【環境分野】選考委員長総評
今回の助成は昨年から始まった組織診断とキャパシティビルディングの2段階の仕組みによる最初の助成となりました。ここまで苦しみながらも前向きに組織基盤の強化に向けて、外部などからの組織診断を受け入れ、種々の取り組みをされてこられた応募団体の方々に対して、心から御礼申し上げます。
組織の血肉になるキャパシティビルディング助成
当Panasonic NPOサポート ファンドは日本に数あるNPOなどへの助成事業の中でも特筆すべき質と位置を持っていることについて、これから組織診断助成・キャパシティビルディング助成の応募をお考えの皆様にお伝えしておきたいと思います。
じつは私が代表理事を務めている日本エコツーリズムセンターでもかつて当ファンドを受けてまいりました。それまでさまざまな官民の助成事業を申請し、受けてきましたが、私たちが目指すベクトルとは異なる仕様であったり、助成と言いつつもその助成のためにやる仕事で、組織には身にならなかったりすることの多い中で、当ファンドが自組織の基盤強化にのみ、徹底してこだわった取り組みを求め、しかも、助成しっ放しではなく、事前事中ともにしっかりしたフォローの体制を取っていることに驚いたものです。
また、昨年は私自身が当ファンドの助成団体2ヵ所にアドバイザーとして入りましたが、それぞれ異口同音に、『これほど真剣勝負になった助成事業は初めてで、すごく為になります』と言われました。現在、組織の5年後10年後の目指すべき姿をスタッフ全員が自分の言葉で言えないNPOが多いと思われますが、当ファンドはまさにこうした不具合を是正して、骨組みを強くする稀な助成事業だと思っています。
広瀬 敏通
(特定非営利活動法人
日本エコツーリズムセンター)
選考の経緯
今回の選考は昨年7月に組織診断助成に応募し、同年11月に採択された8団体が対象でした。したがって、すでに選考委員も運営事務局も応募団体それぞれの課題と強みなどについては理解出来ていました。それが組織診断を経てどのようなステップを踏み出してくるのか、私たち選考委員もたいへん興味を持って選考に臨みました。
8団体ともグループコンサルティングや個別コンサルティングを経ており、その診断結果も見させていただいた上で6月8日に環境分野の選考会を開催し、8団体からのプレゼンとそれを補完する質疑をさせてもらいました。その後の選考会の討議で、4団体をキャパシティビルディング助成に進んでいただくことに決定しました。
選考のポイント
4団体には採択に当たって組織基盤強化に適合しうる項目についての条件を出させていただき、今日までにそれぞれ了解をいただきました。
いずれの団体も組織診断を踏まえて何を何のためにどのように取り組むべきかについて、悩みつつキャパシティビルディング助成への申請を書かれたことが推察されました。こうした自己評価と自己改善のプロセスの習慣化がまだ馴染んでいないためだと思われます。当ファンドに適合する案件と、自団体の自助努力ですべきこととの線引きが難しく、選考委員もこの点にとくに注目して議論しました。また、せっかくの組織診断を経ながらもキャパシティビルディング段階の申請案件が事業助成に傾いているケースも数件見られました。組織基盤の強化と組織が取り組む各事業とをしっかり分ける視点を持つことが自らの組織の強化につながると思います。
キャパシティビルディング助成の採択にならなかった4団体も、組織診断によって得られた自らの課題とその解決への道筋を自団体で実践することが可能であると判断された例と、キャパシティビルディングには適合していないと判断された例とがありました。今一度ぜひ前向きに、組織診断に立ち返り、その成果を活かした実践に取り組まれることをご期待いたします。