助成を受けられた団体(環境)
事業名 |
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「環境分野の中間支援拠点・組織連絡会議」連携型組織づくり事業の確立 |
団体名 |
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特定非営利活動法人 北海道市民環境ネットワーク【幹事団体】 |
コンソーシアム構成団体 |
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財団法人 北海道環境財団 |
助成事業の概要
札幌には、1997年に北海道初の環境分野の活動支援組織として「北海道環境財団」が誕生して以来、民間の「北海道市民環境ネットワーク」、札幌市「環境プラザ」、環境省「EPO北海道」と次々と中間支援組織が設置されてきた。利用者からは「縦割り行政」「同じような組織はいらない」「違いがわからない」と言われ続けてきた一方で、広大な北海道には守らなければいけない環境、支援したい活動、解決しなければいけない課題が山積みで、4組織とも事業は手いっぱいの状況であった。そこで、札幌圏で活動を行っている中間支援4組織が連携し、2008年に「環境分野の中間支援拠点・組織連絡会議(2010年に「環境中間支援会議・北海道」に名称変更)」を立ち上げ、以下の3つの課題に取組むこととした。
- 役割分担が明確ではないため4組織に重複事業があり、各組織のリソースがそこに使われ、目的達成に向けた効果的な事業にマンパワーを集中させることができていない。
- 4組織共通してスタッフの「専門性」が不足しているため、信頼感ある中間支援組織となりきれていない。
- 連携による取り組みの「見える化」が不足し、利用者の使い勝手の低下を招いている。
そこで本事業では、主に下記の3つの組織基盤強化に取り組んだ。
(1) 現状の業務をベースとした役割分担の明確化
外部ファシリテーターの進行によるワークショップ形式で4組織の役割分担の明確化を図った。EPO北海道が担当し既に展開している「ユーザーの意見を聞く会」の情報も含めて議論し、ユーザーとスタッフ、両方の目線から整理した。
(2) スタッフのスキルアップ
役割分担の明確化と研修会を通して、それぞれの中間支援組織のスタッフに求められる知識や専門性を明確にした。また、中間支援組織のスタッフの共通の専門性として、どこに何があるか、どの人がそれに詳しいのかと言った情報源情報(メタデータ)の蓄積と活用のスキルがあげられる。そこで、市民環境活動と学術分野のプラットホームづくりと、協働による人材育成プログラムの開発・運用を最終的な目標とし、北海道大学環境科学院と連携して、これまで手薄だった学術分野の人材と情報のメタデータの整理と活用方法の検討を行った。
(3) ユーザーサービス向上につながる「見える化」
役割分担の明確化の結果を踏まえ、ユーザーからそれぞれの役割にスムーズにナビゲートできるような、WEB上の窓口サイトを設置。また、同様の課題を抱える中間支援組織への波及促進のため、本取組の経過・成果についてパンフレットを作成・配布、そして「地域アライアンスの作り方」をテーマに、各組織の行事・会議などの場で報告会を行い、基盤強化の成果について周知・広報を行った。
助成事業の取り組みで得られた成果
本助成事業を行なったことにより、従来よりもそれぞれの組織に責任感と連帯感が増し、積極的に参画していくという意識が醸成された。特に、定期的なワークショップの開催と外部講師を招聘した勉強会を開催したことにより、4組織がこれから目指して行くべき漠然としていた道筋が明確になり、より鮮明な組織連携のイメージを持つことができた。例えば、「中間支援組織が考える北海道環境課題(仮称)」や「北海道の環境を守る100人(仮称)」を取りまとめるなどの協働事業のイメージを共有できた。
また、WEBサイト「環境ナビ☆北海道」を立ち上げたことにより、今まで曖昧だった情報発信における4組織の役割分担が明確になり、それぞれの得意とする領域(民間団体のことについてはきたネット、札幌市に関することは札幌市環境プラザなど)においては、該当の組織が自発的かつ自立的に動いていくというスタイルができつつある。
助成事業の総合評価
本事業により、それぞれの組織において「積極的な参画意識」、「忍耐力」、ならびに「4組織で事業を行なっていくんだ」という責任感が生まれた。また、道外の中間支援組織から「なぜそんな良い取組ができるのか」といった問合せや、WEBサイト「環境ナビ☆北海道」開設によって4組織の取組が「見える化」してからは、ノウハウを享受したい旨の問合せを受けるなど、大きな波及効果が出ている。
今後の展望について
本事業を終えて大きな成果を得たと考えているが、厳しい見方をすればやっと協働の体制が整った、またはお互いのポテンシャルを把握したにすぎないと考えている。今後は把握した弱み・強みを意識した事業を個々の団体が行っていき、私たちが目指す理想の北海道を導くために、環境保全活動の基礎となる情報を集め、WEBサイト「環境☆ナビ北海道」を充実させるだけでなく多様な発信の仕方を検討していきたい。具体的には、当コンソーシアムが連携して環境白書のようなものをまとめたり、「どこで、誰が、どんな活動をしているか」を知ることができるデータベースの作成を検討中である。しかし、実施には活動資金やそれに費やす時間が必要となるため、新たな助成金などの獲得やWEBサイトを活用したアフィリエイトなどの資金獲得を行わなければならないと考えている。また、道内くまなく情報を集めるために、地方の市民活動支援センターへの協力要請を継続していくほか、既にいくつか照会のあった協働モデルの他地域への波及についても、対応していく必要がある。いずれも、本来業務に加えて、取り組んでいかねばならない課題であるが、効率的に連携しながら取り組んでいきたい。
事務局より
全国各地に市民活動に対する中間支援組織がありますが、期待される役割を十全に担えている組織は少ないのが実情です。組織ごとに資金源と意思決定機関が存在する為相互の連携は希薄で、特に公設(行政により設置)の中間支援組織では、税金を主たる資金源とすることから、サービス対象の絞り込みが難しく、総花的な事業が多くなり、結果として利用者の満足度が上がらないといった課題を抱えています。こうした中間支援組織の連携という課題に対して、札幌地区に設置された異なる4つの環境分野の中間支援組織によって取り組まれた本事業が大きな成果を上げている理由は、北海道という地理的なまとまり感と、丁寧に対話を繰り返してきた結果だと考えます。今後、本コンソーシアムの取り組みが、各組織内部の理解を得て継続していくためには、「事業と組織体制の見える化」だけでなく、役割分担後にブラッシュアップされた各事業の「成果の見える化」が必要になるでしょう。日本各地の中間支援組織の連携と、プラットホーム化のモデルケースとして、また、環境分野だけではなく様々な分野のパートナーシップのケーススタディとして、引き続き利用者視点に立ったサービスの提供を念頭にネットワークを活性化していただけることを期待しております。