今年度も、熱意の高い応募を多数お寄せくださったことに、深くお礼申し上げます。
お寄せいただいた申請について、助成確定までの過程には、例年以上にやりとりを重ねて、各団体の状況や課題を正確に把握・共有した上で、最適な「基盤強化」事業づくりを進めました。
例年申し上げておりますが、最終的に助成対象に決まった10団体の方々のみならず、選ばれなかった団体の方々にも、組織の基盤を豊かにする努力を弛まず続けていただきたいと、心から願っています。
選考の経緯
今年度は、昨年新設されたコンソーシアム助成への申請6件を含む、計75件の申請をいただきました。ご応募くださった団体の方々はもちろん、呼びかけや、説明会を兼ねた組織基盤強化ワークショップの開催にご協力くださった各地の中間支援機関のみなさまにも、深くお礼申し上げます。
このうち42団体については、申請内容が団体の基盤強化ではなく、活動への助成にとどまっていると考えられるため、事務局による予備選考で「選考対象外」と判断しました。
残った33団体からの申請事業について、例年通り、6人の選考委員が、応募要項に示された4つの選考基準(団体の適格性、組織基盤強化の必要性、応募事業の組織基盤強化への有効性、応募事業の実施可能性)を細分化した10項目の審査基準に基づいて、50点満点で採点しました。なお、審査基準の10項目は、すべてが均等ではなく、重み付けされており、最も重視されたのは、これも例年同様に「助成される事業の具体性、成果の明確性」や「助成される事業による組織基盤強化へのインパクト」といった項目でした。
そして9月に開催され選考委員会で、委員6人の採点結果をもとに協議・検討した結果、17団体に対して事務局スタッフが訪問し、質問や修正提案などをお伝えし、それに対するご回答をいただく形式で、ヒアリングを行うこととなりました。
ヒアリングの報告をもとに、6人の選考委員は、採否や条件などについて個別に検討した評価表を提出し、その集計結果をもとに、11月上旬に、選考委員長と事務局の協議・確認の上、11団体に助成を内定しましたが、1団体が辞退されたため、最終的に10団体(うちコンソーシアム助成2件)に計1500万円への助成を内定しました。
選考のポイント
例年申し上げているとおり、本ファンドは、「助成対象事業」に明記されているように、「環境問題に取り組むNPOの組織の基盤強化に資する事業」への助成を目的としています。このため、「団体の運営上、どのような課題があるか」や「その原因や背景は何か」について、率直かつ明確に示していることが、最初に確認するポイントです。
ここ数年間の傾向として、「団体運営上の本当の課題は何か?」、「今後数年間を見通した上で、(現在実施中の活動を単に続けるのではなく)どのような事業をどの程度の規模で行うことが、社会から期待されているか?」、「外部からの助言や協力を率直に受け入れ、また、自らも他団体に積極的に助言・協力しているか?」という点において、理解・認識や取り組みが十分とは言えない申請が数多くあったことを、とても危惧しています。申請していただいたうちの約半数が、このねらいを正しく理解されずに、事務局による予備選考で「選考対象外」と判断せねばならなかったことは、労力をかけて申請していただいたにもかかわらず、大変残念でした。
また、課題を解決する過程が具体的かつ合理的で、その後の団体の持続的な発展を促すと期待できることも、重要なポイントです。団体運営の課題(ニーズ)が具体的で、解決するための打ち手の内容や流れ(プロセス)が合理的であり、団体の内外の人材や資金(資源)が効果的に用いられるとアピールしていただくことは、本助成のみならず、寄付や助成などの提案・申請時に重要であるとおわかりいただけるでしょう。
このため、ニーズが明確であり、基本的な方針は適切でも、具体的な対策について、絞り込みや修正をお願いせねばならない申請も多く、結果として減額助成となった団体も複数ありました。
基盤強化助成と、事業助成は、どう違うのか、
どう活用すれば、最適な成果が実現するのか?
このような状況が数年間続いたことから、「基盤強化助成とは何か、どう生かせばよいのか?」をお伝えする必要があると感じた次第です。下記の表をご覧ください。
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活動・事業助成 |
基盤強化助成 |
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ひとことで |
現場で今、足りないものを補う経費。 |
継続する力を高める準備を支える投資。 |
助成する |
社会の課題や理想の実現を目的に、団体による活動・事業に対して助成。 |
既に実績のある団体の運営の安定を目的に、基盤拡充や次の準備に助成。 |
期待される |
活動・事業を通じた課題解決や理想実現とともに、ノウハウの提供なども。 |
課題の原因解消や人材の成長、中期的な「次への備え」の確立。 |
求められる |
対象(受益者)にとって最適な成果を生むための業務内容を詳細に。 |
社会にとって最適な成果を供給し続ける体制を整えるために、原因分析や予測を行った上で、組織の再編・人材の育成・他団体との連携など、現在の体制の効果的な見直し・立て直しを具体的に。 |
実施責任者 |
現場の業務に責任を持つスタッフ。 |
組織運営に責任を負う理事など。 |
目の前の現場で足りないものを補う経費としてではなく、継続する力を高める準備を支える投資として行うことには、深い視野と、「本当に社会と組織をより良いものにしたい」という率直な意欲が不可欠です。環境保全に科学的な視点と合理的な手法が不可欠であるのと同様に、組織という生態系の健康を維持し続ける取り組みにも、原因・背景を確かめる率直さと、解決手法の合理性が求められているのです。
限られた資源を最大限に生かした活動を続けられることを、心から期待申し上げるとともに、次年度のご応募もお待ちしています。
川北 秀人 |
人と組織と地球のための国際研究所(IIHOE) 代表者 (★選考委員長) |
高城 佐知子 |
廣告社株式会社 クロスメディア営業局 コミュニケーションプランニング2部 プランナー |
滝口 直樹 |
独立行政法人 環境再生保全機構 石綿健康被害救済部長 |
西尾 チヅル |
筑波大学大学院 ビジネス科学研究科 教授 |
赤澤 清孝 |
特定非営利活動法人 ユースビジョン 代表 |
冨田 勝己 |
パナソニック株式会社 環境本部 環境企画グループ コミュニケーションチーム チームリーダー |