本年度、アフリカと日本の関係を大きく変える出来事がありました。8月にケニアのナイロビで開催された「第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)」です。TICAD史上初めてアフリカで開催された首脳会議には、安倍総理や、70人以上の日本企業トップを筆頭に、合計11,000人が参加しました。まさに破格の規模で行われたTICAD VIは、良くも悪くも、これからの日本とアフリカの歴史のスタートラインとなることでしょう。
今回のTICADの主要なテーマは、「産業化」「保健」「社会の安定」の3つでした。「産業化」は、女性や若者の社会への統合や職業訓練、企業の社会的責任に関する啓発や提言活動など、NPO/NGOに関係する様々な事業を含みます。また、「保健」や、紛争予防・平和構築などを旨とする「社会の安定」については、NPO/NGOはまさに主人公です。TICAD VIをスタートラインとする、日本とアフリカの新しい歴史においては、日本とアフリカのNPO/NGOがもっと大きな役割を果たすことになるでしょう。
アフリカについて取り組む日本のNGOは合計100団体以上、アフリカで事業を展開しているNGOも40団体に上ります。しかし、日本では、「アフリカは遠い」「自分とは関係がない」という認識が一般的で、日本のNGOのアフリカでの活動についても、あまり知られていないという実情がありました。「Panasonic NPOサポート ファンド for アフリカ」は、アフリカで活動するNGOに焦点を絞った、日本唯一のファンドとして、アフリカで取り組むNGOの広報基盤の強化に的を絞り、NGOが自ら、アフリカでの活動をしっかり社会に伝えていく能力を強化するために、これまで7年間、支援を行ってきました。その結果、ファンドの助成を受けた多くの団体が、自分たちの活動を社会に広く伝えられるようになっています。
今回、NPOサポート ファンド for アフリカには、合計13団体からの応募をいただき、選考委員会の審査を経て、4団体が採択されました。日本キリスト教海外医療協力会(JOCS)、日本口唇口蓋裂協会の2団体については、今回から新たに助成開始となります。また、コモンニジェール、ウォーターエイドジャパンの2団体については、以前からの継続助成となります。
TICAD VIでは、「保健」が主要テーマの一つとなりました。今回助成の対象となった団体のうち、3つが、保健や、その隣接領域としても非常に重要な、水・衛生をテーマとしています。本年から実施に移された開発・環境・経済の世界目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」では、「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」の考え方に従い、「保健」の中身が大変包括的なものになりました。アフリカの保健や水・衛生課題は、MDGsでかなり改善されましたが、それでも、まだまだ深刻です。日本のNGOのより積極的な取り組みが期待されます。
「国内でも困っている人がいるのに、なぜアフリカか」という声も、よく聞かれるようになっています。アフリカの厳しい現実と、明るさとともにそれに取り組む現地の人々、人間中心の開発に協力する日本のNGOの姿を、より効果的に日本に伝えることが必要とされています。NPOサポート ファンド for アフリカの支援によって、アフリカにかかわるNGOが、アフリカの課題と魅力を日本に伝え、日本からのアフリカ支援の輪が広がっていくことを切に願っています。
<選考委員>
★選考委員長
稲場 雅紀 |
特定非営利活動法人 アフリカ日本協議会 国際保健部門ディレクター ★ |
加藤 昌治 |
株式会社博報堂 PR戦略局 部長 |
定松 栄一 |
特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター(JANIC)事務局長 |
福田 里香 |
パナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部 CSR・社会文化部 部長 |
アフリカ分野選考委員長
稲場雅紀