とともに業務効率化が進んでいます。
▪対話型のAI サービス「AI Career Supporter」
就職活動をする学生が当社グループに興味を持った際に、いつでもどこでもキャリア相談できる環境を整えました。学生はAIとの対話を通じて自分の考えを言語化し、内省を深めながらキャリアの方向性を見つけることができます。さらに、数百種類の職場実習型インターンシップの中から、AIが学生の専攻や志向、行動特性に基づいて最適な実習テーマを提案。2025年6月時点で累計約2,700人の学生に利用され、アンケートからも高く評価されていることが分かります。
安全・安心・健康な職場づくり
当社グループはPHDの取締役会が制定改訂する「パナソニックグループ コンプライアンス行動基準(以下、「コンプライアンス行動基準」)」、およびグループCEOが発信する「パナソニックグループ労働安全衛生ポリシー(以下、「労働安全衛生ポリシー」)」において、パナソニックグループで働く人の安全と健康の確保について定め、グループ全体に展開するとともに構内請負会社等にも徹底を図っています。あわせて、事業場内にお越しいただいた際の社外関係者の皆様の安全の確保にも努めます。
この方針を実践するため、当社グループにおける安全衛生管理について「安全衛生管理規程」に定め、安全衛生管理活動の基盤を確立し、労働災害を防止するとともに、社員の健康の保持増進を図り、事業発展に貢献することを目的とし、当社グループ各事業場の安全衛生管理活動に係るすべての業務に適用しています。また、コンプライアンス徹底に向けてハラスメント防止についても各地域の法令に沿って取り組みを進めています。
また、毎年7月の全国安全週間、10月の全国労働衛生週間には、グループ安全衛生管理部門から当該年度の重点取り組みについて日本のみならずグローバルに周知徹底を図っています。
▪安全・安心な職場づくりの推進
リスクアセスメントの取り組み(日本)
職場に潜む労働災害や疾病の潜在リスクを洗い出し、優先度の高いものから確実にリスク低減すべく、労働安全衛生法を前提に、機械設備や有害物質等へのリスクアセスメントを年1回以上定期的に実施しています。また、グループ内で発生した労働災害事例をイントラネットで速やかに共有、対策の横展開を図り、各事業場にて再発防止に向けた活動を実施しています。日本の各事業場では、労使メンバー(労働組合委員と会社委員)から構成される安全衛生委員会において、職場のリスク低減、労働災害の原因および再発防止、健康保持増進等の対策および健康障害防止について調査・審議しています。また、構内請負会社の労働者の労働災害を防止するため、契約において「安全かつ適切な職場環境の実現に努めること」について定めるとともに定期的に構内請負会社と安全衛生協議会を開催し、作業間の連絡調整等、総合的な安全衛生管理を行っています。
外部評価の取得推進
◇ISO45001
当社グループの拠点では、ISO45001等の認証の取得を進め運用することで、すべての社員の役割を明確にし、目標を設定して安全衛生活動を推進するとともに、事業場長による定期的なレビューを行い、活動の見直しを図っています。2024年末時点でグローバル各地域を含む217の製造拠点のうち、172拠点でISO45001認証を取得していて、2025年度は5拠点が新規取得する予定です。
◇健康経営優良法人(日本)
経済産業省が推進する「健康経営優良法人」の取り組みを進めており、2025年3月時点において3年連続ですべての事業会社が健康経営優良法人として認定されています。さらに、グループ内3社はホワイト500(「健康経営優良法人」大規模法人部門で特に取り組みが優良とされる上位500社)に認定されています。当社グループでは、健康経営を「一人ひとりが活きる経営」における重要施策と位置づけ、社員と家族の「心身の健康づくり」を進めるとともに、社員全員が活き活きと活躍できる職場風土を醸成します。
◇WELL認証※6
社員が活き活きと働くウェルビーイングな職場づくりに対して、以下の国際認証を取得しました。
• 2022年1月 中国
松下電気機器(北京) 有限公司(北京市):WELL Health Safety Rating
• 2022年1月 中国
松下記念館(北京市):WELL Health Safety Rating
