プロボノフォーラム TOKYO 2014 - 世界で、日本で、進化を続けるプロボノ

2014年10月21日、東京・渋谷のヒカリエで「プロボノフォーラム TOKYO 2014」を開催しました。
プロボノとは「公共善のために」という意味のラテン語で「仕事の経験やスキルを活かした社会貢献活動」のことです。今年2月にサンフランシスコで行われた「グローバルプロボノサミット2014」では、世界15カ国の取り組みが紹介されるなど、プロボノはグローバルな広がりを見せています。

中でも10月18日~26日の「プロボノウィーク」には、世界各国でプロボノをテーマとしたイベントが繰り広げられています。パナソニックが、NPO法人 サービスグラントと共催するプロボノフォーラムも、その一環です。10月18日には大阪でも開催し、会場には東京とほぼ同じ約120人が訪れ、関心の高さをうかがわせました。

日本では「プロボノ元年」といわれた2010年以降、東京・大阪などの大都市を中心に、6カ月を基本とするプロボノプロジェクトが実施されてきましたが、ここ数年の間にプロジェクトのスタイルは多様化し、地方へも浸透しつつあります。「プロボノフォーラム TOKYO 2014」では福島、鳥取、佐賀での事例を取り上げながら、プロボノのさらなる可能性について考えました。

【福島】 パナソニックの社員23人が福島へ 1泊2日の「プロボノ TO ふくしま 2014」

パナソニックは7月下旬に、社員23人がプロボノワーカーとして福島を訪問し、5団体を応援する「プロボノ TO ふくしま 2014」を一般社団法人 ふくしま連携復興センター、サービスグラントと協働で実施しました。プロボノチームは各団体の要望に応じてWEBの活用、資金調達、営業資料の作成など、さまざまな課題に取り組みました。
フォーラムでは、一般社団法人 手づくりマルシェとNPO法人ビーンズふくしまをサポートした2チームが取り組み内容を発表しました。

始まったばかりの「ふくしまの市」活性化に挑む

手づくりマルシェは、福島の農産物やスイーツを販売するイベントの企画などに取り組む団体です。そのサポートに向かったプロボノチーム4人は普段、WEBのシステム開発や新しい商材の販売促進、産業用ロボットのプログラム作成などに携わっています。
団体からの福島の農産物や手づくり品を販売する「ふくしまの市」の認知度を高めるWEBページを設計してほしいとの要望に、プロボノチームは、WEBページだけでは効果が十分ではないと考え、彩り豊かな食材がよく伝わるチラシやフェイスブックのアカウントを作成。すべてに新しい情報を加えて、団体内で更新できる状態にして納品しました。

さらに福島市のキャラクター“ももりん”を活用することや、商品のネーミングを工夫すること、「ふくしまの市」の開催場所・日時を固定化することを提案しました。その結果、8月24日に2回目を迎えた「ふくしまの市」は大勢の人でにぎわい、その後、福島駅近くの中合ツイン広場で毎月第4日曜日に定期開催することが決定しました。

発表後、4人はプロボノの感想を語り合いました。

プロボノチーム 山崎 英明さん

行くまでは、福島は暗い雰囲気に包まれているのではないかと思っていたという山崎さんは、「実際は皆さん、明るく前向きに活動されていた。イベントですぐ完売になるスイーツや新商品など、おいしいものをいただいて場はさらに盛り上がった。“福島のみんなのために”という目的意識をもっていることが元気の源なのだと思う」と振り返りました。

安元さんは“福島で目からウロコだった体験”について、「団体の皆さんと交流し、いろいろな方が、それぞれの立場から活動に取り組まれていることを知った。福島での経験一つひとつが今まで自分の中にはなかったことで、もっと広い視野で物事を見なければいけないと感じた」と話しました。

プロボノチーム 安元 隆さん

プロボノチーム 土井 祐司さん

一方、土井さんは反省点として、「事前に2回打ち合わせをしてメールでもやり取りをしたが、メンバー間のスキルをもう少し前にわかっていれば、お互いに頼めることをお願いし合って準備を進め、もっといいものが完成していたかもしれない」と、つけ加えました。

