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パナソニックは2014年7月25日と26日の2日にわたって、社員23人による被災地支援プロボノプログラム「プロボノTOふくしま2014」を実施しました。
このプログラムはNPO法人 サービスグラント、一般社団法人 ふくしま連携復興センターとの共催により実現したものです。今回は関東を中心に、関西、山形、山梨から社員の参加がありました。2日間にわたるプログラムの模様をご紹介します。
プロボノとは「公共善のために」を意味するラテン語に由来する言葉で、「社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや専門的知識を活かすボランティア活動」を意味します。
「プロボノ TO ふくしま」では、福島県内で復興支援に取り組む5団体が抱える課題にプロボノワーカーが取り組みました。
NPOの活動への思いに触れ、意見交換を重ねた1日目
25日は朝8時に東京汐留に集合し、貸切バスで出発。13時頃、JR福島駅に到着しました。
ここで支援先のNPOの皆さんと合流し、それぞれのチームに分かれ、各団体の事務所へ向かいました。
プロボノワークの冒頭では、支援先団体のスタッフとプロボノワーカーそれぞれが普段の仕事やプロボノに参加した動機などについて自己紹介を交わしました。
続いてプロボノチームのメンバーは、「企業が支援できることを具体的に挙げてほしい」「現状を維持したいだけでは寄付は集まらない。そのお金で成し遂げたい夢は何ですか」などと意見や質問を織り交ぜながら、団体からの要望・ニーズ・期待にじっくり耳を傾けました。
その後、ヒアリングした内容をもとに、プロボノチームのみでまとめ上げた「成果物の素案」は、団体の反応や意見を受けてブラッシュアップされ、3時間ほどの間にみるみる完成度を高めていきました。
プロボノワーク終了後は、バスで二本松市へ移動し、木幡山 隠津島神社の参宿所にてメンバー同士の親交を深める懇親会をもち、地元の野菜をふんだんに使った料理で歓迎を受けました。
夜は、人と自然をつなぐ体験プログラムを提供している「きぼうのたねカンパニー」のコーディネートで、チームごとに分かれ、東和地域の農家に泊まりました。都心では味わうことのできない満天の星空を眺めたチームもあれば、宿泊先の家族と酒を酌み交わしながら語らったチームもあり、それぞれが“福島の夜”を満喫しました。
ウォーミングアップを重ね、迎えた報告共有会
26日は午前中から二本松市市民交流センター・大山忠作美術館に移動し、チームごとに分かれて成果物の仕上げに取り組みました。
そしていよいよ13時からは、今回のプロボノワークを振り返り、成果物を発表する「報告共有会」が開かれました。各チームによる成果物の発表、支援先団体からのコメント、会場との質疑応答という順に進められました。
初めにサービスグラント 代表の嵯峨生馬さんが、これまでの経緯を説明しました。
サービスグラント
嵯峨 生馬さん
「今日に至るまでに私どもは支援を希望する団体を募り、事前のヒアリングでニーズを調査してきました。そして7月2日のプロボノワーカーを対象にしたオリエンテーションでは、プロボノワークの進め方や支援先団体のニーズを説明し、そこからチームに分かれてのディスカッションが始まりました。支援先との質疑応答はメールベースで行われ、出発1週間前の勉強会では、ふくしま連携復興センターさんから福島県の復興の状況などもご説明いただきました。オリエンテーションや勉強会の機会、そしてメール等を通じてチームビルディングを行い、支援先NPOの事前調査を進めながら、一泊二日のプログラムを迎えています」
仕事の経験を役立てたい社員の思い 2011年のプログラム開始から100人以上が実践
パナソニックからは、CSR・社会文化グループ 室長の乾とし子が挨拶をしました。
「パナソニックは、仕事で経験したことを社会課題の解決に役立てたいという社員の思いを形にするために、2011年から「Panasonic NPOサポート プロボノプログラム」を開始し、今回を含めて100人以上が参加する大きな取り組みに成長しました。東日本大震災以後の被災地でのプロボノの取り組みは2012年に石巻復興支援ネットワークの営業資料作成や、2013年にサンガ岩手のマーケティング基礎調査を4、5カ月にわたって支援しました。今回は初の福島県で1泊2日という新しいスタイルでのプロボノにチャレンジしました。短期集中型のプロボノでどんな成果をあげられたのか、発表が楽しみです」