• 2022年1月 中国
パナソニックシステムコミュニケーションズ中国(北京市):WELL Health Safety Rating
• 2022年3月 日本
パナソニック東京汐留ビル(東京都):WELL Health Safety Rating
• 2022年7月 日本
パナソニック広島中町ビル(広島県):WELL Health Safety Rating
• 2023年1月 中国
雅達・松下社区ショールーム(江蘇省):WELL Performance Rating
• 2023年5月 中国
パナソニック電気設備(江蘇省):WELLv2 プラチナ認証
• 2023年8月 中国
パナソニックWST ショールーム(北京市):WELL Performance Rating
• 2024年1月 日本
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 XC 門真 WELL_CORE シルバー認証
• 2024年7月 日本
エレクトリックワークス社 システムソリューション開発センター WELLv2 プラチナ認証
• 2025年2月 日本
技術部門 門真新棟 WELL_v2 Pre認証
• 2025年3月 日本
エレクトリックワークス社 ソリューション開発本部 SHIOMER WELLv2 プラチナ認証
• 2025年6月 日本
エレクトリックワークス社 ソリューションエンジニアリング本部 worXlab WELLv2 プラチナ認証
※6 アメリカの公益企業IWBI(The International WELL Building Institute)が2014年に設置した、空間のデザイン・構築・運用に「人間の健康」という視点を加え、より良い住環境の創造を目指したオフィス空間の評価システム。WELLv2認証は、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズで格付けされる。WELL Health Safety Ratingは、空間の健康・安全性を評価する認証。WELL Performance Ratingは、光・音・空気などの室内環境質(Indoor Environment Quality)を評価する認証。WELLv2以外は格付けなし。
The International WELL Building Institute™と関連のロゴはThe International WELL Building Institute™の商標で、許可を取って使用しています。
安全
◇設備安全基準作成指針の展開
設備における労働災害を未然に防ぐため、事業場で新たに生産設備や技術・品質評価設備類を開発導入・購入する際は、「設備安全基準」に基づき設備の設計段階からリスクの洗い出しと保護方策を施し、独自評価ツールによる数次の適合性評価を経て、最終使用段階に安全衛生委員会での適合性評価の審議を行い、安全適合された設備を使用しています。「設備安全基準作成指針」は、各事業場の「設備安全基準」のグローバル指針として国際的な機械安全規格や法令、社内に蓄積された安全ノウハウ、災害事例の再発防止策を体系化し指針としたもので、グループ各社の生産技術・人事安全部門有識者で構成する設備安全基準改訂委員会で毎年更新・周知(多言語対応) しています。また、人間の行動特性や能力の不適合から危害が生じる可能性に関して、危険源の適合性評価チェックを行い、使用する環境において人間工学的な配慮・対策をすることにより、作業の安全性を確保します。
◇労働災害発生時の対応
労働災害等が発生した場合は、「労働災害等緊急事態の発生に関する措置」に従い、災害発生事業場の事業場総括安全衛生管理者が、迅速かつ的確な速報を事業会社総括安全衛生管理者に報告します。グローバルに各事業拠点の労働災害発生状況を管理する仕組みを構築し重大な労働災害発生時には24時間以内の報告・365日モニタリングし、災害事例等を全社へ共有しています。また、労働災害発生事業場においては、発生原因の追究と再発防止対策を行うとともに、その内容をグループ全体で共有化し、他の事業場においても災害事例を踏まえた未然防止の取り組みを実施しています。
◇近年の重篤・重大災害と再発防止策
