Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs贈呈式

選考委員の言葉から見えてくる、NPO/NGOに求められるもの

2020年1月23日、東京都有明のパナソニックセンター東京で、2年目となる「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」の助成が決まった24団体と、今年度が最後となる「NPOサポート ファンド」の継続助成が決まった6団体の皆様への贈呈式を行いました。贈呈式では、来賓に外務省 国際協力局 地球規模課題総括課の吉田課長様をお迎えし、選考委員長による選考を振り返っての総評と、助成先の各団体に助成通知書をお渡ししました。

●来賓祝辞

日本らしい、さらなる活動のインスピレーションに

2015年に採択されたSDGsの概念は少しずつ国民の皆様の間に定着・浸透してきました。国連はあるべき姿から程遠いとしてSDGsの進捗に危機感を表明しており、政府としても、2030年までをSDGs達成に向けた「行動の10年」とすべく、昨年12月にSDGs推進の中長期戦略である「SDGs実施指針」を改定しました。日本の持続可能性は世界の持続可能性と密接不可分との認識のもと、日本らしい取り組みを促進していくことをビジョンの中心に据えました。皆様の活動が更なる活動のインスピレーションとなることをお祈りしています。

写真
外務省 国際協力局
地球規模課題総括課長 吉田綾 様

●選考委員長による総評

Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs

【海外助成】
助成をテコの支点として社会課題の解決を

今年度は日本でG20が開催され、市民社会組織もC20を開催しました。募集に際しては、事務局スタッフが全国6カ所で説明会とワークショップを開き、海外助成には36件の応募がありました。うち30件が新規と昨年度を大きく上回る応募をいただきました。資格審査、書類選考、選考委員会を経て13団体がヒアリングに進み、12団体に助成が決まりました。うち継続の2件は、組織内の個人の能力を高めることと国内の組織のネットワークづくりに取り組みます。新規は10件中9件が、まず組織診断を受けてから組織基盤強化に取り組みます。助成団体の財政規模は約3,000万円、設立年数は24年程度でした。今回の助成をテコの支点として、大いに組織基盤を強化し、社会課題を解決していただければと思っています。

写真
国士館大学大学院
グローバルアジア研究科 教授 中山雅之さん

【国内助成】
制度からこぼれる貧困に取り組む多様な団体が応募

2000年代に入って社会的格差の拡大が顕著になったことを反映し、多様な団体から応募がありました。選考の際は、より排除された分野であり、地域で評価され、マイノリティの支援であって、地方での地道な取り組みであることを重視しました。貧困には経済だけでなく、関係性の貧困も含む広い意味合いがあり、社会的な排除ともからんでいます。今回選ばれた団体のテーマは、外国にルーツをもつ子どもの支援、LGBTが生きやすい社会づくり、長期入院する精神障害者の権利擁護、孤立する妊婦と遺棄される赤ちゃんの支援などさまざまで、制度からこぼれる貧困に独創的な方法で取り組み、問題提起していることを感じました。社会問題を解決する力をもち、持続性のある団体のますますの成長を願っています。

写真
放送大学 客員教授・名誉教授、
千葉大学 名誉教授 宮本みち子さん

Panasonic NPOサポート ファンド 継続助成

【環境分野】
人と身近な自然の関係性を再構築する2団体に期待

私自身も、この助成に助けられた団体の一人です。環境分野は今年度が最後でしたので、すでに組織診断を終えて組織基盤強化に取り組んでいる応募団体の申請書には重みがありました。近年は高精度でリアルタイムな地球規模の環境変化を見られる一方で、足元の草花や昆虫の名前を認識できない人も増えています。環境の問題は関係性の問題だといわれます。人と身近な自然の関係性を新しい仕組みで再構築しようと取り組んでいる今回採択された2団体には期待しています。環境団体の組織基盤強化は人や環境の生存基盤の確立にもつながると思っています。

写真
特定非営利活動法人
ホールアース研究所 代表理事 山崎宏さん

【子ども分野】
子どもが生き生きと暮らす環境づくりがNPOの仕事

今年度の継続助成は、目の前の子どもの課題解決と同時に、どんな社会を目指すかを見据えた3団体に決まりました。日本の子どもたちの前には経済・時間・人・機会の格差が横たわっています。子どもたちは幼い頃から塾やスポーツ教室で遊ぶ時間がありません。世界的に見ても、日本は子どもに文化芸術体験をさせる機会も予算もまだまだ少なく、文化体験の貧困があります。子どもは地域で生きています。地域で子どもが生き生きと暮らせる環境やシステムをつくることが、市民社会をつくるNPOの仕事だと思っています。

写真
子どもと文化全国フォーラム 代表理事、
子ども文化地域コーディネーター協会
専務理事 森本真也子さん

【アフリカ分野】
求められる、ビジネスと人権に焦点化した取り組み

2019年、TICAD7(第7回アフリカ開発会議)が横浜で開催されました。ビジネスや科学技術による経済成長の話が中心となる一方、歴史や文化、社会課題に十分な光が当たらなかったと感じています。アフリカでは、この10年で4人と1団体がノーベル平和賞を受賞。これは、アフリカが輩出する多数の優れた人材の存在と共に、貧困や格差、紛争の深刻さをも象徴しています。「経済成長」の裏側で深刻化する環境汚染や紛争、人権侵害や、「ビジネスと人権」に焦点をあてた取り組みが必要です。その意味でも、今年度継続助成が決まった「ダイヤモンド・フォー・ピース」の活動は先駆的です。

写真
アフリカ日本協議会 国際保健部門ディレクター、
SDGs市民社会ネットワーク 政策顧問
稲場雅紀さん

選考委員長の総評のあとは、パナソニックの参与・ブランドコミュニケーション本部の竹安本部長より、30団体の代表者に助成通知書を贈呈しました。
贈呈式の後には、引き続き、財政基盤の強化をテーマに「組織基盤強化フォーラム」「懇親交流会」を開催し、学びと交流を深めた一日となりました。

写真:助成通知書贈呈の様子