「プロボノ1DAYチャレンジ OSAKA 2016」のイベントレポート

NPOが抱える課題に仕事で培ったスキルで挑戦!社員14名が挑んだ「プロボノ1DAYチャレンジ OSAKA 2016」

2016年7月2日、NPO法人サービスグラントが主催するプロボノ1日体験企画「プロボノ1DAYチャレンジ OSAKA 2016」に、パナソニックグループの社員14名が参加しました。プロボノとは、「公共善のために」を意味するラテン語「Pro Bono Publico」を語源とする言葉で、“社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや専門的知識を生かしたボランティア活動”を意味します。

「プロボノ1DAYチャレンジ」は、NPO・地域団体などの「手伝って欲しい」、「支援を受けたい」というニーズに、社会人ボランティア3~6名からなるチームを編成してマッチング。1日で貢献できるプロボノワークに挑戦するというものです。今回はさまざまな課題を抱えた9団体に43名のプロボノワーカーが挑み、パナソニック社員チームで2団体を支援しました。

社会福祉法人ぷろぼのチーム

~多くの人々に活動を伝えるSNS活用法を考える~

10時から開催されたオープニングセレモニー終了後、「社会福祉法人ぷろぼの」を担当するチームが向かったのは近鉄奈良線新大宮駅。ここから徒歩約5分の場所に事務所があります。「社会福祉法人ぷろぼの」は、奈良を拠点に障がいのある方の就労を支援する社会福祉グループ。就労移行支援・就労支援だけでなく、障がい者の働く場づくりなどさまざまな活動を展開しています。

社会福祉法人ぷろぼの 田中伸一さん

社会福祉法人ぷろぼの
田中伸一さん

「障がいを持つ方が奈良でいきいきと働いて生活できるよう、奈良にこだわり、奈良を元気にする活動をしています。」と語るのは、事務局次長の田中伸一さん。地域貢献活動にも力を入れていて、今年7月には事務所の隣に奈良県産の木材を使った木造5階建てのビル「ぷろぼの福祉ビル fellow ship center」が完成。障がいを持つ方や地域の方々の交流の場になります。
活動は順調とはいうものの、田中さんが頭を抱えていたのは「奈良を盛り上げるための活動や取り組みを行っているけれど、うまくPRできていない。」ということ。「これまでも自分達で創意工夫をしながらホームページやツイッター、フェイスブックなどで発信してきました。もっとSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を上手に活用して注目を集めることで、まずは『ぷろぼの』の活動を知ってもらい様々な形で関わってもらうきっかけを作りたい。」との要望でした。

最初にチームが取りかかったのは、「何をベースに発信するか」という課題。というのも、活動が多岐に渡るため何をPRするかを絞る必要がありました。そこで、まず田中さんが大切にしていた「奈良にこだわった活動」に焦点を当てることに。続いてSNSの種類や違い、それぞれが持つ特徴などを調査。主要ソーシャルメディアのどれが広報発信に向いているかを議論しました。

NPO法人 こえとことばとこころの部屋チーム

(ゲストハウスとカフェと庭 ココルーム)
~課題を洗い出してカフェの収益向上を目指す~

もうひとつのチームが向かったのは、大阪市西成区にある「NPO法人 こえとことばとこころの部屋」が運営する「ゲストハウスとカフェと庭 ココルーム」。到着したのが昼頃だったこともあり、カフェでランチをいただきながら、和やかな雰囲気の中で代表・上田假奈代さんへのヒアリングを行いました。

NPO法人 こえとことばとこころの部屋 上田假奈代さん

NPO法人 こえとことばとこころの部屋
上田假奈代さん

詩人でもある上田さんは、2003年に大阪・新世界で、人や社会と関わり、アートや表現、学びの場となるカフェ「ココルーム」をオープンしました。2004年にNPO法人化し、2008年に現在の場所に移転。日雇い労働者や生活保護受給者が多い街で、地域住民の男性を“おじさん”と親しみを込めて呼び交流を深めてきた上田さん。しかし極度の高齢化に加え、阿倍野再開発の影響を受けて周辺環境が激変したことにより、カフェに訪れる人の数が減少。
そこで、規模の拡大を決意。今年に入り四季折々の花が咲き誇る庭を整え、4月にゲストハウスをオープン。地域住民や旅行客が交流できる場「ゲストハウスとカフェと庭 ココルーム」として走り始めました。しかし思うように収益が伸びず、上田さんは「いろんなことをやっているけれど、どれもあと少しのところ。」と話します。

プロボノチームはカフェの認知度を上げ、まず集客を伸ばすことを目指して課題を整理しました。「集客」、「魅力向上」、「運営効率化」、「スタッフの活性化」と、4つのテーマに分けてアイデアを出し合いました。それらを一覧表にまとめ、上田さんと意見交換。すぐ取りかかることができる課題から解決に時間がかかる問題、新しい販促グッズの提案まで、さまざまな意見が飛び交いました。