重篤災害(死亡災害および身体に障害が残る災害)および重大災害(同時に3名以上が被災する災害)については、撲滅を目指して取り組んでいます。2024年度は海外で重篤災害が7件(うち死亡3件、請負社員含む)発生しており、引き続きグループ重要リスクと位置づけています。重篤災害の未然防止のため、グループとして防止すべき重点災害パターンの分析結果を展開し、各事業場において発生の可能性が高い災害パターンから優先的に未然防止策を進めています。重篤災害に直結しやすい災害パターンである設備動力(設備へのはさまれ巻き込まれ)ついては、過去の重篤災害の約70%を占めており、特に設備安全基準導入以前の既設生産設備の安全対策が必要であると分析しています。再発防止策として、非定常作業の安全作業ガイドラインの周知、グループ設備安全基準の運用徹底を図るとともに、設備のリスクアセスメントや安全化技術を現場で展開・実践・定着させる人材を育成するため「設備安全教育体系」を運用しています。具体的には、「(a)設備を開発・導入する従業員向け研修」、「(b)設備を使用する従業員向け研修」「(c)社内設備安全基準の講習会」、の3つの教育プログラムを使い、認定インストラクターが活動を展開しています。中国・アジア地域においても、設備安全を進めるため、各拠点の担当者を育成する活動が始まっています。引き続きグローバル各地域への活動展開を進めています。
◇設備安全教育体系
| 国際規格を学ぶ | 社内基準を学ぶ | |
|---|---|---|---|
研修名 | (a)設備安全技術者研修 | (b)設備安全管理者研修 | (c)設備安全基準講習会 |
対象者 | 設備設計・改造を主な業務とする生産技術者等(責任者含む)
| 設備使用管理(安全)を主な業務とする生産技術、安全関係者
| 当社グループ設備安全基準を作成・改定・展開するための指針を学ぶ者
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労働衛生
化学物質を扱うなどの有害作業については、安全データシート(SDS)による有害性の確認や適切な保護具の提供を行うとともに、作業そのものを減らすよう取り組んでいます。作業者のばく露状況の把握に関しては、法令で定められた物質に加え、独自に定めた物質についても環境測定・健康診断を定期的に行い、継続的なモニタリングや環境改善を実施しています。
また、化学物質による労働災害を防止するため、国は労働安全衛生規則等の一部を改正しました(化学物質の自律的管理)。本改正においては、事業者がリスクアセスメントの結果に基づき、ばく露防止のための措置を適切に実施することが求められています。当社グループでは、このような関係法令改正の動向を踏まえ2022年4月に化学物質管理基準を制定しました。さらに化学物質管理ワーキンググループを設置し、共通の施策・ルール・教育等について定め、リスクアセスメントの強化や化学物質の「自律的管理」の定着に向け全社で取り組みを展開しています。
◇化学物質管理基準(日本)
職場における化学物質等による職業性疾病を防止するため危険・有害要因の除去、低減活動、健康管理を適切かつ効果的に実施することを目的とし、労働安全衛生法等の関係法令に基づく必要な措置について本基準を制定し、取り組みを推進しています。
◇推進体制(日本)
産業衛生推進委員会(年2回) | ||
|---|---|---|
| 目的 | 方針・施策の決定 |
委員長 | 人事担当執行役員 | |
メンバー | 会社委員、労働組合委員、健康保険組合委員 | |
化学物質管理検討ワーキンググループ(年4回) | ||
| 目的 | 施策の具体的内容の決定等 |
メンバー | 会社委員、健康保険組合委員(産業衛生科学センター) | |
各事業場安全衛生委員会(月1回) | ||
| 目的 | 施策の実行 |
メンバー | 会社委員、労働組合委員、産業医・産業看護職 | |
教育(日本)