パナソニック
乾 とし子
各チームの取り組み発表
若者がボランティアのメリットを感じるチラシ
「NPO法人 ふよう土2100」チーム
「ふよう土2100」は郡山市やいわき市を拠点に活動する団体で、郡山市では、自閉症や発達障害の子どもと家族の居場所づくりをしています。情報発信がうまくいかず、ボランティアが集まらないのが課題で、プロボノチームに「ボランティア募集」のチラシづくりを依頼しました。
プロボノチームは、「子どもたちと体を動かして遊べる人」ということで、ターゲットを若者に絞りました。発表の冒頭では、学生課に来た大学生がボランティア募集のチラシを見て「うさん臭い団体ではないか」「自分が役に立てるのか」と悩む様子を寸劇で披露。若者がボランティアに参加しようとしたとき、どんなことが障壁になるのかを表現しました。
「作成にあたっては、ボランティアをすることのメリット、誰がどんな活動をしているのか見えるようにする、目を引くチラシであることの3点にポイントを置きました。団体と話し合いを重ねる中で『~子どもとふれあう、心がつうじる、未来をうごかす~ボランティア体験にきっせ!』というメッセージを導き出しました。チラシにはほかに、ボランティア体験者の声、子どもたちが描いたボランティアの似顔絵、団体が掲げる『100年後の未来』を象徴する虹を盛り込みました」
企業に支援を求めるドアノックツールとなる資料
「一般社団法人 ふくしま連携復興センター」チーム
「ふくしま連携復興センター」は福島県内の復興支援団体に対する情報提供、コーディネートやネットワークづくりなどを行っている中間支援組織です。「企業にNPOへの支援を求める際のドアノックツールとして使える資料がほしい」との要望を受け、プロボノチームは「企業のCSR担当者が上司を説得しやすい資料」を目標に掲げました。
プロボノチームはCSR担当者にもヒアリングを行い、「ミッション・ビジョン」「企業に何を求めているか」「ふくしま連携復興センターと協働すると何が実現できるのか」を明確にすることが必要だと考えました。
「A3両面印刷・中折りたたみの資料にはミッションとビジョンを明示し、NPOや企業とどのような協働関係を結ぼうとしているのかを図式化しました。また、実際に支援の相談があった際に、どれくらいのスパンでどのようなことができるのかを説明すると同時に、今回のプロボノプログラムをサポートした事例を初めとする連携の実績にも触れました。実際に活用する際には、現在登録しているNPOの情報を掲載した資料も挟み込んだほうが会員サポートにつながるのではないか、といった提案もしました」
「ふくしまの市」の魅力を伝えるWEBページとチラシ
「一般社団法人 手づくりマルシェ」チーム
「手づくりマルシェ」は福島のよさを知ってもらうために、手づくりの菓子や工芸品、野菜、果物などを販売する「ふくしまの市」を開催しています。専用のWEBページがなく、集客が手書きのチラシと口コミ頼みであることが課題でした。そこでプロボノチームは8月24日に開かれる第2回の市に向けて、WEBページとチラシの作成に取り組みました。
WEBページにおいては「ふくしまの市」のコンセプト を明確にし、おすすめの商品、農家が提案する野菜のレシピなどを盛り込んで、イベントがますます盛り上がるような内容にすることを決めました。
「多くのお客さんを呼ぶために、フェイスブックのアカウントを立ち上げ、そこからもWEBページへ飛べるようにリンクを貼りました。WEBページと統一感のあるチラシも作成し、『商品のネーミングには食感が伝わる形容詞をもっと使ったほうがいい』『開催日は第○日曜日と決めたほうがいい』といった施策も提案しました。幸運なことに、次回の市に向けた新商品の開発にも立ち合わせていただくことができました」
▼手作りマルシェ ふくしまの市
観光インストラクターの担い手を募るPR資料
「NPO法人 いいざかサポーターズクラブ」チーム