成果報告&交流会

18時頃、ワークを終えたプロボノチーム9組43名と支援先団体の方々が、大阪・梅田にある「Blue+(ブルータス)」に集合。成果物を発表し合い、活躍を称え合うとともに、参加者同士の交流を図りました。今回の活動をねぎらい、まずは全員で乾杯!あちこちで笑顔がこぼれます。

SNSの特徴を分析してPR内容を効率よく拡散

「社会福祉法人ぷろぼの」を担当したチームの成果報告では、「SNSを通して活動をPRしたい」との依頼に、まずはPRのコンセプトを「奈良の地域活性化」、「活動内容の発信」に集約。さらにSNSの活用法を一覧表にまとめました。「ツイッターやフェイスブック、ユーチューブなど、各SNSの匿名性、拡散性、利用者属性、発信方向、ITスキルレベル、コストなどを分析した結果、活動の内容によってどのSNSを使えばいいかをまとめ、成果物を残すことができました。」と発表しました。

報告を受けた事務局次長の田中さんからは、「僕らはどうしても想いをたくさん乗せてしまいがち。今回、プロボノワーカーさんの会議の進め方や考えの整理の方法をそばで見て、とても勉強になりました。会社で実際にやってらっしゃるような会議をそのまま持ってきていただけたことに感激しています。」との言葉をいただきました。

ルールを徹底してカフェの運営効率アップを図る

続いて「NPO法人 こえとことばとこころの部屋」を担当したチームの成果報告です。
同団体の拠点である「ゲストハウスとカフェと庭 ココルーム」の収益向上を目標に、課題解決に取り組みました。焦点を当てたのは、カフェの運営効率化を図るためのルールづくり。「カフェはレンタルスペースとしても活用できるのですが、現在は料金体系が曖昧で、カフェだけど持ち込みOKと、ケースバイケースで対応しているとのことでした。そのような状態だとオーナーの上田さんがいないと判断がつかないことも多いうえ、スタッフ数も2人と少なく、対応が難しくなります。そこでまずはルールを徹底することを決め、リストにまとめました。」と発表しました。

報告を受けた上田さんは、「皆さん高い専門性をお持ちで、枠組みの中で物事を整理したり、組み立てることができました。今回のように提示いただけると私たちも反応できるので、その繰り返しで課題を整理できたと思います。」と手応えを感じた様子。

パナソニックプロボノチームのほかにも、課題をわかりやすく寸劇で披露するチームや、状況整理を書き出した模造紙にイラストを加えて解説するチームなど、それぞれの個性が光り、和気あいあいとした報告会となりました。

初めてでも挑戦しやすいプロボノ1日体験

成果報告会のあとは交流会。開催日が七夕に近かったこともあり、「プロボノ1DAYチャレンジを体験した今の気持ち」を短冊にしたため、笹に装飾。プロボノワーカーの想いがたくさんこもった笹が会場を彩りました。

初めてプロボノワークに挑戦し、「NPO法人 こえとことばとこころの部屋」チームに参加した男性は「新しい発見と新しい出会いの連続。インプットできたことも多く、実りの多い1日でした。」と話しました。

「社会福祉法人ぷろぼの」チームに参加した女性は、「初めは私にできるのかと不安でしたが、対話する中で『ここを大切にしてらっしゃるのかな』という部分を見つけていきながら、なんとか成果物に残せたのでホッとしました。」と笑顔がこぼれました。
短冊に「甲子園の決勝戦!」としたためたという男性は、「この場所に来るためにみんなで努力し合って晴れの舞台に立ったんだ、という思い。勉強になるし自分の成長を実感できました。今回初めて参加して、『だからプロボノという活動が広がっているんだな』と感じました。」と語りました。

NPO法人サービスグラント 嵯峨生馬さん

NPO法人サービスグラント
嵯峨生馬さん

最後に、プロボノワーカーとNPOのマッチング支援を行うNPO法人 サービスグラント代表・嵯峨生馬さんに話をうかがいました。
「プロボノ1DAYチャレンジを始めたきっかけは、海外のプロボノからの刺激です。」とのこと。「半年間など長期にわたり丁寧にやるものもあれば、1日で成果を出すものもあり、多様なプログラムがあります。長期の参加に躊躇する人でも、1日なら負担も少なく参加しやすいと思います。とくに関西は、東京と比べてプロボノ自体がまだ普及しておらず、『忙しいから参加できない』という声も多く聞かれました。1日体験なら敷居が低く、気軽に参加できるのではと感じています。」

日頃の業務で培った一人ひとりのビジネススキルや得意分野が社会貢献につながるプロボノ。今回の「プロボノ1DAYチャレンジ」では、限られた時間の中でNPOの方々の課題に向き合い、チームで創り上げた成果物を発表するという、濃厚で充実した1日を過ごすことができました。
パナソニックはこれからも社員の経験を広く社会のお役にたてるプロボノの取り組みを通じて、NPOの事業展開力の強化を応援し、社会課題の解決促進に貢献してまいります。