当社グループは「安全衛生教育指針」および「メンタルヘルス教育指針」を定め、派遣社員を含む従業員、経営者、安全衛生スタッフに対する教育を実施しています。経営責任者層や全社横断的な研修についてはグループ安全衛生管理部門が主催し実施しています。また各事業会社・事業場においては安全体感道場等を活用し、派遣社員、請負業者も含めた受入時の安全教育を実施するとともに、管理者教育やそれぞれの製造プロセスに応じた専門研修、有資格者育成研修等を実施、受講推進しています。さらに請負業者も対象に必要な情報や教育コンテンツを提供し啓発に努めています。(当社グループで開催する専門研修、有資格者研修例(請負会社受講可能): https://phio.panasonic.co.jp/kagaku/roudou-eisei-kyouiku/c02.htm)
毎年グループ安全衛生の関係者が集う健康・安全衛生シンポジウムを開催し、グループCEOの健康・安全に対する考えを事業責任者および関係者全員で共有するとともに、各事業場の安全衛生・健康づくり活動の好事例を互いに学び合い、社外専門家から知見を得るなど安全衛生活動の高位平準化を図っています。
▪健康経営の推進
健康
健康については、グループ全体に「健康メッセージ」を発信し、社員のウェルビーイングの実現に向けた健康投資を強化する方針を明確化するとともに、健康保持増進基準に則り日本では会社、労働組合、健康保険組合が一体となった「健康パナソニック活動」を通じて様々な取り組みを推進しています。また、定期健康診断や従業員意識調査、ストレスチェックなどの結果をレビューし、取り組みの成果の確認を行うとともに、さらなる取り組みの強化につなげています。
◇健康保持増進基準(日本)
本基準においては、社員の「心とからだの両面についての健康確保対策」を適切かつ効果的に実施するため、健康診断および事後措置、長時間労働者等への面接指導、心理的な負担の程度を把握するための検査、病者の就業禁止等の手順、健康保持増進計画および心の健康づくり計画を策定することを定めています。当社グループの健康保持増進措置とパナソニック健康保険組合の保健事業とを連携させ、各取り組みの相乗効果を図っています。
◇推進体制(日本)
健康パナソニック推進委員会(年2回) | ||
|---|---|---|
| 目的 | 方針・施策の決定 |
委員長 | 人事担当執行役員 | |
メンバー | 会社委員、労働組合委員、健康保険組合委員 | |
健康パナソニックワーキンググループ(年4回) | ||
| 目的 | 施策の具体的内容の決定等 |
メンバー | 会社委員、健康保険組合委員、健康保険組合委員 | |
各事業場安全衛生委員会(月1回) | ||
| 目的 | 施策の実行 |
メンバー | 会社委員、労働組合委員、産業医・産業看護職 | |
◇健康課題と取り組み(日本)
高齢の社員の増加に伴い、肥満や健診有所見者が増加しています。近年は新型コロナを契機とした在宅勤務活用の拡大に伴い運動不足やコミュニケーション不足等の課題も顕在化しています。健康課題の解決のためにはヘルスリテラシーを高め、健康行動を実践する従業員の拡大が必要です。睡眠、食事、運動、飲酒、禁煙の5項目の生活習慣において、適正な習慣を併せ持つほど、健康リスクが低く、仕事のパフォーマンス(自己評価)が高くなる傾向にあり、2024年度から始まった新たな「健康パナソニック」6カ年計画では適正な習慣の数が4項目以上となる実践者の割合を2029年度末までに50%以上にすることを目標のひとつにしています。2024年度は36.6%が該当し、この4年間で約5%増加しています。
また、ICTを活用した健康づくりとしては、Webサービスや生活習慣アプリによる健康情報提供や健診結果閲覧、健康チャレンジ、取り組みに応じたヘルスケアポイント(健康づくり商品に交換可能)の付与、定期健診後の健康年齢測定ツールなどを活用した取り組みを行っています。
◇環境整備(日本)
健康増進、疾病予防、メンタルヘルスケアなど、社員の健康のための取り組みを通じて「社員が健康に働くための職場環境整備」を各事業場で推進しています。喫煙対策においては、屋内禁煙化を推進(89.1%実施済)しています。また、一部の事業会社においては、就業時間内禁煙の取組みも始めました。
社員食堂については、全国108カ所を対象に毎年、食環境調査を実施し、約40社の委託給食会社と連携して健康に配慮した食環境づくりを推進しています。現在、30食堂が外部認証(「健康な食事・食環境」認証制度)を取得(昨年比+6)しています。個人に対しては特定保健指導対象者および健康高リスク者を対象に、全国160カ所の健康管理室を中心に積極的に保健指導や産業医面談、必要に応じた安全配慮を実施しています。また、在宅勤務者に向けて、「健康で安全な在宅勤務の手引き」を展開し、在宅勤務時の留意点や自宅でも取り組める簡単エクササイズを紹介するなど、社員の主体的な健康づくりを支援しています。
