2020年度『私の行き方発見プログラム』のポイント
キャリア教育については、今年度から全国の学校で導入が始まる「キャリア・パスポート」の活用等を通して、これまで以上に「振り返り」と「見通し」をもったキャリア教育の実践が求められています。キャリア教育を担当されている先生方への実践的な情報提供を目的に、昨年度からスタートした「私の行き方発見プログラム・パワーアップ情報ファイル」も2年目に入りました。2020年度の第1号となる今回は、今年度のプログラムの改訂のポイントを紹介します。
2020年度『私の行き方発見プログラム』については、4月下旬より「教材提供」の募集を開始しました。ぜひ活用ください。「出前授業」については5月頃から募集開始の予定です。
プログラム改訂のポイント
最終的に改訂内容が一部変更になることもありますので、あらかじめご了承ください。
*教材については、参考資料・データの更新も行いました。
≪出前授業≫
出前授業の概要
【テーマ】 自分の「今」が「未来」につながる!!
【授業のねらい】
■『会社や組織を支える多種多様な仕事や役割』を知ろう。
■『仕事をする上で大切なこと』を知ろう。
■『学校での勉強・活動と実際の仕事とのつながり』を講師の具体的な経験から学ぼう。
【授業時間】50分(1時限) *授業前に教材を使った事前学習(50分)を実施。
【講 師】 パナソニック社員1名
【実 績】 61校(2019年度)
【ポイント1】SDGsに関連した内容を拡充
- 2015年9月の国連総会で採択された世界共有の目標「持続可能な開発目標(SDGs)」については、昨年度から出前授業の冒頭部分でポイントを紹介しています。新学習指導要領対応の次年度から使用される中学校教科書の検定結果を見ても、複数の教科でSDGsが取り上げられるなど、学校教育においてもSDGsに触れる機会が増えてくるものと思われます。
- こうした状況を踏まえ、今年度の出前授業では、SDGsに関連した内容をより拡充しました。具体的には、「パナソニックの会社紹介」の中で、「“社会の公器”である企業の使命として、パナソニックが事業や企業市民活動などを通じて、様々な社会課題の解決に向けた取り組みを行っていること」そして「そのキーワードはSDGsであること」を伝え、貧困解消や人材育成などに関連したいくつかの具体的な取り組みを紹介するような展開となっています。
【ポイント2】キャリア・パスポートの活用とリンクしたグループワーク
- 出前授業の最後のパートでは、「主体的・対話的で深い学び」につなげる観点から、事前学習と社員講師のレクチャーを基にしたグループワーク(15分程度)を組み入れています。
- 昨年度までは、「授業内容の振り返りと気付き」に重きを置いて、グループワークのテーマ以下のように設定していました。
① 今日の講師の話を聞いて、特に印象に残ったこと
②「自分の行き方」を見つけて、それを実現していくために、特に大切だと思うこと - 実施した学校の先生方からは、アンケート等を通じて、全体的には「生徒たちが熱心に取り組んでいた」との評価をいただく一方で、「2つのテーマを話し合うのは時間的に厳しい」、「特に2番目のテーマがやや抽象的で取り組み難い」といったご意見もいただきました。
- こうした学校現場の声を踏まえるとともに、今年度から全国の学校で導入される「キャリア・パスポート」との関連を図ることで、各学校におけるキャリア教育全体計画の中にこの出前授業をより位置付けやすくするため、今年度のグループワークのテーマを以下のように変更しました。今回のテーマは、文部科学省が示した「キャリア・パスポート(例示資料)」でも、中学2年生の学期末の課題例の一つとして取り上げられています。
【今年度グループワークのテーマ】
15年後の“なりたい自分”を考えてみよう!?
