組織基盤強化フォーラム

目指す組織の姿から考える財政基盤強化

サポートファンドの贈呈式のあとには、日本NPOセンターとの共催で、「組織基盤強化フォーラム」を開催しました。141人が参加し、NPO/NGOの財政基盤の強化について、講義や2団体からの事例発表、パネルディスカッションを通して学び合いました。

●基調講演

NPO/NGOの財政基盤強化とは

NPO/NGOの組織基盤とは、積荷(個々のプロジェクト)を運ぶ船や信頼を支える幹のようなものです。外からはよく見えないし、本人たちも見たくない。また、ドラッカーは受益者と支援者からの信頼が必要だと言いましたが、加えて、広く市民からの信頼も得なくてはいけません。それは未来の受益者や支援者につながるからです。

NPO/NGOの収入構造は、支援性(寄付・会費)・対価性(サービス)/内発的(自助努力で確保)・外発的(特別な大口の資金)という二つの軸で考えられます。多くの団体は内発的・支援性財源から始まりますが、成長によって多様化していきます。この軸を使って自分たちの団体を位置づけすると自己組織診断ができます。
この20年で、NPO/NGOが社会的課題を解決する力はつきましたが、2020年代は、社会的価値を創造する新しい運動性が求められてくると思います。そのためには長期的な視点に立ち、5、6年後のソーシャルインパクトまで考えた財務基盤強化が必要になってきます。

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市民社会創造ファンド 理事長、
日本NPOセンター 顧問 山岡義典さん

●事例発表

寄付額は約3000万円まで増え、200以上の学校と連携

1999年から、子どもを貧困や差別から解放する国際協力事業と、国内の子どもに「自身が変化を起こす担い手であること」を伝える活動を続けてきましたが、広報力に課題を感じ、2011年から3年間、組織基盤強化の助成を受けました。外部の方の組織診断を経て、1年目は事務局の業務体制の見直し、2年目はターゲットに合った支援メニューづくり、3年目は広報ツールの見直しに取り組み、現在は寄付額も755万円から約3,000万円に増え、200以上の学校と連携しています。社会的価値の創造へのチャレンジとして、3月下旬には、社会貢献活動をした子ども2,000人を招待する「WE DAY」というイベントを開催予定です。これからも、子どものエンパワメントに力を注いでいきます。

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フリー・ザ・チルドレン・ジャパン
代表理事 中島早苗さん

財政構造の転換を図り、収入も倍増

高知県黒潮町で、砂浜でのTシャツアート展や公園の指定管理、ケーブルテレビの番組制作、観光プログラムを実施しています。地域の4団体が統合したNPOで、組織基盤もミッションも不明確だったため、2001年から3年間、組織診断と組織基盤強化の助成を受けました。地域への浸透と財政構造の転換、人材管理に取り組み、収入の70%近くが委託事業費だった状態から、昨年度は事業収入が50%まで増え、当初約1億円だった収入も現在は約2億円に倍増。Tシャツアート展も、行政とNPOで話し合いながら事業を進めた結果、事業収入と委託料収入と協力金収入がきれいに3分の1ずつになりました。地域にあるものに価値を見出し、課題解決にもつなげていけたらと思っています。

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NPO砂浜美術館
理事長 村上健太郎さん

●パネルディスカッション

目指す組織の姿から考える財政基盤強化

コーディネーターの吉田事務局長の様子
中島 早苗さんのパネルディスカッションの様子
村上 健太郎さんのパネルディスカッションの様子

事例発表後には、日本NPOセンターの吉田事務局長のコーディネートのもと、事例発表いただいたお二人とともにパネルディスカッションが繰り広げられました。
また活動の内容や財政基盤規模も全く違う二つの団体が、基盤強化助成で学んだことや、その後の収入の状況などを詳細にプレゼンしてくださったことを受けて、会場からお二人にたくさんの質問もありました。

フリー・ザ・チルドレン・ジャパンの中島早苗さんは「3年おきに、中長期計画として5年後の姿を見据えた数値目標を立てています」と話し、会場からの「(財政基盤強化のカギとなった)学校や企業とのつながりをどうやって増やしたのか?」との質問には、「コンサルタントの方と一緒に作った学校・企業向けのパンフレットを持って営業に行き、団体のことが学校の教科書に載っていることや出張授業ができることなどをアピールしました」と答えました。

さらに、砂浜美術館の村上健太郎さんは「多様なステークホルダーの輪づくりの工夫」として、地域に根付かせる取り組みとしての学校での授業について「熱心な学校の先生が異動しても継続して参加してもらえるように、Tシャツアート展への参加を黒潮町の小学4年生の教育プログラムに組み込んでもらいました」と話しました。

会場からは「事務局スタッフの働き方」に関する質問も寄せられ、中島さんは「その人の特性に合った業務を任せることと、妊娠・出産した女性が自宅でもできる働き方を心がけています」と発言。一方、「県外から移住した30~40代のスタッフが多い」という村上さんは「採用の際は、砂浜美術館の可能性や夢を見せることと待遇を明示することを心がけています。平均年収も助成前より30万円ほど上がっています。」と財政基盤強化の成果を語りました。

今日のフォーラムは、山岡さんによる「NPO/NGOの財政基盤の強化」に関する整理された講演と、実際にサポートファンドの助成を受けて5年以上が経過している2団体の事例発表、さらにパネルディスカッションによる深掘りで学びの多い一日となりました。

写真:パネルディスカッションの様子