◇ストレスチェック(日本)
ストレスチェック制度については、高ストレス者対応に加え、会社組織単位での集団分析と職場改善を推進するため、毎年全社一斉に実施しています。また、ストレスチェックに併せて、睡眠や食事、運動等のセルフケアに大切な健康行動を推奨しています。ストレスチェックの結果は、本人のストレス状態の気づきに加えて、職場診断分析結果を組織責任者や職場にフィードバックし、職場の活性化を通じたメンタル不調者発生の未然防止対策に活用しています。長時間労働対象者および定期健康診断の結果において安全配慮が必要な社員については独自基準に基づき産業医面談を実施し、就業措置を行うなど健康障害防止対策を講じています。さらに、当社グループでは、社員の健康および法令遵守の観点から長時間労働の是正と、それを可能にする抜本的な業務プロセスの見直し、働き方・休み方の改善等についても継続的に取り組んでいます。
▪コンプライアンス徹底に向けたハラスメント防止の取り組み(日本)
当社グループは、すべての職場において一人ひとりの個性や能力が尊重され、誰もが安心して、活き活きと働いている状態を目指しています。したがって、社員が自らの手でハラスメントのない、誰もが誇りを持てる会社をつくっていくため、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、パワハラ防止法等の関連法令を踏まえた以下のハラスメント防止の取り組みを強化しています。
- 毎年12月にハラスメントゼロ強化月間を設定し、ハラスメントに関する情報の周知活動を実施。
- ハラスメント行為の抑止を目的にハラスメント行為に対する懲戒処分の厳格化をグループ共通の取り組みとして推進。
- 「職場におけるハラスメント防止に関する規程」の制定に向けた取り組みを各事業会社にて実施(2025年4月)
- 2024年7月にハラスメント防止に特化した研修を日本のグループ会社(PHD、PEXおよび事業会社、その他を含む111社)の管理職を含む社員を対象に実施し、約98,000人(受講率約97%)が受講した。具体的にはハラスメント行為を行わないことや、ハラスメントの報告を受けた際の対処方法などについて学んだ。今後も継続実施予定。
- 上記研修にあわせてハラスメントに関する意識調査を実施し、結果をイントラネットで公開。
通報・相談窓口
▪社員の精神的・身体的ストレスに対する予防・対応(日本)
当社グループでは、社員の精神的・身体的ストレスに対する予防や対応の窓口として、以下の相談窓口を設置しています。
健康管理室
産業医・産業保健スタッフが常駐して、生活習慣病予防や禁煙等の健康支援を行うとともに、心身の健康相談対応を行っています。
EAP※7相談室
社員の個人的悩みや心配ごとを、会社や健康保険組合に知られることなく相談できる、外部機関と契約し、臨床心理士、精神保健福祉士などの専門家が対応を行うとともに、リワークプログラムの提供など休職から復職する際の支援も行っています。
※7 EAP(Employee Assistance Program):従業員援助プログラム
▪差別・ハラスメントの通報
当社グループは、社員が差別やハラスメントを受けたり見聞きしたりした場合に、匿名で通報できる窓口を設定しています。
グローバルホットライン
詳細は、「コンプライアンス」をご覧ください。
イコールパートナーシップ相談窓口(日本)
PHD・組合双方に相談担当者を置いたイコールパートナーシップ相談窓口を設置するとともに、各事業会社にもそれぞれ相談窓口を設置し、派遣社員等を含む従業員やフリーランスから、セクシャルハラスメント(LGBTQ+に関するものを含む)や妊娠・出産、育児休業等に関するハラスメント、パワーハラスメントなど、あらゆるハラスメントの相談を受けつける体制を整えています。相談には、プライバシー保護に留意し相談者の意向を確認しながら慎重に対応しています。相談者はもちろん、事実関係の確認に関わった協力者が不利益な扱いを受けることはありません。