▶私の自己PR~自分自身の「よいところ」や「自分らしさ」など
▶社会の中の自分の役割~社会に出て自分が果たしていきたい役割
▶15年後の“なりたい自分” ~ 仕事のことを中心に
- さらに、グループワークで活用する「ワークシート」についても、前述のキャリア・パスポー
ト例示資料を参考に、「先生からのメッセージ」と「メッセージを読んで気づいたこと」を記
入する欄を新たに設けました。キャリア・カウンセリング等の一助になれば幸いです。
≪教材提供≫
教材提供の概要
【プログラムの種類】
プログラム①:どのような役割の人が会社を支えているのだろう?(会社の役割発見)
プログラム②:仕事をするために必要な能力は何だろう?(職業と能力の関係発見)
プログラム③:職場体験先の会社の役割や仕事と能力の関係は?(職業体験での仕事発見)
プログラム④:自分の価値観を発見しよう(自分の“行き方”発見)
【授業時間】各50分(1時限)
【活用方法】学年やねらい等に応じてプログラムを選択して実施
【教材の構成】
- ティーチャーズガイド(授業展開例等)
- カード教材(会社の役割カード等)
- ワークシート
- ICT教材(CD-ROM)
【実 績】202校に提供(2019年度)
【ポイント1】エピソードシートの改訂(プログラム②:職業と能力の関係発見)
- 教材の「プログラム②:職業と能力の関係発見」では、会社の中でのさまざまな仕事や役割を 担うためにどのような能力が必要かを考える素材として、実際のパナソニック社員の事例を基 にした「エピソードシート」を用意しています。
- 昨年までは、「設計(ノートパソコン)」と「商品企画(アイロン)」の2つの事例を取り上 げていました。今回からは、「プログラム①:会社の役割発見」との関連をより重視し、「モ ノづくりに直接かかわる役割」と「会社全体をサポートする役割」からそれぞれのエピソード を提示することが必要と考え、これまで取り上げていなかった「会社全体をサポートする役 割」として「知的財産」の業務に関わる社員の体験を新たに教材化しました。「知的財産」の保護は企業活動にとってますます重要性が高まっている一方で、生徒達がなか なかイメージし難い仕事・役割の一つであることから、「商品の裏側にある目には見えない重 要な財産を守る仕事」についての理解促進にもつながるものと考えています。
【ポイント2】SDGsの視点を付加(プログラム③:職場体験での仕事発見)
- 出前授業と同様に、教材の中でもSDGsの視点を新たに加えました。「プログラム③:職場体験での仕事発見」では、体験先の企業等について調べる活動の前段として、生徒達が知っている企業を取り上げ、その会社の「社会的な役割」を考える学習を組み入れています。
- 今回は、そこで企業の社会的な役割を考える際の重要な視点としてSDGsを提示するとともに、SDGsの17の目標と関連ウェブサイトについても紹介しています。
【ポイント3】勇気づける言葉の差し換え(プログラム④:自分の“行き方”発見)
- 「プログラム④:自分の“行き方”発見」では、生徒達が「言葉の持つ力」や「自分の行き方を表す言葉を見つけることの大切さ」に気づいてもらうためのツールとして、偉人や有名人などが残した言葉や格言を紹介しています。
- これまでは、パナソニック創業者の松下幸之助を含む5人の言葉を取り上げてきましたが、社会の変化や、取り上げる人物の中学生にとっての認知度等を考慮し、一部差し替えを行いました。
- 今回新たに加えたのは、女性初の国連難民高等弁務官を務め、多くの難民の緊急対応や人道支援等で多大な業績を残し、昨年亡くなられた緒方貞子さんの次の言葉です。
中学生にとって、夢や目標を達成しようとする途中には、進学や就職をはじめ、様々な難関が待ち受けているかも知れません。不安な気持ちになったり、心がくじけそうになったりすることもあるでしょう。しかし、それを乗り越えられるチャンスととらえ、勇気をもって問題と向き合い、先へ進んでいくのだという強く前向きな気持ちが伝わってきます。
「危機とか難局というのは、乗り越えられるチャンスでもあるんです。
乗り越えるためにあるんです。危機とか難局というのは。」
(元国連難民高等弁務官・緒方貞子氏)