本年3月11日に東日本で勃発したM9の大震災は、巨大津波による沿岸500kmにおよぶ壊滅的破壊、原発被災による広域な放射能汚染の3重苦となって今なお、被災地住民のみならず、日本社会全体を苦しめ続けています。同時に、NPOや市民セクターの存在が問われるような災害でもあり、無数の市民、団体をさまざまな支援活動に向かわせ、エネルギーや地域の在り方、幸福度などの価値観の見直しを広範な社会総体に投げかけることにもなりました。膨大な犠牲を伴ないながらも、これからの市民社会の形が根底から変化する兆しが生まれ始めています。この震災の犠牲となられた方々には心よりお悔やみを申し上げるとともに、甚大な被害を蒙った方々へもお見舞いを申し上げます。
組織診断を核としたキャパシティビルディング
2001年に創設されたPanasonic NPOサポート ファンドは、これまで10年間に亘り一貫して、日本社会におけるNPOや市民団体が成長発展していくための助成金という理念に基づいて、組織基盤を強化するためのキャパシティビルディングに特化した助成を行って来ました。このようなNPOの組織基盤そのものの強化を目的とした助成は国内ではほとんど例がありません。
そして、11年目の2011年、Panasonic NPOサポート ファンドは第3ステージを迎え、あらたな助成が始まりました。これまでの10年間の助成によって得られた成果と課題をもとに、助成テーマを「組織診断を核としたキャパシティビルディング」とし、NPOがより戦略的に社会課題を解決できるようになるために、自己変革しながら持続的に成長できるよう、組織運営上の課題を抽出して解決の方向性を見出す組織診断の手法を活用して、「組織診断助成」「キャパシティビルディング助成」の2段階で支援していきます。
選考の経緯
この組織診断助成には計13団体に応募していただきました。意欲ある応募団体の皆様にこころよりお礼申し上げます。13団体には、「財政規模が1000万円以上」の基準を満たさない団体1件も含まれました。4人の選考委員が、「団体の適格性」、「組織診断の必要性」など応募要項に沿って設定された6項目の審査基準に沿って総合的に審査しました。ここで絞り込まれた10団体に対して事務局が直接、各団体まで出向いてヒアリングを行い、その結果をもって、10月中旬に各選考委員が2次審査を行い、最終的に8団体が2011年の「組織診断助成対象団体」に総額780万円で内定されました。
選考のポイント
NPO法が施行されて13年。2011年8月現在、約43,000のNPO法人が認証されています。社会の様々な課題に対して効果的に取り組む手法として生まれたNPOですが、課題解決をしつつ、自団体の持続可能な運営が出来ていると胸を張れる団体はむしろ少数であると言わざるを得ません。しかも自立した財政基盤を持つことに消極的なNPOも少なくありません。これまで多くの助成や委託事業がNPOに対して行われてきた結果、そうした助成依存型の運営が当たり前になってしまった観もあります。でもそうしたNPOの在り方が健全では無いことはいうまでもありません。組織の自立運営に向けて弛まぬ努力をしていることこそ、NPOの法人としての責任です。本助成はこうした努力を応援し、よりよい成果を生み出せるよう、NPO自身の課題の認識と自己変革のための組織診断をおこない、その診断結果を活かして組織基盤強化にむけた改善の取り組みが期待出来ることが選考のポイントでした。
社会と組織のより良い変革のために団体の持つ資源である人材や資金を最大限効果的に活かしたいという思いを実現するために、本助成が意味ある役割を負えるよう、選考委員全員と事務局もまた、思いを実現することに力を注ぐ第1歩が選考過程であったと思います。
選ばれた団体はもとより、ヒアリングにご協力いただいた団体、応募申請された団体の皆様など本助成プログラムに参加されたすべての皆様にあらためてお礼申し上げます。
さらに、今年から本助成前期の「組織診断助成」を経て、後期は「キャパシティビルディング助成」が予定されています。組織診断助成を受けられた団体が診断によって組織課題の改善を実行していく後期の助成にも取り組まれますように、強くご期待いたします。
広瀬敏通 |
特定非営利活動法人日本エコツーリズムセンター 代表理事 (★選考委員長) |
赤澤清孝 |
特定非営利活動法人ユースビジョン 代表 |
木村真樹 |
コミュニティ・ユース・バンクmomo 代表理事 |
工藤慎一 |
パナソニック株式会社 環境本部 管理チーム チームリーダー |