■1957年 「文化の日」の広告
1957(昭和32)年、11月3日の「文化の日」の新聞に一風変わった広告が掲載された。くたびれた表情でバケツを運ぶ主婦と思しき女性を、「地球上14億の女性の中からひとりえらんだあなたの奥さま」という表題が囲み、本文では、日本の婦人が家事という賃金なき重労働に縛りつけられている実態が、データを基に証明されていく。そして「あなたの奥さま」を、そうした苦労から解き放つのが家庭電化であり、家庭電化が進んでこそ日本の文化レベルも向上する、と話は展開する。実は同年9月、松下幸之助は、ある講演会で次のように語っていた。「日本には婦人解放運動というものがあります。婦人の人格を認めて、できるだけ解放し、生活を楽しんでもらわなければならないという思想が湧いております。しかし、口でなんぼ言うてもダメです。時間を十分とってもらうには、やはり家庭電化ということが婦人解放運動そのものだと思うんです」。ここから、この「文化の日」の広告が生まれたのである。