そして吉原さんは、これからプロボノを始めようと考えている会場の参加者に向けて、「普段、当たり前に行っている業務や自分の趣味まで活かせて、それが人の役に立つことを実感できて、みんながハッピーになるプロボノは、もっと多くの方が参加する価値のある取り組み。1度参加すれば何かが変わります」とメッセージを送りました。

プロボノチーム 吉原 希さん

手づくりマルシェ
代表 齋藤幸子さん

会場には、福島から手づくりマルシェの齋藤代表がお見えになり、
「実はプロボノワーカーの中には、事前に2度も私たちのイベントに足を運び、熱心に隠密取材をしてくださった方もいます。そして迎えたプロボノ当日はとても暑い日でしたが、狭い部屋にひしめき合って熱い時間を共有することができました。皆さん、短い時間の中で手際よく作業され、こうして完成したWEBページとチラシを活用しながら、これからも『ふくしまの市』を全国にPRしていきます。プロボノで支援していただいた福島の団体の皆さんを代表して御礼申し上げます」と、壇上で感謝の気持ちを表しました。

【鳥取・佐賀】 東京・大阪から地方を応援する「ふるさとプロボノin鳥取」 県とNPOが協働でプロボノを導入「プロボノSAGAスタイル」

鳥取県では、サービスグラントが一般財団法人 とっとり県民活動活性化センターと協働で「ふるさとプロボノ」に取り組んでいます。これは東京や大阪のプロボノワーカーが地方のまちづくりや課題解決をサポートする3~6カ月のプログラムです。

また佐賀県では、NPO法人 さが市民活動サポートセンターが県と協働で県内のNPOを事前に調査してニーズを探り、2年ほどの間にプロボノを根づかせてきました。その一つNPO法人 佐賀県難病支援ネットワークをサポートしたプロボノチームは団体の営業資料を作成後、「難病サポーターズクラブJAPAN」を自主的に結成。その動きは他県にまで波及しています。

人が変わり、行動が変わり、地域に活気が生まれる

フォーラムの最後に、ゲストの地域プロデューサー本田勝之助さん、「プロボノSAGAスタイル」に取り組む、さが市民活動サポートセンター理事の中村直子さん、進行役としてサービスグラントの嵯峨生馬さんが登壇し、会場からの質問に答えました。

サービスグラント 嵯峨生馬さん

地域プロデューサー 本田勝之助さん

さが市民活動サポートセンター
中村直子さん

地域のマネジメントが専門で、現在25の地域で製品やサービスのプロデュース、人材育成などを手がけている本田さんは「地域の活性化とは何か」との問いに、こう答えました。
「地場産業の衰退に悩んでいる地域には『俺の代で終わるからいいんだ』との考えの人も多い。そんなときは『子どもたちにとって誇れる地域にしたくないですか』と投げかけます。そして『そりゃそうだよ』と熱く返してくる人と一緒に考えていくことにしている。今、誰と引き合わせることが最善なのかをコーディネートするのが私の役割。今日の皆さんとの出会いも、どこかの地域の課題解決へとつながっていくかもしれません」

続いて中村さんが「地方にプロボノを根づかせるコツ」を伝授してくれました。
「自分のスキルに気づいていない人も多いので、具体的な事例を示すことでプロボノに一歩踏み出していただくようにしている。また、外部のプロボノワーカーを受け入れるときは壁ができないように、地元をよく知る住人への根回しが必要。誰かから刺激を受けることで人が変わり、行動が変わり、地域に活気が生まれる。地方の皆さんもぜひプロボノに挑戦してください」

多彩なスキルをもつ社会人が集まる都心部に比べ、プロボノワーカーの確保が難しいとされてきた地方ですが、少子高齢化に伴い解決すべき課題はむしろ都心部より深刻です。福島、鳥取、佐賀の事例は、地方でプロボノを実践する際の大きなヒントを与えてくれると共に、プロボノによって日本じゅうを元気にできる可能性を感じさせてくれました。