復興支援には地元のことを熟知し、幅広いネットワークを持つNPOの存在が欠かせないことを実感 ~パナソニック社員チームが被災地NPOの営業資料作成を支援~

パナソニックは、社員の仕事のスキルや経験を活用してNPOを支援する社会貢献活動「Panasonic NPOサポート プロボノ プログラム」を2011年4月から展開しています。社員のボランティア活動として、社会課題の解決に取り組むNPOの事業展開力の強化を支援し、NPOの活動がさらに大きな成果をあげることを目指しています。
2012年度は、29名の社員が参加し、5団体の事業計画策定や営業資料作成、ウェブサイトの再構築などに取り組みました。そのうちの1団体は被災地で活動するNPOです。現地のニーズにタイムリーに応えるべく、3ヶ月で「石巻復興支援ネットワーク やっぺす」に営業資料の作成を支援したパナソニック社員プロボノチームが、今回のプロジェクトを振り返りました。

現地のリアリティをメンバーで共有

プロジェクトチームのメンバー6名は、いずれも東京、横浜に勤務するパナソニックの社員。
出身が東北、以前から被災地支援に取り組んでいた、普段からNPOの活動に参加している、プロボノというボランティアのスタイルに関心があったなど、それぞれバックグラウンドやプロジェクト参加の動機は様々でした。しかし、会社でプロジェクトの募集があった際に、被災地に寄付をしたりイベントに参加するだけじゃなく、もっと自分にできることがないかと自発的に手を挙げたのは一緒。それでも、メンバー同士が初めて顔合わせをしたキックオフ事前ミーティングでは、意識のバラツキがあったと笑いあいます。

そんな意識のバラツキを払拭したのは、プロジェクトマネージャーである塚島さんが「私が現地に行ってきますよ」の一言で石巻に入ったフットワークの軽さでした。NPOとの顔合わせとなるキックオフミーティングに塚島さんは現地で参加し、他のメンバーは東京で参加するというスタイルでミーティングを実施。それがプロジェクトの一歩を踏み出すのにすごく良かったとメンバーが口をそろえます。
「全員が東京にいるのでは被災地の実情も伝わりにくく、支援先との距離も感じてしまいがちだが、誰か一人でも現地で参加することで、先方との距離がぐっと縮まった気がしました。現地のリアリティがよく伝わったし、その後の方向性がぶれませんでした。」

プロジェクトの進行統括役を務めた塚島さんは、
「こういうプロジェクトに参加しなければ石巻にいくことはありませんでした。3ヶ月で納品というスケジュールのなか、現場にいかなければ何も分からない。早いタイミングで石巻に行き、メンバーからのアイデアで予め質問表を作成し先方に答えてもらいました。仮設住宅などもこの目で見て回り、メンバーと共有するところからスタートしました」と当時を振り返ります。

パナソニック プロボノチーム
塚島 公明さん

支援先は、石巻にある「特定非営利活動法人石巻復興支援ネットワーク(通称やっぺす)」。
「やっぺす」とは、宮城県の方言で、「一緒にやりましょう」という意味です。
石巻市では、東日本大震災で3485名の方が亡くなり、いまだに458名の方の行方が分かっていません(13年11月現在)。「やっぺす」は石巻の地域に根ざしたNPOで、もともと子どもの環境教育や子育て中の親を支援する活動をしていた団体が母体となっています。震災後に「被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト(つなプロ)」の協力を得て、2011年5月に設立されました。

一人一人が復興の担い手となり、誰もが笑顔で暮らすことのできる温もりと活気のある石巻をビジョンに、「子どものリーダー育成」「、女性と若者を対象にした人材育成スクールと社会起業家の起業支援」「子どもや多様な視点を活かすまちづくり」「仮設住宅を中心とする地域全体のコミュニティ再生」「企業研修受け入れ等の現地コーディネート」の5つの事業を展開しています。

今回のプロジェクトは、企業、学校等からの研修、視察、ボランティアの被災地への受け入れ等の「現地コーディネート事業」について、現地の今すぐに必要とのニーズに応え、3ヶ月で「やっぺす」ならではの提供価値のある営業資料にまとめるというものでした。

人との出会いで心が豊かに

塚島さんに続きメンバーそれぞれが現地を訪問し、「やっぺす」の活動を体験したり、協働先にヒアリングを行いました。すると「やっぺす」をはじめ、周りの方々の魅力にひきつけられていきました。メンバーからは、

