環境分野 選考委員長総評

選考委員長 佐藤初雄
(特定非営利活動法人
国際自然大学校 理事長)

この度、選考委員長の大役を務めさせていただくことになりました特定非営利活動法人国際自然大学校理事長の佐藤と申します。よろしくお願いします。
さて、私自身も自分の組織を設立してから30年が経過し、組織運営に関しましては、これまでにも、いや今でも様々な課題を抱えつつ運営をしています。したがって、組織を立ち上げて間もない頃の苦労や課題も本当に昨日のごとく蘇ってきます。
現代社会の中で、NPOの存在は今やなくてはならない存在です。そのNPOの組織基盤が強化され大いに活躍できる組織になることは、社会にとっても望ましいことだと考えます。そのNPOの活動内容は様々ではありますが、組織を運営することはかなりの部分で共通するものです。今回の助成事業の審査にあたり、応募されたひとつひとつの組織の状況や思いを手に取るように理解しながらの審査となりました。
その審査の過程で、私自身が気づいたことをいくつか述べたいと思います。

1.客観的に見る

よくありがちなことですが、新たにNPOを設立する際、ときに設立者の想いが先行し、独りよがりの団体になりがちです。いわゆる自己満足型の組織で、社会にとって有益な活動とならないことがあります。その意味で、自分が興味関心のあることはとても重要なのですが、それと同時にその活動が社会や地域が抱えている問題の解決に繋がっているか否かという視点で考えてみる必要があります。
このようなことにならないようにするためには、第三者に考えている内容や構想を聞いてもらうことも大切でしょう。あるいは、地域的な課題であるならば、当然地域の方々にも意見を聞くということも重要になってきます。
さらに、活動する内容が専門的なことであれば、同様に専門的立場にいる人の意見を聞くことも大切なポイントになると思います。

2.自分たちの組織の状況を知る

私自身もかつてそのようなことがありました。どうしても、活動を中心に行動しますから、組織的な視点で物事を考えることが後回しになってしまいます。まずは活動ありきですから。その活動を社会の役立つものにできれば、活動の数を多く増やしていきたいと思うのは誰しもが思うことです。活動を一緒にしてくれる人、そうした活動場所を確保すること、そして、最も難しいと思われるお金を如何に手配し調達をするかなど、やらなければならないことが山積しています。
そのようなことを考えれば、組織のことまで考える余裕などありません。しかし、よく考えなければならないことだと3年もすれば分かってきます。それが組織のことなのです。つまり、その活動を一回だけやって終わりならいいのですが、その活動を持続的に行うためには、その活動を支えるための仕組みが必要となります。組織をより強固なものにし、その結果、より充実した活動が展開できるようになるための事業です。この助成プログラムの目的はまさにここにあります。
そのためには、自分たちの組織の現状がどのようになっているのか。また、より良い組織にするためには何処に課題があるのかといったことをきちんと分析することが必要となります。まずは、その分析がきちんとできなければ、その先にある解決先を考え、さらに、実行することはできません。最も重要なポイントになります。

3.環境分野であることの確認

実は、「環境」という概念は非常に広いもので、ある意味、その解釈は人によって違いがあるのも事実です。
しかし、本助成事業は、環境分野と子ども分野に絞られている以上、一般的な概念とも照らし合わせてどうであるか、または、実際の活動が環境という視点で見たときに、きちんとその枠の中にあり、他者にも説明がつくものであるか等の観点で確認してみることは大切なポイントです。
今回の審査においても、この点での議論がありとても難しい判断を迫られたこともありました。選考委員長としても判断に迷うような状況でもありました。
いずれにしても、こうした枠組みがある以上しっかりと確認をしていただきたいと思います。

以上が私の気付いたことですが、この他にも、例えば、申請書の書き方が不十分であるものもありました。せっかく良い活動をされているのだろうと思うのですが、残念ながら申請書に書かれていることが私たちに伝わらない。これも、ある意味一人よがりになってしまっているために、第三者に伝わらない内容になってしまっているのです。この点も指摘しておきたいと思います。
このような点をしっかりと確認していただくための「組織基盤強化ワークショップ」も全国で開催されています。申請をする、しないに関わらず、一度、自分たちの組織がどのような立ち位置にあり、どのような状況にあるのか、そして、どの方向に向かえばいいのかということを確認する意味でも参加されることをお勧めします。

<選考委員>

★選考委員長

佐藤 初雄

特定非営利活動法人 国際自然大学校 理事長 ★

粉川 一郎

武蔵大学 社会学部 メディア社会学科 教授

木村 真樹

コミュニティ・ユースバンクmomo 代表理事

冨田 勝己

パナソニック(株)モノづくり本部 環境・品質センター
環境経営推進グループ 環境企画チーム 次長