子ども分野 選考委員長総評

選考委員長 坪井 節子
社会福祉法人 カリヨン子どもセンター

Panasonic NPOサポート ファンド 子ども分野の選考委員長として、2013年度組織基盤強化助成の審査を行わせて頂きました。
今回の審査は、2011年に組織診断助成を受けて、2012年に組織基盤強化助成を受け、2年目に継続して助成を受けることが希望する3団体、2012年に組織診断助成を受け、今年組織基盤助成の1年目を受けることを希望する5団体について、審査を行いました。いずれの法人も、外部のコンサルタントを導入し、グループコンサルティングコースまたは個別コンサルティングコースに参加して、組織診断を行い、その結果に基づき、組織基盤強化に乗り出した、あるいは乗り出そうとしている法人です。

選考委員4名は、事前に各団体から提出された中間報告書(2年目の団体)または組織診断結果報告書(1年目の団体)と、組織基盤強化計画書の書類審査を行いました。それぞれの団体が、組織診断を受けることにより、自分たちが抱えている課題を把握し、課題解決のために次のステップに乗り出そうとしている意欲と、現実の変革が報告されており、この助成金が目的に沿って使われ、成果を挙げていることがわかり、うれしく思いました。
ただ、これは毎回の審査の度に感じることですが、課題が明確に把握できており、何をすべきか、何をしたいかについて掘り下げられている団体ほど、報告書の内容が簡潔でわかりやすいものとなっています。自分たちがしっかり理解していない中身は、人には伝わらないという当然のことなのですが、ともすると、とにかく資金集めをしなければならないNPO活動においては、資金獲得が第一目的となってしまって、申請内容が辻褄あわせになってしまうという落とし穴に陥りがちです。そうすると、いろいろ盛り込み過ぎとなって文章がごたつき、用語に不統一が生じ、論理矛盾も生じて、結局何が本旨なのかよくわからない申請になってしまう危険があるのですね。私自身も、助成金申請をする側にいることが多いわけですが、そのような申請は、結局却下されてしまうのだということを、審査側に回ってみて、痛感するようになりました。
皆様も、これからも様々な助成金申請をなさると思いますが、その際には、当該助成金の目的をよく理解し、自分たちの団体が必要としていることかどうかを判断して、自分たちのニーズをしっかりと審査員に伝えられる申請書を作成されることをお勧めします。

さて選考委員会では、書面審査で一応の目途をつけ、疑問点を整理したうえで、6月11日の1日を使って、各団体から、パワーポイントを使って、プレゼンテーションをして頂きました。短時間でプレゼンテーションをするという機会が増えているのでしょうか。皆さん、とても要領よくまとめておられると感心しました。書面ではわからなかったり、疑問だったりしたことも、説明を受けてよく理解できたことが多々ありました。また逆に、質疑応答を通じて、書面に書かれていたことが、実は問題含みであったことが判明したということもありました。時間はかかって大変ではあるけれど、対話を行うことの大切さも、あらためて感じた審査でした。

いずれも組織診断を受けて、組織基盤強化に乗り出すという経過を辿っている団体ですので、本助成の趣旨をよく理解し、団体内部を根本から見直そうという決断をされているところばかりでしたから、助成金に限度がなければ、どこも次のステップを応援したいという思いになりました。どうしても選考しなければならないということが残念に感じられたほどです。

2年目に応募された3団体については、ほぼ当初の計画どおりに基盤強化が進んでおり、そのために変革が起きているということを、それぞれが実感されていました。是非最後までやり遂げて頂きたいという願いをこめて、いずれも継続して助成をするということになりました。1年目に挑戦された5団体については、診断結果の把握がいまだやや甘く、次の基盤強化の段階へ進む前に、今一度団体内部で深化させる時期ではないかと思われた団体、今回の計画による施策の効果が、どれだけ組織や事業の維持継続に寄与するのかが疑問であった団体について、助成を見合わせ、基盤強化の成果が期待できると考えられた3団体への助成を決定しました。ただし助成をした場合でも、計画の内容についてはかなり厳しく審査させて頂き、申請された金額に対し、本当に必要と思われる施策に絞って助成をするという決定をしています。助成を受けられて皆さんが、どうか事務局の強化、運営体制の見直し、中長期目標の設定、ステークホルダーとの関係構築などを通じて組織基盤を強くし、活動の維持発展の新たな一歩を踏み出されますよう、願います。

2013年の新規助成募集は、最初から組織基盤強化助成として行われるとのことです。必ずしも組織診断を前提とするのではなく、もう少し間口を広くして、いろいろな団体が応募しやすくするという趣旨とのことです。ただこの2年間審査をさせて頂いた経験から、組織診断を受けるということの重要性、つまり自分たちだけでは、なかなか組織内の問題点には気づかない、本当に変革をするためには、外部からの客観的な意見が必要だということがよくわかりました。日本のNPO活動が、個人の思いや情熱だけではなく、持続可能な組織として、子どもたちの健やかな育ちを応援することができる活動として成長できるよう、これからも本助成の趣旨を理解し、たくさんの団体が応募してくださることを願っています。

<選考委員>

★選考委員長

坪井 節子

社会福祉法人カリヨン子どもセンター 理事長 ★

坂口 和隆

特定非営利活動法人 日本NPOセンター 事務局次長

森本 真也子

特定非営利活動法人 子ども劇場東京都協議会 常任理事

山口 大輔

パナソニック(株)ブランドコミュニケーション本部 CSR・社会文化グループ
事業推進室 室長