パナソニック プロボノチーム
浅野 博英さん

「現地に一泊二日で入って、「やっぺす」の若者向けワークキャンプに参加しました。若い大学生10人位とほぼ一日一緒にいて、若い方たちの考え方、被災地に対する思いに触れて心が洗われました。ヒアリング先の企業の方の人間性、行動力にも感銘を受けました。被災地の皆さんは大変な環境を乗り越えていて、その強さ、明るさを短い時間で感じとることができ、こちらがエネルギーをもらいました」

「今回のプロジェクトを通じて出会えた人が、社会的に目的意識の高い方ばかりなので勉強になりました。30分のヒアリング予定もいつのまにか1時間以上に。プロジェクトメンバーをはじめ、今回出会えた人も皆、前向きな人が関わっている。そのエネルギー、ものの考え方、行動にもやらされ感がないので自分が勇気づけられました」

パナソニック プロボノチーム
中南 聡さん

パナソニック プロボノチーム
槇 秀樹さん

「今回のプロジェクトで強く感じたのは、“人の温かさ”でした。地元を良くしたいという主婦の方の“純粋な想い”から始まった「やっぺす」の活動に関わった企業の方にヒアリングをすると、「“戦友”みたいな関係です」と涙ぐみながらの言葉が返ってきました。純粋な想いから始まったものは、人のつながりを生み出し、心を豊かにしていくものだと実感しました。このような人たちの存在がある限り、復興も確実に進み、再び心豊かな社会が形成されると思いました」

「『東日本大震災で被害を受けた人たちの為に何か出来ることはないだろうか?』それがモチベーションでした。仕事が忙しくても少しずつ活動ができるプロボノ活動で東日本大震災関係の支援ができないかと会社での取り組みをチェックし続けていました。巡り会えたチャンスに何か出来ることをしたいと思い、活動に参加しました。
私はこの活動期間中に第2子の出産があり、子どもの方が落ち着いたら、行けなかった東北に足を運びたいと考えています」

との感想が共有されました。

パナソニック プロボノチーム
横山 亮さん

成果物は、「やっぺす」の魅力満載な営業資料

2012年12月末、3ヶ月という短い期間で現地訪問や、すでに「やっぺす」とコーディネート事業の実績がある企業5社にヒアリングを行うなどして、活動実績と成果、提供価値をまとめ、「やっぺす」の魅力を伝える21ページの営業資料を作成し納品しました。

「やっぺす」の方からは、

やっぺす 事務局長
渡部 慶太さん

「営業資料が大活躍しています。団体の強みを活かした資料に仕上がっていて、色使いや写真にも配慮していただいています。しっかりした資料なので企業や学校向けにも安心して説明ができるため、先方からの信頼度が増しているように感じています。現在は、ウェブサイトにも掲載し、13年2月末時点で、約900回見ていただいています。資料以外にも、社員の方々との交流はとても勇気づけられるものでした。真剣に団体のことを考えてくださり、プロジェクトを推進してくださいました。絆のようなものを感じました。今回のプロジェクトは終了しましたが、ぜひまたお会いしたいです」

と、今回の営業資料を早速に活用いただき、手ごたえがあるようです。

営業資料をまとめる役割を担当した金井さんは、
「個人的にこれまでNPOの活動に関わってきたこともあり、その活動がいかに日々の戦いの連続なのか、そして今回のような営業資料を作ることもままならない状況なのはよく理解できます。
今回のプロボノでは、客観的にやっぺすさんの強みを引き出し、これまで関わった沢山の方々の想いを込めた営業資料を作ることを目指しました。それが早速、大活躍していると聞き、NPOと被災地支援のお役に立てたのであれば嬉しい」と話します。

パナソニック プロボノチーム
金井 優子さん

さらに皆が口をそろえるのが、「3ヶ月のプロジェクト期間が短かかった」ということ。でも、「現地のスピード感、すぐにでも必要との声に応えるのが大事なこと」だとも。そして今回のプロジェクトを通して、復興支援には地元のことを熟知し、幅広いネットワークを持つNPOの存在が欠かせないことを実感したと言います。

「被災地の状況を見たら、何かせずにはいられない。これからも何か自分にできることがあったらお役にたちたい。気持ちがあってもなかなか一歩踏み出しにくいところを、このプロボノのスタイルは後押ししてくれました」

3ヶ月間の貴重な体験、感想を共有できるのもプロボノの魅力