「いいざかサポーターズクラブ」は飯坂温泉の若手を中心に“着地型観光プログラム”の開発に取り組んでいる団体です。歴史ある温泉街ですが、大人数の団体客を受け入れる体制が整っていないため、「観光インストラクター募集のPR資料を作成してほしい」というのが今回の依頼でした。
プロボノチームは町を40分ほど歩いて魅力を探り、ターゲットを若者から中高年と設定しました。漫画やイラストを多用し、「ボランティアすることのメリット」が伝わる資料づくりを目指しました。
「東京や被災地・神戸の大学生を想定し、彼らに『いいざか町民認定証』を発行することで就職活動に役立ててもらってはどうかと提案しました。地元の茂庭地域や仮設住宅に住む中高年であれば、農業や雪遊びを教えることで伝える喜びや役立つ喜びを感じていただくこともできます。『まち活』という新たなキーワードを提案し、就職活動を控えた大学生をターゲットにするなど、若者に向けたチラシも作成しました。有償ボランティアなので、体験とお小遣い稼ぎを両立できることも魅力になるかもしれません」
企業に、ひと目で社会的価値が伝わる営業資料
「NPO法人 ビーンズふくしま」チーム
「ビーンズふくしま」は福島市と郡山市を拠点に不登校やひきこもり、ニート、貧困家庭などの子ども・若者をサポートしています。企業とのつながりを強化するために「活動の社会的価値が伝わるような営業資料を作成してほしい」とプロボノチームに依頼しました。
活動が多岐にわたるため、プロボノチームは必要と思われる要素をポストイットに書き出し、模造紙に貼っていきました。A3二つ折りの資料の中に、ヒアリングで聞き取った団体の思いを、いかに強みやこだわりとして落とし込んでいくかに注力しました。
「表紙には、団体名の由来になった“ジャックと豆の木”と『子どもと若者が、自らが望む姿で社会につながるために』というコンセプトを配しました。どんな思いでどんなことを達成しようとしているのかを明確にし、フリースクール事業の具体的な実績や外部からの声を紹介しました。中でもミッションの中核を成す“社会的接続”という重要なキーワードについては議論を重ね、わかりやすく噛み砕くことに時間をかけました」
各団体の発表の後には支援先団体の方から「自分達の活動を理解しようと真摯に耳を傾けてくれ、意見交換を重ねるうちに自分達の団体を客観的に見ることができた」「なかなか自分達だけでは発想の転換ができないところを掘り起こしてくれた」「今までアイデアや気持ちはあっても行動に移せなかった部分を形にしてもらえ、前向きな気持ちになれた」「自分達の価値を表現するのに一緒になって悩んでくれたことに勇気をもらった」などの感想が述べられました。
福島の支援の在り方としてプロボノを根づかせたい
ふくしま連携復興センター
事務局長 山崎 庸貴さん
最後に、ふくしま連携復興センター事務局長の山崎庸貴さんが感謝の言葉を述べました。
「できるだけ多くの福島のNPOを支援したい、福島の支援の在り方としてプロボノという新しい概念を根づかせたい、たくさんの方に来ていただくことで福島のファンになってほしい、という3つの思いで今回のプログラムを進めてきました。一方で今回は支援を受ける立場としても参画し、限られた時間の中で、これだけのものを一緒につくり上げることができました。人も資金も限られ、課題も多い中で、企業の皆さんからヒントをいただくという今回のプログラムはとても有意義なものだと感じました。ご協力くださった皆さん、本当にありがとうございました」
東京へ向かう帰りのバスでは、全員がプログラムの感想を発表しました。
2年前まで学生だったという男性は、「学生の頃はボランティアで何度か福島に足を運びましたが、社会人になってからは、なかなかできていませんでした。今回、大阪から参加して良かったです。今度はNPOさんの活動にも参加したいと思います」と話しました。
そして入社8年目の女性は、「入社当初からパナソニックのCSRの活動に関心があり、今回ようやく条件が合って参加できました。自分の希望していた子ども分野の団体に関われて、自分が目指しているものに近づくことができました。これからも、いろいろなことにチャレンジしていきたい」と抱負を語りました。
一泊二日の短い時間ではありましたが、福島を訪れて、実際に活動しているNPOスタッフの思いに触れ、チームを組んでNPOのニーズにお応えするという充実した時間を過ごすことができました。